合格の鍵を握ったのは、知識の一元化
1 国際私法を選択科目に選択した理由
ロースクール入学時、選択科目を決めないまま授業が開始し、簡単と聞いた国際私法と経済法のうち時間割上受けやすかった国際私法を受講して、これなら自分にもできそうだなと思ったためです。
2 国際私法のメリットとデメリット
メリットは、民法(特に家族法)の知識が必要なので、国際私法の勉強で民法の知識を得られるという相乗効果がある点です。また、使用する条文が少なく、暗記する事項も少ないです。
デメリットは実務であまり使えない点です。細々と外国人の相続や親権など、使用の機会はありますが、倒産法や労働法に比べて頻度も重要性も低いと思います。その結果、就職活動時に興味のある分野として選択科目を言いにくかったです。
3 法科大学院での国際私法の学習状況
それぞれ半年ずつ、財産法、家族法、国際民事訴訟法、国際取引法を2年間かけて学びました。他の科目と違って暗記量が少ない国際私法では、その分、結論では差がつかず理由付けやあてはめが重要になるため、演習は必須です。他の科目では答案を書くことで暗記をすると知識が穴ぼこになってしまうリスクが高いですが、暗記すべき範囲が少ないため、演習しながらでも比較的必要な範囲をカバーできます。したがって、ロースクールでの授業も、授業時間の3分の1は小テストを用いた演習に費やされていました。
ただ、授業を受けているだけでは司法試験の問題に完璧に対応できるという状態にはなりませんでした。いくら少ないとは言え、長い時間をかけて暗記したため、覚えたそばからどんどん忘れてしまったせいです。
4 勉強方法
(1) 私が使用した本
ロースクールで授業を受けていたときに私の使用していた基本書は、松岡博先生の『国際関係私法入門』です。これは国際民事訴訟と国際取引法までコンパクトにまとまったいい基本書で多くの受験生が使っています。しかし、あくまで学問的な観点でまとめられ、試験前に参照する教材としては分量の多すぎるものでした。そこで、これとは別に試験前の知識の確認のための一元化素材を準備することにしました。この素材として選んだのが、辰已の書籍である『一冊だけで国際私法』でした。これは司法試験での国際私法の出題範囲を網羅しており、かつ、とてもコンパクトにまとめられていること、加えて、演習問題の素材が少ない国際私法を勉強する上で欠かせない過去問の問題、解説、参考答案まで載っているために選びました。そして、演習の一番の素材である過去問の出題論点については規範をまとめている部分に何年に出題された論点かわかるように記載されているのも後述する知識の一元化のために役立ちました。
(2) 私がやって成功した選択科目攻略法
国際私法は前述したように、演習が重要になりますが、演習は授業を通じてある程度済んでおり、あとは過去問を解きながら、演習を通じて使い方とともに覚えるべき規範を定着させるため、知識を一元化していきました。ここまで、覚えていたつもりでも、不正確であったり、忘れていたりする知識が多かったためです。国際私法は暗記事項が少ない分、周りの受験生と暗記の部分では差がつきません。裏を返せば、暗記が不十分だと周りより沈むということです。
そこで、これまでの演習や授業で得た知識を(1)でも述べた『一冊だけで国際私法』に書き込みやマーキングをしつつ落とし込んでいきました。書いていく過程で、知識が条文や論点ごとに整理されて行き、一元化する作業自体が良い復習となりました。加えて、暗記のしやすさは見開き1ページごとに入ってくる情報量をいかに多くできるか次第だと思っています。その観点から、コンパクトにまとまっている素材に自分で加筆して素材を作ることが重要です。こうして、最低限の知識に自分がよく忘れる、そして、演習時によく出てくる知識が加わった一元化素材が完成しました。最初は、過去問を解く前や辰已の模試の前などに、3日くらいかけてじっくり知識を確認しながら熟読していました。そして、演習後一元化作業をするという過程を複数回繰り返すうちに、最終的には、いつも間違える論点や覚えることが多い比較的要注意な論点だけを見直すだけでよくなり、3時間程度もあれば確認し終わるようになっていました。この状態に持って行ければ、国際私法で周りより書き負けることは決してありません。
加えて、私は間に合いませんでしたが、辰已の全国模試を受験するまでにこれができていればなお良かったと思います。この全国模試は本番と同じタイムスケジュールで行われるため、各科目にかける直前の勉強時間の比重を測るのにちょうどいいためです。
5 これから受験する人へのアドバイス
(1) 国際私法を振り返って
国際私法は時間をかけずに学べる科目とされています。センスのある方にとってはその通りかもしれません。しかし、私にとってはそうではなかったです。暗記が苦手なので、少ない点は助かりましたが、その分使い方を覚える必要がありましたし、未知の論点が必ず出るため、いくら勉強しても60点より点が上がることはなかったので、時間をかけても高得点を取れる科目ではないと感じました。私の勉強方法は、短時間で国際私法をマスターできるものでは決してありません。しかし、センスがなくても、周りより沈まない答案を書くのには有用だと思います。
(2) 選択科目初学者へ
一般に言われている問題提起、規範定立、あてはめ、結論の流れと大まかには一緒なのですが、国際私法は、まず問題提起の際に法性決定をする過程があります。ここが特殊性で、この問題は何の問題か、そして、どの条文を用いて解決するかということから書き始めるのです。これがわかっていなければ、総論から学び始め、反致とか公序良俗とか個別の論点を学んで覚えたとしても問題を解けるようにならないと思います。必ず、初学者であっても過去問と参考答案をみて論述の流れは確認してから勉強を始めることをお勧めします。
また、知識のインプットですが、ここまでに述べたとおり、演習をしつつ行うことが大事です。そして、一元化が大切ですが、まとまった時間を作って一元化するのも良い復習となるため、学んだ都度一元化する必要まではないと思います。なぜなら、学んだ当初は全部知らない知識となるため、かえって一元化素材が飽和し、コンパクトにならないからです。ある程度進んでからまとめられるように、一元化資料としてレジュメや答案などをストックしておくといいと思います。
(3) 次回受験する方へ
既に答練等で自分の思う合格点を取れている人は、まとめノートがあればそれを回すので足ります。司法試験では8科目の勉強バランスが大事で、そこを誤ると、FやE答案を生む原因となります。だから、まとめノートは1日くらい(できれば3時間くらい)で回せるものであるか確認してください。
他方、未だあまり点数が振るわない人は、法性決定の部分ができていないのか規範が書けないのか自分の答案を分析してみてください。法性決定が苦手なら演習不足であるため、法性決定の具体例をまとめノートにストックして試験直前にみれるようにしておくと点数が上がると思います。規範が書けないなら、一元化に失敗している可能性があるので、今使っている教材からコンパクトなものに一元化する過程で暗記していってください。
辰已法律研究所 受講歴
【2020年対策】
・司法試験全国公開模試