法科大学院

法科大学院とは

法科大学院とは

法科大学院とは、「法曹養成に特化した教育を行うプロフェッショナル・スクール」です(司法制度改革審議会意見書)。
従来わが国では、誰でも、年一回行われる司法試験(旧司法試験)に合格しさえすれば、司法研修所での司法修習を受けることができ、そこで修習終了時に行われる「司法修習生考試(いわゆる二回試験)」に合格すれば、法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)となる資格が与えられるという法曹養成制度を採ってきました。
しかし、国民生活のさまざまな場面における法曹需要の増大が見込まれる中、これに対応するため、政府の司法制度改革の一環として、2006年より新しい法 曹養成制度が導入され、従来の制度は廃止されました(ただし経過措置として、2010年まで従来の制度も合格者を減少させつつ並存していました)。
この新しい法曹養成制度の中核として位置づけられるのが、法科大学院です。

法曹養成の新制度

現在の制度は、従来の、一発勝負である司法試験(旧司法試験)を中核に置いた制度を「『点』のみによる選抜」として否定した上で、「法曹養成に特化した教 育を行うプロフェッショナル・スクール」としての法科大学院による法学教育、従来の試験とは異なる、新しい制度としての司法試験(いわゆる新司法試験)、 そして新しい司法修習を有機的に連関させた、「プロセス」としての法曹養成制度となることが期待されています。

法曹資格を得るための道筋

具体的に、現行の制度の下で法曹資格を得るための道筋は、以下のようなものです。
まず、法曹を志望する者が、司法試験を受験し、これに合格しなければならないのは、従来と同様です。(ただし、新司法試験の試験内容は、旧司法試験とは異なります。)そして、司法試験合格者が、司法研修所で修習を受け、これを修了した上で、「二回試験」に臨み、これに合格してはじめて法曹資格を得られるという点も、(司法研修所での教育内容が従来の制度から改まることを除けば) 従来の制度と同様です。

しかしながら、従来の制度では、誰でも受験することができる司法試験が、現行制度では「誰でも」というわけには行かなくなります。というのは、現行制度の下では、「全国に設置される『法科大学院』の卒業者にのみ」司法試験の受験が許されることになるのです。
(といっても、それでは法科大学院卒業者以外には、(新)司法試験の受験資格が本当に一切与えられないのかというと、実はそういうわけでもありません。 2011年より「予備試験」という「(新)司法試験の受験資格を得るための試験」が実施されており、この予備試験合格者にも、(新)司法試験の受験資格が 与えられることになっているからです。)

つまり、法曹を目指す者にとって、法科大学院の入学、そして卒業は、法曹として将来各分野で活躍するための、最初の大きな関門であるといえます。

予備試験について

予備試験(正式名称は司法試験予備試験)は法科大学院を修了しなくとも、その合格によって(新)司法試験の受験資格が得られる試験です。経済的・時間的な コストのために、法科大学院に進学することができない者にも(新)司法試験の受験資格を与え、法曹への道を開くことを目的に2011年より実施されていま す。法科大学院を修了しなくとも、司法試験受験資格を与えられるということから、予備試験のレベルは法科大学院修了と同等レベルとされています。

2022年の受験者は13,004名、合格者は472名(合格率3.63%)でした。2022年は特に大学生(196名)や法科大学院在学生(124名)の合格者が多く、予備試験本来の目的と異なった状況が定着してきており、法科 大学院制度の存在意義についても様々な意見が出ています。

法曹養成のプロセス

さて、現行の制度は、法科大学院での法学教育→(新)司法試験→司法修習というプロセスを通じて、優秀な法曹を、いわばゼロから養成することを目標として います。そのため、法科大学院は、入学試験においては原則として入学者の法律知識の有無を問わず、その代わり3年間という比較的長期の修業年限を設けて、 基礎からの徹底した法学教育を行うことが予定されています。

しかしながら、法曹を目指して法科大学院に入学する人の中には、すでに大学の法学部等で法律学を学んでいたり、又、社会においてなんらかの法律事務に携わ る中で、法律に関する基礎的知識を十分持っている人もいます。このような人にとっては、法科大学院における課程のうち、すでにそのような人たちが得ている であろう基礎的な知識、能力に関する課程を免除し、より早く(新)司法試験の受験資格を認めるのが有益でしょう。そこで、各法科大学院には、このような 「法科大学院において必要とされる法律学の基礎的な学識を有する者」を対象として、法科大学院の修了に必要とされる単位と在学期間の一部の(単位にして 30単位以内、期間にして1年以内の範囲で各法科大学院が定めます)の履修を免除した、修業年限2年のコースを、基本となる3年のコースとは別に、設けることも認められています。

そこで、多くの法科大学院では、基本となる3年コースとともに、この、修業年限を短縮した2年コースも設けられています。つまり、同じA大学法科大学院に入学する場合でも、3年コースを選択する方法と、2年コースを選択する方法があるわけです。

ということは、今から法曹を目指し、法科大学院に入学しようと考えている人は、自身に「法科大学院において必要とされる法律学の基礎的な学識」が備わって いるかどうかを自ら判断し、いずれのコースを志望するかを決めておく必要があることになります。(ちなみに、大学の法学部を卒業していても、もう一度基礎 から法律学を学びなおしたいと考えて、あえて3年のコースを選択する人も多いですし、逆に、法学部出身者以外でも、新司法試験受験のための学費をすこしでも切り詰めるために、修業年限の短い2年のコースを目指す人も多いようです。)

なお、上に挙げた、法科大学院の履修課程における二つのコースのうち、前者の、全くの法学初学者を対象とした修業年限3年のコースは、一般に「(法学)未 修者コース」または「標準コース」と呼ばれます。そして、後者の、「法科大学院において必要とされる法律学の基礎的な学識を有すると認められる者」を対象 とした修業年限2年のコースのことは、一般に「(法学)既修者コース」または「短縮コース」と呼ばれています。法科大学院入試情報において、「未修」とか 「既修」、「標準」とか「短縮」という言葉がよく出てきますが、それはこのコース分けのことを指します。

法科大学院での専門教育

さて、首尾よく志望した法科大学院に入学すると、法科大学院での法律専門教育を受けることになります。

法科大学院での講義内容・講義形態は、従来の大学法学部においてよく見られたような、「実定法の解釈学が中心の」「多人数の学生を一度に相手にする」「教授による、学生に対する一方通行的な講義」ではなく、「実務との架橋を強く意識した」「少人数による」「教授と学生との間の双方向的な講義」が予定されています。この結果、実務家教員による実務を意識した講義、教授と意欲ある学生との質疑応答による緊張感ある講義が期待されています。

他方、法科大学院での教育、(新)司法試験、司法修習という、有機的に連関したプロセス全体を通じて法曹を育成しようとする現行制度の下では、法科大学院での3年間または2年間にわたる日々の学習は、それ自体が一種の、非常に長期にわたる試験であると見ることもできます。そのため、法科大学院での成績評価は相当厳格なものとなります。また、成績評価の基準は、期末試験の成績のみならず、普段の授業への参加態度、課題提出の実績等も加味した、より全体的、総合的なものとなります。実際、法科大学院生は、皆、毎日相当量の予習・復習をこなし、精力的かつ積極的に講義に参加しているようです。

司法修習について

各法科大学院での、3年または2年の修業年数を終えてこれを卒業すると、法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)となる資格を取得するための国家試験である、(新)司法試験の受験資格が得られます。

そして、(新)司法試験に合格すると、司法研修所での「司法修習」を受けることになります。 司法修習とは、司法試験の合格者を対象として行われる、法曹としての現実の活動に必要な基本的能力、すなわち法的問題の解決のための基本的な実務的知識・ 技法と、法曹としての思考方法、倫理観、心構え、見識等の養成を目的とした、国による研修制度です。 司法修習は、裁判官、検察官、弁護士といった法律実務家の指導の下、司法研修所(和光市)および全国の裁判所・検察庁・弁護士事務所において行われます。 新制度の下での司法修習が具体的にどのようなものになるかは未定ですが、期間は1年間、内容は実務家の個別指導に基づき法律実務を体験する「実務修習」を 中核とした研修となっています。

そして、修習終了時に行われる「司法修習生考試(いわゆる二回試験)」に合格した者に、晴れて法曹資格が与えられることになるのです。

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