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選択科目を侮るな!

T.Rさん
受験歴: 2回
慶應義塾大学大学院修了
【受講歴】スタンダード論文答練
2024年度

1 選択した理由

 元々は仲良くさせていただいていた周りの先輩方のほとんどが経済法選択だったので情報収集などしやすいと思い、自分も漠然と経済法を選択するのかなと考えていました。

 その後、本格的に選択科目を選ばなければいけなくなったロー入学時にローで選択科目別の説明会があったので一通り説明を聞くことにしました。その際、私の代から在学中受験が始まるということで選択科目の単位取得が司法試験の受験要件となっていたことから単位がとりやすい科目はないかと探しました。

 すると、慶應ローの中で選択科目のうち唯一、知的財産法だけが成績評価の仕方が易しく設定されていたため興味を抱くようになりました。実際、経済法の授業を受けた際、暗記の絶対量は少ないものの条文選択を間違えると大きく正解筋から外れてしまいリスクが大きいこと、また当てはめが憲法チックな部分があり、憲法に苦手意識を抱いていた私にとって経済法の勉強に全然楽しさを見出すことができませんでした。

 一方の知的財産法については、著作権法が漫画や美術、建築物といた身近な問題が題材となることが多く、頭でイメージしやすいことからもとっつきやすさを感じました。また、慶應ローには知的財産法の権威たる小泉先生がいらっしゃるので、そんな小泉先生にすぐに質問できる環境が大変魅力的に感じました。
以上の理由から私は知的財産法を選択しました。

2 メリット・デメリット

(1)著作権法

 知的財産法選択の場合、著作権法と特許法の二題が出題されます。そのため、以下著作権法、特許法それぞれのメリット・デメリットを述べていきたいと思います。

 まず、著作権法についてですが、前述のように著作権法は普段慣れ親しんだ題材が問題として出題されるので、解く際に頭でイメージしやすいというメリットがあります。また、条文数は決して少なくないものの論点となる条文は限定されており、一定のパターン化されていることから暗記の量自体は少ないです。答案を書く際も、知的財産法特有の答案を書く際のルール等はなく、民法の主張反論型の書き方さえ習得していれば、あとは条文の文言に素直に当てはめれば十分です。

 次にデメリットについてですが、個人的に私が特に苦労したのは条文の読み取りです。どういうことかというと、括弧書きの中に括弧書きが含まれていたり、一つ一つの条文の文章量が多いです。また、「何条何項の場合において」といった当該条文を適用するための前提条文が記載されている場合が多いです。逐一その条文がどんな内容だったかを確認する時間はないので、ある程度条文番号とその内容を暗記しなければなりません。しかし、この点についても繰り返し六法で条文を引き続ければ慣れるのであまり危惧しなくても大丈夫です。

(2)特許法

 次に特許法についてです。まず、メリットとしては、著作権法同様、論点となる条文は基本的に限定されており、一定のパターン化がされているので新しく覚える知識量としてはそこまでといえます。司法試験で出題される問題は百選に掲載されている判例を軽く変更したようなものが多いものの、判例自体まだそんなに数がないので網羅的に百選を読み込むことはそこまで大変ではありません。

 一方、デメリットとして特許権は発明に付与されるものであることから理系の分野との親和性が高く、頭の中でイメージがしにくい点が挙げられます。もっとも、特許出願の審査や審判手続きを体系的に覚えてしまえばあとは機械的に処理していけばよいだけですし、問題の内容として理系知識の理解が前提となることはないので安心してください。

3 法科大学院での学習状況

 法科大学院に進学するまで知的財産法には全く触れたことがありませんでした。進学後、既修一年目の春から特許法、著作権法ともに小泉先生の授業を履修しました。その際、教科書として小泉直樹先生著作の「特許法・著作権法第三版」が指定されたのですが、結果的に受験期間を通してこの一冊に知識を一元化していきました。

 授業は司法試験の過去問の解説をメインに進んでいく方式だったのですが、一回目受験の時は授業前に過去問を自力で解いてくるなどせず、授業中、小泉先生の司法試験過去問の解説を聞くだけで満足していました。授業で全ての過去問に触れることはできないので圧倒的に演習不足だったと思います。講義はあくまでも論点の解説にとどまる以上、自分の考えた当てはめを言語化し過不足がないか確認する機会を作るべきだったと思います。

 また、百選読み込みを内容とする授業もあったので今思えば受けておけばよかったと思います。

4 受験対策として

(1)書籍

 使った教材は百選のほか、小泉直樹先生の「特許法・著作権法」「知的財産法演習ノート」及び辰已の「論文対策一冊だけで知的財産法」のみ使用しました。基本的に問題演習は過去問がメインで十分だと思います。採点実感を読むと分かる通り、知的財産法については毎年のように受験生の基本的知識の不足を特に指摘されています。そのおかげで?基礎的部分の知識をかなり丁寧に解説してくれているので絶対に全年度分しっかり読み込むことをお勧めします。

 また、辰已の教材には平成18年から令和3年度の過去問と出題趣旨、採点実感に加えて成績上位者の再現答案が載っているので、どの程度事情を拾うことができれば何点、何位になるのか相場観を知ることができます。

(2)講座

 私は二回目の受験の際には辰已のスタンダード論文答練を受講しました。そのおかげで重要論点を網羅的に復習することができました。もっとも、重要論点を網羅することはもちろん大事ですが、それと同じくらいに大切なのは条文の素読だと思います。採点実感でも言われている通り、そもそも論点に気付けていない人が多いです。

 しかし、未知なる論点だろうと条文に対応させて検討することができれば一定の点数は入るので、どの条文の話をしているのか理解できればよいのです。しかし、特許法も著作権法も括弧書きや適用条件として他の条文の記載があったりと一文が長く、条文の内容が細かいのでその場で理解するのには結構時間がかかります。条文操作で時間をとられないように事前にたくさん素読し、条文の構造をしっかりと理解しておく必要があります。

5 これから受験する人へのアドバイス

 選択科目の選択は思った以上にめちゃくちゃ大切です。必修科目で合格ラインぎりきりの人に関しては、選択科目で安定して点数を稼ぐことができれば必修科目で多少のミスを犯しても補うことができますし、それは精神的な安定にも繋がります。受験の一科目目でもあるので最初の科目でできたと思えるとその後の科目も安定した精神状態で挑むことができます。

 しかし実際のところ、選択科目についてはなんとかなるだろうと手を抜く人が一定数います。一年目の私も調子に乗ってそう考えていたうちの一人で、知的財産法はなんと30点でした。めちゃくちゃ足を引っ張りまくっていました。知財が40点だったら合格していたのでとても悔しい思いをしたのは今でも覚えています。選択科目は他の必修科目と違ってローに入学してから学習を始める人が多く、現時点で勉強時間の差が著しく開いていることはありません。だからこそ、今からめちゃくちゃ力を入れればむしろアドバンテージとなります。

 現在就職活動をしていて弁護士の先生とお話しさせていただく中で、受験の時に選択していない科目を専門としてやっていらっしゃる方も多いです。つまり、今その科目を選択しなかったから将来その分野に積極的に携わることができないということは絶対にありえません。将来の弁護士としての進路を決めてしまうほどに影響を与えてしまうわけではないので試験合格において効率よく得点源にできるかを基準に選択科目を決めるのも一つの選択肢としてぜひ頭の片隅に置いておいて頂けたら幸いです。

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