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安定して高得点を狙える科目「国際私法」の勉強法

Y.Aさん
受験歴: 1回
慶應義塾大学法学部法律学科
慶應義塾大学法科大学院【既修】2022年入学
【受講歴】書籍利用 他
選択科目

1 選択の理由

 基本科目の対策が全然終わってなく、選択科目にかけられる時間が司法試験直前の2ヶ月ほどしかなかったため、コスパ良く、かつ楽しく取り組める科目を探しました。国際私法は暗記する量が少ないということを聞き、自分の意見をたくさん書けるだろうと感じたこと、準拠法の指定という基本科目にはない視点から問題を考えるのがリフレッシュになると感じたことから、国際私法を選択しました。

2 国際私法のメリットとデメリット

(1) メリット

 第1に、暗記量が少ないことが挙げられます。具体的には使用する条文の趣旨といくつかの定義を覚えれば、基本的にあらゆる問題に対応することができます。そして、仮に暗記していなくても条文を見ると「大体こういう趣旨なんだろうな」と予測することも可能です。そのため、覚えていなければできないという恐怖は全くなく、ストレスがないといえます。

 第2に、問題の内容がわかりやすいことが挙げられます。大きく分けると国際私法は家族法分野、財産法(契約、不法行為などお)分野、裁判管轄に分類できますが、いずれも基本科目で触れたことのある範囲かと思います。そのため、未学習の状態であっても問題の内容自体は理解できるため、取り組みやすい科目といえます。

(2) デメリット

 最高裁判例が少ないことが若干大変かもしれません。国際私法は裁判例が多いのですが、裁判例によって異なる見解を採用していることが多々あり、確立された考え方が少ないです。そのため、学説の対立を押さえ、必要であれば問題によってどちらの学説を採用するかを考える必要があります。

 しかし、それ以外のデメリットは特にないといえます。労働法などに比較して参考書・問題集が少ないと言われることもありますが、参考書に関しては、国際私法は暗記に頼る科目ではないので1・2冊もあれば十分です。また、問題集に関しては過去問での対策で足りるため、デメリットとはいえないでしょう。

3 具体的勉強方法と使用書籍等

(1)

 私が国際私法の受験対策として使用した市販の書籍は、『リーガルクエスト』(第3版、有斐閣)、『司法試験論文対策・1冊だけで国際私法』(辰已法律研究所)、判例百選のみでした。リーガルクエストは基本的な知識を身につけるために使用し、『司法試験論文対策・1冊だけで国際私法』は趣旨・規範の確認、答案の書き方を学ぶために使用していました。判例百選は、判例を読むというよりは、解説に書かれている学説の対立を学ぶためによく開いていました。

(2)

 国際私法は、法性決定、準拠法、連結点など概念は理解してもどのように答案に反映するかのイメージが参考書のみでは付きにくかったので、過去問と『司法試験論文対策・1冊だけで国際私法』に記載された答案例を見ながら知識を蓄えました。国際私法の過去問は小問が細かく設定されており、小問1個ごとに論点が2、3個となっているため、参考書で勉強した範囲の小問を解いて感覚を掴むようにしていました。一通り網羅的に勉強した後は、過去問を通しで解いて、都度採点実感を読み込みました。その際は、点が振られていなそうな部分に関しても少し大袈裟に書くなど、なるべく丁寧に答案を仕上げ、その後に採点実感を読んで不要な部分と必要な部分を分析するといった方法を採っていました。大袈裟に書くことでしっかり理解できているかの確認をしたかったからです。

4 成功した勉強方法

 上述した通り、起案する際に、問題提起・基準の定立・当てはめのどの部分についても丁寧すぎるくらいに答案に示す練習をすることが非常に有効的でした。選択科目は3時間あり、問題によっては時間が余るという印象を受けます。しかし、本番で時間が余った時にも書ける内容があれば小さな点であっても稼ぐことができます。現に、国際私法の上位答案を見ても非常に丁寧に書かれているため、国際私法に関してはこれがセオリーであると考えられます。そのため、時間がなければ省略すれば良いだけですので、どの範囲であっても、時間ギリギリまで書き続けられるくらい日頃の練習で丁寧に書くことを心懸けることは非常に大切であったといえます。

 また、同じく国際私法を選択していた友人と答案を互いに見せ合い、講評をしていましたが、この点も良かったと思っています。国際私法は、選択者が比較的少ないため、A判定の再現答案の数が非常に少ないなと感じており、数少ない優秀答案も案外書き足りない部分があったりしています。そのため、友人と意見を交換し、「この点について触れた方がいいんじゃないか。」などのアドバイスをし合うことは、非常に有意義であったと思っています。

5 自己の反省を踏まえたアドバイス

 メインとなる通則法は43条しかないのに、その理解不足が本試験で出てしまいました。本年度の司法試験で、単純な条文当てはめ問題が一部問われたのですが、いざ答案を作成している際に条文の正しい使い方に迷い、書いた答案を何度も修正することになってしまいました。これは、条文に答えが書いてあると油断していた私の反省すべきポイントだと思います。そのため、受験生の皆様には、たったの43条ですので正しく理解をし、適切に使えるようにして欲しいなと思います。

 そして、国際私法の問題では、設問において外国法の規定が参照されていることがありますが、採用する見解によっては外国法の規定を答案で一切使わないことも考えられます。よく、行政法などでは事実の摘示が大事だ、など問題文中の情報をくまなく使うような姿勢を持っていらっしゃる方もいるかと思いますが、国際私法は全然そんなことはありません。私は本年度の試験で、参照されていた規定を一切使うことはありませんでしたが、十分すぎるほどの評価を得ることができています。ですので、受験生の皆様には、自分が考えた見解・評価をそのまま論理的に答案に落とし込むことを意識して臨んでいただきたいです。

 私は、国際私法を選んだ時点で他の受験者より有利だと思っています。ですので、国際私法で及第点を狙うのではなく、そのさらに上を目指して頑張ってください。

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