司法試験

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学習歴がある方の合格戦略

栗原 佑介さん
受験歴: 1回
早稲田大学法学部
筑波大学大学院人文社会ビジネス科学学術院法曹専攻【既修】2022年入学
【受講歴】本試験分析会 他 書籍利用など
2023年度

1 司法試験の受験を決意した経緯、合格までの道のり

 私は、高校生の頃から弁護士志望であり、大学の附属高校から、平成16年に法学部に進学し、勉強を始めました。しかし、当時あった旧司法試験の一次試験が免除される3年生になる頃には、旧司法試験は段階的に縮小、廃止されることが決まっており、平成18年、19年と受験したものの、択一試験も通りませんでした。合格に至るまで、民法の択一に苦手意識があり、これは今回の点数にも影響しています。

 その後、旧司法試験を諦め、裁判所職員として平成31年3月まで勤務しましたが、異動希望が全く適う見込みがなく、同年4月に民間企業に転職しました。転職を機に、予備試験を受験することとし、令和元年~令和3年の3回予備試験を受験しました。いずれも短答式試験は通過するものの、論文式が通過しませんでした。

この時期、世はコロナ禍で、私の所属会社では、原則在宅勤務となりました。また、大学ではコロナ禍によるオンライン講義参加が認められるようになったことで、通勤・通学時間ゼロでロースクールに通えるのではないかと思ったこと、さらには、令和4年4月入学生から在学中受験ができることから、同年7月の論文式に落ちていた場合は、最速で司法試験にチャレンジできると思ったことから、論文式の翌月に出願が始まった現在の大学院を受験しました。

筑波大学は唯一の国立の社会人大学院であり、学費も安いだけでなく、既修コースは、専門実践訓練教育給付金対象のため、原則年間40万円の給付があり、かなりお手頃価格で入学できることも、迷いなく出願する契機となりました(給付金の対象とならない公務員を辞めてから3年以上経過していたため、受給要件を満たしていたことも幸いしました。)。

入学後、令和4年に予備試験は受験していましたが、論文式で3点近く足りずに力及びませんでしたが、この成績を見て在学中受験を決意し、令和5年司法試験を受験し、無事合格しました。

短答は準備不足が響き、119点と合格者平均を下回りましたが、論文では公法系科目141.99点(上位2%未満)、民事系科目160.25点、刑事系科目106.52点、選択科目(知的財産法)69.09点(上位5%未満)、論文合計477.56点(393位)、総合得点954.74点(510位)と点数的には比較的余裕で合格することができました。

2 法科大学院受験前の学習状況(法律学習)

 法学部での4年間の間は、旧司法試験を2回受験していました。当時あった辰已法律研究所の基礎講座を受験するほか、論文答練や択一前の全国模試を受験していました。

裁判所職員となった直後は、裁判所書記官になるための裁判所職員総合研修所書記官養成課程の入所試験(通称CE試験)のため、憲法、民法、刑法、訴訟法(私は刑事訴訟法を選択)を勉強していました。当時はロースクール修了したものの司法試験に合格できなかった人が多く受験しており、1回目は2次試験で落ちてしまい、2回目でCE試験に合格しました。入所後は、1年間、Off-JTで実務に関連する法律を学習する機会がありました(この機会はロースクールで役立つことになります。)。

また、筑波には、社会人向けの法学の修士課程があり、2012年~2014年は働きながら著作権法の研究をしていました(このとき取得した単位がロースクール入学の際に一部認定されることになります。)。専門の知的財産法の知識を活かし、2018年11月には弁理士試験に合格、2018年9月には別の大学院の後期博士課程に入学し、2022年3月に博士号を取得しました(この専門知識は選択科目で発揮されることになります。)。

このように司法試験の勉強からは離れていましたが、博士課程と並行して裁判所書記官を退官することに決めた2018年11月頃から予備試験の択一の勉強を始め、ロースクール入学前まで独学で司法試験の勉強をしていました。

3 法科大学院入学後の学習状況(法律学習)

 社会人はとにかく可処分時間がありません。本業のフルタイムの仕事の他、入学から7月までは予備試験の勉強を並行し、それがなくなった10月からは、兼業で始まった非常勤の大学教員の仕事もあり、24時から28時がロースクールの勉強に充てられる時間でした。そのためには、とにかく進級できるだけの単位、評価は死守しつつ、設問ごとでも、過去問に取り組まなければなりません。

というのは、筑波では、長期間講義がないのは、春休みの2月、3月だけです。夏季はお盆の時期に1週間ありますが、休み明けに定期試験があるため、実質的に勉強期間であり、在学中受験を考えると、既修1年2月から落ち着いて過去問を解くのでは遅すぎるからです。また、筑波は現時点(2023年度)でも、全回オンライン参加での受講が認められるほか、一部の選択科目は録画視聴も認められています。そこで、録画で出席となるものは、勉強時間にできる24時から28時の間を録画視聴する時間としても使っていました。純粋に司法試験に向けた勉強を確保できたわけではありません。

ただ、旧司法試験、予備試験の経験(に加え、少しの書記官としての実務経験)があると、ロースクールの講義は実務系科目を含め、基本的にはこれまでの「復習」です。社会人は時間がないので、ここで身に付けなければ本試験で出たときに対応できないという危機感を持って聞いていました。そのため、事前の課題を処理しながら趣旨・規範ハンドブックで知識の確認をし、講義で完全に「復習」を終えるサイクルを心がけていました。講義後の復習はしていません。期末試験の直前に確認するだけに留めました。

4 受験対策として、① 辰已講座の利用方法とその成果

 旧司法試験時代は辰已の講座をよく利用していましたが、予備試験以降は基本的に独学でした。ロースクール入学後は、今振り返っても、講座を受講する余裕は全くありませんでした。

5 受験対策として、② 「私がやって成功した方法」「私のノート作成術」「私のスケジュール管理方法」等々

 ノート作成、スケジュール管理もしていません。スケジュールよりも、何をこなしたかを残す方が重要だと思っていました。司法試験、予備試験の過去問については、検討した都度、エクセルに星取表のような形でまとめていました。これは、まとまった時間を確保して過去問に取組むことがあまりできなかったので、設問ごとに解いた際に、何をどこまで検討したのか記録を残す意味もありました。

6 受験対策として、③ 私が使用した本

 とにかく、資料の一元化を意識していました。

 短答対策は、予備試験の短答に最初に受かるまでは、短答パーフェクトを中心に、これをひたすら解き、六法を確認するという王道の勉強法をしていました。これで憲法、刑法は特に苦手意識もなく、予備試験の短答式含めてクリアしていました。他方で、民法が最後まで成績が伸びず、苦手意識がありました。

 短答式は、年度ごとに解く、体系別に解いていくなど方法は様々ですが、短答パーフェクトであれば、体系別は勿論、巻末を用いて年度ごとに解くことも可能です。短答は8割が合格する試験ですが、その勉強法は、問題を解き、解説を読み、条文・判例を確認するという砂を噛むような作業です。個人的にはこの作業が最も辛かったですが、合格者はこれを乗り越えています。このような「作業」から逃げては合格には至らないと思っています。

 論文対策では、予備試験の過去問は、「令和2年(2020年)~令和4年(2022年)司法試験予備試験論文本試験 科目別・A答案再現&ぶんせき本」を使っていましたが、司法試験は、学校が提供するTKCデータベースで提供されるものを使っていました。長文の司法試験の答案を検討する余裕がなかったというのが正直なところで、他の人が論文でどのような事実認定をしているのか、検討することができずに終わってしまいました。

 他方で、予備試験のときから、講義の予習復習、司法試験本試験の直前の直前まで使い倒したのが、趣旨規範ハンドブックです。全科目使いました。これ以外に、別の予備校の市販の論証集にしかない論点について、論点とキーワードだけ書き込むことで、一元化していきました。それ以外の論点が出た場合は、周囲もできないだろうと考え、自分の学習範囲の目安に使っていました。合格した今でもこの戦略は間違っていなかったと思っています。

 選択科目は、最初から最後まで、「1冊だけで知的財産法(改訂版)」しか使っていません。この本だけあれば、過去問だけでなく、採点実感も確認できるので、安心感があり、実際に掲載された過去問を検討すれば明らかですが、十分に対応できる内容になっています。他方で、再現答案しかなく、50点台の論点落とし、致命的な事実誤認ある答案しかないのは残念でした。採点実感の指摘を踏まえた参考答案があるとより活用できると思います。

 直前期は、ハイローヤー2023年春号の「司法試験&予備試験対策 論文 大ヤマ当て」を試験直前含め、何度も読み返していました。刑訴では領置が出題されるなど、命拾いしました。

 基本書は使わない方針でした。ただ、憲法など数年ぶりに勉強を再開した方は知識が陳腐化しているので注意が必要です。合格に不可欠と思って購入した基本書として『基本刑法Ⅰ・Ⅱ』(大塚裕史ほか)、『憲法Ⅰ・Ⅱ』(渡辺康行ほか)、『基礎からわかる民事訴訟法〔第2版〕』(和田吉弘)があります。いずれも辞書的に使っていました。

7 自己の反省を踏まえ、これから受験する人へのアドバイス

(1)働きながら司法試験合格を目指す全ての方へ

 ロースクールや予備試験、社会人受験生が増えているようです。これから働きながら司法試験を受験しようと思われている方は、「合格者」の実態を把握したうえで予備試験なり、ロースクール入学を検討した方がよいと思います。勿論、今、ロースクール入学できる時間や経済的余裕があれば、入学した方がよいと思います。現在の制度では、受験資格を得る方が、ハードルが高くなっているからです。また、育児や介護といったライフイベントが起きて、タイミングを逃してしまうと、次のチャンスはないかもしれないからです。私はコロナ禍でのオンライン講義の全面化や、在宅勤務の双方がなければ、到底受験資格を得ることはできませんでした。

 他方で、専業の学生と同様の期間で働きながら司法試験に合格することはかなり厳しいことは知るべきです。後述のとおり、旧司法試験やロースクール2回目といった方が「社会人」のカテゴリで少なくない数います。働きながら、「入学前の1年間予備校での基礎講座+ロースクール期間中の勉強」のみで合格というのは、専業の学生と比して勉強時間が不足するのは勿論、合格する水準に達するには、十分ではない可能性があります。

(2)学習歴(旧司法試験、予備試験、ロースクール2回目)がある方へ

 旧司法試験は10年以上前に終了した制度ですが、他の方を見ても、社会人向けロースクールということもあり、受験経験者が思いのほか多く、短答複数回合格者もいます。また、ロースクールは2回目という方もいます。社会人の在学中受験は、そうした入学前の過去の知識や経験に裏打ちされて合格した実績が多く含まれていると思われます。

 私も在学中、現在の制度の司法試験に1回で合格しましたが、予備試験も複数回受験しており、旧司法試験の勉強などの経験があります。旧司法試験は択一で落ちていますが、予備試験において、最も論文の合格に近かった令和3年は、合格点240点以上のところ、237.52点でした。

 私はロースクール入学前の長年の法律学習があり、これが合格に大きく寄与しています。過去に学習歴のある方は、過去問5年間分きちんと分析して臨めば、合格率も高くなっている今、合格しやすくなったと思います。論点を落としても、これまでの制度と比較して、リカバーが圧倒的に楽な印象です。ただし、問題が簡単になったわけではないと思いますので、その点は注意が必要です。再チャレンジの参考にしていただければ幸いです。

以上

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