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司法試験の勉強は「見極める」ということ

K.Kさん
受験歴: 5回
関西大学法学部
関西大学法科大学院 【既修】2016年入学・2018年修了
【受講歴】スタンダード論文答練(第1・2クール)、全国公開模試 他
既修者リベンジ合格

1 司法試験の受験を決意した経緯、合格までの道のり

 5歳の時に亡くなった父が弁護士であったことから、弁護士という職業が幼いころから身近にありました。そして、8歳の頃に母から、父が自分の子供も弁護士になることを望んでいた、という話をきいて私も弁護士になることを決意しました。その頃から、進路を本格的に考えるようになる高校2・3年生になっても思いは変わらず、ずっと弁護士になることが夢でした。その後、大学の法学部から法科大学院の既修コースを経て、5回目の受験で合格いたしました。

2 法科大学院受験前の学習状況

 私の場合は、受験勉強から解放されて大学生活を満喫していたということもあり、大学入学当初はあまり勉強をしておらず、本格的に勉強を始めたのは大学2年生から3年生にかけての春休み頃からだったと思います。また、法科大学院入試対策の勉強しかしておらず、入試に必要な科目以外の勉強はしていませんでした。今となっては、法科大学院入試の勉強も兼ねて、はやくから予備試験の短答等の勉強を始めておくべきだったと思います。

3 法科大学院入学後の学習状況

 既習コースでしたが、法科大学院に入って初めて本格的に勉強する科目が複数あったので、授業についていくだけでも精一杯でした。また、ソクラテスメソッドの授業にもなかなか慣れずに苦労しました。猛勉強の末、なんとか定期試験では満足する成績が取れたものの短答対策にはほぼ手がまわらず、後に苦労することとなりました。

4 複数回受験となってしまった原因

 私は、短答がとても苦手で、現に1回目の受験では短答落ちでした。その後、4回目の受験まで、なかなか安定しませんでした。論文でも、途中答案は出さないものの少しあっさりした答案になってしまう傾向があり、さらに初見の問題に対する対応力がなく、大きな失敗をする科目が過去の受験で毎年2科目ほどありました。短答落ちが怖く短答に勉強時間を費やしすぎて論文は過去問対策にしか手が回らないという負のスパイラルを繰り返していたのが複数回受験の原因だったと思います。

5 受験対策として行った方法及び合格できた原因

(1) 1回目の受験後
 短答の実力が全然足りていなかったこともあり、短答を重点的に勉強していました。方法としては、辰已の短答過去問パーフェクトを理由づけまでできるようになることを意識して、何周も解いていました。
 論文は、ロースクールでの自主ゼミや講座を使用して勉強していました。起案以外での論文対策としては、民法及び会社法の判例集を丁寧に何周も読んでいました。判旨での論文で使える規範等は、余白や符箋に短くまとめていました。また、必要に応じて解説も読んでいました。最終的にはタイトルを見ただけで、事案の概要や自分でまとめた規範がスラスラ頭に浮かぶぐらいの状態になるまで読み込みました。さらに、民法と会社法は条文が多いので「編」と「章」の順番は覚えてしまうぐらいに条文の目次を意識して勉強していました。六法を引くのが速くなりますし、未知の論点が出題されても対応しやすくなります。後の受験でも、判例集と条文の目次を徹底的に読み込んだ年度の民事系は成績がよかったので、オススメの勉強法です。また、民法は、判例集を読むことで短答対策も兼ねることができるのでマストだと思います。

(2) 2回目の受験後
 論文は、一から過去問を見直しました。過去問の起案や答案構成、出題趣旨採点実感の読み込みをより重点的に行いました。全年度起案することはできませんでしたが、一応目は通しました。また、論文の事務処理の仕方を科目ごとにまとめたものをワードで作成しました。問題文の読み方や処理手順、注意すべき点、イレギュラーな場合への対応の仕方、自分の悪いクセ、問題文で読み落とさないよう注意すべき点、典型論点が出題された場合におけるナンバリングやタイトルの書き方、事実の評価で使うワード等を細かくまとめたものです。このような注意点等は頭では分かっていても意外と同じミスを繰り返してしまいがちなので、整理してミスを防ぐためにも個人的にはこのまとめノートが非常に役立ちました。このノートは修正を重ねながら5回目の受験まで使用しました。
 短答はなんとか足切りには余裕を持ってひっかからないレベルにまでは上げることができたものの、やはり苦手意識はなくなりませんでした。

(3) 3回目の受験後
 4回目の受験までの期間が実質4カ月弱しかないということで、とにかく短答をなんとかしなければならないと思い、一日の勉強のうち半分を短答に費やしました。短答はある程度点数を取らないと他の受験生に後れをとることとなり総合得点で不利になるので、足切り回避だけではなく、しっかり得点したいと考えていました。そこで、過去問を解くだけではなく、「刑法(山口厚)有斐閣」や憲法の判例集を丁寧に読み込みました。
 論文対策は3回目受験までの勉強方法を繰り返していました。時間がなかったこともありますが、あまりよくなかったなと今となっては思います。

(4) 4回目の受験後
 切羽詰まった状態であったことと時間をかけたこともあり、短答は安定するようになりました。しかし、論文の成績が2回目以降あまり伸びておらず、悩んでいました。すると、法科大学院入学以来ずっとお世話になっていた合格者の先輩から、「ずっと見てきたけど、やっぱり論文の書く量が足りてない気がする。合格した子たちはもっと書いてた。予備校答練に通って、初見の問題への対応力を養うべき。あと、事実がやっぱり何よりも一番大事だから事実を拾って評価することをもっと意識した方がいい。」というアドバイスをいただきました。そこで、初見の問題について現場で対応する能力を身につける為、3年ぶりに辰已のスタ論第1・2クールに通学することを決めました。最初の受講当時は、過去問対策も不十分で実力不足だったので答練を活かすことが出来ませんでしたが、今回は、しっかり活かすことができました。答練と並行して、書く分量が多く出題される問題に一定の傾向がある行政法・会社法・刑事系の直近10年の過去問を中心に起案量を増やしました。このアドバイスがなければ、私は合格していなかったと思います。

(5) 5回目の受験で合格できた原因
 1日の勉強時間をそこまで割かなくても、短答が120点以上は安定して取れるようになったことがまず原因の一つだと思います。私の場合は、短答は元々大の苦手であったことから、これ以上勉強しても140~150点を取れるようにはならないと思い、それなら論文に時間を回そうと考えました。現に、最後の年は1日に3時間あるかないかぐらいの勉強量でした。
 そして、二つ目の原因として、1日の勉強時間の大半を論文の弱点克服に費やすことができたからだと思います。論文の対策方法や合格答案の目安はある程度分かっていましたが、今までそこまで起案をせずともロースクールの定期試験などである程度結果を出してきたことから、「あまり起案はせず答案構成を主にしていた」というタイプの合格者の言葉を鵜呑みにし、私もそのタイプだと思い込んで勉強していました。これが大きな間違いで、私はある程度起案しなければ受からないタイプでした。これに気付くことができたことが大きな要因だと思います。

6 受験対策として活用した辰已の講座及び書籍

(1) 講座
・スタ論第1・第2クール

 過去問は確かに大事ですが、初見ではないため段々書けて当たり前になってきてしまいます。そこで、上述の先輩のアドバイスから、初見の問題への現場での対応力を養うために受講しました。家で答案を書くのではなく、実際に会場に足を運んで書いたことが大きかったように思います。そして、あっさりした答案になってしまうことへの対策として、「事実は極力全部拾う」という強い意識を持って答案を書いていました。また答練の後は、配点表を使って自己採点をし、後日返却された実際の採点表と見比べていました。そこで、自分の書けた感覚と実際の採点との違いを埋めるように意識しました。辰已の答練はとても細かい配点表をいただけるのが他の予備校と違った良い点だと思うので、積極的に活用してみて下さい。さらに、未知の論点についても三段論法を崩さずに原則論と趣旨から導くことを意識し、訓練できました。しかし、辰已の答練は、過去問でも繰り返し出題されるような基本論点からも多く出題されるので、そこを落とさずにしっかり書き負けない訓練もすることが出来ました。司法試験は、結局は、受験生の大半が書ける論点を書き負けずに、なおかつ未知の論点で大崩れしなければ合格する試験なので、基礎をおろそかにしないことも大事だと思いますし、その練習が存分に出来たと思います。

・全国模試
 実際の会場及び試験時間で開催されるので、予行練習になります。また、試験直前の実力や弱点も知れるので、非常に役立ちました。

(2) 書籍
・短答過去問パーフェクト

 上述のとおり、短答対策で使用しました。

・ぶんせき本
 論文の過去問対策で使用しました。幅広い順位の再現答案が掲載されているので、合格答案の相場感を知ることが出来ました。

・趣旨規範ハンドブック
 論証集として民法・刑法・経済法で使用しました。

7 自己の反省を踏まえ、これから受験する人へのアドバイス

 6年間司法試験と向き合い一番強く感じたことは、短答を一刻もはやく、最低120点は安定してとれるように完成させることです。出来れば、法科大学院入学までに足切りには余裕を持ってならない状態にしておくと、司法試験への負担がかなり少なくなると思います。
 次に、司法試験の勉強は見極める力が大事な試験だと思います。短答と論文の勉強時間のバンランスを見極めること、全部完璧にすることは不可能なので自分が合格するために必要な勉強が何かを見極めること、自分の弱点を正確に把握して克服する方法を見極めること、です。これらは個人差があり、千差万別で一番難しいことではありますが、この三つを見極められれば、突破することが可能な試験だと合格した今思っています。
 幼少期から大学の頃までは、今思えば私は司法試験を少し楽観的に甘く捉えていましたが、司法試験は本当に厳しいものでした。お金も時間も体力も精神力忍耐力も必要な過酷な試験です。また、周りの友人が社会に出て働いたり遊んだりしている中、机に向かって孤独に勉強し続けなければなりません。その中で強い覚悟を持って挑むべき試験だと思います。そして、このような過酷な試験に5回も挑戦させていただいた周囲の支えや環境には感謝してもしきれない気持ちでいっぱいです。
 私は今回がラストチャンスでしたが、開き直っていたこともあり、試験前から発表まで「これで落ちても全てが無駄になるわけじゃないし、私の価値がなくなることもない。これだけ一つの勉強をやり切ったんだからこれからも前を向いてしっかり生きていける。」という前向きな気持ちでいました。複数回受験の方は、不合格を何回も経験されて本当に辛いとは思いますが、「やらない後悔よりやる後悔」といいますし、受験を悩んでいるのであれば環境等が許される限り、是非最後まで受験することをオススメします。
 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。読んでいただいた皆様の合格を心からお祈りしております。

辰已法律研究所 受講歴

【2021年対策】
・スタンダード論文答練(第1・2クール)
・全国公開模試

【2019年対策】
・全国公開模試

【2018年対策】
・スタンダード論文答練(第2クール)
・全国公開模試

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