「必ず合格する」との強い決意と努力
1 司法試験受験の経緯
私が司法試験の受験を決意したきっかけは、中学2年生のときに某人気検事ドラマを見て検察官へ憧れを抱いたことです。きっかけこそ大したものではありませんでしたが、法学部へ入学後に法律の勉強の面白さや、庶民を直接助けることができる法曹としての魅力を次第に感じていったことから、学部・大学院を通して6年間ひたすら勉強に励むことができました。
2 法科大学院入学前の学習
法科大学院受験前は、学部入学後から受験生の定番と言われる基本書を繰り返し読み、論点だけでなく原理や趣旨まで理解するように心掛けていました。
また、学部2年生の後期から卒業生の弁護士の先生が加わって旧司法試験の問題を検討するゼミに参加し、答案の書き方を学び、6科目の典型論点を把握していきました。
旧司法試験の問題検討と並行して、該当範囲の論点や趣旨・定義等をWordでまとめ、一元化していました。ここで作成し始めたまとめノートは修正を加え続け、司法試験受験まで活用しました。
3 法科大学院入学後の学習
法科大学院入学後は、授業中心の生活でした。特に、復習に力を入れ、授業内容を欠かさずまとめノートに集約していました。
授業以外では、入学直後から新司法試験の問題を毎週1問ずつ解き、弁護士の先生に解説していただく機会を持つようにしていました。このように早い段階から新司法試験の問題に触れることができたのは、学部時代の論点中心の勉強から脱却する上で大きな意味を持ちました。
他には、新司法試験のタネ本と言われる教材を用いて同期のメンバーと自主ゼミを組み、演習を重ねていきました(刑法と会社法でゼミをしました)。
4 予備試験の受験
法科大学院の2年生で力試しとして平成29年の予備試験を受験し、合格することができました。
予備試験の短答式対策としては、法科大学院入学前の春休みから短答式試験に向けて下四法の基本書を読んだり、辰已の肢別本を解いて判例六法に集約したりしました。上三法の勉強は特別しませんでしたが、これは、学部時代に基本書を読み込んでおり、下四法と異なりそれで十分ボーダーは超えられると考えたからです。下四法について結局全ての問題には手が回りませんでしたが、それでも十分に合格点に届きました。
論述試験対策は短答に合格したとわかった後から始めました。具体的には、過去問を解き、平成28年の予備試験に合格した法科大学院の先輩とゼミを組んでもらいました。
口述試験は、法科大学院の要件事実の授業内容を復習したり、刑訴の条文を見直したり、刑法の構成要件を確認したりしました。特に、赤本・青本と言われる辰已の司法試験予備試験法律実務基礎科目ハンドブックを活用しました。具体的には、授業では触れられないような民事執行保全分野の基本的知識や、刑事裁判の流れ等の手続的部分の確認に使用しました。
予備試験はあくまでも力試しとして受験し、当初から司法試験は法科大学院修了の資格で受験すると決めていたため、特に迷うことなく平成30年の司法試験は受験せず、法科大学院の3年へ進学し令和元年の司法試験を受験することを決めました。今振り返ると、法科大学院の授業を全力で受け切り、共に勉強した同期の仲間と共に受験したからこそ、今年の司法試験に想像以上に良い順位で合格させて頂けたのだと思います。個人的にですが、皆様には、予備試験ルートだけではなく、法科大学院の教育を受けきり力を付けるという選択もあるのだと心の片隅においていただければと思います。
5 受験対策
(1) 使用した教材
択一対策としては、辰已の肢別本を活用しました。パーフェクトと異なり肢別本では分野別に検討でき、1問ごとにまとめノートとしていた判例六法や百選等に一元化できることから、自分の勉強法に合っていたと思います。もっとも、択一自体が苦手ではなかったため、新司法試験の過去問を1周し切ることもできませんでした。
受験生活を通して特に使用した基本書としては、基本行政法、会社法と民訴のリーガルクエスト、基本刑法が挙げられます。これらは、受験生がおさえるべき論点の把握がしやすく、体系的に理解できるため、受験生スタンダードを把握する上で役立ちました。特に、基本刑法は傾向の変わった刑法の問題に対応するために、3年生の春休みにもう一度読み直しました。
(2) 成功した勉強法
受験対策として、新司法試験の自主ゼミを3年生の夏休みから組み、1週間に1問のペースで過去問を解いていきました。ほとんどの問題は解くのが2回目となるものでしたが、新司法試験の問題は難しく、3年の夏休みの時期でもいまだに合格答案のイメージを掴めていなかったため、このような機会を持つことに大きな意味がありました。また、ゼミで答案への表現の仕方を細かく指摘しあったおかげで、大変有意義な機会となりました。さらに、ここで書いた答案を昨年合格した法科大学院の先輩へ提出し、添削・面談を行ってもらいました。合格者の技術や経験を素直に徹底して受け入れたことで、答案の型が安定してきて、受験直前の3月には答案としてだいぶまとまっていきました。
(3) 辰已講座の利用
辰已のスタ短第2クールを受講し、試験直前期の択一の勉強に活かしました。具体的には、間違えた問題や自信のなかった問題について、配布される解説を択一用のまとめノートに一元化していきました。スタ短は知識の補充だけでなく、試験直前期に本番のように問題検討をする機会を作ることで、試験になれるという意味でも役立ったと思います。
また、直前期の3月末に辰已の全国模試をA日程で受験しました。本番と同じ会場で同じ日程で受験できる貴重な機会であったため、できるだけ本番に近いコンディションを保つように努力しました。具体的には、模試の1週間前からまとめノートを見直す時間を増やして規範を頭に入れる努力をしたり、本番に泊まるホテルと同じホテルを取ったり、本番で使用することを想定して飲食店を選んだりしました。また、「これは練習じゃなくて、本番なんだ」と意識的に思うことで、少しでも緊張感を持つようにしました。模試での経験を本試験にフィードバックしたため、司法試験本番では思ったよりも緊張せず、いい意味でいつも通りに受験できたと思います。
模試の復習も、直前期で忙しい時期ではありましたができるだけ行い、まとめノートに反映させました。今年の本試験の問題は、全国模試の予想が当たったものが多くあったため、模試の復習の重要性を感じました。
模試の結果との向き合い方ですが、私は結果がA判定で、順位も予想よりも良かったことから、本試験への油断が生じそうになりました。模試の結果は自信にもなりますが、仮に結果が良かったとしても、模試と本試験は問題の質や受験層が異なるという意識を欠かさず、直前期に勉強がおろそかになることがないように気を引き締めることが必要だと思います。
6 これから受験する人へのアドバイス
(1) 在学中について
合格した先輩や法科大学院や予備校等の先生方のアドバイスを素直に受け入れて、勉強方法や自分の答案を改善していくことが合格への一番の近道だと思います。私も、素直な人ほど受かる試験だと思っていましたので、プライドを捨てて先生や先輩、同期のメンバーにたくさん質問をし、指導を仰いでいました。そのような姿勢を是非持っていただきたいです。
また、法科大学院の仲間との連携を大切にし、積極的に自主ゼミを組むことを勧めます。ただ、自分の勉強の時間は確保できるように、ゼミの時間はできるだけ短くなるように工夫する必要はあると思います。
(2) 試験直前について
私は、試験直前の4月に週3回以上新司法試験のゼミを組み答案を書いていました。しかし、答案の書きすぎにより疲労が溜まり、司法試験の20日前に利き腕である右腕がテニス肘となりペンが持てない状態になってしまいました。整形外科に通ったのですが効果はなく、試験の10日前に先輩弁護士に整骨院を紹介してもらい、鍼治療や整体をしてもらうことでやっと改善の兆しが見えてきました。しかし、本番でも文字が書けないかもしれないという恐怖は常に付きまとい、精神的に不安定になりました。また、試験の数日前にもかかわらず、病院に2日に1回の頻度で通わざるを得なくなり、最後の詰め込みの時間が削られてしまったことからも、試験への不安は大きくなりました。
整骨院での治療や様々な方からの激励に加えて試験当日にロキソニンテープを貼ったおかげから、奇跡的に司法試験の4日間は一切の痛みなく、いつも通りに1科目あたり7~8枚の答案を書き切ることができました。
本番に右腕が動いたから良かったですが、何よりもまず試験前に腕を痛めないように直前期に答案を書く量には気を配るべきと反省しました。また、私は答案の文量が多い上に筆圧が強かったために腕を痛めてしまったことから、受験生の皆様は、筆圧が強くなりすぎないように日頃から調整するべきだと思います。そして、仮に腕を痛めたとしても、整骨院で鍼治療を受け、湯船に浸かり、ロキソニンテープを貼ることで、本番でも対応できますので、どうか最後まで諦めないでいただきたいです。
司法試験には、「必ず合格する」という強い決意と、それに見合うだけの継続した努力を積み重ねることができなければ、合格するのは難しい試験だと思います。そのため、皆様には強い気持ちを持って勉強を続けていただきたいです。
皆様の合格を願っております。ここまで読んでくださりありがとうございました。
辰已法律研究所 受講歴
【2019年対策】
・スタンダード短答オープン(第2クール)
・司法試験全国公開模試