マイナーだが、実務では確実にニーズがある「租税法」
1 受験した選択科目を選択した理由
私の父は税理士であり、税理士法人を営んでいます。そのため、将来的に、その税理士法人を継ぐにあたって、税理士と弁護士のダブルライセンスでいこうという将来設計を立てていました。そこで、租税法を選択しました。なお、弁護士の資格を有していれば、税理士登録に際して、税理士試験をパスして、無条件で、税理士登録ができます。
2 受験した選択科目のメリットとデメリット
選択科目としてのメリットは、試験に頻出の論点自体は、意外と限られているということです。デメリットは、やはり、マイナーな選択科目であるため、他の受験生仲間との情報共有や自主ゼミなど行うことが困難であることです。
3 法科大学院での選択科目学習状況
私が在籍していた中央大学の法科大学院では、租税法担当の先生は、非常にわかりやすく、かつ、面白い授業をしてくださいました。また、実務家の税理士先生が担当なさっていた選択授業もありました。そのため、法科大学院での学習状況において、特に困ることはありませんでした。
4 受験対策として
(1) 私がやって成功した選択科目攻略法
やはり、過去問や答練の問題演習を中心とし、復習として、適宜基本書等に立ち返り、とにかく問題演習量を増やして慣れていくということにつきます。これは、選択科目であれ、また、租税法であれ、試験勉強の王道だと思います。選択科目の勉強に時間を割く余裕がない方が多数派だと思いますが、だからこそ、余計なことに時間を割いている暇はないのです。
また、租税法ならではの特徴として、条文がとても読みづらいことがあげられます。かっこ書の中にさらにかっこ書があるなど、真面目に読もうとするととても読みづらい文章だらけです。にもかかわらず、租税法律主義の関係で、条文を出発点とする論点が多数あります。そのため、条文になれるということが、他の選択科目以上に、重要視されます。対策として、まず最初は、かっこ書を飛ばして読むということを習慣付けていました。
(2) 私が使用した本
・一冊だけでシリーズ
先ほど、多くの受験生は選択科目に時間を割く余裕がない旨を申し上げましたが、論証集から再現答案まで、全て一冊で完結している、この一冊だけでシリーズは、そんな多くの受験生のニーズに応える、何よりの教材です。
(3) 辰已講座の利用方法とその成果
・選択科目集中答練 全国公開模試
問題演習量を増やすためには、やはり、答練、そして模試を受講するしかないです。また、辰巳の答練は、試験に頻出の論点や、多くの受験生が手薄になりがちな論点について出題されます。答練をこなすことを習慣付けることで、自ずと、選択科目の点数を安定させられます。
5自己の反省を踏まえ、これから受験する人へのアドバイス
予備試験の選択科目については、私はそれを全く経験せずに司法試験に受かったため、申し訳ございませんが特に有効なアドバイスはできません。そこで、選択科目全般に係るアドバイスを提案させていただきます。選択科目で、いかなる科目を選択すべきかについては、単に試験勉強の負担の軽さで選択するか、受験生が多いメジャーな科目を選択するか、それとも、興味のある科目を選択するか等、人によって諸説あることかと存じます。私の方から言わせていただきますと、興味のある科目という基準で選択することを推奨します。つまり、将来の法曹像を具体的にイメージし、いかなる選択科目が、その将来像の実現のためには適切であるかという基準、すなわち、将来設計によって選択するということです。なぜなら、たたでさえ7科目と短答式の勉強に気を取られがちなところ、さらに選択科目の勉強となると、どうしても選択科目が後回しになりがちです。であれば、そういった将来設計が具体的であれば、選択科目勉強のモチベーションが維持しやすいからです。
私のように、将来は弁護士と税理士とのダブルライセンスを想定しているのであれば、租税法を選択すべきでしょう。あるいは、弁護士と社労士とのダブルライセンスを想定するのであれば、労働法を選択すべきでしょう(社労士についても、税理士と同様に、弁護士資格を有していれば、社労士試験をパスして、無条件で社労士登録できます。)。特にダブルライセンスには拘らずとも、税務訴訟について専門に扱いたければ租税法、ハラスメント等の労務についての相談や紛争ごとをメインに扱いたいのであれば、労働法を選択すべきです。
なお、ハラスメントについての相談は、最もメジャーな相談内容の一つです。故にこそ、労働法が「潰しが効く」選択科目だと言われる所以であり、多くの受験生が、労働法を選択するのです。そのため、特に将来の法曹像のイメージが湧いてこなかったり、選択科目に迷うようであれば、労働法を選択することをおすすめします。租税法を選択しておいて何言ってんだという話ですが(笑)。
話を戻しますと、将来は検察官を志望しているのであれば、租税法の他にも、経済法の選択も視野に入ってくるでしょう。なぜなら、検察官になるとなれば、東京地検特捜部への出世というエリート出世街道を視野に入れているはずです。特捜部が扱う事件となれば、大規模な脱税事件や、大企業による独禁法違反事件なども含まれるからです。他にも、大企業の法務部に入って企業内弁護士(いわゆるインハウスローヤー)になりたいのであれば、所属企業の知財案件を扱うことになるでしょう。となれば、知財法を選択すべきとなります。と、ここまで数多くの想定され得る将来像を挙げさせていただきましたが、ご自身が設定する将来設計によって、如何様にも選択肢が想定されるはずです。
実務社会においては、労務、税務、倒産の三文野が、メジャーや分野として挙げられます。国民全員に納税の義務が課せられており、何らかの収入が発生すれば嫌でも税金を考えなければならないことに鑑みれば、ご理解いただけるはずです。例えば、ある不動産についての所有権を争うために、売買契約に基づく所有権移転を主張し、予備的に、時効取得による所有権を主張したとします。どちらの主張で勝ったとしても、所有権が得られるという結果は同じです。しかし、前者で勝訴した場合は譲渡所得、後者で勝訴した場合には一時所得として扱われます。そして、譲渡所得で申告した方が、条件によっては、より多額の節税が見込めます。考えなしにどっちで勝ってもいいとなれば、税務上の不利益を、知らぬ間に依頼人に課してしまうこともあるのです。このように、税務が無関係な依頼人や顧客など、いないといっても過言ではないです。にもかかわらず受験上ではマイナー科目であるという齟齬が生じていますが、少なくとも、実務社会に出た後は、租税法についての知識や考え方が身に付いているということは、プラスにしか働きません。租税法選択者の少しでも励みになることを祈っております。頑張ってください!