あくまでも資格試験
1 司法試験の受験を決意した経緯
端的に言えば、「引き返すことができなくなった。」ということです。私は、高校生の頃から、周囲に対して「俺は弁護士になるよ。」と吹聴していました。
当時、弁護士に対して憧れたわけでも、弁護士が身近にいたわけでもなく、ただ単に、すごく大きな事を宣言してしまう癖がありました。その「せい」か「おかげ」か、周りの方には「こいつは弁護士になる。」と思い込まれていました。そんな中、大学4年生になった私は、一般企業への内定が決まっていたにもかかわらず、「司法試験受験or就職」の判断に迫られました。「吐いた唾は吞むような人間には成りたくない。」という思いが強く、司法試験受験を決意しました。
2 合格までの道のり
学部4年生で司法試験受験を決意した私は、学部のGPAが1点台で、法律科目知識が皆無であることはもちろん、卒業も危ぶまれるような状態でした。そこで、予備校(辰已ではございませんが、、、。)に入塾し、約6か月間で憲・民・刑・商の基礎講座を高速周回させました。なんとか関西大学法科大学院の既習コースに合格することができました。その後、民訴・刑訴・行政法も本格的に進め、4月の入学に至りました。
入学後最初の授業で地獄を見ることになりました。予備校で習った答案の型や論証が全く評価されませんでした。どの科目も法的関係、条文、要件効果、判例の本質的理解を全くできていませんでした。解いたことがある問題は何となく書けてしまう(なぜなら大まかな答えを知っているから。)が、知らない問題は全く書けない状態でした。つまり、既習コース合格は本当のまぐれで、当時の私には既習コース入学に値する実力が無かったという現実を入学後に突き付けられました。
正直、自分の選択を後悔しました。内定同期達は新社会人として活躍し、友達は結婚や出産などライフステージをどんどん進めていました。司法試験合格どころか、大学院の単位すら危うい23歳の私にとっては、全てを投げ出すには十分すぎる状態でした。
漫画や小説なら、ここから「負けるもんか。」「弁護士になって俺の方が活躍してやる。」などと熱い感情を抱いて、毎日とんでもない量の勉強に励むでしょう。残念なことに、現実はそんな熱い想いに貫かれて努力をし続けることはできません。いや、できる人もいるでしょう。しかし、私にはできませんでした。目の前の課題に追われ、合っているのかも分からない勉強法を続け、少し何かを覚え、理解したと思ったら知識を忘却し、理解が間違っていたことに気づき、また勉強し直して、を毎日毎日続けました。
ただ、意外にも努力は裏切らないもので、卒業のための単位を修得でき、2年が経った頃には模試でも合格を狙えるくらいにはなりました。「このまま7月まで頑張れば合格もあり得るな。」と僅かに心を躍らせながら勉強を続けました。
結果は不合格。しかし、幸い原因は明確でした。原因は論文の時間不足。受験対策としての答案作成対策が明らかに不足していました。これを克服するには答案を書くしかないと考え、辰已スタ論の受講を決意しました。2023年度開講のスタ論を12月ごろから受講し、毎週毎週答案を書き、解説講義を受講し、書き直しをひたすら繰り返しました。
7月になり、司法試験を受験しました。なんとか全科目で途中答案を回避し、後悔はない程度の答案を書くことができました。手応えとしても「合格可能性は十分にある。」という感じでした。
それから合格発表までの約4か月間、「もしかしたら落ちているかも。」「落ちたらこの年齢でまだフリーターか、、、。」「法律をちょっと知っている素人のおじさんになってしまう」などの不安が浮かんでは消えてを繰り返していました。
その後、合格となりました。
3 受験対策
司法試験もあくまで資格試験でしかないので、傾向と対策がものを言います。今から書く内容は「合格するため」の話です。司法試験を2桁台や1桁で合格することを目指す人が参考にすべきではないかもしれません。このことを留意して読んでいただけると幸いです。
1つ目は、傾向を知ることが大切です。司法試験は法律試験ですので、一見すると難しい法律論の理解が問われていると錯覚するかもしれません。ここで言う難しい法律論とは法務省が公表している出題趣旨などの各段落の最後の方に書かれている内容も含みます。しかし、誤解を恐れずに言えば、合否という点では難しい法律論は書けなくてもいいです。
では、何ができれば合格ラインに入れるのか。それは、問題文に書かれている事実の法的意味を文章として答案用紙上に明確に記載することです。司法試験全体の傾向として、この点が挙げられると思います。
これは残酷なことに、これまでの国語力が影響しますので、特に訓練せずともできてしまう人もいますし、訓練なしには全くできない人もいます。ですので、早期にご自身の国語力を把握してください。確認方法としては、1つの映画のストーリーを400字程度の文章で人に説明してみてください。これができなければ、(あくまでも個人の見解ですが)司法試験では国語力で苦戦を強いられると理解してください。その上で、日々の答案作成で対策してください。対策方法としては1文には1つ以上の意味を与えるように書くことです。国語力計測方法として「1つの映画のストーリーを400字程度の文章で書く」を挙げた趣旨は、次のとおりです。
映画は起承転結の4段階で構成されていると言われています。1文が約20文字として、各段階を5文でまとめると、1段階を約7個の意味で説明しきらなければなりません。結構な文章能力が求められると思います。ですので、これができれば司法試験における国語力は及第点と考えました。国語力が不安な方は是非やってみてください。
2つ目は、条文の定義・趣旨・要件・効果を徹底的に理解することです。暗記ではなく「理解」することです。当たり前のことですが、裁判官や学者の方は非常に優秀です。その方々が定めた定義や規範の文言一つ一つには重要な意味があります。その意味を理解していなければ答案上での正確なあてはめはできません。この意味で単に定義を空で言えるだけでは点数が伸びません。また、意味を理解していれば丸暗記も不要です。即座に思い出すことができます。
定義や規範の意味を正確に理解するには、いわゆる基本書を参照することも重要です。通読までは不要と思いますが、特に定義や制度趣旨は基本書を読んでみるべきだと思います。
3つ目は、短答対策の手を抜かないことです。短答は合格者平均を越えたいところです。合格者平均を超えるには辰已の短答過去問パーフェクトを3周すれば十分でしょう。ただ3周するのではなく、解説部分を熟読しましょう。判例や学説など、解答にあたり必要な知識が簡潔にまとめられています。十分に読み込んで知識を定着させれば合格者平均を超える可能性が高まります。問題数はかなり多いですが、毎日コツコツと進めると意外と2、3か月で終わります。是非とも取り組んでいただきたい教材です。
受験対策としては上記3つが重要だと思います。特に2つ目と3つ目は誰もが言っていることです。その意味では他の受験生がやっていることをしっかりやりきることが肝要です。
4 最後に
司法試験勉強開始から合格までは約2年~5年、ともすれば10年弱かかることもあります。長丁場になりますので、勉強をやめないことが重要です。勉強を続けるには精神面の健康維持が必要不可欠です。リフレッシュ方法なども重要ですが、それ以前に、周りと比べないことが何よりも重要だと思います。勉強の進捗だけでなく、同世代との人生の進捗も比較しないほうがいいです。比べるとしんどくもなりますし、そもそも皆それなりに不幸です。他人の幸せな面と自分の不幸な面を切り取って比べても何にもなりません。もし今、辛いと感じている人がいれば参考にしてみてください。
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辰已は羅針盤です
一橋大学法科大学院【既修】2023年入学 2025年卒業予定
2023年予備試験合格
【受講歴】スタンダード論文答練福田クラス 全国公開模試 他
