停滞している複数回受験生に向けて
1 司法試験の受験を決意した経緯、合格までのみちのり
当初は漠然と「司法試験は日本で有数の難しい試験だから、自分がその試験に受かるかどうか試してみたい」という変な動機で受験したいと思っていました。はじめから立派な動機というものがあるに越したことはないですが、なくてもいいと思います。もちろん、法科大学院進学以降は、弁護士や検察官として活躍されている方と接していくなかで弁護士になりたいという思いは強くなりました。
私は、初回の受験のときは記念受験のような感じで、途中答案を連発し4000番台という散々な結果でした。過去問を解いたりして途中答案のクセを改善し、2回目の受験を迎えたのですが、結果としては2000番台までしか成績を伸ばすことができず、3回目の受験も2000番台で停滞してしまいました。
後述するように、福田俊彦先生の授業を活用し、自らのふるまい方を変えたことが2000番台からの脱却、そして最終的なリベンジ合格につながったと思います。
2 法科大学院受験前の学習状況(法律学習)
大学在学中は司法試験受験に向けて特別な勉強をしていたわけではなく、漫然と法律を学んでいたという状態でした。4年次になって、法科大学院受験に向けて本格的に勉強をようやく始めたのですが、「ロースクールに行ったらいやでも勉強漬けになるのに、大学在学中から特に躍起になって勉強したくない。」と楽観的に思っており、辰已のような予備校に通うことはしませんでした。今考えると、このときにきちんと予備校なりに通って基礎を固めておくべきだったと思います。
3 法科大学院入学後の学習状況(法律学習)
私の進学した法科大学院は、進級や卒業の要件が厳しく、進級ないし卒業するための勉強にいっぱいいっぱいで、司法試験受験に向けた勉強を十分にできませんでした。
4 受験対策その1(辰已講座の利用方法とその成果)
4回目の受験に向けて、スタンダード論文答練の福田クラスを受講しました。福田クラスを受講したのは、2回目・3回目と2000番台で停滞しながら勉強期間が長い自分が受からないのは、自分が先生の言う「もったいない受験生」に所属するからだろうと考え、そこから脱却できるノウハウを福田先生から得られればと考えたからです。
福田先生は、授業を通じて、司法試験受験生としての“ふるまい方”を話してくれます。私は、LIVEでの受講をしていたこともあって、その日に受けたスタ論で実際に行ったふるまいについて、先生に質問したりすることで、自分の“ふるまい方”を改善していきました。
LIVEの授業を受けられる環境にあるのでしたら、LIVEで受けることをおすすめいたします。
「司法試験は現場でうだうだ悩んでしまう受験生が落ちる試験」と先生は評されており、これまで、私はうだうだ悩んでしまうことが多かったのですが、結果的に今年の試験では「部分最適ではなく全体最適を意識する」「わからない設問は頁数を空けて、わかるところから書き始める」「書くか書かないか悩むくらいならちょろちょろっと書いて先に進む」といった試験の現場でのふるまい方を実践することができました。
こうやって自身のふるまい方を改善して、本番でもふるまい方を実践できたことが、2000番台から脱却し、合格につながったと考えています。
5 受験対策その2(その他の受験対策)
私は過去問を中心に勉強していました。もっとも、過去問の有用性は科目にもよるとも考えていたので、科目によっては過去問を解く頻度は変えていました。具体的には、公法系と会社法、そして刑事系については過去問を重視していました。
民法は分野が広いため司法試験過去問の有用性は相対的に下がるとは思います。また、憲法と刑法については、平成30年と令和元年と直近の出題傾向が変わってきているので、これらの過去問の有用性も変わってきているとも思います。
過去問を使った勉強は本番を想定した時間管理等はもちろんですが、行政法の裁量など司法試験の頻出の分野における書き方を身に着けることや、知識の問われる角度を把握することで、インプットのメリハリづけにもなりました。
6 受験対策その3(使用教材)
憲法:基本憲法、憲法判例
→ スタ論で扱った部分のうち、自分の理解が足りない部分を基本憲法で確認するという使い方をしていました。憲法判例については、福田先生がランク付けをしてくださっているので、そのランク付けに応じて、重点的に読んだりしていました。なお、憲法判例は、択一の判旨の確認にも使っていました。
行政法:基本行政法、ケースブック行政法
→ 基本行政法の行政裁量、原告適格、処分性を何度も読んでいました。それ以外の箇所は、スタ論で出たところを確認するという形で、メリハリづけはしていました。
民法:民法の基礎[1][2]、債権総論(松井)、担保物権(松井)、潮見黄色本(契約各論、不法行為)、えんしゅう本、読み解く合格思考民法、判例百選。
→ 私は、民法が苦手だったので、特に手を広げることはなく、辰已のえんしゅう本と読み解く合格思考を通じて旧司法試験の問題をずっと回していました。
会社法:会社法事例演習教材、会社法(高橋ほか)、江頭会社法、判例百選
→ 会社法は制度の理解が重要と言われています。私は、会社法事例演習教材を通じて、会社法の制度の理解を進めていました。会社法(高橋ほか)は、リークエよりもやや説明が詳細に書かれていますが、そこまで文量も多くなく、扱いやすい本でした。江頭会社法は、辞書的に使っていました。
民訴法:基礎からわかる民事訴訟法、読解民事訴訟法、解析民事訴訟、判例百選
→ 民事訴訟法については基本的な概念の理解とその概念をどう使うかが重要だと考えていました。私は、旧司法試験の過去問が掲載されている解析民訴を通じて基本的な概念がどのように問われているのかを理解し、基礎からわかる民事訴訟法で基本的な概念を確認していました。読解民訴は、既判力部分を重点的に読んでいました。
刑法:判例刑法総論、判例刑法各論、基本刑法ⅠⅡ、刑法事例演習教材
→ 判例刑法総論と各論は択一の判例知識の確認用に使っていました。刑法事例演習教材はローの自主ゼミで答案を作成し、それをノートとして使っていました。同ノートに、福田先生の授業で教わった内容や最新の判例知識、スタ論で書けなかったところを補充したりして使っていました。
刑訴法:判例講座 刑事訴訟法[捜査・証拠篇][公訴提起、公判・裁判篇]、古江刑訴、判例百選
→ 昔は刑訴法が苦手でしたが浪人中は刑訴は得意でしたので、これらの本は、あまり読むことはなく辞書的に使うことが多かったです。
経済法:独占禁止法(金井他)
→ 金井他の独占禁止法については辞書的に使っていました。演習書の類は使っていませんでした。
択一:各科目の過去問パーフェクト(辰已)
→ 択一は、憲・民・刑のうち時間の大半を民法に費やしていました(割合的には、民法7:刑法1.5:憲法1.5くらいの感じです。)。私も含め、択一の点数が悪い人は民法の点数が良くない傾向にあるため、これくらいの傾斜をつけた方がいいと思います。
民法については、パーフェクトを何周もしました(正確には覚えておりませんが、年内に3周することを目標にしていました。年明けから回した分も含めると最終的には3周以上はしていたと思います)。具体的には、肢毎の正誤の判断およびその理由づけを解く際には意識していました。「パーフェクトを肢別のように使う」という感じです。
憲法と刑法は、年明けくらいから少しずつ解いていたという感じです。
私は、択一式が苦手で、毎回足切りのギリギリのラインを少し超えるという程度の成績でしたが、今年は、140点台の後半という飛躍的な点数のアップを達成しました。一概には言えませんが、択一の成績が良いと、仮に論文試験の1科目でF評価をもらうような失敗をしてしまったとしても、最終合格に向けて十分挽回の可能性は広がりますので、滑らない方法の一つと言えます。択一で140点を超えるのは、“どんな問題が出ても一科目もFをとらないようにする”ことよりも、個人的には楽だとは思います。
7 自己の反省を踏まえたこれから受験する方へのアドバイス
司法試験の合格の仕方は、合格者が1500人いれば1500通りの合格の仕方があると思います。私を含めて、合格者は色々なことを言うと思いますが、受験生のみなさんは合格者の言うことを鵜呑みにするべきではないと思います。
「敵を知り己を知れば百戦危うからず」という言葉があります。司法試験に合格するには、司法試験に関することや、自分と同じ他の受験生の相場を知るだけではなく、自分のことを知ることも必要と思います。
自分に足りないものが何か知った上で、合格者のアドバイスについて取捨選択するべきだと思います。
辰已法律研究所 受講歴
・スタンダード論文答練 福田クラス(第1・2クール)
・司法試験全国公開模試