国際私法特有の答案の書き方に慣れる
1 選択科目を選択した理由
国際私法を選択しました。理由は予備試験合格から司法試験受験まで6か月もなく時間もない中で、覚えなければならないことがほかの科目と比べて比較的少ない国際私法が魅力的だったからです。
2 選択科目のメリットとデメリット
国際私法のメリットは問題となる法律も条文数が少ない「法の適用に関する通則法」を中心に少ししかなく、勉強しなければならない量が他の選択科目と比べて少ないところです。初学者にもとっつきやすく、勉強に入り込みやすいと思います。また準拠法が最終的に日本法となった場合、日本民法の適用結果を示すことが問題で問われることがあるので(例:未成年か否かの準拠法が日本法となった場合に民法4条を適用することを答案で示すことが求められます。)、民法との親和性が高いです。なので民法が得意な方により向いているかもしれません。
デメリットは他の選択科目に比べて市販の参考書や演習書が少なく練習素材が少ないので、問題演習不足に陥りやすいところです。また国際私法特有の答案の書き方があり(必ず論点とならないところでも条文の趣旨を書くことなど)、慣れる必要があります。
3 予備試験合格後の学習状況
予備試験の合格発表があった11月から当初試験が開催される予定だった5月までは6か月間しかなかったため、時間を無駄にしないようメリハリをつけた勉強をするように心がけました。具体的には次の3点です。司法試験と予備試験の大きな違いの1つといえる選択科目(国際私法を選択しました。)の勉強、平成18年から直近までの司法試験の過去問、また改正民法初年度の試験だったので改正民法への対応です。この中でも選択科目の勉強に特に時間を割きました。
4 私がやって成功した選択科目攻略法
(1) 国際私法は前述のように必ず条文の趣旨を書くことが求められます。この点が国際私法の独特なところです。例えば相続の準拠法は「法の適用に関する通則法」(以下「通則法」といいます。)36条によって定まるのですが、条文はその準拠法を「被相続人の本国法」としています。ここでただ通則法36条を適用して被相続人が日本人であるから日本法とするのではなく、まず通則法36条の趣旨を書いた上で具体的適用結果を示さなければなりません。このように趣旨を理解しなぜ法が各法律関係について本国法や常居所地法など様々な法を準拠法としているのか理解することがとても重要です。そこで私は相続や離婚、不法行為など各単位法律関係について基本書を読みよく理解した上で趣旨を暗記することを心掛けました。
また通則法に明文化されていない法律関係もあります(先取特権、留置権など)。これらは判例法理が存在する場合が多く判例を押さえることが重要になります。中には学説と判例が激しく対立している分野がありますが、基本的に判例を押さえた上で自説をとる場合は判例を批判した上で、また判例の立場をとる場合でも有力学説がある場合にはそちらの立場にも触れた上で簡単に批判することが求められます。このように通則法に明文化されていない単位法律関係については準拠法がどのように定まるのか、よく理解し記憶する必要があります。
以上の国際私法の特性を踏まえた上で私は辰已の「1冊だけで国際私法」に基本書や問題集、判例から論証を引用する形で体系的に整理しインプットをしました。基本書としては「国際関係私法入門」(松岡博)を使用しました。コンパクトに必要十分な知識を得ることができました。演習書として「演習国際私法CASE30」(桜田嘉章)を使用しました。
(2) アウトプット対策として辰已の選択科目集中答練、スタンダード論文答練選択科目を受講しました。受講した理由は予備試験にはなかった新しい科目であり答案を書く必要が特にあると考えたためです。私の場合インプットをしながらの受講であったため、最初のうちは論点や答案の書き方が分からず手探りの状態でした。しかし受講するうちに徐々に国際私法特有の答案の書き方を身につけることができ、同時に何を勉強すればいいかの指針となったことで国際私法の理解が促進されたと思います。問題も司法試験の出題傾向や過去問に沿ったもので本当に勉強になりました。またあわせて受講した辰已の「2019年国際私法1位合格者による国際私法合格答案Master講座」は、直近の合格者の方が論点の総ざらいをしてさらに答案の実践的な書き方を自身や他の受験生の方の再現答案を用いながら講義する内容でした。なかなか国際私法の講座が少ないなかでとても貴重な講座で本当にありがたかったです。おかげで国際私法に自信を持つことができ本番の試験を迎えることができました。
5 自己の反省を踏まえ、これから受験する人へのアドバイス
① 選択科目初学者へのアドバイス(初学者のうちに是非やっておきたいことなど)
初学者のうちに直近3年の過去問に目を通しどのような問題がどのように問われているのかを知ることがとても大事だと思います。私も全くの初学者として勉強を始めましたが、最初に本試験の問題をじっくり読みどのような問われ方をするかを知って勉強するのと知らずに目的意識なく一から勉強するのでは勉強の進捗度合に大きく差が出ると思います。
② 次回受験する方へのアドバイス(直前期の勉強方法など)
私は直前期は通則法を中心に自問自答する形で趣旨や規範をそらでいうことができるかひたすら繰り返していました。特にお風呂に入っている時や外を散歩しているときなど何かしているときにふとその日や前の日にやったことを覚えているかセルフチェックしたのが記憶定着につながったと思います。
辰已法律研究所 受講歴
・スタンダード論文答練(選択科目)
・選択科目集中答練
・合格者講義(2019年国際私法1位合格者による国際私法合格答案Master講座)