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1 司法試験の受験を決意した経緯
淡い希望を持って社会人向けの夜間ロースクール第1期生となったものの、新司法試験の長文問題への対応がわからずじまいのまま、3回の受験が終わりました。しかし、長女が大学受験する時期になり、子どもが一生懸命勉強しているのに、自分はいったい何をしているんだ!という気持ちが高じて、もう一度、司法試験に挑戦することとしました。すでに50歳になっていましたが…。
2 予備試験合格までの学習状況
(1) 短答対策(法律科目)
短答試験は得意だったので、従来と同様の勉強方法で臨みました。具体的には以下のとおりです。
ア まず、1年目は、以下の5サイクルを回しました。
第1サイクルとして、①法務省のサイトから新司法試験及び予備試験の年度別の年度別短答過去問をプリントアウトして極力短時間で早く解き、②辰已の短答過去問パーフェクトの解説をじっくり読み、論文試験で使える判例などの規範や理由付けにマーカーを付します。③解いた問題のクラス分けをします(全ての肢を完全に理解して正解しているので、2度と復習する必要がない問題をA、正解だったものの肢の理解が不十分な問題をB、ケアレスミスした問題をB‘、不正解だった問題をC)。④間違った肢や気になる解説部分を辰已の条文判例本に書き込むとともに、その後の検索時間を節約するために、短答パーフェクトの解説の横に、参照した条文判例本の頁番号を記載します。第1サイクルには時間がかかりますが、ここでしっかり土台を作ります。
次に第2サイクルとして、①短答過去問パーフェクトの解説と上記で記載した頁数の条文判例本の該当箇所を読み、②A以外の問題(B、B‘、Cだけなので、半分以下の問題数となる。)を素早く解き、③解説と条文判例本をじっくり読みつつ、④2度目のクラス分け(A、B、B‘、C)を行います。この時点で、2度も間違えた問題は、精神衛生上は捨てても構わないと割り切りつつも、せっかく過去問の中から絞り込んだので、条文判例本に書き込み、解答を暗記しました。
次に第3サイクルとして、①2度目のクラス分けのB、B‘、Cだけを素早く解き、②条文判例本をじっくり読みます。
更に第4サイクルとして、書き込んだ条文判例本をひたすら3回繰り返し読み込みます。その際、条文判例本には、超直前期に読むべき箇所に付箋を打っていきます。なお、民法については、マイナー条文については、学生時代に身に付けた語呂合わせと図表で対応しました。
最後に第5サイクルとして、短答試験前日や試験当日の移動時間や休み時間に、条文判例本の付箋を打った箇所と民法の語呂合わせと図表を最終確認しました。
イ 次に2~3年目は、1年目の蓄積もあり短答対策に自信があったこと、不得意な論文対策に重点をおきたかったことから、時間節約のため、上記第1サイクル、第4サイクル、第5サイクルをこなしました。
(2) 論文対策
私にとって、ロースクール時代からの悩みの種が答案の書き方でした。
1年目は、まず、この不安を解消する講座を探したところ、ニーズにぴったり合う柏谷周希先生の合格開眼塾(通信)を受講しました。講座に従って、司法試験とスタ論や全国模試の過去問の答案を作成しました。並行して、辰已の趣旨規範ハンドブックと条文判例本を通読しました。復習として、答案構成を何度も繰り返しました。
2年目は、本当に時間がなかったので、新たな講座は一切申し込まずに、1年目の復習に特化しました。但し、勉強する科目の順番を1年目の論文試験の成績が悪かった科目からとしました。
(3) 口述対策
辰已の法律実務基礎科目ハンドブックと法曹会の定番書籍(新問研、紛争類型別、検察講義案、第一審公判手続きの概要)と趣旨規範ハンドブック(民法、民訴、刑法、刑訴のみ)と条文判例本(民訴と刑訴のみ)を通読し、口述模試受験後は、具体的な口述試験のイメージと自分の足りない部分を認識できたので、口述模試のレジュメと口述過去問と条文読み(含:民事執行法と民事保全法)を反復しました。
3 予備試験合格後の学習状況
(1) 短答対策
予備試験の蓄積もあり短答対策に自信があったこと、不得意な論文対策に重点を置きたかったことから、短答対策の時間を減らすため、上記の第1サイクル、第4サイクル、第5サイクルをこなすようにしました。
(2) 論文対策
1年目は、長文問題の答案の書き方の不安解消という私のニーズにマッチした柏谷周希先生の合格開眼塾(通信)で受講しました。この講座に従って、司法試験の過去問、予備試験の過去問、辰已のスタ論や全国模試の過去問の答案を作成しました。並行して、趣旨規範ハンドブックと条文判例本を通読しました。
2年目は、1年目の復習として、答案構成を何度も繰り返すとともに、スタ論(通信)を受講しました。しかしながら、時間がなかったこともあって、答案作成は諦め、答案構成に特化しました。
3年目は、論文の成績が悪いことから、思い切って、勉強の柱を論文過去問を解くことに切り替えることし、ただ、本当に時間がなかったので、本多諭先生の合格答案テンプレ講座(辰已、通信)を軸として答案構成をひたすら繰り返しました。但し、弱点を補強して点数を上げる観点から、勉強する科目の順番を論文試験の成績が悪かった科目からとしました。並行して、また、趣旨規範ハンドブックや条文判例本や実務基礎ハンドブックをその都度、辞書的に確認するようにしました。
4 受験対策(辰已講座の利用)
(1) 本多先生の合格答案テンプレ講座(通信)
3度目の司法試験でも論文の成績が相変わらず悪かったことから、まずはきちんと論文過去問を押さえる勉強が必要不可欠と考えて、勉強の柱を論文過去問を解くことに切り替え、本多先生の合格答案テンプレ講座を受講しました。
本多先生の授業は、論証集と合格答案に加えて、初見の長文問題に対して現場でいかに答案を作成するかのアプローチを過去の出題パターンを踏まえてレジュメで提示してくださいます。それまでの私は、いわば場当たり的な現場思考で答案を書いてしまっていたので、本多先生の講義はまさに目からうろこが落ちました。
また、本多先生の講義では、出題趣旨や採点実感を強く意識して行われます。但し、受験生レベルでは答案展開が困難な要求レベルのものについては無理しなくてよい旨もアドバイスしてくださいましたので、とても安心できました。
本来であれば、全ての論文過去問の答案を書くことが理想なのですが、社会人30年目に入り現実的に勉強時間の捻出が困難な状況でしたので、答案構成をひたすら繰り返しました。そのたびに、本多先生の合格答案と論証集と出題趣旨や採点実感を読み、気になる箇所に水色マーカーを付しました。また、趣旨規範ハンドブックや条文判例本や実務基礎ハンドブック(民事、刑事とも)をその都度、辞書的に確認するようにしました。
(2) 全国模試(通学)
全国模試についてですが、必ず受けるべきです。司法試験は中一日を含めて五日にわたるハードな試験で、頭の疲れ、腕の疲れ、精神的疲れは想像以上です。辰已の全国模試は、司法試験と同じ会場、時間で行われるため、まさに司法試験に近い環境といえます。また、全国模試の受講者数も極めて多く、相対的な位置づけを知るために重要です。特に、私にとっては、年に1回の答案を書く貴重な機会だったので、試験本番前の勉強スケジュールのシミュレーションも行うようにしていました。
5 私がとっていた勉強方法
現実の受験生としては、初見の本番の問題に対して、現場でパニックに陥らずに、短時間で如何にして問題文を的確に分析し、必要な事実を拾って、自分の立てた規範に照らして評価しつつ、答案として成立させるか、という現場対応をトレーニングする必要があります。
本来であれば、答案を実際に書くことが王道だと思いますが、時間の無い私は、本多先生の講義に従って、論文過去問(含:出題趣旨、採点実感)を中心にひたすら答案構成を繰り返す答案構成中心主義を採りました。
答案構成に際しては、法的三段論法は答案上重要な争点について用いることとした上で、規範とあてはめが整合的であること、規範は判例を基本になるべく暗記するものの、どうしても現場で思い出すのが無理な場合には、条文の趣旨を踏まえて、当てはめで用いる事実から逆算して規範を立てること、の2点を強く意識しました。
6 私が使用した本(辰已の書籍)
(1) 条文判例本、短答過去問パーフェクト
短答過去問パーフェクトの解説が秀逸だと思います。私は、短答の勉強が論文の勉強につながることを意識して、解説の中から論文対策にも使える情報(判例の規範や理由付け等)には水色マーカーを付して、かつ、条文判例本に赤ペンで書き込みました。これにより、条文判例本に情報が一元化されるとともに、時間があるときに論文対策として短答過去問パーフェクトの解説のマーカー部分だけを読むこともできます。
条文判例本を直前期に読み込む際には、気になる条文の文言やキーワードなどに赤ペンでぐるぐる丸印を付けました。指先を動かしながら考えると記憶が定着しやすい面もありましたし、2度目に読み込む際に、赤ペンの箇所を重点的に読めばよい、という側面もありました。
また、試験前日当日に読むべき箇所を予め絞り込んで付箋を打っておき、何度も繰り返し読み込みました。特に刑事系論文が終わってほっとしている暇はないので、翌日の短答試験対策としては、この方法は有用だったと思います。
(2) 趣旨規範ハンドブック
日頃の論文の勉強の中では、辞書的に必要の都度、該当ページを開いて確認するようにし、全国模試の2週間前から試験本番までは、本多先生の論証集と答案とのリンク付けを行って上で、読み込みました。
具体的には、本多先生の論証集と答案に趣旨規範ハンドブックの頁数を書き込み、趣旨規範ハンドブックで本多先生の論証集と重なる論点には鉛筆で星印を、重ならない論点には鉛筆で薄い丸印を付しました。
その上で、両者が重ねる論点(星印)については、重要論点なので、本多先生の論証集を優先して暗記しつつ、本番で思い出せないリスクを考慮して、趣旨規範ハンドブックの該当箇所のキーワードに水色マーカーを付しておき、適宜辞書的に活用しました。
他方、本多先生の論証集に掲載されていない論点(薄い丸印)については、重要度は低いものと割り切り、時間があるときにまとめてざっと読んで頭に入れるようにしました。
なお、公法系については、時間節約のため、直前期は省きました。
(3) 実務基礎ハンドブック(民事、刑事とも)
予備試験の論文試験の実務科目、口述試験の対策、司法試験の論文試験の民法、民訴、刑法、刑訴の勉強の際に活用しました。
7 これから受験する人へのアドバイス
私にとりましては、予備試験はミニ司法試験ともいえるものであり、ロースクールで体感できなかった答案の書き方をイメージできる絶好の機会であり、司法試験合格に直結したと思います。
最後になりますが、司法試験受験を志す皆様にはそれぞれにご事情がおありかと思います。ご自身のご事情に即した戦略(私の場合は答案構成中心主義)を立てて、しっかりと事前の準備を行った上で、試験当日は初見の問題文に対して落ち着いて条文と判例の知識を用いて、現場対応でなんとか読みやすい文字で答案化することを意識することが、合格につながるのではないかと思います。
この拙い体験記が皆様のご参考となれば幸いです。
辰已法律研究所 受講歴
【2018年対策】
・合格答案テンプレ講座
・最後の合格開眼塾
・司法試験全国公開模試
【2017年対策】
・スタンダード論文答練 柏谷クラス(第1・2クール)
・選択科目集中答練
・最後の合格開眼塾
・司法試験全国公開模試
【2016年対策】
・司法試験合格開眼塾
・選択科目集中答練
・国際私法の合格者(松永先生)講義
・司法試験全国公開模試