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社会人受験生としてお伝え出来ること

井上 大輝さん
受験歴: 2回
東北大学法学部
筑波大学法科大学院【未修】2020年入学 2023年卒業
【受講歴】全国公開模試
2024年度

1 司法試験の受験を決意した経緯

 私は法学部を出たものの司法試験を目指すことは無く、民間企業へ営業職として就職しました。しかし会社員として出世や昇給の面で悔しい思いをすることが多く、何か武器を身に着けたいと思い司法試験の受験を考え、社会人が通学可能な夜間ロースクールへ入学しました。

2 受験を続け、合格に至った経緯

 法科大学院では進級、卒業が厳しく、有職者向けの夜間ローということもあり授業に参加することが精一杯の同級生も多かったように思います。私自身も授業を聞いて何となく分かったつもりでいましたが、試験になると全然書けていないという状況でした。特に未修1年が非常に成績が悪く成績不良者として学校との面談があったり、苦戦していました。そういった中でなんとなく論文の書き方が身についていき、勉強の効率も良くなりギリギリの成績ではありましたが3年で卒業ができました。

 卒業後は辰已も含め各社の模試を受験するなど、一通りの準備をして臨みましたが憲法・刑訴がそれぞれF・Eと悪い評価を受け不合格となりました(ちなみにFは3000番以下なのですが、この年は短答合格し論文の評価がされた受験者数が3149人でした)。他の科目はC以上だったので不合格要因は明確でしたが、模試の成績では憲法や刑訴が良いが他の科目が悪い場合もあり、全科目において問題との相性によって大失敗をする可能性がある状態でした。

 2回目の受験では1回目受験での失敗を意識しながら、1回目受験でやり切れなかった範囲の学習を進め、Fだった憲法をAに、Eだった刑訴がBとなり合格しました。1年目では過去問の学習において処理手順を知らない問題や未知の論点(法科大学院で学習しているはずではあるのですが…)があり、1科目を解くのも時間がかかっており直近の過去問に触れる程度で本番に突入していました。しかし1年目不合格から7か月程度の間の学習は、直近の問題については既に1度起案していることや、初見の年度についてもこれまでの過去問学習で実力がついていたためスムーズに解くことができました。結果として平成24年度の問題まで遡って最低1回は起案をすることができました。

3 原因の克服について(論文対策)

(1)過去問対策(ぶんせき本)

 司法試験対策としての学習は8割程度が辰已のぶんせき本を利用した過去問の演習になり、残りは模試の解き直しでした。なぜ過去問対策を優先したかというと、1年目で憲法、刑訴でFとEとなったものの、他の科目はC以上であり、憲法と刑訴は過去出題された範囲で私の過去問学習が及んでいなかった年度からの出題だったからです。そこから、私は過去問で出題された部分を抑えていなければ他の受験生に大きく差をつけられてしまうと分析しました。

 次に、なぜぶんせき本を利用したかというと、出題趣旨から作成された答案構成例(つまり、正解筋)が掲載されていること、解説が掲載されていること、多数の再現答案と添削コメントが掲載されていること、が理由です。司法試験の論文の最大の難しさは出題趣旨や学者の方の解説を参照しても自分自身で優秀答案というものを作ることが極めて困難な点にあると思っています。実際にA答案、B答案、C答案を並べてみなければ書かなければいけないことや書いてはいけないことが見えてこないという問題がありました。また、例えば過去問で出題された分野を基本書や百選等でじっくりと読み込むことも有益な学習だとは思いますが、社会人受験生という立場上限られた勉強時間の中で過去問をなるべく多く起案する必要があったことから、解説や答案が一元化されているぶんせき本を利用しました。

 過去問は1度自分で解いてみて、その後解説や参考答案を見ながら自分なりに完璧な答案を時間をかけて作成するという形で学習をしていました。完璧な答案作成という工程で規範や用語の定義、判例の使い方などは自然と覚えてしまいました。一方で本番と近い環境で六法のみを参照して起案する訓練は出来ていなかったので、これは模試で訓練しました。

(2)全国模試(本番に備えて)

 模試については、会場受験の場合は平日2日、土日2日を利用するため社会人が受験すると負担が大きいですが、可能な限り会場受験をすることが望ましいと思います。私は不合格の年は模試で何通も「途中答案は避けてください」と添削を受けていましたが、本試験では火事場の底力で時間内に書き終わるだろうと楽観視し、2時間で絶対に書き切るという意識を持った学習をしていませんでした。そして不合格の年の本試験では、大して勉強をしていない選択科目に対する意識があまり無く、憲法からが本番といった姿勢で臨んでいました。その一発目の憲法で答案用紙1枚半(正確に分量を覚えていないですが2枚目を書き終えていないのは確かです)で試験時間が終わり、当然のFの評価を頂きました。このときに初めて模試でやらかしたことは本番でもやらかす、と痛感しました。合格した年の本試験では会社法で辰已模試が的中し、直前に模試を見返していたため知識面や時間面で大きなアドバンテージとなりました。

 また模試を受けると短答と論文の受験者の中での位置を知ることができ、本試験までの残り数か月の学習方針を決める非常に重要な手がかりになりました。私の場合は1年目の辰已模試は短答は受験生の中で40%の位置、論文は80%の位置にいたため、戦略的には論文に全振りとするのが合理的と考えました。そして1年目は短答合格者3100人中2900番の短答成績だったので、あまりにもギリギリでしたが結果的には正しい戦略を採ることができました。2年目は模試では短答も論文もどちらも若干平均を下回る位置にいたため、やはり論文重視での学習方針としましたが、結果としては正解だったように思います。

 模試受講後は解説講義を見ながら自分なりの完璧答案を作成していましたが、講師の方の「直前でも伸びる!」といったような言葉には大変勇気づけられました。また、不合格となった年の模試の講義ですが、憲法の松永先生の「こういった権利の特徴を踏まえていない答案は本試験ではほとんど点つかないですよ」という説明にはハっとしました。それから合格の瞬間まで、憲法上のその権利がどういうものか、という視点は常に答案に示すように意識を持つことができました。振り返ると、本番に近い環境で書く訓練というつもりで受けていた辰已模試でしたが、ヤマ当てやその後の学習計画、時間分配やモチベーション、また論文での重要なポイントを得るといった意味でも有意義でした。

(3)ハイローヤー(スキマ時間の学習)

 社会人受験生にとって、スキマ時間の有効活用は必須かと思います。私は電車移動が多かったのですが、その時間は本試験のヤマ当て号のハイローヤーを読んでいました。理由は雑誌形式のため分量が少なく気軽に読めることや、5分程度の時間でも出題可能性が高い論点を1つ2つ目を通せるからです。ハイローヤーを購入したのは2回目受験の半年ほど前ですが、私はヤマ当て号のみ3年分購入しました。そして過去問を解いたり模試を解いた際の規範、定義やポイント等で関連する部分をハイローヤーの余白に書きこんでいました。上述の通り分量としては薄いので、電車内の立ち読みでも3年分を何週も読み込めることや、関連部分の書き込みから日々の過去問学習の復習にもなりました。

4 これから受験する人へのアドバイス

 私は社会人をしながらのロースクール生だったため、近い状況の人が少ないかもしれません。しかし、ある意味では旧司法試験よりも新司法試験の今の方が社会人がチャレンジしやすい環境ができつつあるのではないかと考えています。現在関東圏にお住まいの方であれば、そのまま夜間のロースクールへ通うことが出来ますし、それ以外の方でもコロナの影響でビデオ授業が普及しており進学が可能かもしれません。また在学中受験が始まった影響で予備試験を目指されている社会人の方でも、ロースクールの既習であれば入学1年後には本試験受験が可能ですから、ある程度は予備校等で学習した後に時短勤務や休職等を活用する計画でチャレンジが可能かとも思います(在学中受験がされてから、実際に予備試験を目指されていた社会人がロー進学するケースが非常に多いように思います)。また、ストレートに大学、大学院と進学された専業受験生はおそらく短期合格に対する強度のプレッシャーがあると思いますが、社会人受験生は時間的、体力的には厳しいものの、とりあえず勉強を開始してみて、合格が見えてきたタイミングで仕事をセーブするなどの中長期的な戦略が採れるメリットがあると思っています。もしもチャレンジを検討している人がいれば、是非軽い気持ちで勉強を始めてみて欲しいです。

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