効率厨&ナマケモノの司法試験受験法 最小の時間と努力で在学中合格
1 受験を決意した経緯
大学入学時に法曹コースがあると知り、大学一年時の成績が良かったため、法曹コースを使って早く合格できるかもしれないと思ったことです。もともと法律の勉強に興味があって、実際に勉強してみて面白かったですし、成績や法律勉強系のサークルでの勉強を客観的にみた時に司法試験に受かると思いました。周りに入学時から勉強している友人もいて、法曹という進路について見聞きする機会が多かったことも大きいです。
2 合格に至った経緯
①受験開始(大学2年次)
法律の勉強は大学2年生になったタイミングで始めました。大学ではスポーツ系のサークルやバイトをする傍ら、余った時間にインプットをしていました。また、インプット後に該当範囲の短答問題を解いて復習していました。
②受験2年目(大学3年次)
初めて受けた予備試験では運良く一般教養の点数が良かったため、短答に合格しました。それまでは、大学で学んでいた憲民刑しか論文答案を書いたことがなかったので、選択科目のインプットと下四法の答案の書き方を二ヶ月で詰め込みました。答案を書く時間はなかったため、大学のゼミの教授に聞いた方法(=問題を読んだら頭の中で答案構成をして、すぐに模範答案を読む方法)をとりました。また、大学で実務家が勉強を教えてくれる法学研究所というところに属していたので、そこで下四法の答案練習をしました。結果として論文試験は7点差で落ちましたが、2ヶ月の詰め込みで合格点に近い点数を取れたことが自信に繋がりました。答案の書き方や勉強の方向性が間違っていないことがわかったため、司法試験まで勉強方法は変えませんでした。
③受験3年目(法科大学院1年次)
その後、法曹コースによる5年一貫型入試に合格し、同大学の法科大学院に入学しました。大学3年の秋学期は、辰已研究所の特待生 になれたため、予備スタ論で答案練習をしました。また、選択科目特訓講座も受けました。法科大学院入学後の2回目の予備試験は短答落ちしたため、夏休みは全て就活に捧げ、司法試験の過去問は秋学期から見始めました。秋学期からはクラスメイトとゼミを組み、「今週はこの科目のこの年度を解く」と決めて週一で集まって互いの考えや答案を検討していました。私は答案を書かないので答案構成だけメモして、友人の答案をみたり疑問を共に考えたりする立場でした。ゼミは答案を書く場所というより司法試験過去問を全て網羅していくためのメルクマークでした。
ちなみに、大学生活を3年で終わらせた関係で大学時のサークルには法科大学院入学後も参加しており、司法試験の4ヶ月前まで続けたのち引退しました。バイトもその頃までやっていました。
④受験4年目(法科大学院2年次)
法科大学院2年次に上がる春休み中に平成18年まで遡り全ての過去問をゼミでみることができたため、2年次に上がってからは過去問を周回したり短答をひたすら解いたりするなど仕上げの作業に時間を使うことができました。大学院の授業は6月中に終わりましたが、自習室には友人が大勢いたので廊下で雑談や勉強での質問をし合いながら余裕をもって受験に挑むことができました。
なぜか受験直前からテンションが高く、メンタルの状態も好調だったので試験は楽しく終わらせることができました。勉強の時から再現答案や過去問を何度もみて合格の大体の目安を把握していたので、問題を解きながら「この論点はこれくらい書けば大丈夫」と考えることができ、時間配分もうまくいきました。選択科目を受けた時から合格を確信できたため、合否発表までも安心して過ごすことができました。
受験時はとりあえず受かればなんでもいい(短答は7割、論文は上位1500人くらいに入れる答案を書けばいい)と思っていましたが、蓋を開けてみると論文52位、短答140点で意外にも上位だったので、これまでやってきたことが間違っていなかったと思えました。
3 具体的な受験対策・勉強法
①インプット
インプットは某予備校で一年で7科目を網羅するスケジュールで行いました。個人的に勉強はゴールと自分の位置を明確にした上でその最短距離をなぞるものだと思っているので、とにかく早く内容を網羅したいと考えて時間さえあればインプットを進めていました。内容が重厚で、全てを網羅している際に前学んだことを忘れないため、学んだ箇所の短答式の問題を繰り返す復習を行なっていました。インプット開始時から短答を疎かにしないことが、今後の予備試験や本試験の短答に活きたと感じます。また、インプット時は情報量が多すぎるのでランクづけをしっかりやることも大切だったと思います。
②アウトプット
私が初めてアウトプットについて考えたのは大学一年生の中間試験の時です。当時はコロナ禍で全てオンラインだったのですが、先輩等から大学の試験の過去問をもらってもその書き方がわかりませんでした。当時は司法試験受験を開始する前だったのでネットで書き方を調べたり実際の答案を見て見よう見まねで答案を作ったりしていました。ただ、この頃から実際に答案を全て書く必要はなく、既に存在する答案例をみることで書き方を把握することができると学びました。
私が本格的にアウトプットを学んだのは勉強2年目で予備試験の短答に合格した時でした。二ヶ月弱の間に予備試験の過去問を解く時間はなかったので、過去問は答案構成にとどめ、優秀答案や模範答案を読むことでどう書けばいいかを学びました。当時は下4法のインプットすら怪しかったので、アウトプットは最小限にとどめたかったです。そもそもめんどくさがりで答案を書くことがとても苦手だったので、この方法が合っていたと思います。私のように、答案を書くことが目的となってしまいダラダラと答案を書く癖がつきそうな人は、①問題をフルスロットルで読む②答案構成を短時間で行う③すぐに模範答案を見て復習、という数十分で終わる過集中によるサイクルを作ることがおすすめです。
また、スケジュールとして私は本試験直前までサークル活動をするなど忙しい日々を送っていたため、特に“タイムパフォーマンス”を常に気にしていました。あまり大きな声では言えませんが、私は大学も法科大学院も授業の内容はまともに聞いたことがないですし、答案を書くのも嫌、暗記はもっと嫌、というナマケモノです。そのため、勉強時間はかなり限定した上で過集中サイクルを作ったことは役立ちました。世間ではインプットとアウトプットは3対7など、アウトプット重視ですが、私は全く逆だと考えています。極端な話、アウトプットは学んだことを綺麗に答案の形にする方法を一度覚えてしまえば、それ以上必要ないと思っています。そうなると10対0となり、やるべきタスクが限られるので楽です。
③短答
憲法についてはわからない問題はわからない(安定して満点が取れない科目)ので、確実に解けるところを作るような守りの勉強がいると思います。人権分野は判例百選を細かくみる、統治分野は条文と百選の2冊目をちゃんと読んでおく、というのが当日役立ちました。
民法については満点を狙える科目です。判例法理は論文のための勉強をしっかりしていれば解けます。条文問題はとにかく素読をしまくってほしいです。毎日少しづつでも素読周回していると驚くほど解けるようになります。
刑法についても満点が狙えます。基本的には論文の知識がスライド可能です。各論は細かい判例が出てくることもあるので刑法判例各論をみて知らない判例を探すといいです。
④その他意識して行なった勉強法
法科大学院入学後は予備校のプログラムも終わり、暇だったので基本書に手を出しました。「手を広げすぎない方がいい」という受験通説については全く同感なのですが、法科大学院の高いプログラムに呼応することや予備校でのインプットで対応しきれない箇所があることから一科目一冊くらいは自分に合う基本書を持っていていいと思います(特に法科大学院による受験資格の方は、インプットを深める時間があるはず)。基本書を決めたらその本を何度も周回するのがおすすめです。私は暗記が大嫌いなので論証を使うことはなかったのですが、同じ基本書や百選を何度も読めば意識的な暗記をせずとも勝手に体が覚えてくれて(日本人がみんな桃太郎を知っているのと同じ感覚)ストレスフリーなので、暗記が大嫌いな人は繰り返しによる周回をしてほしいです。
また、百選は刑法以外全て周回して潰していました。受験生が知るべき基本論点は全てここに入っているはずなので、周りとレベルを合わせたい方にはおすすめです。結局受かるためには、知らない論点での現場思考に賭けるよりも、みんなが書けるところをもれなく自分も書けるようにしておくことが大事だと思いました。特に、憲法や民事訴訟法は解説で判例とは違う考え方が載っていて、論文にかなり使えるのでそこまで読むことをお勧めします。
⑤辰已講座の利用方法とその成果
・予備スタ論
予備試験向けの答練でフルコースをお受けました。答案を書くのが嫌いな私には苦しい時間でしたが、強制的に答案を書かざるを得ない対面の環境で受けたのが良かったと思います。答案を書いた後の自分の手応えと実際の点数を見比べることで自分に対する見方を客観的なものへと修正できたことも良かったです。点数票が細かく書かれていて、自分がどこで点を落としているのかが詳しくわかるので、点数を意識して答案を書くようになりました。先生方の解説も大変分かりやすく、インプットの中で忘れかけていたことや答案のメリハリについて再確認できました。他の予備校に比べても答練は辰已が一番いいなと思ったので、迷っている方は実際に受けてみてほしいです。
⑥私が使用した本
・ぶんせき本
過去問・出題趣旨・採点実感が全てまとめて載っていて大変便利でした。再現答案も載っていて合格ライン把握のための必須本です。ゼミで使いまくりました。
・事例演習刑事訴訟法(古江)
一回は読んでほしい優秀本です。法科大学院ではほとんどの学生が持っていました。
4 アドバイス
①LS在学生へ
法科大学院は拘束時間が長いので、授業の予習復習を完璧にやろうと思わずに司法試験を見据えて行動をとってほしいです。また、人間関係を大切にしてほしいです。試験の過去問を回してくれたりゼミを組んだり雑談相手ができたりなど、いいことがたくさんありますし、将来修習生や法曹になった時に法科大学院での同級生や先輩はとても大きい存在になります。成績や先生からのフィードバックを大切にして、受験生としての立ち位置を見定めることも日頃から意識するといいです。
②来年初めて受験する方へ
とにかく早めに過去問周回を終わらせて、余裕を持って試験を迎えられるように計画を立ててほしいです。最初の相場感が分かりにくいので、過去問の再現答案や成績から合格ラインを早めに知り、それまでにやることを明確にし、全てを早めに終わらせてください。
③来年のリベンジ合格を目指している方へ
メンタルがかなり大事だと思うので、終わった科目について決して振り返らないでほしいです。不合格時の成績や自分の再現答案から自分と合格ラインの差をしっかりと把握してそれを埋める作業、他者に答案を見てもらって合格者の答案へと近づける作業がおすすめです。
④社会人受験生へ
社会人未経験のため有用なアドバイスはできませんが、タイパ命だと思うので自分なりの過集中できる効率的な方法を見つけてほしいです。また、受験仲間が周りにいないとネット上の変な噂や言説に巻き込まれがちなので、リアルな相場観を保ってほしいです。
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辰已は羅針盤です
一橋大学法科大学院【既修】2023年入学 2025年卒業予定
2023年予備試験合格
【受講歴】スタンダード論文答練福田クラス 全国公開模試 他
