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コスパのいい労働法勉強法

K.Tさん
受験歴: 1回
慶應義塾大学
慶應義塾大学大学院法務研究科【既修】
【受講歴】全国公開模試
2024年度

1 法曹への憧れと選択科目

 中学時代からドラマや先輩の話を聞く中で漠然と憧れていた法曹の道でしたが、まさか本格的に自分が司法試験に取り組むとは考えていませんでした。

 そんな中、自分を決心させたのは入学とともにコロナ禍の緊急事態宣言が発令されてしまい、外出が制限される中、自分だけがどこか取り残されているような感覚に襲われたためでした。

 そこからはまずは予備試験の合格を目指して、法律基本科目のインプットに努めました。

 まずは、基本7科目のインプットを始めたのですが、途中から選択科目が導入されてからは、選択科目の勉強を始めました。

(1)どの科目にするか

 まず、選択科目を何にするかで大いに迷いました。自分は選択科目を一度決めたら、その科目を変更するつもりがなかったため、試験対策と実務での汎用性の2点から本当にその科目で良いのかを考えました。そこで、試験対策に関しては多くの予備校から勉強の素材が出版されているかどうか、試験問題が自分にとって取り組みやすい形式かどうかという点から考えました。この時、倒産法と労働法は予備試験に選択科目が導入される以前から司法試験の選択科目として人気で、多くの受験生が取り組んでいたため、これらについて出版されている対策本は多かったのを記憶しています。

(2)試験対策の観点

 次に、試験対策に関しては、先輩にその科目の特性を伺いながら検討したのですが、倒産法は民法の債権総論や民事訴訟法に近いとの話を伺いました。自分は当時、債権総論や民事訴訟法についてあまり得意な意識を持っていなかったため、その点で倒産法を選択することへの抵抗がありました。これに対し、労働法は論点が見えやすいとの話を伺っていたため、この点から労働法に惹かれたのを覚えています。

 しかし、覚える項目がとても多いのが労働法であり、そこはネックとなっていました。また、経済法は覚える項目が少なく、当てはめ勝負に持ち込みやすいとの話を伺い、試験対策に関しては最も魅力的でした。

(3)実務での汎用性の観点

 次に実務での汎用性についてなのですが、どのような弁護士事務所でも労働事件や倒産事件は取り扱っていることは多く、労働法と倒産法について魅力を感じました。これに対し、経済法は大規模なM&A以外ではあまり使用する機会がないとの話を伺い、この点では経済法はウィークポイントと言えました。

 このように、自分の判断基準の中で、候補に上がったのは倒産法、労働法、経済法の三科目であり、この中で最も自分の中でマイナスが少なかった労働法を選択科目に選びました。

2 具体的な取り組み

(1)「1冊だけで労働法」の特徴

 こうして選んだ労働法ですが、取り組み始めるとその分量の多さに気圧されてしまいました。そこで、科目の中での重要度のメリハリをつけるべく、「1冊だけで労働法」を購入しました。

 この本は前半部分に趣旨規範ハンドブックに対応する論証集が掲載されていて、後半部分にはぶんせき本に対応する司法試験の過去問とその模範答案が掲載されています。そして、論証集には、その論点が出題された年度が掲載されているため、いつその論点が出題されているのか・どの論点が多く出題されているのかが一目でわかるため、メリハリ付けに非常に役立ったのを覚えています。

 また、労働法は細かい論点が多い科目なのですがその網羅性も素晴らしく、マイナー論点についても幅広く掲載されているため、これ一冊を完璧にしておけば大丈夫という安心感がありました。そのため、この本の論証集を使用してまずは繰り返し出題されている論点から、それらが身につくようになったらマイナー論点を、という順番で学習しました。

(2)本試験で実感した成果

 本試験でもこのように網羅的に論点を潰したことの成果が発揮されたように感じます。令和6年本試験は、全体的に過去問からの出題が多かった年度のように感じました。

 第1問では、管理監督者の論点や退職金不支給減額規定についての論点などが問われており、過去の出題もあった分野であったため、本書で書き方を学んだ成果をフルに発揮できたように感じます。

 第2問では、不当労働行為(労働組合法7条)について正面から問われていたところ、不当労働行為類型である団交拒否や、支配介入についての処理手順についても、過去に繰り返し出題されており、本書の模範答案でも繰り返し読んでいたところだったため、本試験でも落ち着いて処理することができました。周囲に差をつけることもできたと思います。

 このように、労働法は過去問からの焼き回しも比較的多い科目であるため、本書を使用しての過去問対策は本試験で合格答案を書くために非常に有用であると感じています。

 また、労働法は選択科目であったこともあり、自分の中では対策が一番手薄で、論点の位置付けの認識が不十分なところが多かったのですが、本書に掲載されている模範答案が詳細であるため、これを繰り返し読み込むことで論点間の繋がりや、論点展開の際のメリハリについて理解することが出来たと思っています。

3 成功体験を踏まえて

 自分の体験を踏まえて、やって良かったこと、やれば良かったことについて書きたいと思います。

(1)やってよかったこと

 まず、やって良かったのは過去問から中心に労働法に取り組んだことです。先述したように労働法は非常に分量が多い科目であるため、どこが問われているのかという意識をしっかり持って取り組むことが他の科目に比べて大事であると感じています。

 また、繰り返しの出題が非常に多い科目であるため(令和6年本試験の第二問で問われた不当労働行為は本当に繰り返し出題されています。)、過去問検討のコストパフォーマンスは極めて高いと感じております。そのため、労働法については平成18年から令和6年までの全年度について検討して欲しいです。

(2)やればよかったこと

 次に、やれば良かったことについて書きたいです。それは、判例百選を読み込んで欲しいということです。判例百選の有用性は他の科目も共通なのですが、その中でも労働法は判例の事案をそのまま出題してくる場合も多々あるため、判例百選のコストパフォーマンスも他の科目に比して高いです。もっとも、量が多いのはネックでもあるため、司法試験の直前期に溜め込むのではなく、計画的に読み込んで欲しいと思います。

 自分は、ロースクールの授業で判例百選に掲載されている判例を毎週いくつか読まなければならなかったため、大方の判例は潰すことができていたのですが、最終的に全ての判例を網羅することまではできなかったため、本試験の時の不安感に繋がってしまいました。

4 本試験の際の注意点

 ここからは本試験の際の注意点について書きたいと思います。

 選択科目は初日の1限に実施されるため、多くの受験生が最も緊張して臨むのではないかと思います。そのため、予想外のアクシデントも多々起きるかもしれません。けれども、選択科目は、他の科目に比べて時間に比較的余裕もありますし、緊張しているのは他の受験生も同じです。そのため、落ち着いて取り組んで欲しいと思います。

 また、最も注意して欲しいのが、解答用紙の取り違えです。

 選択科目は第1問と第2問に分かれており、それに合わせて解答用紙も2つに分かれているのですが、この解答用紙を取り違えたまま解答し、提出してしまうと無効答案となってしまい、選択科目の足切りにより不合格になってしまいます。もちろんこの点については、試験前にアナウンスがあるのですが、本試験初日の1発目に行われる選択科目の試験において、何があるかは分かりません。自分は、結局取り違えていなかったのですが、解答用紙をよく確認していなかったため、本試験が終わった7月から合格発表の11月まで不安な時間を過ごすことになりました。そのため、自分にはあり得ないと思われるかもしれませんが、答案用紙の確認だけは必ず行なって欲しいと思います。

5 エール

 最後になりますが、司法試験は決して合格できない試験ではありません。地道な努力をコツコツと積み重ねられる人なら絶対に合格できる試験です。受験生のみなさん、最後まで粘り強く頑張ってください。応援しています。

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