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答案を書かない勉強の仕方

池中 千尋(仮名)さん
受験歴: 1回
東京大学法科大学院 【既修】2021年入学・2022年退学
2021年予備試験合格

予備試験ルート合格

1 司法試験の受験を決意した経緯、合格までの道のり

 身内に弁護士がおりましたので、弁護士という職業は小さい頃から将来の選択肢の候補となっていました。大学受験の時はそこまで弁護士になりたいという強い志望はなく、世の中がどのようなルールの下で動いているのかを知りたいという漠然とした気持ちで法学部(文科一類)を選択しました。授業で学ぶ法学は学問として面白く感じましたし、周囲には既に入学時から予備試験対策の塾に通っている同級生が一定数おり、それらの方々に触発される形で大学2年生から予備試験を目指すようになりました。大学3年・4年次に2回予備試験を受験したのですが、いずれも短答で不合格になってしまい、周りの優秀な同級生は4年生で司法試験に合格する人もいるのに、短答式すら合格できない自分は法曹に向いていないのではないかと当時はかなり悩みました。法曹を目指して一緒に勉強していた友人が予備試験に見切りをつけて民間就職に切り替えていく姿を見て、自分も諦めるなら今がベストなタイミングではないか、法科大学院に進学しても、卒業後司法試験に合格できなければ路頭に迷うのではないかとかなり進路を迷ったのですが、結局、法曹への憧れが捨てきれず、法科大学院を受験することにしました。

2 法科大学院受験前の学習状況

 上述のように、大学4年生の予備試験に短答で不合格になったため、法科大学院ルートも視野に入れることとなり、東大・早稲田・慶應の3校を受験しました。法科大学院対策としては各法科大学院の過去問を解くとともに、解説をホームページに載せている大学はそれを、載せていない大学は個人のブログで参考答案を載せている方がいらっしゃったので、それを参考に読みました。結果は全て合格、特に早稲田は問題の相性が良かったのか、学費全額免除の認定をしていただきました。この合格体験により、自分にも司法試験への適性は一定程度あるのだと自信を持つことができ、それからはあまり進路について悩むこともなくなりました。

3 法科大学院入学後の学習状況

 基本的に、予備試験・司法試験の受験科目は予習・授業・復習ともに力を入れていました。特に、司法試験の考査委員の先生の授業は、先生が授業でおっしゃっていたことを一言一句聞き逃さないくらいの気持ちで受講していました。また、直近の注目すべき判例は、どれが試験対策として重要なのかの判定が自分では困難でしたので、先生方が授業やプリントで触れていた判例を集中的に押さえました。
 予備試験は毎回短答式試験で躓いていたため、短答式試験の対策はかなり早期に着手しました。とはいえ、ロースクールの予習復習・論文式試験の対策にも追われてたため、短答対策は通学時間等の隙間時間中心に行っていました。短答対策を真面目にすることで、確実な知識の量を増やすことができ、結果的に論文式試験の対策にも繋がる部分もあったと思います。

4 受験対策①

 受験対策として、情報を一元化し、それを繰り返し読み込むことで知識を定着させることを意識していました。短答は間違えた問題のポイントをワードに表形式で書き出し、それを周回することで自分が間違えやすい部分の整理を効率的に行なっていましたし、論文についても一冊の薄めの参考書に自分が間違えたポイントや、事実の評価の仕方の例、基本書を読んで気づいたポイント等を書き込んで、試験直前まで繰り返し読み込んでいました。書き込めるスペースは限られているため、書きたい情報を短くまとめる練習にもなりましたし、繰り返し読むことで確実な知識を増やすことができました。
 また、私の受験対策の中であまり他の受験生の方と共通しないであろう点は、答案のフル起案は模試や法科大学院の期末試験以外せず、過去問や答練等の演習では、問題を読んで軽い答案構成をした後はすぐ模範解答を参照していた点です。どうしても、フル起案やそれに準じるしっかりとした答案構成をすると時間がかかりますし、頭も疲労します。私はもともと文章を書くことが比較的得意ということもあり、フル起案する時間をカットし、その分の時間で、問題演習の周回回数を増やしたり、必要な知識を定着させたりしていました。周りの合格者は仲間内で自主ゼミを開いたり、予備校の答練を利用してフルスケールの答案を書く練習を積んでいた方が多いので、その方が正統派だとは思うのですが、もともと文章力があり、かつ可処分時間が少なく、信頼できる模範解答を入手できる環境にある方は、このような方法を試してみてもいいのではないでしょうか。

5 受験対策②

 辰已の論文対策・「一冊だけで倒産法」を倒産法対策として利用しておりました。予備試験合格から司法試験受験までに選択科目を仕上げるのは時間的余裕がないという点で大変でしたし、市販の基本書にはとっつきやすいものかつ信頼できるものを見つけられず、対策に苦労しました。しかし、「一冊だけで倒産法」は趣旨規範に加え、過去問の参考答案の記載があり、効率的な選択科目対策に非常に有用でした。周囲にもこれの使用者が多かったように思います。既に述べたように、論文対策としては一冊に情報を集約し、それを何回も周回することで知識を定着する方法が一番効率が良いと考えていたので、倒産法についても、模試で狙われたポイントや百選の解説を読んで気づいた点などを書き込んで情報を一元化していました。試験本番にも倒産法の試験がある日には「一冊だけで倒産法」を持って行って直前まで自分のメモを読んでいました。

6 アドバイス

(1) 在学生
 試験対策に気を取られすぎて、ロースクールの授業はおざなりになりがちですが、ロースクールの勉強が試験対策になる部分も大きいと思うので、少なくとも試験科目については真面目に授業を受けるべきだと思います。もちろん、予習や復習に時間をかけすぎることは好ましくないので、効率は考えるべきだと思いますが、ロースクールの成績は就職で見る事務所もあったり、将来外国に留学するときに評価の対象になることがあるので、その時に足を引っ張られないくらいの成績はとっておくといいと思います。また、時間がないロースクール生活ですが、ロースクールで開催されている裁判所見学等のイベントは可能な限り参加した方がいいと思います。予備試験を受験する方は実務基礎のイメージを膨らませるのに有用ですし、勉強のモチベーションも湧きます。

(2) 初めて受験する方
 予備試験を受験された方は別として、自分の書く文章がどれくらいの評価を受けるのか分からず不安かと思いますが、自分のそれまでの勉強を信じて受け切ることが大事だと思います。また、模試の評価は当てにならない部分も大きいですし、模試を受けてから本番までの伸び代も大きいので、模試の全体評価に一喜一憂するのではなく、何が他の受験生と比べてできなかったのかに着目してその後の勉強に活かすにとどめるべきだと思います。実際、私も直前の模試ではC評価でギリギリ合格圏内だったのが、本番の論文の順位は二桁でしたし、そのような例は他にも聞きます。

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