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司法試験論文憲法の出題形式の行方

憲法の出題形式に関し、主任スタッフが考察します。

2023辰已・司法試験全国公開模試の受講者特典である、福田俊彦先生監修「令和5年主要考査委員紹介&出題予想」とその福田先生による解説講義の準備が予定より早く整いましたので、受講者特典マイページで閲覧・視聴できるように致しました。

ただ、この内容は、令和5年司法試験論文式試験の出題予想であり、当然、全国公開模試の内容と一部が重複しますので、受講生の皆様には、全国公開模試の答案作成を終えてから閲覧・視聴するようにして下さい。
参考までに下記に「令和5年主要考査委員紹介&出題予想」のサンプルを一つ掲載させて頂きます。

このように、辰已の全国模試は著名な学者論文までフォローし、問題を作成しています。また、受講者限定でその情報を開示し、合格をサポートしています。全国模試受験を検討中の方はぜひ辰已の模試を候補のひとつにしていただければと思います。

●辰已法律研究所 全国公開模試
https://service.tatsumi.co.jp/shin/kouza/33681/

2023辰已司法試験全国公開模試受講特典【抜粋】

【憲法】令和5年主要考査委員紹介&出題予想

只野雅人教授(以下「只野教授」といいます。)が、引き続き令和5年司法試験及び予備試験考査委員(憲法・出題委員)に任命されました。

只野雅人 一橋大学大学院法学研究科教授
【所属大学教員紹介HP】
https://hri.ad.hit-u.ac.jp/html/335_profile_ja.html

まず、上記所属教員紹介HPには、「研究キーワード: 憲法、政党、議会、代表民主制、選挙」と記載され、同HPの研究活動の中で紹介されている論文などの研究成果も、議会や選挙に関するものが多いです。

また、受験生が比較的入手しやすい只野教授の著作として、「参議院選挙区選挙と投票価値の平等」論究ジュリスト24号P.198~206「道標なき時代の代表民主政と憲法学―選挙制度・政党・国会」論究ジュリスト36号P.101~8、「議員定数不均衡と改正の合理的期間」憲法判例百選Ⅱ〔第7版〕P.324~5などがあり、選挙を媒介とした平等や表現の自由の問題に関しては、注意した方がよいと思います。

なお、令和4年司法試験論文式試験公法系科目第1問では、設問形式が、平成30年以来続いた意見書型・相談型から主張・反論・私見型に変更されました。この点、只野教授が専任教員を務められている一橋大学法科大学院の既修者入学試験憲法の設問形式は、主張・反論・私見型で出題されています。同法科大学院HP入試情報に問題文と出題の趣旨が掲載されているので、こちらを参考にされるのもよいでしょう。

【参 考】
・一橋大学大学院法学研究科 法科大学院 入試情報(一橋大学HP)
https://www.law.hit-u.ac.jp/lawschool/exam/pastexam/

以上、憲法の只野教授の紹介をサンプルとして掲載させて頂きました。

【考察】憲法の出題形式

令和4年司法試験論文式試験公法系科目第1問(憲法)では、平成30年以来続いた相談型・意見型ではなく、平成29年までの主張・反論・私見型で出題されました(もっとも、先に合憲主張を書かせるという特徴があります。)。

そこで、本コラムでは、司法試験論文憲法の出題形式の行方に関する若干の情勢分析をしてみたいと思います。

まず、相談型・意見型からの変更は、木下昌彦教授「法律案の違憲審査において審査基準の定立は必要か―2020年度司法試験論文式試験【憲法】における出題形式の問題点」(法学セミナー797号P.48~55)が参考になります。

本論文には、明白性の基準のような緩やかな審査基準は、裁判所の判断能力の限界を根拠としており、かかる判断を行う能力を備えた国会がこのような基準を用いるのは背理であるなど、相談型・意見型に対し、様々な批判がなされています。これらは、非常に説得的な内容で、辰已では、令和4年1月に行われた西口講師、福田講師、本コラムの筆者のYouTube座談会で本論文を紹介して受験生に注意を促し、また、2022福田ファイナル予想答練公法系第1問では、相談型・意見型の設問の他に、令和元年予備試験論文式試験憲法の設問形式を参考にした設問を出題するなど、形式変更に備えていました。

このような中で、出題形式の変更がなされたのですが、平成29年までの出題形式とは異なり、令和4年の出題形式に関して先に合憲主張をさせた点については、法科大学院協会「令和4年度司法試験に関するアンケート調査結果報告書令和4年回答付記意見」(法科大学院協会HP)で、「…当事者主張想定型という設問形式は通常、裁判手続における主張の対立を念頭に置いており、合憲の主張(反論)は、違憲の主張を踏まえてなされるはずである。通常の設問順をわざわざ変更する意義が理解できない。…」(同P.11)、「…設問1での合憲主張を要求していたが、これには書き方で悩む受験生が多かったかもしれない。というのも、何らかの違憲主張を前提ないし想定しないことには、合憲主張を展開するということが現実にはイメージしづらいからである。」(同P.13)などと、評判が良くありません。相談型・意見型が採用されない場合には、違憲主張・反論・私見という平成29年までの形式に戻る可能性が強いように思われます。

なお、上記の木下教授の論文P.55では、「…意見型は、訴訟では統治行為論の適用により裁判所の判断がなされない事項を直接問えるところにその利点があり、むしろ、統治機構に関する分野について用いるべき出題形式であった。」と記載されており、統治機構に関して相談型・意見型で出題される可能性はあると思います。また、政教分離の原則に関しては、目的効果基準、総合判断の枠組みともに、人権規制立法・処分に対する違憲審査基準ではないので、上記の木下論文における批判は妥当せず、相談型・意見型、主張・反論・私見型、予備試験や旧司法試験の出題形式など様々な出題形式が可能かと思われます。

いずれにしろ、どのような形式で主題されても、落ち着いて問題文をよく読んで、出題者の意図に沿って丁寧に解答することが肝要だと考えます。ご参考になれば幸いです。

(参考)
・法科大学院協会「令和4年度司法試験に関するアンケート調査結果報告書令和4年回答付記意見」
https://www.lskyokai.jp/wp/wp-content/uploads/2022/12/rp_2_20221214.pdf

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