予備試験

合格者直伝!
趣旨規範ハンドブックの使い方

ずっと使える趣旨・規範ハンドブック

司法試験合格者 Hさん
(東京大学法科大学院既修者コース出身)

論文のマストアイテムとして知名度の高い趣旨規範ハンドブックですが、実際に使いこなすには少しコツがいるように感じます。
多くの人は試験直前に復習目的で使用しているのではないでしょうか。私の周りにもそのような人が多かったと思います。
しかし、趣旨規範ハンドブックは試験勉強のスタートからゴールまで使用することができる優れた本です。
今回は、私がおススメする趣旨規範ハンドブックの使い方についてご紹介したいと思います。


1.まずは軽く通読

まず、司法試験の勉強を始めたばかりの頃には、趣旨規範ハンドブックを軽く通読してみてください。
暗記する必要はありません。
ざっと読んでみると、司法試験受験生としてどのような議論を押さえておくべきかが何となく分かります。
本の使い方からは少し離れますが、このとき注意しなければならないのは、趣旨規範ハンドブックだけで法科大学院の試験に臨まないことです。
個人的な感想ですが、司法試験と法科大学院の試験は似て非なるものです。
法科大学院の試験はあくまで授業の内容を理解できているかを確認するためのテストですから、趣旨規範ハンドブックの文言をそのまま答案に書くと思わぬ落とし穴にはまる場合があります。
しかし、一方で、授業では○○として紹介された判旨やその理由付けが趣旨規範ハンドブックでは少し異なって紹介されていることがあります。
このような箇所を発見したら、実際の判旨や教科書で調べてみてください。
そうすることで、より深い理解が得られ、司法試験に活かすことができる応用力がつきます。

2.普段は手元に置いて勉強
次に、司法試験の勉強がより本格化し、問題演習を始めた頃には趣旨規範ハンドブックを常に手元において参照するようにしてください。
趣旨規範ハンドブックはコンパクトにまとめられているので持ち運びにも困りません。
具体的には、問題演習の解説や再現答案の記載と趣旨規範ハンドブックの記述を比較してみてください。
よりコンパクトで分かりやすい論述とは何かを考えていくことで表現力が飛躍的に向上します。
その際、新しい視点や判例などは趣旨規範ハンドブックに書き込んでおくと直前期に重宝します。

3.試験直前期の使い方
そして、試験の直前期には、本番で答案に再現したい趣旨規範ハンドブックの記述を暗記していきます。
その際、一度で構わないので実際に手を動かして覚えてみてください。
本番の答案用紙をプリントアウトして書いてみるとより効果的です。
記述を読んだ時にはコンパクトな論証だと思っていても、実際に書いてみると予想以上に時間もスペースも必要であったことに気付くことがよくあります。
本番で答案用紙に書けなければ何の意味もないのですから、この練習は必須です。
なお、何を暗記すべきかは個人個人の時間的余裕によって異なると思いますが、定義と規範の理由付けが最優先事項だと思います。
前者は答案の書き出しに使われることが多く、答案全体を読みやすくしてくれます。
後者はより重要で、理由付けから規範を思い出すこともできますし、未知の問題に遭遇しても同じ理由付けを使えないかという発想で一定の規範定立が可能になります。
趣旨規範ハンドブックは理由付けがナンバリングされ、分かりやすくまとまっているので覚えやすいと思います。
コンパクトすぎて内容が理解できないと思ったら、必ず教科書等で理解する手間は惜しまないでください。
この一手間で趣旨規範ハンドブックは応用力を身につけるツールになります。

4.本試験会場に持っていく
最後に、司法試験会場には、今まで使ってきた趣旨規範ハンドブックを持って行きましょう。
本番で使うことができる知識やノウハウは自分の趣旨規範ハンドブックで完結しているはずです。
司法試験は公法系や民事系など系統別に日程が組まれています。
趣旨規範ハンドブックは系統別に編成されているので、会場に持っていく荷物は1冊(多くても選択科目を入れて2冊)で済みます。
試験会場では荷物の置き場所や机上に出しておけるものなどのルールが厳しいので、荷物が少ないと余計なことに神経を割く必要がなくなります。
細かいことのようですが、試験直前の詰め込み作業中に試験監督員から注意されたりすると結構集中できないものです。
この点、趣旨規範ハンドブックを本番の詰め込み用ツールとして短期的に使用していると、情報が足りないのではないかと不安になっていろんなものを持って行きたくなるかもしれません。
しかし、司法試験の勉強をする際にいつでも隣に置いていた本であれば、そんな不安はないはずです。
私が受験勉強の初期から趣旨規範ハンドブックを使用することをおススメする理由の1つがこの点にあります。

直前期は「趣旨規範ハンドブック」しか読みませんでした。

司法試験合格者 Gさん
(早稲田大学法科大学院未修者コース出身)

1.直前期には趣旨規範ハンドブックを活用
基本的なインプットは短答式試験の過去問を使用していましたが、それによって1度は定着した知識であっても、しばらく放っておけば忘れてしまいます。それゆえ、試験本番の直前に、今まで自分が学習してきた内容を総ざらいして、知識の漏れがないか、忘れてしまっていないかをもう一度、復習する必要があります。とはいえ、さすがに直前期になって、短答式試験の過去問題集をいちいち解き直している時間はありません。

そこで、私は、知識の総復習のツールとして、「趣旨規範ハンドブック」を使っていました。
「趣旨規範ハンドブック」には、論文試験に必要な定義や論点、判例等を網羅的かつ簡潔にまとめて記載されていますので、自分の知識の漏れの確認や記憶喚起には最適で、復習するツールとして大変有用でした。むしろ、直前期は、「趣旨規範ハンドブック」しか読んでいないというような状態でした。

2.情報の一元化
また、インプットには反復が重要ですが、それと関連して、非常に大事なのが情報の一元化です。
試験本番までの学習において、基本書、過去問題集、判例百選、後述する演習書、ロースクールの授業で使用したレジュメやノートなど、受験生が使用する書籍、教材は多岐にわたっています。そして、そのいずれにも、論文問題を解く上で、重要な事項、役に立つ事項の記載があるはずです。
例えば、直前期に憲法の総復習をしようと思い立ったとします。これまでに、憲法を学習するのに使った書籍は数多くあるものの、直前期ゆえに復習できる時間は限られています。そのような状況下で、数多くある書籍を総ざらいして反復することは不可能に近いですし、また、重要な箇所のみをピックアップしようとしても、「この基本書のこのページ」とか「あの演習書のあの箇所」とか、いちいち探しながら読み込むのはあまりに時間の無駄です。
そこで、使用した書籍、教材の中で、自分なりに大事だなと思った記載については、ピックアップした上で何か1つのものにまとめておき、直前期に復習するにあたって、これさえ一通り読めば大丈夫だと言えるようなものを作成しておくことが大事であると考えています。これが、情報の一元化です。
まとめるものは、何でもいいと思います。自分で1からレジュメのようなものを作成してもいいでしょうし、日ごろから使っている基本書等に、書き込みをしたり、メモを挟むなどして、1冊の中にまとめて上げてしまうのでもいいと思います。

3.趣旨規範ハンドブックにまとめて、直前まで使う
私の場合は、全て「趣旨規範ハンドブック」にまとめていました。同書は、必要事項を体系的にまとめており、前述のように総復習するには最適な教材でしたので、一元化のツールとしてはもってこいでした。
例えば、民法の表見代理の部分で、基本書内に役立ちそうな記述を見つけた場合に、「趣旨規範ハンドブック」の同じく表見代理の記載がある箇所にその記述の概要を書き込んだり、アウトプットの過程で自分なりに作成した論証パターンや答案作成にあたって注意すべきポイントなどをメモ用紙に書き起こし、それを同じく「趣旨規範ハンドブック」の該当箇所に挟むなどして、一元化をしました。
このように、メモ書きなどを挟みに挟んだ結果、購入した当時よりも、「趣旨規範ハンドブック」が2倍ほどの厚さになってしまったことを覚えています。
それゆえ、直前期においては「趣旨規範ハンドブック」しか読まなくていいという状態になっていたのです。
しかし、正直なところ、この情報の一元化という作業は、非常に地味なものであり、根気が必要ですし時間もかかります。私自身は、一元化をしたおかげで、直前期に慌てることなく総復習を反復できたので、やって正解だったと思っています。ただ、時間がもったいないなどの理由で、一元化をしていなかった受験生も多かったのも事実です。
とはいえ、知識の漏れの有無や記憶喚起のツールとして「趣旨規範ハンドブック」が有用であることは前述のとおりですので、一元化をするかはさておき、総復習をするにあたって、おすすめの書籍であることに違いはありません。

各種サービス
  • YouTube
    チャンネル

  • メルマガ登録

  • 辰已のアプリ

Page top