合格に必要なレベルを見極めることが合格への近道でした
1 司法試験の受験を決意した経緯
私が司法試験を受けて法曹になろうと決意したのは、裁判を傍聴しに行ったのがきっかけです。そこで弁護士が依頼者の信頼を得て、その人生に深く関わって仕事をしているのを見て、責任の大きさを感じつつも、自分もそのような仕事がしたいと思い、司法試験を受けることを決意しました。
2 予備試験合格までの学習状況
予備試験に出願するまでは、主に基礎講座(辰已の原孝至基礎講座(辰已専任講師・弁護士の原孝至先生ご担当)の復習と辰已のスタンダード論文答練(予備スタ論)の答練を週一回程度行なっていました。この頃は、分からなかった問題はすぐに解答例を見たりしつつストレスフリーに勉強していました。基本書を読んだりといったインプットは特にしていませんでした。出願後は短答対策として主に辰已の短答過去問パーフェクトと六法を用いて繰り返し問題を解いていました。その間、論文対策としては答練のみを続けていました。
短答試験後の2ヶ月は論文対策に注力しました。この時期、空いている時間はほとんど論文の勉強に充てました。論文の勉強は、今までの答練の問題を見直しつつ過去問を解いていき、出てきた論点等をまとめノートに一元化するといった方針で行いました。まとめノートは全科目辰已の趣旨規範本を土台に、それに加筆したり自分用にアレンジしたりして作りました。論文直前期はこのまとめノートを繰り返し見直して規範の暗記等をしていました。
口述については、辰已の法律実務基礎科目ハンドブックや大島先生の要件事実の本で流れをつかみつつ要件事実の暗記をしました。一番重視して勉強したのは条文そのもので、条文の素読を繰り返してイメージを固めました。
3 予備試験合格後の学習状況
予備試験合格後は、引き続き過去問演習と司法試験スタ論を基軸にしつつ、予備論文の勉強法と同様、演習からのまとめノートへの一元化を繰り返しました。短答対策についても予備試験受験時同様の方法で、論文対策と並行して行いました。ただ予備試験で対策していたのもあり、論文対策に比して、そこまで時間は使いませんでした。論文の演習については、特に過去問の検討に注力しました。予備試験以上に過去問の把握が重要だと感じたので、司法試験では答案構成だけでなく起案をするように心がけました。
4 受験対策として 辰已講座の利用方法とその成果
・スタンダード論文答練 福田クラス
司法試験対策としては前述のようにスタ論と過去問を基軸としていました。これは答練全体に言えることですが、合格するには何よりも書き慣れることが重要ですからコンスタントにアウトプットする機会として答練はとても重要だと思います。また私にとってはスタ論の採点表が特に役立ちました。スタ論の採点表は非常に細かく点数が割り振られており、書くべきことが受験生から見ても明快なので自分で復習がしやすかったです。やはり添削の結果のみを見るのではなく自分自身で不足部分を納得しつつ確認できるのが良いかと思います。また、あてはめ部分の事実も配点が明示されているので事実の摘示と評価の良い練習にもなりました。こうした意識付けが事実の多い本試験の問題文の見落としを少なくすることにつながったと思います。問題については基本的な問題が多いとも感じましたが、基礎を固めることで、難しい問題にも原理原則に立ち戻って対応できるようになったので、結果として良かったと思います。
福田クラスについて。私が最も福田俊彦先生(辰已専任講師・弁護士)に教わってよかったと思う点は、福田先生が徹底して現実的な合格方法を指導して下さったことです。答練の際には毎回、時間配分や設問を解く順番、厚く書くべき論点とそうでない論点の峻別等について具体的に講義して下さったので、本番はメリハリをつけた答案を書くことができ、結果としてどの科目も同じような点数ではあるものの沈む答案は一つもなく合格をすることができました。また先生は過去問を非常に重要視されており、問題文と出題趣旨、採点実感、そして合格答案の分析をとても丁寧にして教えて下さるので、本試験では合格するのに必要なレベルとプラスアルファの部分とを峻別しつつ問題文を分析することができました。
・直前フォロー答練
また直前フォロー答練も受講していましたが、毎回同時に起案した受験生の答案を使って先生が解説されており、直前期の追い込みのモチベーション維持に役立ちました。また講義中の福田先生の激励が、不安になりやすい直前期の精神的な支えとなりました。
・司法試験過去問答練
過去問演習の重要性は常々言われてきていることですが、私も過去問を実際に起案する機会が欲しいと考え、過去問答練を受講しました。過去問を時間を計って書くのは最初のうちは大変でしたので、定期的に答練という方法で書く機会を用意することが重要だと感じました。また、辰已専任講師・弁護士の本多諭先生が、問題文からどう答案構成するのか具体的に出題趣旨や合格答案等を用いて教えて下さったのでわかりやすかったです。本試験ではどうしても答練では対応できないような応用問題が出ることがありますから、現場で自分はどう対応すれば良いか練習しておくために過去問演習は重要だと思います。
・選択科目集中答練
私は経済法を選択していましたが、ほとんど初学者も同然の状況だったので演習の機会が必要でした。選択科目集中答練では8回16問演習できるのでとても役に立ちました。特に経済法はある程度書き方のパターンが決まっていてインプットよりもアウトプットが重要なので助かりました。また各問題の模範答案を利用して書き方を覚えることができたのも良かったです。
・論文ステップアップ松永塾
前述の通り私はアウトプットが重要だと感じていたので、100問という分量の演習ができる本講義を受講しました。初見の問題を見て短時間で答案構成をする練習を積み重ねられたことで、現場対応力が上昇したと感じました。また、辰已専任講師・弁護士の松永健一先生は、本試験で合否を分けるポイントや重要になる問題意識、思考回路を過去問等を通して非常に丁寧に解説して下さったので、本試験でどこに着目すれば高得点を狙えるか理解することができました。
・全国公開模試
私は、本試験と同様の日程・会場で問題を解く体験をするため、また他の受験生が多く模試を受けることから問題が的中した場合に書き負けないために模試を受講しました。予備試験と同じ会場でしたが、4日間揺れている机で書き続けるのは予想以上にきつく経験しておいて良かったと思いました。本試験は長丁場になりますし、事前にイメージを固めておくことが重要だと思います。
5 受験対策として やって良かった勉強方法
受験対策としては過去問検討を最も重要視しました。過去問は自分で解いてアウトプットの練習をするのにも当然役立ちますが、出題趣旨・採点実感・合格答案をセットで使うことで落としてはいけない部分とそうでない部分の峻別ができるようになったのが非常に大きかったです。過去問を繰り返し解いたおかげで、本番はメリハリのついた答案を書くことができ、沈む答案を作らずに済み、順位も2桁前半という好成績を残すことができたのだと思います。また採点実感で出来が悪いとされた分野は本当に繰り返し出ますから、ヤマ当てにも有用で、どの面をとっても過去問検討は役に立ちました。
また答練等を通して多くの問題に触れることを重視し、答案構成力や事実評価の力を上げる事に努めました。答練では、時間がかかるので問題の解説自体はあまり読んでいませんでしたが、優秀答案や解答例はよく読み、自分の答案と比較する等して、もっぱらアウトプット能力の向上に注力していました。
6 受験対策として 私が使用した本
短答対策には予備試験から引き続き短答過去問パーフェクトを使用しました。この本の解説はかなり充実しており根拠条文や判例の引用がなされているので他に基本書等を調べる必要もなく手間が省けました。条文は判例六法でつど引くよう心がけました。
まとめノートと論証集の代わりとしては、趣旨規範本を使用していました。私はアウトプット中心だったので演習で出てきた論点を随時まとめていくという方法をとりつつ、本書には余白があるので自分用に書き換えたり加筆したりしていました。私には一からノートを作っている余裕はなかったので判例規範や条文趣旨が既に掲載されている本書の使い勝手が良かったです。
また過去問検討の際は、ぶんせき本を使用していました。ぶんせき本は解答例や解説もついているのですが、何よりも再現答案が多数掲載されているのが役立ちました。再現答案は年度毎に高順位から低順位のものが順に掲載されており比較したり分析するのに有用でした。本書自体はかなり分厚いですが、高順位の再現答案のみを読む、もしくは不合格答案を読んでボーダーラインを知るなど、自分が必要な部分だけを読んで辞書的に使用していました。
前述のようにインプットはあまり重視していなかったので基本書は多用しませんでしたが、基本刑法1・2と基本行政法、判例講座刑事訴訟法、会社法(弘文堂)は繰り返し読んでいました。特に基本刑法はわかりやすく、頭の整理に非常に役立ちました。
選択科目の経済法には、辰已の「一冊だけで経済法」という本を使用していました。冒頭部分に趣旨規範が載っているのでこれをまとめノートにして使っていましたが、過去問とその再現答案も掲載されているので過去問演習の際にも使えました。ただかなり薄いので、部分的に基本書で補完していました。
7 自己の反省を踏まえこれから受験する人へのアドバイス
・学部在学生・予備試験受験生へのアドバイス
在学中に日頃からやっておくべきこととしては、やはりアウトプットの練習に尽きると思います。三段論法といっても試験用にある程度柔軟に使えるようになるためには、規範の立て方はもちろん、事実の摘示と評価等の練習も何度か繰り返す必要がありますし、よほどのセンスがない限り、慣れるまでに多少の時間がかかるのではないでしょうか。そこで日頃から定期的に答練を受けたり優秀答案を書き写してみたりするのが良いかと思います。インプットについては直前期の詰め込みでも対応できますし、それよりはその時間をサークル活動とか趣味に当てて楽しんだほうがいいと思います。また予備試験では、他の受験生が書けている点を落とすことが大きな打撃になり低評価につながりますから、得意科目を作るよりも各科目の基礎を固めておくことが重要だと思います。
合格率を見ると難しく感じますが、勉強の方向性さえ間違えなければ、必ず受かることのできる試験だと思うので、是非諦めずに挑戦してもらえればと思います。
・予備試験合格の司法試験受験生へのアドバイス
予備試験合格者の司法試験合格率は極めて高いですが、それは試験に最低限求められている条件を理解しているからだと感じました。確かに、問題自体は司法試験の方が難しく分量も多いので大変ですが、焦って完璧な答案を追求してむやみに新しい知識を増やそうとするのではなく、予備試験で培ったアウトプット能力を維持する事に注力するのが肝要だと思います。試験に限って言えば、難しいことは他人にもできないから自分なりに考えてそれなりに対処すればいいという妥協の構えを持つことが大事ではないでしょうか。
予備試験に受かるということは今までの勉強方法は間違っておらず確実に力になっているということですから、是非自信を持って頂ければと思います。
最後になりますが、読んで下さった皆様の予備試験・司法試験の合格を心より願っております。頑張ってください!
辰已法律研究所 受講歴
・基礎講座
・予備スタンダード論文答練
・司法試験スタンダード論文答練福田クラス
・直前フォロー答練
・司法試験過去問答練
・選択科目集中答練
・論文ステップアップ松永塾
・辰已全国公開模試