時間がかかるかもしれない勉強
1 はじめに
私は、中学2年生の時に、検察官をモデルとしたあるドラマの再放送を見て、検察官になりたいと思いました。大学受験を意識する頃、司法試験の合格率の高い法科大学院をもつ大学に進学することを決め、大学の法学部に進学しました。そして、大学1年生の時から司法試験の受験を意識して勉強を開始しました。大学4年次に予備試験を受けるも落ちたので、法科大学院に進学し、今年、既修コースを修了し一発で合格することができました。この6年間の間、予備校の講座をほぼ使わずに基本書をベースとして勉強してきました。この体験記が皆さんの勉強の参考になれば幸いです。
2 学部時代
大学3年次から、バイトや遊びをしながらもしっかり勉強時間を確保するようにして、基本7科目を勉強しました。この時から、自主ゼミを始め、メンバーの1人が早期卒業で法科大学院を受験するため、ロー入試の過去問を解いていました。
大学4年次は、自主ゼミを続けながら、予備試験の短答対策のために辰已の短答パーフェクトを解いていました。メインは論文対策として、自主ゼミで論文をたくさん解きました。この時は、勉強時間は平均して10時間ほどだったと思います。
ロー入試の勉強は、辰已の趣旨規範ハンドブックに付箋に書いた論証を張っていく作業をしていました。その際、基本書や百選等を使って、理由づけから丁寧に考えてまとめるようにしていました。論文を解く際は、問われている論点が何かは当然ですが、あてはめで重視すべき事実は何か、どのようにあてはめるかを意識しながら勉強していました。時間は無制限で書いていました。演習書を使うときは、答案構成10分と決めて頭の回転を慣らすようなことをしていました。
3 法科大学院時代
私は、ロー入試直後から前記自主ゼミで司法試験論文の過去問を解いていました。ロー入学後もこの自主ゼミを続けました。
また、法科大学院では、授業を大事にしつつ、基本書を読み趣旨規範ハンドブックまとめる勉強法を継続していました。ただ、授業で教えられることを鵜呑みにすることなく、ちゃんと自分でも確認しながら修得するようにしていました。また、授業では、正直無駄なこともあります。ですので、適宜、これは必要な情報、これは無視、というように自分で取捨選択していました。これは、先生によって教えるのが上手い下手がありますし、雑談が多い先生がいたりするので、時間を有効活用するために必要です。
前記自主ゼミはロー2年生の5月に終了したので、後期から新しくローの友達と自主ゼミを組みました。やることは全く同じでした。
勉強時間は、平均して12時間ほどでした。朝9時~夜22時過ぎまで学校の自習室で勉強していました。基本書を読むことを重視していたため時間がかかるので、勉強時間はこれくらい必要になるのかなと思います。
4 辰已の講座
私は、〇〇クラスといった講座は一切受講していませんし、答練も一切受講しませんでした。基本書で勉強するとなると予備校を使うのは無駄というか時間がなかったのが理由です。答練については、高田馬場に受講しに行く時間など司法試験直前の時間の無い時期において勉強の効率を考えた上で、司法試験の過去問と演習書をやれば十分だと判断しました。
私が受講したのは、司法試験直前期の司法試験総択と全国模試です。そして、無料講座であった大塚裕史先生と木村草太先生の新形式に対応した各解説講座です。なるべくお金をかけず、有意義なものは受講するという気持ちでした。全国模試は多くの司法試験受験生が受験するので自分の立ち位置を知るために重要ですし、実際の試験会場で受験できてシミュレーションの機会として大事だと思いました。司法試験総択は過去問以外の問題を解く機会で、知識の穴を確認するために利用しました。
5 私の勉強法―基本書ベース
私は、基本書を読み、判例が出てきたら百選等判例集を読み、そこで得た知識を趣旨規範ハンドブックにまとめるという勉強方法を採用していました。
まず基本書の読み方ですが、
①基本書を初めから最後まで素読(マーカーなど一切引かずに読む)する。
②重要なところ等にマーカーやアンダーラインを引きながら読む。
③3回目以降は、全体を読むなり、色の付いたところだけを読むなりする。
この流れで読んでいました。マーカーの付け方は、定義が青、趣旨や理由が緑、論点の結論がオレンジ、その他重要そうなところが黄色でした。百選など判例集は、判旨のうち論点の結論部分など特に重要な部分にオレンジのアンダーラインを引き、さらに上記の区別でマーカーを引いていました。こうすることで、3回目以降や問題演習の際に読むときに、どこに何が書いてあるかすぐ分かるので、時間短縮や意識した読み方をすることができます。
次に、こうして得た知識を趣旨規範ハンドブックにまとめる方法です。趣旨規範ハンドブックは、まっさらな状態では全く使い物になりません。自分なりにいろいろ手を加えてまとめ本として完成させることで意味のあるものになります。修正する必要がない部分、つまり基本書等の記載とほぼ同じ部分は、そのままにして上記の区分でマーカーを引いたりしていました。基本書等の記載と異なり修正する必要がある部分は、シャーペンで斜線や横線を引き空いてるスペースに赤ペンで修正後の知識をメモします。または、付箋に書いた上で、該当部分に上から貼り付けました。論点の箇所については、多くの部分で、付箋に論証を書いて該当部分に上から貼り付けていました。結論と理由を簡潔にまとめられていて文章化するには一苦労すること、理由づけが理由として不十分なことから、自分で文章化した論証を貼り付けていました。上から貼ると元々の記載が見にくくなりますが、付箋さえ見ていれば十分なので問題はありません。
付箋を貼り付ける際、その裏に、参考にした本の頁や百選番号等出典をメモしておきます。なぜなら、その論証を数か月後や1年後、司法試験直前期に見返したときに、論証が正しいのか不安になることがあり、その不安を解決するのに出典が書いてあれば短時間でその不安を解消することができるからです。
この方法は、演習書を使用する際にも行っていました。解説部分についてマーカーを引き、適宜趣旨規範ハンドブックにまとめます。
6 基本書・辰已本
憲法→「憲法 芦部信喜」
行政法→「行政法 櫻井・橋本」、「基本行政法 中原茂樹」
民法→「民法の基礎1 佐久間毅」、「民法の基礎2 佐久間毅」、「担保物権法 松井宏興」、「債権総論 中田裕康」、「債権各論Ⅰ 潮見佳男」、「債権各論Ⅱ 潮見佳男」、「家族法 窪田充見」
会社法→「会社法 高橋美加他」
民事訴訟法→「講義民事訴訟 藤田広美」、「リーガルクエスト民事訴訟 三木浩一他」
刑法→「基本刑法Ⅰ 大塚裕史他」、「基本刑法Ⅱ 大塚裕史他」
刑事訴訟法→「リーガルクエスト刑事訴訟法 宇藤崇他」
辰已の本→「趣旨規範ハンドブック民事系」、「趣旨規範ハンドブック刑事系」
7 アドバイス
私は、大学1年次からこの勉強法を行っており、のんびり時間をかけて行ってきました。ですが、もっと集中して本を読んだり、効率よくまとめ作業をすることで、予備試験に合格してより短期間で司法試験に合格することができたと思います。時間をかければ合格する方法ですが、遊びやバイトを犠牲にして勉強に集中することができる人は、この方法で私より短期間で合格することができると思います。
この方法は、ロースクールにおいても可能です。授業の予習・復習の際に、該当部分だけでも基本書を読みこれまで作ってきた論証の正確性を高めるという作業を、並行して行えばいいのです。授業や期末試験のための勉強をするのは無駄とは言いませんが、その勉強が司法試験につながるように意識して勉強する必要があります。
ロースクールに通っている人は、すぐにでも司法試験の過去問を解いてください。時間がない、解けるほどの学力がないという理由は論外です。常に時間はありませんし、司法試験を解けるほどの学力がついたと思える日はいつまでも来ません。解いているうちに力はついていき、最終的に司法試験に合格する力が身についています。司法試験の過去問は、最低3周は回しましょう。そうすると、ロースクール入ってすぐに始めないと解ききれません。
最後に、司法試験は、勉強ができるだけでは受かりません。メンタルも重要です。本番ではメンタルを崩してリタイアしていく人が何人もいます。自分のしてきたことに自信を持てるだけの努力をすれば安心感を持てますし、開き直って司法試験に全身全霊をぶつけることができると思います。皆さんが一発で合格できることを祈っています。
辰已法律研究所 受講歴
【2019年対策】
・司法試験 総択
・司法試験全国公開模試