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自分が信じた教材と心中することが合格にとって必要不可欠

鈴木 将央さん
受験歴: 新試験1回
大阪大学法科大学院 【既修】
一発合格

1 司法試験の受験を決意した経緯

 私が司法試験の受験を決意したきっかけは高校受験の失敗を払しょくしたいという単純な理由です。
 中学生の時“まさか落ちるわけないだろう”と思った高校に落ちました。倍率が1.08の試験に落ちるなど私は膝から崩れ落ちるほどショックでした。当時は大学受験で成功して見返してやろうと思い勉強していましたが、うまくいかず併願していた私立大学に進学することになりました。大学進学後もこの時のショックを払しょくできず、文系の資格で最高難度の国家公務員上級試験もしくは司法試験を目指そうと思い、悩んだ結果国家公務員を目指すことになりましたが、1点足りず・・・じゃあ、司法試験目指すかと司法試験を目指すことになりました。このように、この時のショックが全てのはじまりであり、司法試験を目指す唯一のきっかけでした。

2 法科大学院受験前の学習状況

 公務員試験の勉強を通じて、訴訟法以外は学部生並みには知っていたので、大手の資格予備校の論文講座(公法系以外)および訴訟法の基礎講座を受講しました。
 勉強開始2月-3月程度で一通り講義を聴き終えた後、論文講座の復習に取り掛かろうと思いましたが、旧司法試験をメインに扱っているため問題が非常に難しく何度繰り返しても答案構成がうまくできない(今思えばわからないところは基本書やテキストを読むなどして確認すべきでした)ので、嫌になり阪大前期及び九大ロー入試まで論文マスターを一周、インプット講義の聴きなおしなど問題に向き合えず逃げてばかりだったとおもいます。当たり前と言えば当たり前ですが、阪大ローの前期入試、九大ローの入試に合格することができませんでした。
 九大の不合格通知から阪大後期入試に向けて論文マスターを何回も回したおかげで阪大後期に合格(合格最低点+40点くらいだったと思います)できました。
 阪大ロー入学年に受験した予備試験では短答式が1点足らず不合格だったので、予備に合格できるほどの学力はなかったと思います。

3 入学後

 入学後は高校入試時のショックがある程度改善していたため目標を見失っていました。大学2年の後期に学内の起業プロジェクトに加担して起業のアイデアを考えたり、民間就活をするなど今思えばかなり「迷走」していました。また、司法試験の勉強に加え、ロースクールの教材もこなさないといけなくなったためマルチタスクが極端に苦手な性質もあいまってどっちもうまくこなすことができなかったです。このように、ロースクール入学後は全くと言っていいほど勉強できず、結果学年最下位(休学・退学者は含まない)でした。(今状況は卒業まで変わらなかったです)
 そして3年次に必修科目を一つ落としてしまい半年留年することになりました。

4 辰已書籍の利用法

 短答教材として辰已の「短答過去問パーフェクト」及び直前期の論文対策として「読み解く合格思考憲法」が非常に役に立ちました。
 「短答過去問パーフェクト」は①合格者正答率が8割以上(苦手分野は9割以上)の問題に絞り込みまずはそれらが「正答率:95%」になるまでやりこみました。(完璧を目指すのも考えましたが、記憶力の関係から不可能と考えある程度緩めました。)②その目標が達成できたら、合格者正答率7割以上(苦手分野は7割以上)の問題に絞り込み①と同じようにやりました。肢別にやった方がいいという意見もありますが、回す速度を自分は重視していたので、二択で迷わせる選択肢だけに限定して確認しました。「できる問題」よりも「確実に解ける問題」を増やしていくことが安定して短答式で点数を取るコツだと私は確信しております。
 他校の模試が返却された当時、私は憲法の条文の定義、趣旨を覚えておらず、結果絞まった答案を書くことができませんでした。そこで、条文の定義、趣旨が載ってある参考書を探していたところ、「読み解く合格思考」を発見し、何度もテキストを読み返す(必要に応じて書く)ことを通じて定義、趣旨を覚えきりました。あそこまで憲法の文言の意義や条文の趣旨がまとまって載っている本は他にないと思います。直前期にやりこむことをお勧めしたいです。

5 勉強法

 司法試験の勉強を本格的に始めたのは去年の10月でした。この時私は過去問の問題を「過去問の問題を起案することで問題文の読み方、誘導の乗り方を知る」という目的で起案しました。しかしながら、毎日のように、起案して出題趣旨、採点実感を読み込むという作業が私は耐えきることができず3年分書いた後は、答案構成に切り替え負担を減らしました。(※理想としては全年度時間を計って解ききる→答案を合格者等に見てもらう→書き直すという作業を踏むのが一番かと思いますが、かなり肉体的精神的負担が大きかったです。)
 過去問起案後は科目別に勉強法を切り替えたのでそれを以下記載します。

ア 公法系
 公法系は、知識よりも「書き方」、「考え方」が重要であると考え、「憲法(行政法)ガール」を用いて、大島先生の思考プロセスを学ぼうと試みました。しかしながら、ガールの議論はトップレベルに難しいことから消化不良に陥いり3月の他校模試で大きく沈みました。
 他校模試後は前述の通り「読み解く合格思考」記載の定義・趣旨の暗記、行政法は訴訟要件をそれぞれ正確に条文摘示できる訓練及び国賠の論証暗記を行いました。そして、「書き方」、「考え方」については、「とりあえず沈まない答案を書ければいい」との考え方から、過去2年分の問題について、答案構成→再現答案の中で再現できそうな答案(A下位答案で論理展開が明確なもの)の写経を通じ、最低レベルの書き方、考え方を身に着けることができました。

イ 民事系
 民事系は、過去問の起案答案構成を通じ「誰でも書けることを正確に書ききること」を目標として、今年の1月ころから論文講座の問題に立ち戻りAランク指定された問題の答案構成、模範答案で一番厚く触れられている論点について基本書、百選の確認を行いました。他校模試では民事系が一番マシだったことからある程度効果があったのではないかと思います。他校模試後は回す回数を増やすという観点から論文講座から論証集に切り替えて、①論証集に記載されている論述の流れが理解できているか否か②できていなければ、基本書や百選の解説を読み込むという作業を繰り返しました。本番では設問3が白紙の民法はともかくとして評価Aだったのである程度この勉強のやり方は間違ってなかったと思います。

ウ 刑事系
 刑事系は、過去問の起案答案構成を通じ①「論点を適切に拾えること」②「誰でも書ける論証を正確に書ききること」を目標として、①1月から「刑法事例演習教材」を論文講座と同じ要領でやりこみ、②他校模試返却後、規範と簡単な理由付けをかけるかどうかを単語を覚えるように何度も反復して覚えました。
 司法試験本番で強盗罪の「脅迫」の認定方法について誤った記載をしてしまったこと、設問2で同時傷害の特例をまんま書けなかったことから、①の過程より②の過程に早めに着手して、民事系と同じように少しは基本書、百選に触れるべきだったのかなと思います。

エ 選択科目
 選択科目は他校模試返却までこれといった対策もせずにいたため専ら選択科目の勉強に時間を取られました。選択科目の勉強でやったことは①「事例演習労働法」の答案構成②該当問題で扱っている論証の暗記の二点につきます。②については労働法だけ既存の論証を編集しノートに書き込むことでオリジナルの論証集を作りました。この過程を通じたことで論証暗記できたと思います。
 模試→本番で総合得点が20点以上伸びたことからこのやり方は間違ってなかったと確信しております。

6 体験を振り返ってアドバイス

(1) STEP1(論文問題集を繰り返す)
 入門講義を聴くよりもその復習としての論文問題を解きなおす時間の方が圧倒的に長いことは知っといてください。そのうえで、初めの段階は「これ全然わからない」ってなるとおもいますが、挫けずに何度も(なるだけ早く)繰り返してください。そのうちなんとなくですができるようになってきます。「暗記なのか理解で答案構成ができているのかわからない」って状態になると思います。その段階で「なぜその論点が問題になるのか。」、「なぜこういったロジックになるのか」を徹底的に考えたうえで、基本書、百選を読み込んでみてください。そうすると目から鱗が落ちる感覚がつかめると思います。ここまでこれたら上位ロースクールレベルなら合格できます。

(2) STEP2(論証集の読み込み)
 自分が短答1点落ちから二年もかかった理由はつまるところこの過程を直前までさぼったことにあると思います。上位ロースクール合格レベルまで来れたら論証集に書いてある規範と理由付けを再現できるレベルまで覚えること(丸暗記でもいいと思います)、論点の理解を基本書、百選で確認するという作業です。
 これをやることであとは答案のブラッシュアップだけで済むので精神衛生上非常に楽になります。
 これを直前期2週間で詰め込んだのですが、かなりタフだったことに加えて暗記した事項を正確に吐き出せなかったです。ホント初学者卒業段階でのこの作業は必須です。

(3) STEP3(過去問演習)
 理想としては過去問を時間計って解くということだとおもいますが、この作業はかなりきついので継続できない人がいると思います。その場合は自分は答案構成でも問題ないかと思います。ただし、採点実感を読み込んで合格水準を知っておくこと必ずすべきです。このことで勉強の指針がある程度明確になるし、間違った勉強をしなくなるからです。

7 最後に

 普段の勉強から条文を引く作業はできる限りやっておいた方がいいです。司法試験本番で条文操作問題が出たのですが、それをさぼっていたため思うように条文を引くことができずトンチンカンな答案を書いてしまいました。こういったことを避けれるという意味で条文に慣れておくということは大切です。
 ロースクール時代にいろんな教材が出回ってきたためその教材に手を出しどっちつかずになってしまいました。結局、初学者のときから使っていた問題集に戻って演習を行いそれが一番結果出たので、結局自分が信じた教材と心中することが合格にとって必要不可欠なんだと思います。

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