経済法は過去問分析を徹底すれば乗り切れる
1 経済法の学修
私が経済法の選択を決めた理由は、予備試験に合格するルートを進むために最も学習効率が良いとされる経済法を、予備試験の論文式試験直後から独学で学修開始していたこと、暗記量が多い労働法や射程論を含めた判例理論・条文操作が多い倒産法などと比べて扱う範囲が少ないため相対的に記憶しなければならない事項の数も少ないこと、経済法は刑法の答案の流れに倣う所があるため答案の型をイメージしやすかったことが主な理由です。
経済法のデメリットは、答案作成において条文選択する際の勘を習得するまでにある程度の演習量を必要とすることです。また、自分の中で答案を作成する際の枠組みを確立するまでに、一定程度の時間と演習量を必要とします。しかし、これは、いずれの選択科目についてもいえることでしょう。経済法では、同じ事実に対して複数の条文を適用することが可能となる場合が多く、その中から、出題者が最も解答することを意図している条文の当たりを付けることができるようになるまでが少し大変です。ただ、このデメリットは、後述する問題演習を通じて解消することが十分可能であると考えている所です。
経済法の最大のメリットは、暗記すべき事項が他の選択科目に比して圧倒的に少ないことです。基本的な定義や解釈を覚えてしまえば、後は条文の文言解釈に従って淡々と事情を処理していけば足りるからです。また、経済法の場合は、問題文量が少し長くなりがちですが、演習量を一定以上こなしていけば、問題文の当該段落の事情がどの要件解釈との関係で用いられるべき事情であるのかを容易に見分けることができるようになります。また、令和3年度司法試験経済法では、過去問と類似した問題が出題されました。それまでの司法試験でも、基本的には大道の論点が出題されるにとどまり、細かすぎる論点が出題された例はほとんどないでしょう。そのため、経済法の司法試験対策としては、司法試験過去問の演習と自己分析を徹底させることで必要かつ十分であると考えています。
2 辰已法律研究所の活用法
経済法は、辰已法律研究所の「一冊だけで経済法」から学習をスタートさせました。暗記すべき優先順位が高いものや頭の中できちんと整理しておくべき事項について、類型ごと・構成要件ごとにまとまって記載がなされており、条文間の違いについても表でまとめられているため、初学で条文間の相違や暗記の優先順位の判別がつかなかった頃の学習ツールとして、非常に有用でした。また、「一冊だけで経済法」には、趣旨規範ハンドブックに相当する論証部分の他に、過去の司法試験過去問の再現答案も掲載されている点が、最も重宝した点です。最新年度の司法試験が掲載されていない点のみ残念ではありますが、論証部分だけでは論文を実際に書く際のイメージを浮かべにくいということもあり、学習した類型から順に適宜論文のイメージを浮かべることができました。また、経済法の理解が進んで本格的に司法試験の過去問検討をするようになってきた段階でも、「一冊だけで経済法」に掲載されている再現答案には、上位答案も含まれているため、自分の答案や論文を書く際の意識として欠けていた所・補うべきポイントを強く意識づけるうえで、有効利用することができたと考えています。
そして、私は、法科大学院2年次と3年次の2年間にわたり、辰已法律研究所の司法試験全国公開模試を受験しました。2年次の受験は、司法試験の全日程を模擬的に体験することで、試験本番のシミュレーションを行って時間の使い方の工夫をするトレーニングという意味もありましたが、どれだけ体力的に疲労するのか、合格圏内に至るまでに自分にはあとどれくらいの実量不足があるのかを把握するという側面が大きかったです。そして、2年次の全国公開模試では、やはり実力不足で、あまり経済法でも得点を挙げることができませんでしたが、直近の出題予測に基づく本番に近い難易度の問題の模擬体験ということで、実際に本番で解答に苦戦した場合には、どのような頭の使い方をしてその場をしのぎ、いかに上手く失点を防ぐかということを考える良い機会でした。勿論、そのような不測の事態などは本番でも起こらないに越したことはありませんが、9割方の受験生は、司法試験本番で分からない論点が出題される等、焦る経験をすると思うので、そのような局面に直面しても、頭を真っ白にすることなく、いかに上手く乗り切るかという経験を体験することができ、2年次受験も非常に有意義でした。そして、3年次の辰已法律研究所の司法試験全国公開模試では、司法試験本番の2、3カ月前ということで、その時点での自分の実力が相対的にどのようなものなのか、残された時間で自分に足りず補うべき点としてはどのようなものがあるのか、どのような論点の出題可能性が高いとされているのかと言った点を深く意識できました。特に、辰已法律研究所の模試は、参考答案ももちろんですが、採点基準と解説がかなり詳細に記載されているため、どのような記載にどれほどの配点が振られているのか、どのような知識を補充すべきなのかという点を着実に学習するために、非常に有用でした。また、添削によるコメントは、仮に検討できなかった論点があったとしても、どのような思考をすればその解答にたどり着くことができたはずなのかという点を丁寧に誘導してくれており、非常に勉強になりました。
3 今後に経済法を学習される方へ
経済法初学の方は、私が上述した通りの方法を踏んでみると良いと思います。どの科目でも、楽に論文の力を叩き上げることができる方法などはありません。ただ、経済法の場合には、辰已の教材や講座を有効利用することで、短期間のうちに効率的に格段に論文力を高めることができる科目であるということができます。
予備試験で経済法を選択される方は、予備試験で選択科目が出題されるのが初めてということで、司法試験との間にどれほどの出題傾向の差があるかはまだ分からない所です。ただ、今のところは、司法試験の対策と同等のものをこなすしかありません。実務科目もあるため、そこまで選択科目に時間を割り振ることができないことも確かだと思います。そのため、辰已の教材を有効活用して高めておくことができる経済法は非常に有用です。
最後になりましたが、これから経済法を選択して司法試験を戦い抜いていく後進の皆さんが、司法試験で良い結果を残され、合格の2文字を手にされることを、心より応援しております。
辰已法律研究所 受講歴
【2021・2020年対策】
・司法試験全国公開模試