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社会人の予備試験→司法試験合格奮闘記

伊澤 素彦(仮名)さん
受験歴: 1回
一橋大学法学部
2022年予備試験合格
【受講歴】スタンダード論文答練 予備スタンダード論文答練 他
予備試験ルート合格

1 予備試験・司法試験の受験を決意した経緯

私は現在30代前半の社会人ですが、予備試験・司法試験の受験を決意したのは30代を迎える少し手前のタイミングです。社会人としても数年が立ち、また30代という節目を迎えるにあたって、今後の自分のキャリアについて考えてみました。その結果、現職で、いわゆる「総合職」の立場で様々な部署を転々としながら育成されるジェネラリストよりも、特定の分野で専門性を磨き、その道のスペシャリストとして活躍する方が自己充足感を高められると感じたこと、時間や金銭の面でより自由度の高い生活をしたいと考えたこと、学生時代に国家公務員総合職試験に合格する程度の法律学習経験があったことから、予備試験・司法試験を受験して、法律分野のスペシャリストである弁護士になることを考えました。

2 予備試験合格までの学習状況

(1)基礎・論文学習

前述のとおり、私は学生時代に国家公務員総合職試験に合格しておりますが、国家公務員総合職試験は、短答試験で憲法・行政法・民法・刑法・商法が、論文試験で憲法・行政法・民法が課されるため、この時の学習経験を通じて、ある程度法律学習の要領は得ていました。そこで、まずは基本書を通読し、学習経験のある科目については記憶の喚起を、ない科目については全体像の把握を行いました。基本書を一周したら、市販の演習書を購入し、各科目演習を進めていったり、参考書を読んで知識を補充していくなどの学習を行いました。

(2)1回目(令和2年)の予備試験(短答)

短答の勉強は受験年の3月くらいから始めました。勉強方法は辰已の『短答過去問パーフェクト』をひたすら回していくという、シンプルな方法ですが、やはり短答過去問をこなすことが最も効率の良い短答対策であるように思います。この年はコロナ禍に直面し、当初5月予定だった短答式試験が8月に延期となりました。その分短答対策の時間が増えたこともあり、上位10%以内の得点で短答式試験を通過しました。

(3)1回目の予備試験(論文)

短答式試験から間髪入れずに、論文の勉強にとりかかりました。それまでの論文学習を継続しつつ、辰已の「予備試験論文公開模試」を受けたり、論証記憶の時間を設けたりするなど、よりアウトプットに比重を置いた学習を行いました。

当日の試験ですが、論文初受験であったため、問いにしっかり答えること、途中答案を出さずに書ききること、を最大の目標に掲げ、試験に臨みました。

手応えとしては良くも悪くなかったのですが、結果は総合500位台後半(合格点まであと5点)でした。民法で明後日の方向の答案を書いてしまった自覚はあったので、「民法を大外ししていなければ1発で合格できたかもしれない…」と、とても歯痒い思いをしたのを今でもよく覚えています。

(4)2回目(令和3年)の予備試験

1回目の合格発表後、辰已の「予備試験スタンダード論文答練」を申し込みました。それまでの学習においては、模試と本番以外で起案を行ったことがほぼありませんでした。そこで、起案の訓練を積んで書く力を高めることにも重きを置きました。仕事が終わった後に2~3時間起案を行うのはなかなかハードでしたが、結果として、起案に対する抵抗感がなくなったり、筆力が目に見えて高まるなどの効果もあったため、受講の収穫があったと考えています。

短答対策は試験の1か月前から始めました。1度短答に合格していることもあって、対策はかなり楽に進みました。『短答過去問パーフェクト』を各科目1周回しただけですが、短答試験は上位6%以内の得点で合格しました。一度しっかりと短答を合格レベルまで引き上げると、翌年以降はかなり楽になるため、短答合格未経験の方は、まずは短答対策をしっかりやり、合格経験を得ることが重要だと思います。

論文対策も、前年と同様、演習書・参考書を回しつつ、模試を受けたり、論証暗記を行うなどの対策を行いました。

しかしながら、2回目の論文試験では、思わぬ事態が続きました。まず、試験当日の体調が思わしくありませんでした。当日は何とか会場には行ったものの、微熱で頭がぼーっとしており、思うようにパフォーマンスを発揮できませんでした。また、得意だと思っていた民訴で、自分が知識に大きな穴があった分野が直球で出題され、散々な出来となりました。それらのこともあり、2回目の論文試験が不合格であったのはもちろんのこと、総合800位台前半と、前年よりも順位を大きく下げてしまったことに、かなり心を折られました。

(5)3回目(令和4年)の予備試験(短答・論文)

2回目の不合格後はしばらく勉強をする気が起きませんでしたが、ここでやり切れなかったら一生後悔が残ると思い、1カ月ほど経って勉強を再開しました。令和4年からは論文試験に選択科目が追加されたため、まずは選択科目(環境法)の基礎習得の勉強から始めました。また、前年に自分の得意科目で知識の穴を突かれたことがとても悔やまれたため、それまで使用していた演習書を、より網羅性の高い教材に切り替えました。それからは、淡々と教材を繰り返し、問題処理パターンをより広範に頭の中に叩き込んでいきました。短答試験1カ月前からは、前年と同様『短答過去問パーフェクト』を各科目1周し、その年の短答試験は上位4%以内の得点で合格しました。論文対策も、それまでとは大きくやり方を変えておらず、演習書・模試・論証暗記を行って、知識や処理の密度を高めていきました。他方、その年の論文直前期は、前年の大きな敗因となったフィジカル面にも気を遣い、少しでも気になる症状があれば病院へ行って薬をもらうなど、本番当日に最大限のパフォーマンスを発揮できる状態をいかにして作るか、ということにかなり神経を注ぎました。その甲斐もあって、論文試験は万全の体調で迎えることができ、試験の出来も確かな手応えを感じました。結果は総合100位台後半で合格しました。合格ボーダーライン付近かな、と自分では考えていたので、正直望外の結果でした。

(6)3回目の予備試験(口述)

口述対策を本格的に始めたのは口述試験1カ月前(当時は10月)になってからです。対策としては、定番の本(『民事裁判実務の基礎』(いわゆる“大島本”)や『基本刑法Ⅱ』)を熟読するという、過去の合格者の多くが実践している方法をとりました。また、並行して辰已の「予備試験口述過去問再現」の全年度分に目を通し、口述で問われる知識やその問われ方をチェックしていきました。さらに、口述はこれまでの試験と違って、その形式に慣れる必要性を強く感じました。そこで、辰已の「口述模擬試験」などに申し込み、口頭試問の訓練を重ねました。

口述試験当日は、2日目の民事で終始誘導される形でしか回答できなかったものの、1日目の刑事がスムーズに出来ていたこともあって、無事最終合格できました。

3 予備試験合格後の学習状況

予備試験最終合格後、司法試験までは7カ月程度しかないこと、社会人であり可処分時間が限られていることを考えると、色んなことに手を広げず、とにかく「受かるために何をすべきか」を考えて対策を進めていくべきであると思いました。そこで、①過去問分析で傾向と合格ラインの相場を掴むこと、②答練で時間内に答案を書く練習を積むこと、の2点に絞って対策を進めていきました。その分、判例学習が手薄になり、本番では判例の知識や射程を考える問題でだいぶ得点を凹ませてしまいましたが、結果としては3桁後半の順位で無事合格することができました。

4 受験対策(辰已講座)

私は予備試験・司法試験ともに、辰巳の「スタンダード論文答練」を利用しました。答練を受講したのは、時間内に答案を書ききる練習を積み、途中答案をなくすためです。結果として、問題検討手順の確立と筆力の向上に大いに役に立ち、自身の論文力のアップに大きく寄与してくれたものとなりました。また、「スタンダード論文答練」で出題された問題が、私が合格した年の予備試験で出題され、そのときはまさに答練に救われた気持ちを感じました。

5 受験対策(使用した本)

(1)短答過去問パーフェクト

短答対策は予備試験も司法試験も一貫してこの過去問題集を使っていました。解説がちょうど読みやすい分量・内容で書かれているのと、各問題の正答率が記載されており、取るべき問題かそうでないのかが一見してわかるようになっている点が優秀だと思います。司法試験合格まで、最終的にはこの問題集を7周程度回したと思います。

(2)司法試験 論文過去問答案パーフェクト ぶんせき本

司法試験対策時に使用しました。各問題に上位・中位・下位の再現答案がそれぞれ何通か付されており、それを読むことで、各レベルの答案の相場感を掴むことができます。自分は中位レベルの答案を確実に書けるようになることを目標にして、何をどう書けばよいかの分析を重ねていました。

(3)その他おすすめの基本書

予備試験口述の箇所でも触れましたが、『民事裁判実務の基礎』と『基本刑法Ⅱ』はおすすめです。『民事裁判実務の基礎』は予備論文の民事実務対策としてもかなり有用なものですし、『基本刑法Ⅱ』は刑法論文で最近流行りの「学説問題」に対応するために必要十分な知識を身に付けることができ、いずれも口述対策のみならず論文対策に非常に有益です。これら2冊は論文対策として早いうちから読んでおくことを推奨します。

その他個人的には、『事例でわかる伝聞法則』(弘文堂 工藤昇著)がとても参考になりました。自分は伝聞法則(特に、要証事実の確定を要する問題)に苦手意識がありましたが、この本を読み伝聞法則の思考過程をすっきりと整理することができました。簡易な事例問題や司法試験の問題を用いて、実戦的思考方法をわかりやすく解説しており、伝聞法則に苦手意識がある方にはおすすめの一冊です。

7 自己の反省を踏まえ、これから受験する人へのアドバイス

①学部在学生・予備試験受験生へのアドバイス(在学中にやっておくべきことなど)

私は社会人なので、学生へのアドバイスは他の方に譲りますが、これから予備試験・司法試験に挑戦する社会人受験生は「いかに仕事と勉強を両立していくか」という点が最大の関心事であるかと思います。これに対する私の回答は決まっていて、ある意味矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、「仕事を疎かにしてまで勉強に取り組むべきではない」ということです。というのも、社会人の受験生生活は、仕事をして稼ぎを得ていることによる経済的な基盤や精神的な安定があって初めて成立するものであり、ここが崩れては受験生を続けることは困難だからです。あくまで、仕事(や家庭)を生活の中心に据えつつ、いかに可処分時間を確保して試験勉強に取り組むかというスタンスが大事だと思います(例えば、職場と交渉してより拘束時間の少ない部署に異動ができるなら、そのようにすべきではあります)。そうして捻出した可処分時間で、何をどれだけ取り組めるのかの見通しを立て、フィジカル・メンタル両面で無理せず勉強を継続していくことが肝要です。可処分時間が学生よりも少ない分、自分には何が足りないのかを常に考え、無駄なく最大限効果を上げることのできる学習方法を考える姿勢がとても重要です。

②予備試験合格の司法試験受験生へのアドバイス(試験当日までの過ごし方など)

予備試験に合格された皆さんは、すでに司法試験に合格するための十分な知識を持っていらっしゃいます。そのことは、予備試験合格者の9割以上が1回目の司法試験に合格する事実からも明らかであると思います。

では、残りの1割弱の方が、予備試験に合格していながら司法試験に落ちてしまう原因は何か。私自身は、「司法試験の形式に対応できなかったこと」が最も大きな原因であると推測しています。予備試験と司法試験では、解答に必要な知識こそ大差はない(むしろ、予備試験の方が細かい論点を聞かれるくらい)ですが、問題文の量・時間制限や答案の枚数が大きく異なりますから、それに対応するための訓練は必要です。なので、予備試験に合格された方も慢心せず、司法試験の形式に沿った入念な対策を怠らないでほしいと思います。

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