司法試験過去問の勉強方法と合格するための向き合い方
公開:2024.05.08
司法試験の受験勉強において,過去問の勉強は非常に重要な位置を占めています。
それは私たちのような予備校だけでなく,実際に司法試験に合格した多くの経験者が語っています。
ではなぜ司法試験の受験にあたって,過去問の勉強が重要なのだと思いますか?
みんなが重要って言っているから過去問をやる,それだけでいいのでしょうか?
ただ過去問をやるだけなのと,過去問の重要性を理解しつつ勉強するのとでは,達成度に差が出てしまいます。
ここが重要たる所以です。
つまり達成度に差が出てしまうのは,ポイントを外した方法で勉強をしてしまい,時間は消費しているけれど,過去問学習の十分な効果を得ることができていないからです。
今回はこの司法試験の過去問の重要性を念頭に置きながら,勉強方法と合格するために必要な方向性について解説していきます。
司法試験の過去問はいつから勉強すれば効果的か?
司法試験の過去問を始める,おすすめ時期
・インプットした後にすぐ過去問を解いてみることで,知識の定着度合がアップする
・この知識はこう使う
・この形式の問題はこう解く
司法試験における過去問の重要性とは
司法試験受験生が,司法試験合格に向けた学習で中心に据えられるのは,やはり過去問です。
ではここで1度,想像してみてください。
司法試験の受験科目は.選択科目を含め8科目もあり,その範囲は膨大です。
★司法試験試験科目
憲法 | 行政法 | 民法 | 商法 | 民事訴訟法 | 刑法 | 刑事訴訟法 | 選択科目 | |
短答式試験 | 〇 | ‐ | 〇 | ‐ | ‐ | 〇 | ‐ | ‐ |
論文式試験 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
この膨大な量を道しるべもなく,どこをどう勉強したらいいか分からないまま,やみくもに勉強したらどうなるでしょうか?
間違いなく,迷子確定です。
出口のない迷路に迷い込んだ,そんな迷子に手を差し伸べてくれるのが、過去問です。
過去問は法務省のホームページから,誰でも簡単にダウンロードすることができます。
さらに法務省のホームページには出題趣旨や採点実感まで掲載されているので,司法試験委員会が想定していた正解筋や書き方のヒントまで得ることができます。
(こちらの法務省のページから、各年度の過去問、出題趣旨、採点実感を見ることができます。)
これは司法試験受験生にとっては,かけがえのない情報源です。
なぜなら最終的に目指すのは,司法試験委員会が作成した問題を解いて,答案を書けるようになることだからです。
そのため司法試験の勉強では,敵を知る意味でも過去問はとても重要といえます。
また,過去問で問われたことのある問題(論点)が再び出題された場合,多くの受験生が勉強しているので,その過去問を勉強しないまま試験を受ければ,相対評価の司法試験で確実に書き負けます。
逆に,司法試験過去問で出題されていないマイナー論点について書けなかったとしても,周りの受験生も同じように書けない傾向にあるので,相対評価の観点からは合否に影響しにくいのです。
これらを踏まえて過去問を中心に据えて勉強することで,繰り返し出題されるような重要論点について,メリハリをつけた学習が可能になります。
さらに,過去問は大学教授や実務家などで構成された司法試験委員会が多くの時間をかけて作成しているため,良質な問題が多いです。
これを使わない手はありません。
このように,司法試験の過去問をうまく活用し,他の受験生に書き負けることがないよう準備しておくことが,合格に近づく秘訣であり,重要である理由です。
司法試験短答式試験の過去問の勉強方法と向き合い方
短答式試験は各科目の満点の40%以上(憲法20点,民法30点,刑法20点)の成績を得た者のうち,総合点が当該年度の足切り点(令和5年司法試験だと99点)を超えることで,合格に必要な成績を得たことになります。
各科目の最低ライン,総合点の足切りライン共に決して高い点数ではありません。
司法試験の短答式試験は予備試験とは異なり,論文式試験と同時に行われるため,余裕を持った準備をしておくことがポイントです。
▶︎短答式試験の過去問を何年分解くべき?
全年度分の過去問を解くのが基本!
司法試験の短答式試験は憲法,民法,刑法の3科目のみです。
時間のあるロースクール生や専業受験生は,新司法試験以降の短答試験の過去問については全問解くのが基本といえます。
実は短答式試験は,論文式試験と比べて甘く見られがちです。
ですがその認識はとてももったいなく,落とし穴でもあります。
短答式試験では,論文式試験と異なり得点調整がありません。
正解した得点全てが自身の合計点に加算されます。
その神髄は,仮に短答式試験で140点以上の得点を取れた場合,論文1科目の失敗をカバーできるともいわれています。
短答式試験は相対評価試験の司法試験の中で,甘く見られているからこそ,他の受験生に対して大きなアドバンテージがとれる可能性を秘めています。
また試験本番の緊張の中、論文式試験が絶対完璧に仕上げられるとも限りません。
このアドバンテージの可能性を見過ごすなんて、もったいないと思いませんか?
そして最も重要な点は,司法試験では短答式試験の基準点を突破しなければ,論文式試験の採点がされません。
短答式試験を失敗してしまえば、多くの時間を費やした論文式試験も,翌年受験の糧になるとしてもその年は水の泡です。
そう考えると,短答式試験の重要性について見方が変わってきませんか?
1問でも多く過去問を解き知識を吸収し,傾向を把握することが重要であると浮き彫りになってきます。
時間のない社会人受験生等は直近3〜5年分に絞るのもアリ!
一方で,短答式試験が足切りを突破さえしていれば,仮に出来が悪くても最終合格は可能です。
それは短答式試験と論文式試験の配点割合が1:8で、論文式試験に配点が偏っているからです。
そうすると時間のない受験生は,次のような戦略を取る手もあります。
・配点割合の大きい論文式試験に勉強時間の大半をあてる。
・短答式試験については合格者平均点である120点前後をとることを目標にする。
上記の場合、短答式試験の勉強時間を大幅に削ることになるので、より効率的な勉強が重要となります。
最低でも直近3〜5年分の短答式試験の過去問を繰り返し解き,これらについては最低限完璧にしておくぐらいのレベルが必要です。
ただし短答式試験での得点のアドバンテージがなくなるので、論文式試験でいかに高得点を取っていくかが司法試験合格のカギになります。
▶︎短答式過去問の使い方
体系別?年度別?どっちの過去問を使うと効果的?
実際の過去問の解き方としては,大きく分けると
・体系別に解く方法
・年度別に解く方法
があります。
●体系別に解く方法
主に市販の短答問題集等を購入し,前から順に解いていく方法になります。
同じテーマを重点的に学習していくことができるので知識の整理がしやすく,また自身の苦手分野の発見にも効率的です。
●年度別に解く方法
法務省のホームページから問題をダウンロードし,(できれば時間を測って)解く方法です。
(市販の年度別過去問集もあります。)
これは様々な分野からランダムに出題される問題に対応できるか,頭を次々に切り替えて解くことができるか等をチェックすることが可能です。
どちらが自分に合っているかわからないという方や,初学者の方については,まずは体系別に解く方法から勉強するのがおすすめです。
体系別に解く方法で,知識の整理・定着を図った後に,使える知識になっているか年度別に解く方法を試してみましょう。
年度別の過去問では,問題ごとに違う論点が出題されるので,これを解くことで,知識の確認や司法試験の出題形式に慣れるための練習にもなります。
情報の一元化のススメ
司法試験直前期は,論文式試験の苦手な範囲の復習や,模試の見直し,論証の暗記など勉強することが多く,短答の勉強に思ったような時間を割けないのが実情です。
また,司法試験では4日に渡る論文式試験の後に短答式試験が行われるので,その頃には体力的にも精神的にもかなり疲弊しているのが一般的です。
さらに短答式試験での,足切りの恐怖も相当な負担になります。
そのため比較的短答式試験の勉強がしやすい試験中日や4日目に,短時間でパパッと見直せる情報の一元化教材があると安心です。
このような情報の一元化教材は,時間がいくらあっても足りない試験直前にいきなり作れないので,日々の勉強の過程で作成しておくことをおすすめします。
例えば,何回も間違える問題についてはwordでまとめておいたり,判例六法にマークをしたりしておけば,自分の弱点に特化した情報の一元化教材が完成します。
改正民法に注意!
近年は大きな民法改正が目立ちますが,受験生にとってこれは過去問の蓄積が少ないことを意味します。
例えば,令和2年4月1日に施行された債権法の改正については,令和2年から5年までの4年度分しか過去問の蓄積がありません。
また令和4年4月1日に施行された成人年齢引き下げ等を含む改正についても,2年度分しか過去問の蓄積がなく,未出題のテーマがたくさんある状況です。
上記の改正は主に判例法理だったものが明文化された形の改正が多く,実際に短答式試験でも単純な条文知識を問われることが多くなってきています。
ゆえに,民法については過去問を解くだけでは対応できなくなっている一方で,条文素読をきちんとやっていれば簡単に解ける問題が増えているともいえます。
そこで,改正民法を中心に,日々の勉強の過程でこつこつ条文素読をすることもおすすめです。
勉強をする中で,短答と論文の勉強を分けて考えている方も多いのですが,短答式試験の学習は,論文式試験に通ずるものがあります。
どれだけコツコツ学習ができたかが後に大きな差となって現れてきます。
司法試験論文式試験の過去問の勉強方法と向き合い方
論文式試験の配点は,民事系科目が300点,公法系・刑事系科目が各200点,選択科目が100点の合計1400点満点です。
また,あまり知られていませんが,論文式試験にも足切りライン(各科目の配点の25%)があり,民事系が75点,公法系・刑事系が50点,選択科目が25点です。
論文の足切りは非常に低く設定されているので,基本的には不安に思う必要はありません。
一方,合格最低点は令和5年で770点,令和4年で750点と近年は低く推移しています。
短答合格者平均は大体120点前後なので,論文式で640点前後とればギリギリ合格できる計算になります。
ただしこれはあくまで最低ラインです。
司法試験は相対評価なので、確実に合格を勝ち取るためには、もう少し上乗せした点数が欲しいところです。
▶︎論文式試験の過去問を何年分解くべき?
論文式試験は選択科目も含めると8科目もあり,
法律基本科目で126問,
これらを全て消化して試験本番を迎えるのが理想ではあります。
ですが限られた時間の中,全てを検討するのは厳しそうだなと感じる方は,直近5年分あるいは重要度の高い過去問から順に検討していくことからおすすめします。
▶︎何が出たかよりもどう書くか
司法試験の過去問を解くする際は,どの論点が聞かれたか,何の判例がベースになっていたか等に目が向きがちです。
ですがこれらのことを確認して満足するだけでは,過去問を活用できたことになりません。
そこで,以下のような観点で過去問を大いに活用してみてください。
時間の使い方を決めておこう
司法試験は2時間で長い問題文を読み,構成を考えて,8枚の答案用紙にその思考を論述するという試験です。
1度本気で時間を計って,初見の問題を解いてみてください。
2時間というのはあっという間に感じます。
そこで,
・どのように問題文を読むのか(誘導から読むのか,本文から読むのか,あるいは配点割合をまず確認するのか)
・構成時間は何分までにしておくのか 等
このような約束事を事前に決めておくと、論文答案を作成しやすくなります。
また,自分が答案用紙1枚を何分で書き上げられるのかを把握しておくことも重要です。
過去問演習を通じて,各時間配分を自分の中で決め,実践できる状態になっておきましょう。
出題趣旨・採点実感を用いながら再現答案を分析しよう
過去問を解いたら,出題趣旨・採点実感,再現答案をそれぞれ見比べることをおすすめします。
出題趣旨は司法試験委員会が想定していた正解筋が示されているので,何度読んでも発見があり,大変勉強になります。
一方で,出題趣旨はいわば“完全解”であって,これらを完璧に書ける受験生はいないので,全てを答案に盛り込まなければならないと思わなくて大丈夫です。
そうすると,どこまで書けば受かるのか?と思いませんか?
この指針を示してくれるのが,採点実感や再現答案です。
採点実感は,司法試験委員会が受験生の答案を実際に採点した後に作成するものです。
多くの受験生が書けていたこと,あるいは書けていなかったことが何なのかということや,どこまで書けば「良好」あるいは「一応の水準」にあたるのかを推察することが可能です。
また,辰巳法律研究所が出版するぶんせき本に掲載の再現答案等を一読するのもおすすめです。
ぶんせき本には,実際のランクや順位も一緒に掲載されているので,例えばAランクの答案がどのようにメイン論点とサブ論点とを分けて,メリハリをつけて論じているかを知ることができます。
そして秀逸なあてはめの表現があれば,これをストックする等の活用方法が考えられます。
一方で,D〜Eランクの答案も何を書き落とせば点数が伸びないのか,どういった点で他の答案と比べて沈んでしまったのかを学ぶことができます。
このように再現答案と採点実感を見比べながら読むことで,司法試験の現場で求められる答案の相場観を徐々に身につけることができます。
★再現答案を分析するなら、辰已のこの講座がおすすめ!
・論文式試験の勉強方法が分からない
・再現答案の読み方がよく分からない
・たくさん論文を書いているのに評価が伸びない
こんなお悩みはありませんか?
論文式試験の評価を上げ、点数を伸ばすには、
・答案構成方法
・当てはめの方法
・現場思考の方法
の理解が必須です。
予備試験、司法試験共に上位合格を果たした清武講師が、苦手部分の克服を目指して、具体的な論文答案の書き方を伝授します。
現場思考問題への対処法を身につけておこう
司法試験では必ず,未知の論点を含むわけのわからない問題がいくつか出ると思っておくべきです。
司法試験は相対評価の試験なので,基本的な問題で確実に点数を取りさえすれば,応用問題が仮に白紙であったとしても合格しうる試験です。
逆にいえば,わけのわからない問題に時間を取られ,あるいはパニックになり,本来解けるはずの問題を落とすと一気に不合格の可能性が高まります。
そこで,未知の論点のような現場思考問題が出題された場合に,焦らずこれに対処する方法を事前に決めておきましょう。
具体的には,問題のポイントに気付けた場合はそれを指摘の上,形式的に条文にあてはめてみます。
さらに可能であれば具体的事案に即した結論にしてみる等色々考えられます。
このような対処法は再現答案,特に優秀答案等から学ぶことが可能です。
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辰已法律研究所の人気講師、弁護士 福田俊彦先生が不合格答案を回避するための、論文の書き方を「実際の現場で問題文と六法を使って何をどのように書くべきか」をルール化しました。
論文式試験は、採点官に答案の内容が伝わらなければ、一切評価されません。
「書いたつもり」のままでは合格できません。
つまり論文式試験では、「何を」「どのように書くか」の熟練度が合否をわけます。
いいかえれば、答案の書き方次第で論文の評価は劇的に変わります。
現場で何をどう書くかを段階別にルール化して整理することで、不合格答案を書かない術を徹底的に身に付けましょう。
過去問の勉強から相乗効果をもたらそう!
ここまで司法試験の短答式試験・論文式試験それぞれの過去問の使い方を解説してきました。
短答式試験も論文式試験も,基本的な法律知識や判例知識を問われる点では異なりません。
そのため勉強する際は、短答と論文のそれぞれのポイントをリンクさせて考えるとより効率的かつ効果的です。
例えば短答式試験の問題を解きながら,仮にこれが論文式試験で出題されたらどうするかを考えてみてください。
また刑法の短答式であれば論文を解くときと同じように,一つずつ要件充足性を検討しながら解いてみましょう。
このように知識を短答と論文にリンクさせながら学習することで,相乗効果を得ることができるようになります。
ここまで解説してきた過去問の使い方を参考に,過去問を中心に据えた学習を継続してみてください!
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受講生から分かりやすいと支持を受ける、弁護士 本多諭先生の論文式試験で合格するための答案の型を身に付ける講座です。
単なる過去問解説講義ではありません。
合格する答案には各科目ごとに「型」があります。
科目ごとに汎用性のある型を学ぶことで、様々な問題に対応できるようになります。
つまり汎用性のある型を学んでおくことで、現場思考問題にも柔軟に対応できるようになります。
論点知識の深掘りは不要。
直近の過去問を丁寧に講義しつつ、平成18年にまで遡り縦横に過去問を駆使して、合格答案の型(テンプレート)を引き出していきます。
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