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要チェック!令和5年司法試験 出題に影響する法改正のポイント

法改正情報と短答肢出題例をまとめました!

令和5年度司法試験に出題される可能性のある改正のポイントをまとめました。また、もし短答で出題されるとしたらこんな肢?という出題例も掲載しております。司法試験においては、憲法、民法、刑法以外、短答での出題はありませんが、参考までにご覧ください。
改正は気にはなるけども、なかなか手が回らない&よくわからないという方は多いはずです。ぜひ一度このページでチェックしてください。

【民 法】

①相隣関係

209条(隣地の使用)、213条の2、213条の3(継続的給付を受けるための設備の設置権等)、233条(越境した枝の切除)

※ 改正前民法下では、隣地の使用に関する規律が不明確・不十分であったため、土地所有者には、一定の場合に隣地を使用する権利があることが明確に規定された(209条)。改正前民法下でも、相隣関係規定等の類推適用により、他人の土地へのライフライン設備の設置等ができると解されていたが、ライフライン=継続的給付を受けるための設備の設置権が明文化され、通知等の規律が整備された(213条の2、213条の3)。越境してきた枝について、その竹木の所有者が枝を切除しない場合や、その所有者が不明である場合等の不都合を解消するために、一定の場合には、越境された土地の所有者自身で枝の切除が可能であることが規定された(233条)。

②共有

249条(共有物の使用)、251条(共有物の変更)、252条(共有物の管理)、252条の2(共有物の管理者)、258条(裁判による共有物の分割)、258条の2(相続財産に属する場合の分割)、262条の2(所在等不明共有者の持分の取得)、262条の3(所在等不明共有者の持分の譲渡)、264条(準共有)

※ 共有財産において共有持分権者の合意を得ることが困難であったり、共有者の一部が不明であったりして、共有財産の適切な管理や積極的な利用ができない場合に共有物の利用の円滑化を図るため、共有物の使用、変更及び管理並びに裁判による共有物の分割等に関する規定を改める(民法249条、251条、252条、258条、258条の2)とともに、共有物の管理者、所在等不明共有者の持分の取得及び譲渡に関する規定が新設された(252条の2、262条の2、262条の3)。

③所有者不明不動産管理命令

※ 改正前民法の財産管理制度は、対象者の全財産を管理する「人単位」の仕組みとなっていたことから、財産管理が非効率となりやすく、そもそも所有者を全く特定できない土地・建物については、既存の各種財産管理制度を利用することができないといった問題があった。そこで、個々の所有者不明土地・建物の管理に特化した新たな財産管理制度(所有者不明土地・建物管理制度)が新設された(264条の2~264条の8)。これは、裁判所が所有者不明土地・建物の管理命令を発令し、管理人を選任するものであり、裁判所の許可があれば、当該土地・建物の売却も認められる。

④管理不全不動産管理命令

※ 改正前民法下では危険な管理不全土地・建物について、物権的請求権や不法行為に基づく損害賠償請求権等の権利に基づき、訴えを提起して判決を得、強制執行をすることによる対応だったが、管理不全状態にある不動産の所有者に代わって管理を行う者を選任する仕組みはなく、対応が硬直化する問題があった。そこで、所有者が判明していても、土地・建物を放置していることで他人の権利が侵害されるおそれがある場合に、管理人の選任を可能にする制度(管理不全土地・建物管理制度)が新設された(264条の9~264条の14)。

⑤相続財産の管理・清算、遺産分割

897条の2(相続財産の保存)、898条(共同相続の効力)、904条の3(期間経過後の遺産分割における相続分)、907条(遺産分割の協議又は審判)、908条(遺産分割方法の指定及び遺産分割の禁止)、918条(相続人による管理)、926条(限定承認者による管理)、936条(相続人が数人ある場合の相続財産の清算人)、940条(相続放棄をした者による管理)、952条~958条の2(相続人の不存在)

※ 共同相続の場合、遺産分割により相続財産の帰属が確定するまでの間、相続財産の管理が適切になされない場合があることから、相続財産の管理人の制度が設けられた(897条の2、918条、926条、940条)。また併せて、相続人が明らかでない場合における相続財産の清算手続が見直された(936条、952条~958条の2)。
遺産が共有関係にあると、各相続人の持分権が互いに制約し合う関係に立ち、遺産の管理に支障を来す事態が生じたり、遺産分割がされないまま相続が繰り返されて多数の相続人による共有関係が生じ、遺産の管理・処分が困難になるなどの弊害があることから、共有関係の早期解消の必要性が指摘されていた。そこで、相続開始から10年を経過したときは、具体的相続分による分割の利益を消滅させることとして、早期の遺産分割を促進するとともに、期間経過後は法定相続分又は指定相続分により遺産分割を円滑に実施することを可能にした(904条の3)。また、共同相続人間の遺産分割禁止契約についても、その期間に終期を設けることにより早期の遺産分割を促進している(907条、908条)。

⑥懲戒権の規定の見直し

改正前822条(懲戒)を削除し、改正前821条(居所の指定)を822条とし、あらたな821条(子の人格の尊重等)を制定した。

※ 821条(子の人格の尊重等)「親権を行う者は、前条の規定による監護及び教育をするに当たっては、子の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。」
 近年、児童虐待の問題が深刻化しており、改正前822条の「懲戒」との文言には、「しつけ」の名の下に児童虐待を正当化する危険性があるため822条を削除し、親権者が監護・教育に当たる際の基本姿勢を明記し、正当な監護教育権の行使に該当しない行為を明確にした(821条)。

短答肢出題例【今年はこんな問題に注意!:民法】

1.土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者にその枝を切除させることができるのみで、自らその枝を切除することはできない。

答え × (233条3項)

2.共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始の時から10年を経過したときは、相続財産に属する共有物の持分について、原則として、遺産分割手続によらずに、通常の共有物分割手続による分割をすることができる。

答え ○ (258条の2第2項)

3.所有者不明土地管理命令の効力は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地にある全ての動産に及ぶ。

答え × (264条の2第2項)

4.管理不全建物管理人は、裁判所の許可を得れば管理不全建物管理命令の対象とされた建物を処分することができるが、裁判所が当該許可をするには、当該建物の所有者の同意が必要である。

答え ○ (264条の14第4項・264条の10第3項)

5.相続開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割については、原則として、具体的相続分の割合によることはできないが、相続開始の時から10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたときは、この限りでない。

答え ○ (904条の3第1号)

 

【刑 法】

侮辱罪の厳罰化

※ インターネット上の誹謗中傷が社会問題となっていることから、侮辱罪の法定刑を引き上げ、これを抑止するとともに、悪質な侮辱行為に対して厳正に対処する必要性が指摘されていた。そこで、刑罰に「1年以下の懲役若しくは禁錮」、「30万円以下の罰金」が追加された(231条)。

短答肢出題例【今年はこんな問題に注意!:刑法】

1.侮辱罪の実行を容易にした者に、幇助犯が成立する余地はない。

答え × (231条、64条)

2.侮辱罪の犯人を蔵匿した場合には、犯人蔵匿罪が成立する。

答え ○ (231条、103条)

【行政法・個人情報保護法】

令和3年5月に「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」が制定され、行政機関個人情報保護法及び独立行政法人等個人情報保護法を廃止して、個人情報保護法に一元化する法改正がなされた(令和4年4月1日施行)。
地方公共団体の個人情報保護制度についても、一元化後の個人情報保護法において全国的な共通ルールが規定された(令和5年4月1日施行)。
全面施行日は、令和5年4月1日。

【会社法】

①株主総会資料の電子提供措置の新設(325条の2~325条の7、911条3項12号の2、976条19号)

※ 現在、上場会社の多くは6月下旬に株主総会を開催してるため、多数の会社に投資している投資家は、短期間で各会社の議案を検討しなければならず、十分な検討時間を確保できないという問題が指摘されていた。そこで、株主総会資料(株主総会参考書類、議決権行使書面、計算書類及び事業報告並びに連結計算書類)を、株主の個別の承諾なく、各社のホームページ等のウェブサイトを通じて株主に提供できる制度が新設された(325条の2~325条の7)。この制度を利用すれば、会社としては株主総会資料の印刷・郵送等の時間を短縮でき、その分早期に株主に対する情報提供がなされることが期待される。

②支店所在地における登記の廃止(930条~932条削除)

※ インターネットが広く普及した現在においては、会社の支店の所在地の登記所から本店所在地等を検索するための仕組みを維持する必要がなくなったため、会社の負担軽減等の観点からも会社の支店の所在地における登記は廃止された。

短答肢出題例【今年はこんな問題に注意!:会社法】

1.電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社の株主は、原則として、株式会社に対し、株主総会資料等に記載すべき事項を記載した書面の交付を請求することができる。

答え 〇 (325条の5第1項、325条の3第1項)

【民事訴訟法】

①当事者に対する住所、氏名等の秘匿(133条~133条の4、92条6項~8項)

※ 原告の氏名は法律上訴状の必要的記載事項(134条2項1号)とされており、他方住所は規則上訴状に記載することが必要とされている(民事訴訟規則2条1項1号)。しかし、性犯罪やDV等の被害者が原告となって加害者の責任を追及しようとした場合、被害者は、訴状の記載から自らの氏名や現住所が加害者に知られることになるため、訴えの提起等に躊躇するおそれがあるとの指摘があった。そのような問題に対し、「第8章 当事者に対する住所、氏名等の秘匿」の章を新設するとともに、訴訟記録の閲覧の場面について民事訴訟法92条6項~8項を加えることにより、対応を図った。

②和解の試み等(89条2項、3項)、弁論準備手続における訴訟行為等(170条3項)

民事訴訟手続のIT化の一環として、和解期日(89条2項、3項)及び弁論準備手続期日(170条3項)において当事者双方が期日に出頭せずとも電話会議等の利用が可能になった。(89条は、2項~5項の4項が追加されたが、今年施行されたものは2項及び3項。)
特に注意すべきは、従来の弁論準備手続においては、一方当事者が裁判所に出頭する必要があり(改正前民事訴訟法170条3項ただし書)、かつ、裁判所が相当と認める場合として、「当事者が遠隔の地に居住しているとき」(同項本文)という例示規定が存在したが、これらが削除された。

③所有者不明不動産関係(125条)

※ 民法上に所有者不明不動産管理命令の制度(民法264条の2~264条の8)が新設されたことに伴い、訴訟手続の中断事由として、所有者不明不動産管理命令が発せられた場合等が追加された(民事訴訟法125条)。

短答肢出題例【今年はこんな問題に注意!:民事訴訟法】

1.秘匿決定を得るためには、申立人等は、その住所等の全部若しくは一部、又は氏名等が当事者に知られることによって、当該申立人等が社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがあることを証明しなければならない。

答え ×(疎明で足りる) (133条1項)

2.弁論準備手続においては、いわゆる電話会議システムを利用して手続を行うこともできるが、このシステムを利用するためには、当事者の一方が期日に出頭していなければならない。

答え × (170条3項ただし書が削除された)

【刑事訴訟法】

①侮辱罪の厳罰化対応

刑法231条の厳罰化に伴い、公訴時効期間が1年から3年に伸長し(250条2項7号、6号参照)、逮捕要件が緩いものとなった(199条1項参照)。

短答肢出題例【今年はこんな問題に注意!:刑事訴訟法】

1.Aが侮辱罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があるときであっても、同人が定まった住居を有しない場合か、又は、正当な理由がなく捜査機関の任意出頭の要求に応じなかった場合でなければ、同人を逮捕することはできない。

答え × (刑事訴訟法199条1項ただし書、刑法231条)

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