司法試験

切り替える力

中山 優さん
受験歴: 1回
東京大学法学部
2021年予備試験合格
【受講歴】スタンダード論文答練、全国公開模試 他
予備試験ルート合格

1 司法試験の受験を決意した経緯

 司法試験の受験を決意する以前の高校生の時から時事問題をニュース等で聞いていて、世の中のあらゆる分野が法律によって規律されていることを実感し、刑法をはじめとした身近な法分野に興味をもった状態で、大学に入学しました。
 その後、大学1年生の時に参加していた自主ゼミにおいて、弁護士の方から仕事内容をお聴きした際、依頼者の意見を傾聴し、密に相談しつつ業務を進めることができる弁護士という職業に憧れを抱きました。弁護士は、社会における紛争の予防、解決という重要な使命を負う法曹の一員としての責任感をもちつつ、目の前の依頼者の立場に寄り添って、依頼者のために全力で働けるやりがいがある職業だと感じました。
 また、塾講師としてアルバイトをしていて、非正規雇用のあり方について考えさせられるものがあり、労働法を含め法律をしっかりと学んで、自分の身を自分で守る知識を身につけたいとも考えました。
 さらに、法律を活かして多様なフィールドで活躍できる職種である点もまた魅力的だと考えたことも法曹を目指したきっかけです。1年生の前期教養学部時代の後期に履修した平和構築論授業を受けた際に、日本の弁護士が発展途上国の法整備にも寄与しているということを学び、平和構築にも活躍することができる非常に魅力的な職種であるということを体感しました。
 このように法曹になりたいと思うきっかけが複数あったため、司法試験を目指すに至りました。

2 予備試験合格までの受験状況

(1) 短答対策
 辰已の短答パーフェクトを全科目購入し、予備試験の過去問に絞ってその全てを解いた上で、間違えた問題や正誤が不安だった選択肢には印をつけておき、それらに絞って復習をしました。復習で不安が解消された問題については上記の印を消していき、最終的に残った問題を直前に復習しました。具体的なやり方は①まずは今まで使用していたインプット教材を科目ごとに復習し、その後全科目の予備試験の過去問1周し、②2周目には1周目で上述の印をつけた問題のみを復習しました。少しでも迷う問題には印をつけたままにしていました。そして、主要な判例や条文に書いてある問題で、再度出題された時に解けるか不安だったものについては逐一判例六法で確認しました。③これらを繰り返し、印を減らしていきました。
 上記のように過去問をこなし、基本的な判例や条文知識を大切にして六法の素読なども行うことで地道に知識を定着させました。予備試験の前年の8月あたりに一年分の短答式試験の過去問を実際の試験と同じ時間で解いてみて、合格点を超えていることを確認できていたので、その後は本番の短答式試験の1ヶ月前まで完全に論文対策に集中し、その後短期間で短答対策を効率よく行うことにしました。

(2) 論文対策
 予備試験の過去問については全年分答案構成をするか、あるいは時間を計って起案をするようにしていました。予備試験の過去問はかなりの量になっているので、これらを解くことで問題の傾向を的確に把握することができます。消化するだけでも時間がかかるので、書く練習は答練でもできることも考慮して過去問を後回しにしてとっておくのではなく、早めから少しずつでも解いていけると短答から論文の期間の勉強が楽になるかと思います。直前期には答案を実際に書くことよりも、論証集の暗記等を優先してしまいがちですが、書く感覚を忘れないように、また、短答式試験で訛ってしまった感覚を取り戻すためにも直前答練等をとって、定期的に書く練習を続けることは大事なことだと思いました。
 また、辰已の予備試験スタンダード論文答練を通学で受けました。通い始めた時は各科目の基本論点はあやふやな状態でしたが毎週強制的に通学して答案を作成することで徐々に答案を書くことに慣れていきました。一度答練で書いた論点については、その後忘れにくくなるため、論文を書くことで新しい知識を身につけていけたという側面もあったかと思います。
 答練の点数を過度に気にする必要はなく点数が良かった時は成長しているとプラスに捉える程度で良いかと思いますが、一応モチベーションの維持のため30点は切らないこと、40点を目標として答練を毎週解いていました。毎週の答練は科目が週によって決まっているため、答練をペースメーカーとしてその週の科目の勉強を継続できました。毎週の論証集の確認による知識の定着につながったため、合格の大きな要因になったと思います。1度会場で書いた問題は、解説や模範答案を叩き込んで、判例百選も適宜参照する等して復習していました。

(3) 口述対策
 辰已の口述模試を受けました。口頭で答えるという緊張感や形式に慣れる必要があるため、模試は必ず受けることをお勧めします。辰已の口述模試の特徴は、受験生同士がペアになって一方の受験生が口述模試を受験している様子を同じ教室内で観察することができる点にあります。自分も頭の中で答える機会になる上、他の受験生のレベル感も知ることができる大変貴重な機会をいただけるため、後から振り返っても本当に受けておいてよかったと思いました。辰已の口述模試のおかげで、本番では完璧に答えることを目指すのではなく、主査の誘導に乗って会話することができました。論文式試験の合格発表から口述試験まで2週間程度しかなく、発表まで何も勉強していなかった私は非常に焦ったので、できれば要件事実と刑法各論の知識だけでも発表までに確認しておくとスムーズに勉強を進めることができると思います。
 民事系については、大島先生の民事裁判実務の基礎上巻を何度も読み、紛争類型ごとに、訴訟物と請求の趣旨、請求原因事実と抗弁、再抗弁を反復しました。また、民事訴訟法の短答知識を総ざらいしました。
 刑事系については、辰已の青本を中心に手続きを捜査の端緒から判決に至るまで勉強しました。また、刑法の重要構成要件は定義や主要論点への理解を基本刑法という基本書を口述前になって読んで論文の時より深く理解するよう心がけました。さらに、刑事訴訟法の論証集を復習しました。
 民事系、刑事系いずれについても論文までの勉強の基本的な知識の確認を怠らないことが重要だと思います。
 また、民事刑事問わず、論文式試験に合格した大学の友人と法律を口に出しながら一緒に勉強したことで、法律用語がスムーズに口から出るようになりました。また、口述試験の会場は家からも駅からも遠かったため、友人と共に会場まで徒歩3分程度のホテルに宿泊して試験に備えました。友人と泊まることでリラックスもでき、すぐに帰れるので疲れをためることなく2日間の試験に臨むことができました。

3 予備試験合格後の学習状況

(1) 短答対策
 予備試験の短答式試験の際には上述の通り、予備試験の過去問に絞って対策していたため予備試験の問題で過去に間違っていた問題と残りの司法試験の過去問を解きました。一方で、論文式試験の対策を重視したかったため、問題形式が異なる問題の多い平成22年以前の問題は解きませんでした。比較的スムーズに解き進められる憲法と刑法については平成23年以降の問題を全て、解くのに時間がかかり論文式試験の対策と比べて自分にとって効率が悪いと思った民法については平成26年以降の問題を全て解きました。
 勉強方法については予備試験の際の短答対策の項目と同様です。短答式試験の勉強を開始したのは試験の約4週間前で、論文式試験の対策と並行させました。

(2) 論文対策
 論文式試験については予備試験の対策で自分なりに作成方法が確立していたため、時間配分に気をつけるようにしたのと、判例の射程の問題が多かったことから判例をより深く読み込むようにしました。司法試験の過去問や答練以外に何か新しい教材に手をつけることはありませんでしたし、個人的には全く必要ないと思っております。
 司法試験の過去問については答案構成をするか、時間を計って起案をするようにしていました。古い年度のものはほとんど答案構成で済ませていましたし、かなり怠惰な性格だったため、最近の年度もかなりの数を答案構成で済ませてしまっていました。答練の点数は平均的に高く、時間配分も掴めるようになっていて、特に危機感を覚えていなかったことが原因ですが、今思えば傲慢な考えだったと思います。
 その代わり司法試験の出題趣旨や採点実感については徹底的に読み込みました。採点実感は司法試験の合否においては絶対的な存在であって、神様のような存在であるとも言える採点官の方々が後進の受験生に対してどんなことをしてはいけないのか、さらには、どんなことを書けば高評価をもらえるのかについて詳細に書き記してくれた啓示のようなものなので、最新の年度のものだけでも絶対に読んでおくべきだと思います。
 司法試験の過去問についても予備試験以上の量になっているので、これらを解くことで問題の傾向を的確に把握することができます。消化するだけでも時間がかかるので、書く練習は答練でもできることも考慮して過去問を後回しにしてとっておくのではなく、早めから少しずつでも解いていけると短答から論文の期間の勉強が楽になるかと思います。直前期には答案を実際に書くことよりも、論証集の暗記等を優先してしまいがちですが、書く感覚を忘れないように、時折1日に一通の答案を書くようにしていました。
 また、辰已のスタンダード論文答練を通学で受けました。通い始めた時は各科目の時間配分が難しく、時間切れになっていましたが毎週通うことで時間制限に慣れていきました。
 答練の点数は過度に気にする必要はなく点数が良かった時は成長しているとプラスに捉える程度で良いかと思います。毎週の答練は科目が週によって決まっているため、答練をペースメーカーとしてその週の科目の勉強を継続できました。毎週の論証集の確認による知識の定着につながったため、合格の大きな要因になったと思います。1度会場で書いた問題については、添削者の方のアドバイスに目を通し、判例百選やインプット教材を適宜参照する等して復習していました。

4 受験対策としてとった辰已講座の利用方法

 辰已講座の利用については上述の予備試験合格前の学習状況及び合格後の学習状況にも記しているため、主にインプットとしては法律実務基礎科目ハンドブックの刑事実務基礎(青本)と判例百選読み切り講座を重宝しました。
 辰已の青本は手続きの部分を中心に捜査の端緒から判決に至るまで法律や規則の条文を追う形で勉強しました。手続きの流れが簡潔にまとまっているうえ、重要な手続には実務の観点から詳しい解説が加えられており、刑事実務の手続の部分はこの一冊で済ませました。
 判例百選読み切り講座は辰已の先生方が試験において重要な判例とそうではない判例とをランクを分けてくださり、重要な判例についてはしっかり解説してくれるため、メリハリをつけて判例学習をすることができました。
 この講座をもとに判例百選を何周もしたおかげで飛躍的に知識が定着し、答練の点数にも安定感が出るようになりました。
 アウトプットとしては口述試験模試、スタンダード論文答練や論文公開模試を利用しました。
 辰已の口述模試の特徴は、受験生同士がペアになって一方の受験生が口述模試を受験している様子を同じ教室内で観察することができる点にあります。自分も頭の中で答える機会になる上、他の受験生のレベル感も知ることができる大変貴重な機会をいただけるため、後から振り返っても本当に受けておいてよかったと思いました。模試担当の先生方の雰囲気作りも試験の内容も本番さながらで、口述模試で待っている時間も口述模試を受けている時間も本番同様の緊張感がありました。辰已の口述模試のおかげで、本番では完璧に答えることを目指すのではなく、主査の誘導に乗って会話することができました。
 スタンダード論文答練は本番と同じレベルの問題を毎週解くことができるため、それに向けて各科目を勉強することもでき、ペースメーカーになりました。相当な数の本試験同様の問題を解くことができ、書き方や時間配分に慣れることができ、本番も落ち着いて臨めました。添削者の方のアドバイスに目を通し、判例百選などで確認しつつ復習しました。
 公開模試は本番と同じ日程、時間設定で行われるため、本番通りに答案を書く練習をするために最適です。科目ごとに相対的な順位も出るため、自分が受験生の中でどの位置にいるかを知ることができるとともに、成績優秀者も掲載していただけるため自信をもって本番に向かうことができました。

5 受験対策としてとった「私がやって成功した方法」

(1) 趣旨を意識する
 条文の趣旨を意識して規範を書いて、その趣旨に沿っているか等の観点から事実認定を行っていました。初見の問題が出た時も、条文の趣旨から規範を導くことで大きく解答筋を外れることなく、相対的な成績評価が行われるこの試験では勝負することができると思います。これができれば、事実上あらゆる問題に対応することが可能になります。

(2) 事実をしっかり拾って評価する
 事実をしっかり拾わないと、採点の土俵に乗れなくなってしまうと思い、とにかくできる限りの事実を拾い、評価しました。問題文の全ての事実を拾うつもりで書きました。ポイントは事実を羅列するだけではなく、事実と評価をしっかりと分けて、事実を書いたらそれを評価して結論を導くことです。この際、自分の導こうとする結論を補強する事実しか拾わず、自分に不利な事情を無視すると説得力に欠けるので、不利な事情についてもしっかり拾って譲歩するか否定するようにしました。

6 受験対策としてとった「私が使った本」

 辰已の書籍では刑事実務基礎ハンドブック、短答過去問パーフェクトを使用しました。刑事実務基礎については上述の通りです。短答過去問パーフェクトは全年度の過去問が分野別に並んでおり、インプットした上で過去問を解くのに適していました。まとまっていて印をつければどこを復習すべきかが一目瞭然のため、何度も復習することができました。
 上述の通り、口述対策のため基本刑法各論を何度も読んだほか、民事裁判実務の基礎も何度も読みました。通称古江本と呼ばれる事例演習刑事訴訟法は論証作成のために使いました。水町先生の事例演習労働法や司法試験のネタ本とも言われている刑法事例演習教材はそれぞれ一周しました。

7 これから受験する人へのアドバイス

 司法試験は難関試験と言われていますが、その言葉に惑わされて難しいことを勉強しないといけないと考えるのは誤りだと思います。基本的な法律知識を勉強し、書く練習を積むことで合格できる試験です。相対評価の試験なので、条文や判例百選に載っている重要判例の知識を身につけて、他の人に差をつけられなければ落ちることはありません。細かい知識には深入りしすぎず、予備校でAランクとされているような基本的な知識の反復を優先すると合格に近づきます。
 また、試験会場でハプニングが起きても決して焦らず、今まで勉強してきた自分を信じて必ず最後まで受けましょう。何かしらの失敗は必ずすることを想定しておきましょう。失敗するのは皆同じです。私は予備試験の論文式試験の際には体調を崩していて、司法試験の選択科目でも試験終了時刻を30分勘違いして第2問の設問2を白紙で提出しましたが、いずれも二桁順位で合格できました。選択科目は最初の科目だったので失敗した直後、答案を回収されるまでは茫然自失の状態でしたが、数分後にはこれくらいのハンデがあった方がこの試験面白くなるなと思うと完全に切り替えられました。それ以降試験が楽しみになり、やる気に火がつきました。
 試験を受けている時の自分にとっては最悪の事態だと思っても、多くの人が何かしら大きな失敗をしているか、あるいは、基礎基本を徹底できていないため、相対的に見れば合否には関係のない失敗だったりします。提出した答案は絶対に直せません。やってしまった失敗について悩んでも意味がないので、次の試験でどう振舞うかイメージトレーニングしましょう。
 長丁場の試験なので、司法試験の勉強ができる恵まれた環境に感謝をしつつ肩の力を抜いて勉強すると良いと思います。頑張ってください。

辰已法律研究所 受講歴

【司法試験対策】
・スタンダード論文答練
・スタンダード短答オープン
・選択科目集中答練
・全国公開模試

【予備試験対策】
・予備試験 総択
・予備試験 論文予想答練
・予備試験 論文公開模試
・予備試験 スタンダード論文答練
・予備試験 スタンダード短答オープン(第2クール)
・口述模試

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