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最低限の知識をおさえれば、司法試験は受かる

Y.Iさん
受験歴: 新試験1回
一橋大学法学部
中央大学法科大学院 【既修】2019年入学・2021修了
一発合格

1 司法試験の受験を決意した経緯

 私は、中学・高校の頃から、なんとなく法律に興味があり、将来働くのであれば、どうせなら好きなこと・興味をもてることを仕事にしたいと思い、法曹の道を念頭に置くようになりました。
 また、中学・高校時代の文化祭実行委員としての経験を通して、組織運営やビジネスの仕組みに興味を持つようになったことから、企業法務を扱う弁護士になることを漠然と意識するようになっていました。

2 法科大学院受験前の学習状況

 上記のとおり、比較的早い時期から法曹の道に興味を持っていた私ですが、大学入学後は、大学祭の実行委員会とサッカーサークルでの活動に熱意を注いでいたことから、まったく勉強に取り組めていませんでした。
 そのような状況から、改めて進路を考えたときに、やはりロースクールに進学したいと考え、大学3年の時の12月頃から、ロースクール入試に向けた勉強を開始しました。
 しかしながら、周囲に法曹を目指す友人がほとんどおらず、論文式の試験を解けるようになるためには、短答式が解けなければならないのだろうという思い込みから、短答式の勉強に走ってしまい、4月頃にロースクール入試の問題を見て、どうにもならないことに気づき、慌てて軌道修正を図ったという感じでした。
 そして、一通りロースクール入試を終えた後に、中央大学ロースクールへの進学を決めてから、ほとんど触れたことのない行政法の勉強を開始しました。
 ですので、ロースクール入学前の学習状況としては、基本7科目の基礎知識部分は1周学習したが、ほとんどまともな司法試験対策をしたことがないような状態でした。

3 法科大学院入学後の学習状況

 私の法科大学院入学前の学習状況は、芳しいものではなかったため、法科大学院入学後の私は、まず、授業を大切にすることを考えました。ですので、授業がある時期の学習内容としては、授業の予習及び復習でほとんどの時間を持っていかれてました。
 それ以外の、長期休みなどのときには、演習書も取り組んでいましたが、それ以上に、司法試験の過去問の起案を、フルスケールで、時間を計って、行っていました。入学時から3年次の12月くらいまでは、1週間ないし2週間に1本、3年次の1月から3月くらいまでは、ほぼ毎日1本ずつ起案していました。
 直前期の4月から司法試験本番までは、手が回りきっていなかった短答式を潰していきつつ、参考書の問題を答案構成だけして、主要な論点を総まくりできるような方法を意識して、学習していました。

4 学習上の工夫

 私の場合は、家にいると、色々なことに気をとられてしまい、なかなか学習できない性格でしたので、基本的に、学校で時間を過ごすようにしていました。そして、勉強しているかはともかくとして、とにかく机に向かっている時間を長くすることを意識していました。加えて、直前期には、勉強している実質の時間をタイマーで計り、記録することで可視化し、自分にプレッシャーをかけていました。
 逆に反省しているところなのですが、いわゆる論証パターンについて、自分で一からワードで作成していましたが、非常に非効率で面倒でしたので、あとになって趣旨・規範ハンドブック(辰已書籍)に全部書き込んでいく方がよかったなと思いました。

5 使用書籍

 私は、アウトプットに重心を置いた学習をしていましたので、基本書よりも演習書や趣旨・規範ハンドブックを軸にして、学習を進めていきました。以下、紹介いたします。

・「趣旨・規範ハンドブック」公法系・民事系・刑事系各種(辰已書籍)
 私の勉強の主軸はこれでした。ここに載っている論点をすべておさえれば、他の受験生との差はつかないだろうという思考のもと、ここに書いてある内容をおさえることを最優先に学習していました。

・えんしゅう本(辰已書籍)
 私は、民法、民事訴訟法と行政法において使用していました。短く、ピンポイントで各論点についての解説が展開されているので、司法試験の起案の前段階で扱うのにちょうどいい教材だと思います。

・論文過去問パーフェクト ぶんせき本(司法試験・予備試験)(辰已書籍)
 司法試験の過去問の起案に重点をおいていた私にとっては、必須の書籍でした。答案構成があげられてるため、思考回路をたどりやすく、上位者の答案の書き方も参考にしていました。

・短答過去問パーフェクト(全7科目、司法試験・予備試験)(辰已書籍)

 短答は、どれだけ過去問を解いたかが、成績に直結する試験だと思っています。この書籍は、問題がまとまっていることはもちろん、解説までしっかりついているので、ちゃんと理解しながら解いていくことができます。民法も、法改正に対応した解説が掲載されていたので、ありがたかったです。
 基本書については、各人の好みがあるかとは思いますが、私は比較的オーソドックスなものを使用していたと思います。基本的には、通読するというよりは辞書的な扱いでした。参考になれば幸いです。

<憲法>
・「憲法」(芦部信喜)
・「憲法の急所」(木村草太)
 いわゆる芦部憲法は、短答対策としては非常に有効なので、難しい書籍だと思いますが、一読しておいた方がいいと思います。「憲法の急所」は、権利論についての解説が非常に分かりやすいので、起案で、どう書いていいか分からなくなったときに参考にしていました。

<行政法>
・「行政法」(リーガルクエスト)
 シンプルですが、これで十分だと思います。

<民法>
・「民法(全)」(潮見佳男)
・「民法の基礎」(総則・物権)(佐久間毅)
・「債権総論」、「担保物権」(松井宏興)
・「債権各論」(Ⅰ・Ⅱ)(潮見佳男)
・「民法Ⅳ 親族・相続」(リーガルクエスト)
 当初、「民法(全)」を使用していたのですが、さすがにそれだけでは情報量が足りなかったので、結局、各分野での基本書を揃え、辞書的に使用していました。

<会社法>
・「会社法」(田中亘)
 網羅的かつ詳細な記載のあるテキストだと思います。辞書的に使用していました。

<民事訴訟法>
・「民事訴訟法」(リーガルクエスト)
・「民事訴訟法概論」(高橋宏志)
 リーガルクエストでおおよその学説をチェックし、最終的な、自分の起案のよりどころとして、高橋説に寄せていくという使い方をしていました。

<刑法>

・「講義刑法学」(総論・各論)(井田良)
 刑法は好みによると思いますが、個人的にはおすすめです。

<刑事訴訟法>
・「刑事訴訟法」(リーガルクエスト)
 シンプルかつ十分だと思うのでおすすめです。

6 これから受験する人へのアドバイス

(1) LS在学生へ
 まず、法科大学院の授業を大切にすることをおすすめします。おそらく、法科大学院で授業を受け持っておられる先生方の中には、司法試験委員の経験者の方もいらっしゃると思いますし、建前上、司法試験の受験指導はできないとはいえ、個別に質問に行けば答えてくださる先生方ばかりだと思います。そのような、司法試験に通底する感覚を持った先生方の授業を受けれるわけですから、授業や先生方を使い倒していくことが、自分の知識のブラッシュアップにつながるのではないかなと思います。
 また、これは人によって好みはあると思いますが、せっかくのロースクールで、同じ進路を志す人が多くいるわけですから、気の合う仲間と、自主ゼミを組むことをおすすめします。知識のインプットとアウトプットそれ自体は、一人でもできますが、一緒に勉強する仲間がいる方が、起案のモチベーションにもつながりますし、何よりも、自分が書いたものが、他人に伝わるかを容易に、かつ頻繁に試すことができるので、自主ゼミは1、2か所ほど持っておいた方がよいのではないかなと思います。

(2) 来年初めて受験する方へ
 まず、当日までに、起案や模試を通して、当日のイメージをしっかりつかみましょう。朝起きてから、試験会場までの行き方、会場の雰囲気、中日をいれた5日間の過ごし方、各科目の起案のペース配分等を、通しで練習できる機会があればベストだと思います。当日のイメージができていれば、イレギュラーを減らすことができ、試験そのものに集中することができると思います。
 また、受験に関しては、一部の優秀層を除けば、全体として、そこまで決定的な実力差というのは存在しないと思います。各人の当日のコンディションや、出題内容一つに大きく左右されるはずです。個人的には、特にメンタルの持ち方は非常に大事だと思っています。4日間を通して、「自分は大丈夫」、「自分が解けないものは他の人も解けないはずだ」というメンタルを強く持っていられるかどうかは、試験の出来栄えにかなりの影響を及ぼすと思います。そのようなメンタルを持つためには、試験本番までの間の学習で、「自分にできることはやりきった」と思えることが必要になると思います。悔いのないように学習を積んで、本番に臨んでください。

 本体験記が、少しでも、皆様の参考になれば幸いです。

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