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予備試験の合格率はなぜ上がらない?
10年データで見る“受からない構造”を徹底解説

司法試験の受験資格を得ることができる、予備試験の合格。

この予備試験の合格率は、ここ10年3~4%台とほとんど変わっていません。
受験者数は増え、情報も教材も充実しているにもかかわらず、受かる人の割合はなぜか横ばいのままです。

これだけ勉強環境が整っているのに、なぜ合格率は上がらないのでしょうか?
多くの受験生が感じているこの疑問には、単なる難易度の問題ではない構造的な理由が存在します。

本記事では、予備試験10年のデータを元に、短答・論文・口述それぞれの10年推移を整理しながら、予備試験の合格率が上がらない本当の理由を読み解いていきます。

そしてその先に、予備試験に合格する人、しない人の違いについても、考えていきます。

予備試験の過去10年推移から見る合格率の実態は?

まずは、基本情報として、予備試験の過去10年の合格率を確認してみましょう。

(細かい受験者数や合格者数などの数字は、別ページでまとめています。ご興味がありましたら参考にしてみてください。)
▶ 予備試験に関する受験データのまとめ

予備試験の合格率は、短答・論文・口述いずれの段階においても、大きく上昇することなく、一定の水準にとどまり続けています。

予備試験過去10年合格率グラフ

上記の通り、予備試験の合格率は短答・論文・最終(口述)いずれにおいても、10年間ほぼ横ばいを維持しています。

短答はおおむね20%前後、論文は17〜19%、最終(口述)合格率は3〜4%台に収まっており、年度ごとの多少の上下はあるものの、全体としては極めて安定した推移を示しています。

特に注目すべきなのは、受験者数が増加しているにもかかわらず、最終合格率がほぼ変わっていない点です。

このことから、予備試験は単に難しい試験というよりも、合格者数が一定水準にコントロールされている選抜型の試験であることが分かります。

▶ 予備試験とは?知っておきたい基本情報や合格率などを大解剖!
 

予備試験の特徴は、短答だけというような、単一の試験で合否が決まるのではなく、短答・論文・口述という複数の関門を通過する必要がある点にあります。

この多段階選抜の構造により、各段階で一定割合ずつ受験者が絞り込まれ、最終的にごく限られた人数のみが合格に至ります。

つまり、どれだけ短答で高得点を取れても、論文で通用しなければ意味がなく、さらに口述での対応力も求められます。

予備試験ではこの総合力勝負を勝ち抜いた先に合格があるのです。

違和感?予備試験合格率データから見える変わらなさ

ここで一つの疑問が生まれます。

まずは過去10年の予備試験受験者数の推移を見てみましょう。

予備試験過去10年の受験者数の推移グラフ

令和2年に落ち込みがありますが、この辺りはコロナの影響が出ています。

そこを除くと予備試験の受験者は令和5年まで増加傾向にあります。

令和6年から少々減少傾向にありますが、これは司法試験の法科大学院の在学中受験が開始された時期と重なります。
 

一般的には、受験者数が増えれば、
・学力のばらつきが広がる
・平均的なレベルは下がる

その結果、合格率も多少は変動するはずです。

しかし予備試験では、そうした変化がほとんど見られません。

つまり予備試験では、「人数が増える=合格しやすくなる」という単純な構造ではないということが分かります。

では、何が合格率を一定に保っているのでしょうか。

受験者が増えても合格率が変わらない試験の構造

予備試験の正式名称は「司法試験予備試験」です。

この名称から考えられるように、予備試験の本質は司法試験の選抜試験であることにあります。

 

司法試験には受験資格がありますが、予備試験合格はまさしくその受験資格のうちの1つです。

そのため予備試験は、一定の基準点を超えれば合格できる試験ではなく、最終的に上位に位置する受験者が選ばれる構造になっています。

いわゆる相対評価試験です。

〇〇点以上は皆合格!という行政書士試験のような絶対評価試験とは異なり、相対評価試験は簡単にいうと、基準点を超えさらに上位〇%を合格とするという評価試験です。

この試験構造のため受験者が増えたとしても、単純に合格者数が比例して増えるわけではないのです。

 

このように予備試験では単に人数を確保するというよりも、むしろ重要なのは、受験者の中身(実力)ということになります。

現在の予備試験では、

・法科大学院生や既修者などの高い実力を持つ層
・複数年にわたって学習を継続している再受験者
・予備校や教材を活用して効率的に対策している層

このような受験生が予備試験合格を目指しています。

この結果、

・上位層(高得点者)の密度が高まる
・合格直前の層が蓄積される
・競争が年々洗練される

という状態が生まれます。

さらに、予備試験は短答・論文・口述という多段階選抜です。

それぞれで求められる能力が異なるため、一つでも弱点があれば予備試験の最終合格には到達できません。

つまり、

・過酷な競争
・上位層(高得点者)は厚くなる
・通過できる人数は構造的に絞られる

この3つによって、合格率はほぼ一定のまま維持されるのです

予備試験ではどの段階でどれだけ落とされるのか

予備試験の構造をもう少し具体的に見てみましょう。

過去データから見ると、おおよそ以下のような絞り込みが行われています。

・短答:約20%が通過
・論文:短答合格者の約17〜19%が通過
・最終(口述):最終的に全体の約3〜4%に収束

これを予備試験の全体構造として見ると、例えば、

100人受験 → 約20人が短答通過 → 約4人が最終合格

というイメージになります。

ここで重要なのは、短答も論文もかなりの人数が落とされる設計になっているという点です。

特に論文試験は、知識ではなく答案としての完成度が問われるため、ここで一気に差がつきます。

そのため予備試験受験生は論文の勉強に比重をおく傾向にあります。

 
とはいえ確かに論文の勉強は難しく一長一短で身に付くものではないため、時間も労力もかかります。

しかし、予備試験の場合はまず短答を突破しないことには、論文を受験することができません。

短答の合格率は20%台なので、令和7年を例にとると(合格率22.07%)、

・受験者数 12,432人
・短答合格者数 2,744人

単純に10,000人以上の受験者が論文試験に進めずに涙を呑むことになるのです。

つまりほとんどの予備試験の受験者がこの短答で落とされることになります。

そのため短答突破の壁はとても厚く、さらに短答合格ができたとしても続く論文の難しさに苦戦を強いられることになります。

よってこの過酷な試験の最終合格を得るためには、効率的でバランスの取れた勉強がかなり重要であると言うことができます。

なぜ予備試験の合格率は上がらないのか

では、なぜここまで予備試験の合格率が固定されているのでしょうか。

その理由はシンプルで、 合格者数が事実上決まっているからです

決まっているといっても、カッチリ400人!絶対!というわけではありません。
 

予備試験は、司法試験の受験資格を与えるための試験です。

つまり、無制限に予備試験合格者を出すことは制度上想定されていません。

これは司法試験でも同様で、むしろ予備試験の合格率はこの司法試験の制度に大いに関連していると考えられます。

法曹人口の確保という観点から、以前より司法試験制度にメスがいれられてきました。

2004年(平成16年)に法科大学院がスタートしたのも、この一環です。

詳細は別記事でお話しするとして、ここでは簡単にふれておきます。

 

司法試験については政府の方針として、かつては年間3,000人、その後は1,500人程度といった形で、合格者数の目安が設定されてきました。

つまり司法試験は制度として合格者数が1,500人程度と、ある程度コントロールされています。

一方、予備試験は制度上はそのような数値目標を持たない試験ではあります。

しかし実際のデータを見ると、予備試験の最終合格者数もまた、受験者数が増えているにも関わらず、長年にわたり約400〜500人で推移しています。

このことから、予備試験もまた結果としては、上位層のみを選抜する構造によって、合格者数が事実上固定されている試験であると考えられます。

 

これらをまとめると、

・受験者数が増えても
・上位層の競争が激化するだけで
・合格枠そのものはほとんど変わらない

という構造になります。

これは言い換えると、枠で決まる試験だということになり、現状、予備試験の合格率が上がらない理由の根本はここにあると言えます。

また2023年(令和5年)より法科大学院の在学中司法試験受験が可能となりました。

このような今後の司法試験制度の動向により、予備試験の合格率が変動する可能性がないとは言い切れない状況が伺えます。

 
参考)
・法務省よりリンク 資料1 資料2
・文部科学省よりリンク

予備試験は努力すれば受かるは本当か?

ここで一つ、重要な部分に触れておきましょう。

それは、頑張ればいつか受かるという発想です

もちろん努力は必要です。

しかし、予備試験においてはそれだけでは足りません。

なぜならこの試験は、一定水準に達することではなく、上位に入ることが求められる試験だからです

つまり、

・周りより少しできる
・平均より上

では足りず、明確に上位層に食い込む必要があるのです。

こう聞くと、やっぱり予備試験は一部のエリートしか合格できない、努力しても無駄なんだ、と諦めてしまう人がいるかもしれません。

しかし一括りにそう論じることができないのが予備試験です。

 
予備試験は試験科目も多く出題範囲は膨大です。

もちろん法律試験ですから難しいですし、細かいところまで出題されます。

試験形式も短答・論文・口述と難易度が高いことに変わりがありません。

しかし予備試験は学者になる試験ではないので、試験に必要な「内容・知識」というものがあります。

つまり予備試験に合格するには、

・試験に必要な内容・知識を自身に染み込ませ
・正しい効率的な勉強を行い
・あきらめずコツコツと積み上げていける

このような人が、合格により近い場所にたどり着けます。

 
努力すれば受かる。

幻想のような言葉ですが、あながち幻の言葉ではありません。

コツコツ積み上げるのは努力の賜物と言えるからです。

 

予備試験合格する人としない人の決定的な違い

では、この予備試験構造の中で合格する人は何が違うのでしょうか。

大きく分けると、次の3点に集約されます。
 

① インプットとアウトプットを最初から並行して進めている

多くの受験生が、知識を増やすこと=インプットに時間を使いすぎます。

確かにインプットは大事です。

しかし、実際にその知識を試験で使えるようにしなくては太刀打ちできません。

試験で差が出るのは、知識の量ではなく知識を使いこなせるかどうかです。

・短答問題が解ける
・論文が書ける

これができて初めて、インプットした知識が得点に変わります。

そのため、インプットとアウトプットのバランスは、特に勉強し始めの頃から意識することが重要です。

「まずインプットを全部終わらせてからアウトプットをやろう」という考え方では、遅いのです。

合格者の多くは、勉強の最初の段階からインプットとアウトプットを並行して進めています。

アウトプットには、知識を定着させる効果だけでなく、問題に対する反射神経を鍛える効果もあります。

また、論文については書き方(論文の作法)を早い段階から身に付けていないと、短答を突破しても論文で通用する答案が書けません。

特に、短答に通過してから論文対策を始めるのでは遅く、早期から論文を意識した学習ができているかどうかが大きな差になります。

インプットで得た知識を、試験で使える武器に変えるのは、早いアウトプットの積み重ねなのです。

 

② 自分の答案を客観的に修正できている

ここが最も重要です。

・自分ではできているつもり
・実際には評価されない答案

このギャップに気づけるかどうかが、合否を分けます。

予備試験の論文式試験では、「知っている」と「書ける」は全くの別物です。

頭の中では理解できていても、採点者に伝わる形で論述できなければ得点にはなりません。

多くの受験生がここでつまずきます。

特に危険なのが、なんとなく書けた気がするという感覚です。

自分の答案を自分で読み返しても、知識が頭に入っている分だけ読めてしまうので、欠落や論理の飛躍に気づけないことがほとんどです。

だからこそ、合格者は自分の答案を客観的な視点で見直す習慣を持っています。

具体的には、

・書いた答案を時間を置いてから読み直す
・模範答案や上位答案と自分の答案を見比べる
・どこで点が取れていて、どこで落としているかを分析する

このサイクルを繰り返すことで、採点者の目線が養われていきます。

自分の答案の弱点を自覚し、修正していける受験生が、着実に合格に近づいていきます。

 

③ 環境で差がつく

ここまで見てきた通り、予備試験は

・競争が激しく
・上位層が厚く
・合格枠が固定されている

という試験です。

この構造の中では、正しい努力を継続できる環境があるかどうかが極めて重要になります。

どれだけ優秀な人でも、一人で勉強し続けるには限界があります。

孤独な学習では、自分の答案のどこが問題なのかに気づきにくく、誤った方向に努力を重ねてしまうリスクがあります。

予備試験の合格者が「環境」を重視するのはそのためです。

実際、多くの合格者は

・答案添削によるフィードバック
・論文演習の場(ゼミや勉強会)
・講師や合格者からの具体的なアドバイス

といった外部の視点を積極的に取り入れています。

自分では気づけない答案の癖や、論理の飛躍を指摘してもらえる環境があるかどうかは、成長スピードに大きな差をもたらします。

また、同じ目標を持つ仲間がいることで、モチベーションを維持しやすくなるという側面もあります。

独学でも合格できないわけではありませんが、合格者の多くが何らかの形で外の目を活用しているという事実は、軽視できません。

環境を整えることも、立派な戦略のひとつです。

▶ 司法試験・予備試験に独学で合格するのはどれくらい難しい?

 

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予備試験は構造を理解した上で戦う試験

この記事では、予備試験の10年データを振り返りながら、合格率が上がらない本当の理由を見てきました。

予備試験は、受験者が増えても合格率がほぼ変わらない、枠で決まる相対評価の試験です。

短答・論文・口述という多段階の選抜を経て、最終的に上位のごく一部だけが合格を手にします。

この構造を理解した上で、合格に近い人の共通点を整理すると、次の4つに行き着きます。

・インプットとアウトプットのバランスを崩さない
・アウトプット対策を早い段階から始めている
・自分の答案を客観的に見直し、修正し続けている
・正しい努力を継続できる環境を整えている

裏を返せば、闇雲に知識を増やすだけ、自分の感覚だけを頼りに勉強を続けるだけでは、上位層には食い込めないということでもあります。

予備試験は確かに難しい試験です。

しかし、試験の構造を正しく理解し、合格に必要なことを積み上げていける人に、チャンスはあります。

決して一握りのエリートだけが合格できる試験ではないのです。

まずは自分の勉強スタイルを振り返ることから始めてみてください。

インプットに偏りすぎていないか、アウトプットの機会は十分に取れているか、自分の答案を客観的に見られているか。

その一つひとつの見直しが、合格への着実な一歩になります。

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