司法試験

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落ちないための勉強方法

K.Nさん
受験歴: 1回
早稲田大学法学部
早稲田大学大学院法務研究科【既修】2020年入学
【受講歴】スタンダード論文答練福田クラス 福田ファイナル予想答練 他
2023年度

1 司法試験の受験を決意した経緯、合格までの道のり

 私が法曹を志したきっかけは、大学2年時に旅行先の奄美大島で住居侵入及び窃盗の冤罪に巻き込まれそうになったことです。以前から、弁護士という職業になんとなく憧れを抱いていましたが、上記事件を経て、法治国家において法を理解し使いこなすことの重要性を身をもって感じました。
 合格までは決して楽な道のりではありませんでした。予備試験短答式試験では、合格点に2点及ばない経験を2回しました。ロースクール入試も本命の国立ローに合格できませんでした。早稲田L S3年時には、必修科目の単位を落とし、同級生が司法試験に挑戦する中、ひとり留年生活を送りました。
 2022年9月に無事L Sを卒業したものの、勉強に関して言えば自信が全くない状態でした。「なんとしても1発で合格したい、順位はどうでもいい、とにかくこのコンプレックスを払拭したい」、そんな想いを胸に辰已の答練の受講を決意しました。中でも、福田クラスは「すべらないための答案を書く」ことをモットーにしていました。何を勉強しないか、いかに学習範囲を絞り効率的に合格するかを常に考えていました。福田先生と心中するような思いで勉強し、次第に答練でも優秀答案に選ばれる回数が増えていきました。試験2ヶ月前のTKC模試では合格推定圏内に入り、このまま継続すれば問題ないと自分に言い聞かせていました。

 迎えた7月11日。極度の緊張状態の中、試験会場に到着したのを覚えています。試験直前から睡眠障害と血便が続き、薬に頼る生活を送っていました。心身ともに限界寸前の私は、いい答案を書こうという気持ちよりも、「とにかく5日間耐えればいい、落ちても死ぬわけではない」と開き直っていました。1日目の労働法の手応えは相当悪く、憲法で生存権がらみの問題が出たものの、そもそも意味のわからない問題が出るだろうし、問題文を大切に問いに正面から答えれば十分であると考えていました。そのため、終始落ち着いた状態で最後まで受け切ることができ、無事合格いたしました。

2 法科大学院受験前の学習状況

 今振り返れば、当時の学習はほとんど意味のないものだったように思えます。とにかく、全範囲を完璧に抑えるという心構えがその原因です。予備試験の合格を目標に日々勉強していたものの、短答式試験すら突破できませんでした。論文対策では、短文事例問題を中心に規範を暗記することに注力していました。法科大学院にはなんとか合格したものの、当時のスタイルを貫いていれば司法試験にも落ちていたと思います。

3 法科大学院入学後の学習状況

 法科大学院入学後はインプットに割く時間を減らし、過去問中心にアウトプットを繰り返していました。よく「法科大学院の授業は司法試験対策にならない」旨の意見を聞きます。確かに、受け身でただ授業を受けているのでは、時間の無駄になると思います。司法試験に向けた学習を確立し、不足している部分を法科大学院の授業から盗むという姿勢でいるべきだと思います。ロー2年の冬頃から司法試験の過去問を解き始めましたが、もっと早い段階で取り組むべきでした。

4 受験対策(辰已の利用方法)

 2023年の2月からスタンダード論文答練を受講しました。この時期から一気に合格に近づいたような気がします。私にとって、この答練はペースメーカーでした。私は、答練で知識を補充するというよりも、本番で落ちないためのノウハウを得ることや2週間で各科目を可能な限り完成体に近づけるための環境作りとしてこの答練を利用しました。答練を本番と想定し、本番と同じような緊張感で準備しました。起案後は、福田先生の講義を聴き、できなければいけない問題とそうでない問題の区別、「一応の水準」が具体的にどのレベルのものかを徹底的に把握しました。限られた時間の中で、いかに学習範囲を減らすかを常に意識していました。答練を重ねていくごとに、受験生全体の相場感がわかってきました。司法試験は相対評価に過ぎないため、周りができない問題はできなくてよいのです。周りができることを自分もできるようにすることこそが落ちないための勉強方法だと思います。

5 受験対策(自分の対策方法、スケジュール等)

 いわゆるまとめノートのようなものは一切作りませんでした。効率的ではない上、自分には合わないと実感していたからです。司法試験では、毎年未知の問題がなんらかの科目で出題されます。とはいっても、体感で7割以上はいわゆる典型論点が出ます。「一応の水準」を確実にとるためには、予備校等で重要論点と言われるものの深い理解があれば、必要かつ十分であると考えていたため、基本的には、司法試験の過去問を部分的に起案し、出題趣旨と採点実感、優秀答案と合格答案、不合格答案の分析を繰り返しました。

 また、生活リズムを試験に合わせることには注力しました。朝6時半ごろ起床し、風呂掃除をしていました。自分にとっては瞑想のような時間で、精神を落ち着かせるのにはもってこいだと思います。基本的に毎日1通、9時頃から過去問を起案しました。ロースクールの友人とzoomで集合時間を合わせ、起案せざるを得ない環境を強制的に作りました。1日を午前、昼、夜で3分割し、そのうち、3分の2は論文対策、残り3分の1は短答対策に当てました。23時ごろには、勉強を終え、自習室から帰宅していました。この環境作りが合格に直結したと考えています。
 勉強場所は自宅から電車で30分ほどの有料自習室を利用していました。そこにお金をかけるのかとよく言われますが、公共の図書館等は多くの人が往来し、ストレスを感じることが多かったため、課金して正解でした。

6 受験対策(利用した書籍)

 前提として、近年の司法試験は、750点から800点が合格点になります。そこで、短答式試験、論文式試験でそれぞれどの程度取ればよいかを徹底的に分析しました。短答式試験で、140点、悪くても125点程度取れれば、論文1科目47点前後で合格できます。そのため、短答式試験では、125点は確実に取れるように対策しました。論文式試験では、全科目「一応の水準」を揃えることができれば、合格します。例えば、設問が3つあるとして、1つがしっかりできれば、他2つがいまいちでも十分合格できます。そして、そのしっかりと解けなければいけない1つは典型論点であることが殆どです。そのため、いわゆる重要論点は、他の受験生に書き負けないように準備するべきであると言えます。以上を目標に勉強を進めました。

論文対策では、辰已の分析本を中心に取り組みました。公法系と刑訴法については、過去問以外は取り組みませんでした。刑法は事例演習教材一冊で対策し、過去問は、問題の傾向を把握するために目を通す程度でした。民法についても過去問は直近5年の問題で傾向を把握するのみでした。公法系、商法、民訴法、刑訴法は、平成18年度から令和4年までの問題を部分的に起案し、分析本に記載されている出題趣旨、採点実感、答案例から「一応の水準」と評価される答案の共通点、傾向、及び不合格答案の共通点と傾向を洗い出しました。その結果、各科目の合格に必要なおおよその目安がわかりました。
 論証集に関しては、公法系は辰已の趣旨規範ハンドブック、民事系は民訴法を除き趣旨規範ハンドブックを用いました。民訴法は、BEXAから出ている判例百選を簡単にまとめたものを用いていました。刑法については論証集を用いることはありませんでした。刑訴法は、BEXAから出ているものを用いていました。
 次に短答対策としては、辰已の過去問パーフェクトを中心に取り組んでいました。とはいえ、解いた問題は、3科目とも全体の3分の1にも満たない程度です。なぜなら、合格するにはそれで足りるからです。予備試験の短答式試験に何度も落ちた原因を分析した結果、全問題を完璧にしようとし、消化不良に陥ったことが挙げられます。その時の反省を生かし、福田先生にご教示いただいた問題を中心に何度も解きました。具体的には、各選択肢の正誤を理由も含めて答えられるまで解きました。結果的に本番では、憲法がかなり難しく足を引っ張る形にはなりましたが、合計125点は超えることができました。

7 これから受験する人へのアドバイス

 「敵を知り己を知れば百戦危うからず」という言葉がありますが、司法試験もこれと同じだと思います。過去問を通して「敵」の傾向、癖、要求されていることを分析し目標を定め、その目標と現在の「己」との差を正確に把握し、その差を埋めることに限られた時間を使うのが賢明だと思います。
 L S在学生の方は、早い段階から過去問を分析し、勉強の指針を司法試験に合わせることをお勧めします。あくまでも私の体感に過ぎませんが、LSの授業の予習で得られるものは、授業で指名された時に答えられるという安心感だけだと思います。そこに時間を割くのではなく、司法試験に直結する学習を優先させたほうが賢明だと思います。確かに、L Sの授業は、知的好奇心をくすぐる瞬間がありますが、それが司法試験に役立つかと言われるとそうではありません。まずは合格することこそが最優先事項である以上、それに注力するべきだと思います。
 次に、来年受験される方にお伝えしたいのは、健康こそが資本であるということです。確かに勉強も大切ですが、それ以上に心身の健康を大切にするべきだと思います。司法試験は本当に過酷な試験です。心身ともに病んでしまう友人が何人もいました。健康で最後まで受け切ることができれば合格できます。自分を信じて、最後まで諦めないでください。勉強できる環境があることはとても恵まれたことです。両親を初め、友人、先生方、多くの人々があなたを支えてくれています。周りの人々に感謝し、時間を大切に、淡々と正しい努力を継続すれば必ず結果はついてきます。皆様もご検討をお祈りいたします。

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