予備試験合格後の試験対策
1 司法試験の受験を決意した経緯
中学生のときに、テレビ番組で宇都宮健児弁護士の仕事ぶりに感銘を受けたのがきっかけです。親戚等には法曹はいませんでしたが、中学、高校と法曹の方にお話を伺う機会を多く設けていただき、司法試験合格が確固たる意志となりました。
2 予備試験合格までの学習状況(法律学習)
⑴ 受験動機
予備試験の合格率の低さから突破は難しいと思いロースクールに行こうと考え、大学入学後に司法試験とロースクール受験の勉強をする研究室に入りました。研究室には、大学在学中に予備試験に合格した先輩や、これから予備試験を目指して勉強する先輩がいらっしゃり予備試験をもっと身近なものに感じました。予備試験は現実的なものだと考えを改めチャレンジしてみようと思いました。
⑵ 勉強スタンス
勉強の入りとしては、入門書を1周読み、辰已の短答肢別本を3周してインプットとアウトプットを並行してやりました。その後、辰已のえんしゅう本(旧版)で論文知識のインプットとアウトプットをしました。以下、予備試験に向けた各論を述べます。
⑶ 短答対策
予備試験短答は合格率が約20%で一見高いように思えます。しかし、私は3年次に短答で不合格でした。論文なら良いところまで行けると踏んでいたのですが、短答に合格しなければ論文に進めない試験なので言い訳はできません。
短答試験では極論知識がものをいいます。たまたま合格することはありますが、たまたま落ちることはない試験です。しかし、論文知識と重複する部分も多いので、短答特化は数か月で足りると思います。私は、択一が苦手ということもあり、1月から択一:論文を3:7か6:4くらいで勉強しました。3月中旬からは完全に択一にシフトしました。
勉強の方法としては、基本とにかく過去問題を解きます。3年次は辰已の肢別本、4年次は辰已の短答過去問パーフェクトを使いました。どちらを使うかは好みだと思いますが、私は、実戦的で他の肢と関連させやすいパーフェクトの方があっていました。
間違った問題、不正確な問題のみ繰り返し解いて、知識として大丈夫な問題は2周目以降とばしました。とばすのは勇気がいると思いますが、私は3年次にこれをやらず苦手分野が克服できないまま落ちました。自分を信じて効率を求めたほうがいいと思います。
問題を解くときは、必ず自分なりの理由付けをするよう心がけました。また、条文はその都度引いて判例六法や択一六法に書き込みました。空いた時間に条文素読もしました。条文は得点源なのでしっかり押さえておくのがいいと思います。
辰已の総択を受け、苦手分野をつぶしました。総択の点数は、本番に非常に近いものになりますし、本番の雰囲気をつかめると思います。
⑷ 論文対策
初めのうちは、一定の答案の型(法律論文の書き方)ができるまでとにかく答案作成をしました。インプットとアウトプットを並行します。扱った演習書は、えんしゅう本(旧版)、合格思考民法(辰已)、合格思考憲法(辰已)、旧司法試験過去問、LawPractice、予備試験過去問などです。2年次の12月まで6法を一通り勉強し、3年次の短答試験が終わってから行政法と実務基礎科目の論文の勉強をしました。3年次は、試験科目の基本的な勉強が終了していたので、基本書を読んだり、より難易度の高い問題集を解いたりしました。また、この時期に辰已の奨学生試験を受けたのがきっかけで予備試験スタンダード論文答練を受講しました。毎週末、答案を書くことは自分の中でよいペースメーカーになりました。さらに、本番と同様の問題量と時間で問題を解くことで実戦の中で書く力が養われ、結果に結びついたと思います。特に、辰已は、採点表が細かく、復習し次に活かしやすい答練だと思います。
書く際には、法的三段論法を一番意識しました。思っている以上にこれができていない人が多いです。自分もときにできていないことがあります。分からない問題でも、「要件検討、問題の所在の指摘、趣旨から規範を出す、あてはめる」だけで意外と高評価を得られます。実際、論文試験の商法で解いたことも見たこともない問題が出ました。とりあえず落ち着いて条文操作をして要件をあてはめ、その中で趣旨から考えて規範を出しました。すると、判例とその有力な反対説に近い書き方になっていてA評価を得ることができました。相対評価ですし、分からない問題が出ても法的三段論法を守れば、高評価を得られると思います。
⑸ 口述対策
論文に受かったと思わなかったので論文合格発表後、急いで取り掛かりました。要件事実は、大島眞一『完全講義民事裁判実務の基礎(上巻)』を何周もして詰め込みました。法曹倫理と民事執行保全は辰已の民事実務基礎ハンドブックを使いました。刑事は自分の使っている刑法の論証をさらった後、基本刑法各論を読みました。短い事例問題があるのが良かったです。手続は刑事実務基礎で自分が使っているレジュメを読み、民事訴訟法、刑事訴訟法ともに、短答で使った択一六法と判例六法を読み込みました。
口述は、本番の形式に馴れるのが一番大事だと思います。辰已の模試でコテンパンにやられたのが自分の合格につながったと思います。辰已の模試や先輩にお願いしたものも含め、口述模試は6回も受けました。模試をやる中で、雰囲気に馴れたり傾向をつかめたりするので模試は本当に重要です。
3 司法試験受験対策
⑴ 7科目について
7科目については、実際に時間を計って平成23年以降の過去問を解き、出題趣旨と採点実感を読みました。その後、辰已のぶんせき本で再現答案と照らし合わせて相場観を確認しました。そのほかは、判例百選を読み直したり旧司法試験を利用して論点を確認したりするなど基本的には予備試験の勉強スタンスと同じです。新たなインプットは少なく、過去問学習と既存の知識の整理がメインでした。
⑵ 選択科目について
選択科目については、国際私法を選択しました。基本書は松岡博先生編の「国際私法入門」を使用しました。基本的にこの本で必要十分だと思います。国際私法についても、過去問学習でインプットとアウトプットを並行しました。問題を読み再現答案を参考にして、趣旨規範本にまとめるという形です。これは辰已の「1冊だけで国際私法」を使いました。「1冊だけで国際私法」は受験会場で周りの人のほとんどが使っていたので必携本だと思います。もっとも、改正して変わっている部分があるので注意してください。他の論点については、辰已の選択科目集中答練を利用しました。正直インプットが間に合っていなかったので、集中答練は資料だけもらって、自分で読み物として論点のインプットに使いました。実際、過去問にない論点で集中答練にあった論点が司法試験本番で出題されました。選択科目については演習書が少なく、何が重要論点かもつかみづらかったので、集中答練を用いた勉強は効果的だったと思います。他には、演習国際私法CASE30を補充的に使用しました。
4 予備試験合格後の学習状況(法律学習)
⑴ 11月~12月
予備試験合格発表直後の11月には国立の法科大学院の受験をしました。もっとも、それほど身が入らずに過去問を2~3年見て、特殊な分野の対策をした程度です。
12月に入り、司法試験の過去問と選択科目のインプットをしようと思っていました。しかし、実際は法律事務所の就職活動が忙しく勉強の時間が十分に取れませんでした。大手志向の人はそれほど忙しくはないと思います。しかし、私は中規模の法律事務所を志望していたため、多い週で平日は毎日法律事務所に訪問してインターンなどをこなしていました。私は20か所ほど訪問しましたが、普通の人なら3~5か所程度と思います。就活は年明けくらいまでは忙しかったです。
⑵ 1月~3月
年明けからは、本格的に司法試験の過去問を解きはじめ、選択科目のインプットも並行して行いました。司法試験の過去問は時間を計って本番と同様の環境で書くべきということを強く言いたいです。司法試験は形式(時間や問題の処理量)も傾向も予備試験やロースクール入試と異なります。問題を読んで答案構成をするだけでは足りないです。慣れてくれば話は別ですが、初めのうちは書きましょう。3月末の全国模試に合わせて1周終わらせたかったのですが引っ越し準備などもあり計画通りには終わりませんでした。答練は辰已のスタ論をとりました。予備試験の際に前述したように、辰已は採点基準が細かい点がよいです。さらに、司法試験のスタ論では、毎回明確な順位と偏差値全体での位置づけが数字として評価されるので予備のスタ論よりも分析がしやすいです。予備のスタ論も同様にしていただけるとよいと思います。
3月末には辰已の全国模試を受けました。問題の難易度は司法試験本番と比べると易しく、典型的な論点が多いイメージでした。多くの受験生の中で自身の立ち位置を知ること、本番の空気を感じることに意味があるのだと思います。結果は、論文は合格率A、短答はほぼ足切り圏内でした。
⑶ 4月~5月
模試の結果を受けて短答をやりこみました。また、国際私法の結果もよくなかったのでこちらも力を入れました。短答と国際私法は好きではなく、分かっていたのに後回しにしていた科目だったので後悔しかないです。もしやり直せるならこの貴重な期間を他科目の確認に充てたいです。短答パーフェクトを3周、民法素読、刑法素読、判例250選を読む、憲法判例100選の通読、憲法学読本の統治部分通読、判例六法の素読を行いました。おかげで本番は合格者平均を上回る点数をとることができました。
ゴールデンウィークまではロースクールの授業も受けていました。
5 これから受験される方へ
司法試験の合格率は30%を超えます。また、予備試験経由の司法試験合格率は80%です。満足のいく十分な答案が書けなくても合格水準には達するのだと身をもって感じました。しかし一方で基礎知識や法的思考については曖昧な理解では足りず、正確なものを要すると思います。法律の特性上この「正確な思考、知識」を押さえること自体が難しいように考えます。背伸びをせず、基礎をより精度の高いものにすれば、おのずと合格が近づいてくると思います。合格率の数字に踊らされず、地に足をつけてこつこつと努力をすれば受からない試験ではないと思います。また予備試験合格者も予備試験に合格したことに慢心せず、危機感をもって真摯に司法試験対策をすることが必要です。
もっとも、予備試験経由が高い合格率であることは事実です。試験前だけは、予備試験合格者であることに自信を持ち、落ち着いて試験を解きましょう。
辰已法律研究所 受講歴
【2019年対策】
・スタンダード論文答練
・選択科目集中答練
・司法試験全国公開模試
【2018年対策】
・予備試験スタンダード論文答練(第1・第2クール)
・予備試験総択
・予備試験論文公開模試
・予備試験口述模試