司法試験

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今やるべきことを、淡々と

A.Oさん
受験歴: 新試験1回
明治大学法学部
中央大学法科大学院 【既修】2019年入学・2021年修了
【受講歴】スタンダード論文答練(第2クール) 司法試験全国公開模試 他
一発合格

1 司法試験の受験を決意した経緯、合格までの道のり

 身近に何名か弁護士がいたことから、幼い頃より弁護士に対する漠然とした憧れがありました。中学・高校時代に将来の進路について考える機会があり、弁護士について深く調べてみたところ、その使命に基づき目の前の依頼者のために尽力する姿に強く憧れ、弁護士になりたいという気持ちが強まっていきました。
 早い段階から司法試験受験を視野に入れていたため、学部在学中から予備試験突破を目指して勉強を継続していましたが、結局一度も予備試験に合格することはできませんでした。ですが、今回、法科大学院修了の資格で無事合格することができて良かったと思っています。

2 法科大学院受験前の学習状況

 予備校の入門講座を受講していたため、そのテキストや問題集を中心に勉強していました。この頃は、覚えた論証をそのまま貼り付け、問題文の事実に即したあてはめをするというスタイルの答案しか作成しておらず、事案の特殊性を意識するという司法試験で求められる書き方は確立できていませんでした。
 また、法科大学院進学を目指す同級生と定期的に各法科大学院の過去問を解いて検討する勉強会も行っていました。

3 法科大学院入学後に学習状況

 ロー入学直後は、予習(中央ローは2年生の民訴の負担が大きいと言われています)・講義・復習のスタイルを確立させるのに若干苦労しました。また、ロー入学後も予備試験を受験することは決めていたため、短答突破を目指して短答の勉強(この頃は辰已の肢別本を使用していました)を並行して行っていました。
 ロー1年目で受験した予備試験短答式試験で不合格となってしまったため、それ以降は前期期末試験に向けた勉強(講義の復習・過去問の検討)と司法試験の過去問の検討を始めました。検討の方法は受験生によって様々ですが、私は文章を書く方が記憶に残りやすかったため、2時間で書き切れなくても(当初は2時間半かかる科目もありました)、最後の設問まで文章として書き切る答案作成方法を選択していました。この年の夏休みからはローの友人と主として司法試験の過去問を検討する自主ゼミを始めました。前日までに答案をPDF化したものを送り合い、当日に改善点等を指摘し合うというスタイルをとっていました。この自主ゼミのおかげで答案を書くことを習慣化することができたと思っています。この自主ゼミはロー2年目の冬まで継続していました。
 ロー1年目の後期はロースクールの生活に慣れてきたため、予習・講義・復習をこなしつつ司法試験の過去問を解くというスケジュールをこなせるようになっていきました。また、短答については、肢別本よりも過去問そのものを使用した方が自分に合っていると判断したため(最後の2択で迷った時の決断力を磨くため)、辰已の短答過去問パーフェクトに切り替えて勉強を継続していました。時間は掛かりましたが、この勉強法が自分には合っていたのかなと思います。
 ロー2年目はコロナの影響で対面での講義がほとんどなく、課題レポート作成が中心となっていたため、1週間のうち課題をまとめてこなす日を設定して、それ以外の日は集中的に司法試験の過去問の答案を作成していました。書きっぱなしというのは良くないため、出題趣旨や採点実感、予備校や中央ローの先輩方が作成した解答例や再現答案をよく読み込んでいました。この年も予備試験短答式試験は受験しましたが、あと2点の差で不合格でした。残念ではありましたが、短答式試験翌日から今年の司法試験最終日まで毎日欠かさず短答の過去問を解き続けたことは、自分の精神を安定させるためにも良かったかなと思っています。また、経済法の定期試験の成績が良くなかったため(結局、1年目も2年目もD評価(中央ローでは最低評価)でした)、辰已の選択科目集中答練を受講し、アウトプットをしつつインプットをするという勉強方法をとっていました。この答練があったからこそ本番では66点という足を引っ張らない程度の点数を取ることができたのではないかと思っています。
 ロー2年目の夏休み終了までに全年度・全科目の過去問を最低1回は答案作成していたため、ロー2年目の後期からは、より深く過去問を検討するべく、出題趣旨・採点実感・解答例・再現答案・司法試験解説集等を参照しながら、全年度・全科目の答案例(自分が現実的に書けそうなA評価答案)を手書きで作成し、法系別にファイリングしていました。この際、出題趣旨や採点実感に記載されている考査委員からのメッセージや注意書きを答案に赤ペンで書き入れていました。ただ、現実的に全ての論点を拾うことは不可能なので、受験生が全員書ける部分と、書けなくても致命傷にはならない部分を明確に区別するようにしていました。また、短答に不安があったため秋からは辰已のスタンダード短答オープンを、そして初見の問題に慣れる練習を積むため年明けからは辰已のスタンダード論文答練(第2クール)をそれぞれ受講してアウトプットの機会を増やしていきました。

4 受験対策として

(1) 辰已講座を利用方法とその成果
 上記のとおり、主にアウトプットの機会として辰已の答練等を受講していました。辰已の答練等を受講した理由は、回数が豊富だったこと、奇抜な問題より現実的な問題(簡単という意味ではなく、司法試験の過去問に即したレベルという意味です)が多く出題されていたことにあります。
 論文答練については、時間を厳守して書き切ったあと、解説講義を聞きつつ、レジュメに記載されている判例や学説を基本書等で確認し、使える論証は学部時代から作成していた手持ちのまとめノートに書き込んだりしていました。そして、答案が返却された後は主観と客観が異なる部分(書けたと思っていても評価されていなかった部分等)を中心に再度復習していました。辰已の答練は詳細かつ明確な採点基準が確立されていて、それに沿った答案を書けるように練習していたことで、本番でも文章の流れを大きく崩すことなく全科目の答案を書き切ることができたのではないかと思っています。
 短答答練については、民法改正に対応した問題を多く解いておきたかったために受講しました。3科目とも間違えた問題は択一六法に赤ペンで注意書きをしつつ、繰り返し解き直しをしていました。本番でも時間配分を間違えることなく落ち着いて取り組めたのは答練を通してアウトプットの機会を確保していたからだと思っています。
 また、全国模試については、本番と同じ会場(TOC五反田)で受験し、本番と同じホテルを利用することで、必要な持ち物、タイムマネジメント、気持ちの保ち方等を予め想定しておくことができました。そのため、本番では全く動揺することなく目の前の問題に集中することができました。

(2) 司法試験合格に必要だったと考えること
 受験生期間を振り返って、①条文を引くこと、②自分に合った勉強方法を確立すること、③科目ごとの特性を掴むこと、④メンタルを一定に保つこと、⑤健康面に注意することの5つが自分にとって合格のために必要なことだったと思っています。
 まず、①については、現在の中央ローの法務研究科長の先生に、ロー入学当時から条文を引くことの重要性を何度もご指導いただいたことに起因しています。恥ずかしながら、学部時代はそれほど条文を引かずに基本書等を読んだりしていましたが、ローに入学してからはたとえ知っている条文であっても何度も条文を引く練習を積んできました。民法・会社法・刑訴法は特に条文が重要だと思っていますし(条文の文言を指摘することで正解にたどり着ける問題もあります)、短答対策としても有効だったと思っています。これから修習を経て実務に携わる上でもこの習慣は継続していきます。
 次に、②については、最初から質を追い求めるのではなく、ある程度量をこなして初めて一定の質が保たれた勉強法を確立することができるのではないかと考えています。ある人にとって有用な勉強方法が自分には全く合っていないということは多々ありますし(実際、短答対策は肢別本を繰り返したのみという先輩の勉強法を実践してみたところ、私は上手くいきませんでした)、勉強方法を見つけることも一種の勉強なのではないかと思っています。上記のとおり、私は基本書を読み続けるよりも答案を書く方が合っていたため、アウトプットの時間を多く確保できるようにしました。
 また、③については、より実践的な事項ですが、科目ごとに絶対に死守しなければならない書き方というのは存在しますので(極端な例を挙げると、刑法では構成要件→違法性→責任の順番で検討するといった事項)、まずは、極度の緊張状態であっても受験生全員が絶対に間違えないところを死守できるよう練習することが大切かと思います。その上で、過去問検討の効果が見えやすい科目なのか(行政法、商法、刑訴法は過去問検討の効果が見えやすいと言われています)、条文を指摘することの重要性が高い科目なのか(民法、商法)、問題文の事実の指摘→評価をすることであてはめを充実させることの重要性が高い科目なのか(憲法、行政法、民法、商法、刑法、刑訴法)といった点に配慮して勉強を進めていった点が良かったのかなと思います。
 そして、④については、メンタルで試験の出来が左右されるのはもったいないと思っているので、どれだけ緊張していても試験が開始したら集中できるような訓練を積んでいました。具体的には、受験年の2月から毎日午前中に2通答案を書き続けることで、本番でもいつもと変わらない精神状態で答案を作成することができました。最終的には全年度・全科目を最低5回分は答案作成しました。落ち込む時もあればやる気に満ちあふれている時もあるといったように、気持ちに波があると疲れてしまうので、せめて司法試験最終日までは無心になって淡々と答案を作成していくように心がけました。
 最後に、⑤については、司法試験は決して短くない準備期間を要する試験なので、安定して勉強を継続できるよう体調管理には気をつけていました。病院に行かずとも治せる程度の体調不良の時は思い切って早めに休息を取るようにしたり、普段から栄養バランスを考えて食事を作ったりしていました。

(3) 使用した本
 色々な書籍を使用しましたが、頻繁に利用していた書籍等を挙げておきます。

①憲法:憲法Ⅰ基本権、読み解く合格思考(辰巳)、判例百選、憲法ガールⅠ・Ⅱ、択一六法
②行政法:基本行政法、ケースブック行政法、行政法ガールⅠ・Ⅱ
③民法:民法の基礎1・2、担保物権法(道垣内)、債権総論(潮見)、債権各論Ⅰ契約法(平野)、リーガルクエスト民法Ⅳ親族相続、Law Practice民法Ⅰ・Ⅱ、判例百選、択一六法
④商法:リーガルクエスト会社法、事例で考える会社法、START UP会社法判例40!
⑤民訴法:リーガルクエスト民事訴訟法、読解民事訴訟法、解析民事訴訟、論文過去問演習民事訴訟法、判例百選
⑥刑法:基本刑法Ⅰ・Ⅱ、刑法事例演習教材、判例百選、択一六法
⑦刑訴法:リーガルクエスト刑事訴訟法、事例演習刑事訴訟法、判例百選、LIVE解説講義本(辰已)
⑧経済法:独占禁止法(金井ほか)、論点解析経済法、独占禁止法における事例分析、判例百選

5 最後に

 受験勉強を始めた19歳の時に、母を病気で亡くしました。精神的ショックが大きかったからなのか、2、3ヶ月は大学へ行けず、ペンすら握れないことも多々ありました。この道を目指すことを辞めようと思ったこともあります。ですが、諦める理由が自分の気持ちだけにあるのなら、ここで諦めると数年後あるいは数十年後に後悔することが目に見えていたので、合格するまで絶対に逃げないと決めました。意地だけでここまで来ましたが、諦めたくないことを諦めないでいられる環境に身を置くことができたのは偏に周りの方々のおかげです。本当にありがとうございました。

辰已法律研究所 受講歴

【2021年対策】
・スタンダード論文答練(第2クール)
・選択科目集中答練
・スタンダード短答オープン
・司法試験全国公開模試

【2019年対策】
・スタンダード論文答練(第1・2クール)
・予備試験 総択

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