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選択科目だからと侮らない。一冊の書籍と百選だけで戦略的勉強

M.Hさん
受験歴: 1回
慶應義塾大学法学部
慶應義塾大学法科大学院【既修】
2023年入学(5年一貫型入試) 2025年卒業見込み
【受講歴】予備試験スタンダード論文答練 選択科目特訓講義
2024年度

1 労働法を選んだ理由

(1)理由とおすすめな方

 選択科目については、予備試験で短答に合格した後から勉強を始めました。当時は予備試験の論文で初めて選択科目が導入された年で、短答に受かるかすら自信がなかったので、短答を受けるまでは全く触れていませんでした。ただ、元々労働法が一番受験者が多い科目で、書籍も充実していると聞いたことから私もそれでいいと考えていました。また、インプットをしていて民法が一番好きで得意科目だと思っていたので、その特別法である労働法が自分に合いそうとも考えました。実際に民法と重なる部分も多くてやりやすかったので、民法が好きな人には特におすすめです。

 また、ネガティブな意見としては、受験生が多いのでその中で上位に行くには大変(ライバルが多い)というものがあります。個人的にはどの科目を選ぼうが、その中で上位をとるには結局頑張らなければいけないですし、自分が頑張ればいいだけなので気になりませんでした。法科大学院ではそもそも労働法受験者が目立って多いこともなかったですし、ちゃんと勉強していればテストもいい点数を取れたので大丈夫でした。

(2)メリット

 実際司法試験を受け終わってみると、労働法を受けている友人が多いので質問しやすいですし、就活でのインターンでも労働法が企業法務でもよく使われる分野で将来的にもかなり役立つと知ったので、これで良かったと感じています。

2 インプットの所要時間

(1)予備試験の短答受験後から論文試験まで

 インプットについては予備試験の短答受験後に論文試験までの2ヶ月弱で全てやらなければいけなかったので、かなり大変でした。とりあえず範囲を網羅しなければいけないと思ったので、当時の予備校の講座を倍速視聴し、一つのテキストの中で重要な論点をランク付けしました。論点がはっきりしていて内容は分かりやすかったので、判例百選を使って何が論点で何を書かなければいけないのかを整理しました。論証暗記の時間はなかったので、論証の中でもキーワードを拾ってそれだけ暗記しました。予備試験では選択科目が一問しか出ないので、個別法が出ると思って最終的にそっちだけに絞りました。本番は雇い止めが出ましたが、結局よくわからなくてFをとってしまいました。

(2)予備試験論文試験後

 その後は落ち着いて勉強できるようになったので、基本書や演習本も取り入れてさらに深いインプットを行いました。本試験だと個別法と組合法それぞれ一問ずつ出ますが、過去問を見ていると知らない論点が出てくることはあまりなく、どれも過去の裁判例をアレンジしたものが多かったので、判例百選を酷使してインプットしていました。労働法では判例をなぞるだけでなくてそれに対する反対説を論文試験で使うこともあるので、百選の解説部分もかなり役立ちました。

3 論文試験対策に最も役立った書籍や講座

(1)「1冊だけで労働法」

 論文試験対策では辰已の「一冊だけで労働法」の書籍をたくさん使いました。法科大学院では労働法を受けていた友人のほとんどが持っていたと思います。これまでの全ての過去問・出題趣旨・採点実感・再現答案が載っていて、本当に一冊だけで司法試験の対策ができる素晴らしい本でした。本を使ってどの年に何が出ていたかをすぐまとめることができましたし、どれくらいのレベルの答案を書けばどれくらいの点数が取れるかを詳しく分析することができました。偏見かもしれませんが、不合格者は選択科目の点数があまりよくない(40点台以下)と考えていたので、選択科目で点数が低くならないようにしたいと強く思っていたので、採点実感を見て当時の受験生のレベルを把握することにも役立てました。

(2)判例百選

 また、判例百選も何回も周回して読み込みました。労働法は特に判例法理が重要な科目ですので、百選は全受験生に必須の書籍だと思います。百選に載っている判例は全て知っていなければいけない重要なものなので、全て判旨を読み込んで、何が考慮要素なのかや具体的な事実がどうだったかも細かく見ました。分かりやすいように、判旨の中で論証となる部分には同じ色のマーカーで線を引き、必要なキーワードを抜き出して余白のところに書いていました。解説の部分も、論文試験で使えるような学説や具体的な事実のどの部分が重要だったのか解説されているので、使えるところには線を引いていました。

 ちなみに、労働法はいくつか有名な基本書があると思いますが、私は基本書を使っていませんでした。上の二冊で十分合格に必要なインプットとアウトプットができると思います。

4 選択科目を、いつどのぐらいの時間をかけたか

(1)時間と労力の配分

 選択科目は基本の7科目に比べて疎かになりがちですが、私は法科大学院での授業やテストがあったので割と他の科目と等しいレベルで時間や労力をかけてやれたと思いました。労働法の授業自体はあまりちゃんと聞いていなかったですが、期末試験だけでなく中間試験もあったので年に4回テストがあることでその前にちゃんと勉強する時間をとることができました。私の法科大学院では労働法の試験の過去問を見ることができ、その出題趣旨や採点実感を見ることもできたので、試験毎に答案の書き方を学ぶこともできました。

(2)8科目の中での戦略

 法科大学院の授業は試験直前の6月までありましたが、その期末で思ったより低い点数を取ってしまったので、焦って一回総復習をしっかりやったこともありました。それ以外は他の科目と平等にやっていました。基本的には選択科目→憲法→行政法→民法…と実際に試験を受けるのと同じ順番でやっていました。選択科目だからといって疎かにする理由もないですし、サブとは思わずにメインの一つ、8科目なんだと思ってやらないと甘くみて点数が低くなるので気をつけてほしいです。

 私は参加していませんでしたが、法科大学院の同級生は労働法受験者同士の労働法ゼミを作って過去問の起案をしていました。通常のゼミではゼミ生の選択科目がバラバラでやれないという人もいると思いますが、特化したゼミを作ることで選択科目が疎かにならずしっかり過去問周回することができるようです。

5 公法系、民事系、刑事系との比率はどれぐらいと割り切っていたか

 科目の比率ですが、私は比率などを決めずに平等に勉強していたと思います。あまり偏りを作りたくなかったですし、元々私自信これが得意これが苦手などなくバランスの良い成績だったので何かに比重を置く必要性もなかったからです。受かることを考えると全ての科目で平均〇〇点以上とかが自分の中でなんとなく見えているので、最低でも各科目これくらいやると想定するのが大事だと思います。なので、突出する科目があるのはいいですが、逆に疎かになる科目は作るべきではないです。全ての科目でAランクをとることを目標にしてほしいです。

6 労働法で高得点をとる方法

(1)判例の判断基準の活用

 私は結果として選択科目の点数が57.44で上位21%でしたが、他の科目でのAランクが大体上位25%と考えると選択科目におけるAランクレベルの点数を取れて良かったです。このような点数を取れた理由を自分なりに分析すると、判例の判断基準に対して問題の具体的な事実を丁寧に抜き出して、反対意見を潰しながら説得力のある評価を加えたことだと思っています。大体の司法試験の事実では結果が必ず一つに決まるようなものは出てきません。結果がどっちかは自分で決めることができることがあるので、自分の中で説得しやすい結論を決めてそれに向かって屁理屈をこねるのが当てはめです。そして、その中で決して都合の良いことだけ抜き出しては良い点数は取れないです。自分と逆の結論の理由づけになることでも目を背けずにしっかり抜き出し、「確かに〜かもしれない。しかし、…」という風に都合の悪い事実を全て潰してください。

(2)あてはめ「具体的事実から『空気を読む』」

 また、この当てはめありきの傾向にある科目なので、判断基準や論点がわからないというのは論外になりやすいので気をつけてください。高得点を取ることから逆算するに、判断基準は過去の裁判例・判例を何回も勉強して当然に覚えているべきですし、論点は問題文にある大量の具体的事実から空気を読むことで見えてくるはずです。この空気を読むというのは、例えば問題文で「組合員が就業中に『給料上げろ』と書かれたハチマキをしていた」という事実が出てきたら、「ああこれは組合活動だな」「職務専念義務が問題になるのかな」と論点を逆算するということです。そうすると、普段から判断基準だけを知るだけでは足りず、裁判例・判例での具体的な事実(組合員が就業中「要求貫徹」と書かれたリボンを着用していたこと(最高裁判所昭和57年4月13日第三小法廷判決)など)がどうだったかをしっかり把握するような勉強方法が必要ということになります。

(3)地に足がついた勉強

 受験生の皆さんはただ時間と労力をかけた勉強を闇雲に行うのではなく、
①科目の特性を踏まえて、何を覚えなければいけないのか
②どうしたら高得点が取れるのか
をしっかり見据えた「地に足がついた勉強」を戦略的に行なってほしいです。

 また、労働法は問題文から出題趣旨が分かりやすい傾向にあると考えています。そのため、論点が何かという点で迷うことはなく、時間を使うならば具体的事実の抽出と分析だと思います。選択科目は他の科目よりも時間が長く、2問で3時間もあるので当てはめを厚く書くことができてそれで差がつきます。そのため、答案用紙8枚目いっぱい書くぞという気持ちで、筆力で他の受験生を薙ぎ払う気持ちを持っていてほしいです。

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