在学中合格のすすめ
中学時代からドラマや先輩の話を聞く中で漠然と憧れていた法曹の道でしたが、まさか本格的に自分が司法試験に取り組むとは考えていませんでした。
そんな中、自分を決心させたのは入学とともにコロナ禍の緊急事態宣言が発令されてしまい、外出が制限される中、自分だけがどこか取り残されているような感覚に襲われたためでした。
そこからはまずは予備試験の合格を目指して、法律基本科目のインプットに努めました。法律基本科目だけでも7科目もある司法試験勉強は大変で、一つ覚えてもまた一つ忘れることの連続で、道のりの途方のなさに絶望していたことを覚えています。
それでも万里の道も一歩からと、自分を励まして頑張っていたのですが、最初に挫折を感じたのは予備試験の短答式試験でした。自分は大学受験をしておらず一般教養科目が得意でなかったため、短答式試験の合格のためには法律科目の点数を高める必要がありました。けれども、そもそも問題文自体が何度読んでも難解で、読むのだけでも疲れてしまいます。そのため、一問一問を解くのに多くの時間がかかってしまい、あのタイトな短答式試験の時間内に解き終えることすら不可能でした。ようやく時間内に終わるようになっても、今度は正答率の低さに愕然としてしまい、今までのインプットの時間がなんだったんだろうと無力感に苛まれました。そんな準備不足の中で受けた初めての短答式試験は当然不合格。点数も120点にも満たず全く惜しくもない成績での惨敗でした。
そんな先輩から勧められて購入したのが短答パーフェクトでした。初めは短答パーフェクトのあまりの分厚さに気圧されていたのですが、「これを完璧にすれば絶対受かるから」との言葉に背中を押されて少しずつ解き始めたのを覚えています。
その時に、伺った勉強法は短答パーフェクトを解いて、間違えた問題を判例六法に一元化していくというものでした。短答式試験の出題のほとんどは条文か学説を問うものなので、判例六法に一元化するのは極めて効率的な勉強法だと思います。そしてこの勉強法の利点は、論文に比して短期的な記憶がモノを言う短答式試験において、試験直前にまとめて苦手分野を復習できる点にあると思います。それからの自分はどこに行くにも短答パーフェクトと判例六法を持ち歩いて隙間時間にこれを解き進める毎日を始めました。
そんな勉強の成果が発揮され、二度目に受けた予備試験の短答式試験は合格し、自分の勉強法が誤りでなかったことがわかり、とてもホッとしたのを覚えています。
その年は、予備試験に初めて選択科目が導入された年で、選択科目の不勉強も相俟って論文試験に不合格になってしまったのですが、法科大学院の合格が決まったため、それからは司法試験の勉強を始めるようになりました。
司法試験の勉強は、ロースクールの授業を中心に行いました。特にいわゆる「紅白本」と呼ばれる会社法 第3版や、刑法事例演習教材は非常に役に立ちました。
前者の紅白本は司法試験で問われる会社法の知識を網羅的にわかりやすく詳述されており、過去問の復習に非常に役立ちました。後者の刑法事例演習教材は、判例をベースに事例が作成されており、司法試験刑法も判例がベースになっていることも少なくないため、事例演習教材と似たような内容が出題されている年度もあり、実践的な事例演習の素材として重用していました。
既習2年の秋学期になってからは司法試験の過去問を各科目最低7年度分起案し、その上で過去問から再度の出題が多い刑事訴訟法や行政法は全年度答案構成により網羅していきました。
このように論文式試験の対策をする傍ら、先述したような方法で短答パーフェクトを解き進めることで、短答式試験の対策も進めていました。
このような勉強法は受験生の方にはぜひ行って欲しいですし、ボーダーラインにいる受験生の方の多くが似たようなことをしているのではないかと思います。
その中で、自分としてはあと一つ重要なことをお伝えしたいです。
それは、模試を最低2回受けることです。具体的には、ロースクールとも提携していて受験者数最多を誇るTKCと辰已法律研究所の模試です。
TKCに関しては、やはり母数が多いため、自分の立ち位置がわかりやすく自分の立ち位置を相対的に知るために非常に有用です。そして、辰已の模試に関しては、TKCの模試よりも添削が詳細であることや、模試に出題された問題が本試験にも的中することが多々あるということです。実際に自分は、3月にTKCの模試を受験したあと、2ヶ月間自分の知識のブラッシュアップを図り、5月に辰已の模試を受験しました。これを行うことで、模試に合わせて勉強のピーキングを定めるため、勉強の質を高く保った上で、勉強に取り組むことができました。また、本試験の商法では、株式分割が問われたのですが、辰已模試においても同様の株式分割の問題が出題されており、受験生の対策が手薄になりがちな株式分割について他の受験生と差をつけることができたと感じております。また、模試の添削も詳細であるため、直前期の復習にもとても役に立ちました。
このようにして、自分は本試験当日を迎えることになるのですが、ここからはあえて自分がしておけばよかったことについて書きたいと思います。まず、一つ目は短答対策を後回しにしないことです。自分は、短答式試験対策は短期記憶の勝負であると感じていたこともあり、直前期の6月に本腰を入れて頑張れば良いと考えていました。しかし、直前期の6月には、論証を覚えたり、今まで解いて苦手だった過去問を軽く復習する時間がウェイトを占めてしまい、思うように短答式試験対策ができなくなってしまいました。(それでも思い切って短答式対策をするという方法もあると思いますが、司法試験は論文式試験から始まるため、直前期に短答式試験の勉強ばかりをするというのは、精神的にキツイ気がしています)そのため、結局一応は一元化していた判例六法を司法試験の最終日の前の晩に読み込むくらいしか短答式試験対策をできず、短答式試験で思うような点数が取れませんでした。だから、これからの受験生の方は、短答式試験対策を後回しにせず、年明け前の比較的早い段階から行うことを勧めたいです。二つ目は、論文式試験対策は過去問対策に全振りをすることです。司法試験の過去問を検討している人ならわかると思うのですが、司法試験は繰り返し出題されることが多い試験です。そして、過去問は、新司法試験が始まってからもはや20年近く経過しており、過去問の蓄積も多くなっています。そんな中で、必然的に過去問で出ている出題が再度出題されることは多々あるので、特に在学中受験の方は時間が少ないため、過去問を中心とした勉強法をとっていただきたいです。具体的には、司法試験対策として各予備校が答練を作成していると思いますが、在学中受験の方は時間の都合上、これは採らなくて良いのではないかと感じています。答練は、ペースメーカーとしては非常に有用なのですが、ロースクール在学中の方は、ローの授業をペースメーカーにすることができますし、先述したように模試を複数受けることでより緊張感を持って試験対策をできると考えるためです。そのため、在学中受験の方は答練に手を広げるよりも、過去問検討に絞って対策をして欲しいです。具体的な勉強法なのですが、自分はぶんせき本を利用していました。ぶんせき本は、辰已法律研究所が作成した完全解だけでなく、実際のA答案、そして合格答案ではあるもののあと一歩のC答案が掲載されており、現場で書ける実践的な答案を探るのに非常に有用です。そのため、ぶんせき本を使って過去問対策を進めて欲しいです。
最後になりますが、司法試験は決して合格できない試験ではありません。地道な努力をコツコツと積み重ねられる人なら絶対に合格できる試験です。受験生のみなさん、最後まで粘り強く頑張ってください。応援しています。
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辰已は羅針盤です
一橋大学法科大学院【既修】2023年入学 2025年卒業予定
2023年予備試験合格
【受講歴】スタンダード論文答練福田クラス 全国公開模試 他
