優先順位を考える
1 司法試験の受験を決意した経緯
ドラマを見て弁護士や検察官という職業があることを知り、どのような仕事をしているのか調べてみました。そこで紛争の解決により人を助けることができるという弁護士に魅力を感じました。また、その後大学に進学し弁護士の方と実際にお話しする機会があり、そこで具体的な業務を例に弁護士は色々なことをすることができるとうかがいました。その時点でやりたいことがあるわけではなかったのですが、それほど業務の幅が広いのであれば弁護士になってからやりたいことも見つかるだろうと考え、司法試験の受験を決意しました。
2 予備試験合格までの学習状況
大学入学後しばらくは漠然と司法試験の受験を考えていた程度であったため予備校には入らず、大学の授業を受けたり基本書を読むくらいしか勉強といえることはしていませんでした。
その後経済的理由からロースクール進学が不可能ではないもののかなりの負担となることから学部一年後半に予備校のインプット講座を受講しました。当然ながら同期の受験生に比べ勉強の進度が遅かったためなるべく早く追いつくようにと時間をかけてインプットを行いました。その甲斐あってかアウトプット講座が開始する頃には同期と同じところまで勉強を進めることができていました。この頃は専業受験生であったこともあってか日に8時間前後は勉強できていたと思います。もっともその時間の多くは短答過去問に費やしており、論文は旧司の過去問を使ったアウトプット講座を一通り受け終えたのみでした。論文は典型論点を書くことが精いっぱいでした。
学部三年次に初めて予備試験を受け、短答式試験に合格しました。そこで急いで論文の過去問解説を買い、論文式試験の日まで勉強したのですが、うまくコツをつかむことができないまま本番を迎え、不合格となりました。
来年の予備試験合格という目標に向けて、論文過去問のほかに何をすべきか迷いましたが、短答式試験合格後にインターネットで見かけた辰已の奨学生試験を受けていたことから予備試験スタンダード論文答練(予備スタ論)で他人からの評価を受けようと考え受講しました。そこで添削という形での他人からの評価をフィードバックし、自分の答案の問題点を改善していきました。それに加えて解説講義や参考答案、採点表などを使い、不合格時の答案の「何がいけなかったのか」を徹底的に洗い出しました。
短答式試験については、前年と同様の対策で論文に少し時間を割きつつ合格することができました。そして前の年には受けなかった直前答練(論文予想答練)や直前模試(論文公開模試)を受けることで勉強ペースを保ちました。過去問、答練で演習量を積んでいたとはいえ完璧な状態で本番に臨んだとはいえず、実際に論文式試験で何を書けばいいかわからなくなってしまった瞬間もありました。しかし一年かけて弱点を補強した甲斐あってか他の受験者よりもミスが少なく済んだようで、なんとか合格することができました。
口述に関しては同じく論文に合格した同期や前年に予備試験に合格した先輩方を頼り、本番のように面接形式でアウトプットをする機会をなるべく多く設けました。それが功を奏したのか、口述式試験も無事に合格することができました。
3 予備試験合格後の勉強
同じ年に司法試験を受けるロースクール生に比べて選択科目、司法試験過去問、改正民法の勉強に使うことができる時間が少なく不利だと考えたため、これらにかなり時間を割きました。就活等も重なり勉強時間の確保が難しく感じましたが、予備試験の勉強を通じて方針は間違っていないと確信していたため黙々と準備を進めました。コロナでの試験延期により直前期が延びたこともあり前述の懸念はある程度解消した上で本番に臨むことができました。四月以降は外出もままならない状態であったため、ウェブ上での直前答練や直前模試を受講して勉強のペースを崩さないようにしていました。
4 受験対策(辰已講座の利用)
スタ論と直前答練、直前模試(予備試験・司法試験それぞれについて)を利用しました。過去問以外に答案を書く機会を設けることができたことは問題点の改善に大きく寄与しました。答案作成中に疑問に思ったことをメモして後で確認したり、解説に付されている配点表と自分の答案を突き合わせてどうすれば点をとれたのか確認したりすることで、答案を書いて添削を受けるだけで終わらせないようにしていました。答練の題材についても裁判例や最新の判例を題材にした問題などが扱われており、知識のアップデートに有用でした。解説講義では問題文の読み方や時間配分など、法律の論点に限らない答案作成のポイントを学ぶことができました。
また予備口述の際には口述模試を受験しました。オリジナル問題で民事・刑事の実務知識の定着度を面接形式で確認することができました。また辰已の口述模試は二人一組で行うため、もう一人が模試を受ける様子も見ることができ、参考にすることができました。
5 私がとっていた勉強方法
試験合格という目標を達成するために意識していたことは優先順位でした。勉強開始当初は周囲より比較的遅く本格的な受験勉強を始めたということもあり、細かい知識よりも典型論点を完璧に書けるようにという方向で学習を進めていきました。この時期は短答が近かったこともあり、論文の演習よりも短答の過去問を一問でも多く解くことに重点を置きました。
一度目の予備論文に落ちた後は、評価の低かった科目を答練などを利用して重点的に補強したり、より細かい論点を演習書などにより身に着けるといったことをしていました。また前年の反省を生かし、二度目の予備短答では論文の勉強に充てる時間も相当程度確保し、勘が鈍らないようにしていました。論文試験後には口述対策として、また論文試験が不合格であったとしても翌年役立つということで要件事実や構成要件などの実務基礎科目の勉強を合格発表まで続けていました。またこの期間に少しずつ選択科目のインプットを始めました。
口述前は口述の勉強に専念し、予備試験合格後は選択科目・司法試験過去問・改正民法の勉強を優先して進めていきました。それらを一通りこなした後は、司法試験の傾向に合わせた学説のまとめや百選や重判を用いて細かい判例の理解を深めたりしてコロナで延長された直前期を過ごしました。
6 私が使用した本(辰已の書籍)
① 実務基礎ハンドブック
民事・刑事共に予備論文・口述の際に使用しました。
② 短答過去問パーフェクト
過去問形式で短答の勉強をするには最適の教材でした。とくに民法改正に対応した短答教材は少なかったため重宝しました。
7 これから受験する人へのアドバイス
司法試験・予備試験は合格者数がある程度決まっているため、受験者の多数が書いていることを落とさなければ十分合格可能性があります。条文、典型論点や有名な判例などの基本的知識を優先的におさえることがそれに近づく近道ではないでしょうか。応用論点などはそれらが身についた後で時間的余裕があれば学習することで、より合格に近づく要素であると思います。
答案の書き方など、あまり言語化されることがないものの合格に必要な能力は、合格者の再現や合格体験記、答練の添削から学び取ることができます。自分の答案の改善点は自覚することがなかなか難しいので、こうした方法に頼るのが効率的です。
基本事項の反復は色々なものに手を伸ばすより辛く、答案の書き方などの上達が見えにくいものを続けるには根気が必要です。司法試験・予備試験の受験は長期戦になることが多いので、うまく自分のモチベーションをコントロールしてこうしたストレスと付き合えるとよいと思います。
辰已法律研究所 受講歴
【予備試験対策/2018年】
・予備試験スタンダード論文答練
・論文予想答練
・論文公開模試
【司法試験対策/2019年】
・スタンダード論文答練
・司法試験全国公開模試
・直前答練