短期間で合格を掴み取るには
1 司法試験の受験を決意した経緯・合格までの道のり
大学2年生の時に、新型コロナウイルスが大流行し、ANAやJALの採用が数年に渡り見送られることになり、幼少期からの夢が遠のきました。その中で、法律は日頃から学習し、一定の成績を修めていたため、大学を3年で卒業し法科大学院に進学できる制度が利用できることを知り、法科大学院へ進学しました。その中で法曹実務を教わる授業があり、法曹に興味を抱くようになり、司法試験の受験を決意しました。
法科大学院は、在学中の司法試験合格のためのカリキュラムが採られていたことから、そのカリキュラムに従い、足りない部分は自習で補いながら勉強に励みました。また、法科大学院に進学しながら大学の文化祭実行委員会に所属していたことから、勉強する時間を確保するのが大変でした。そのため、2022年は勉強漬けの日々を過ごし、基本科目を勉強が一通り終わったのが2023年の2月頃でした。同年3月に司法試験の模試を受けたのですが、論文の成績が全体的に振るわず、合格できるかギリギリのラインでした。ですが、問題を解いている際に、知識が足りず解けない部分が少なかったことに気づいたため、5月頃から知識をインプットする学習から、過去問をひたすら解いては振り返るというアウトプットをする学習に切り替えました。過去問を解く際には、「一応の水準」をとることを目指すのではなく、どの問題であっても完璧に近い回答ができるように努めました。それは、科目ごとに出来が異なることから、全て「一応の水準」を目指すと、そのうちいつかはこれを下回ることが想像できたからです。また、全科目に共通する点の取り方にこだわりました。例えば、論理一貫性・条文の摘示などです。私の周りでは、よく「意識だけで素点50点は変わる」とよく言われていて、とることが可能な点を取りこぼすのはもったいないと感じたからです。そして、令和5年度司法試験に合格致しました。
2 法科大学院入学前の学習状況
私は、学部の内申点で法科大学院に入学したため、進学・合格のために学習をしておりませんでした。また、その当時授業・試験の大半はオンラインで開催されており、参考書を見ながら答案を作成することができたため、ある程度の論点は知っていましたが、知識として有してはいませんでした。また、入学前は予備校にも一切通っていなかったことから、入学前に危機感を覚えていました。
3 法科大学院入学後の学習状況
法科大学院入学後に、予備校の論文講座を受講しながら法科大学院の授業の予習・復習を重点的に行なっていました。そのため他の法科大学院生よりは勉強量は比較的多く、平日の8時から自習をし、授業を受け、25時まで自習をし、翌朝に備えるといった生活を送っていました。
4 私がやって成功した勉強法
司法試験に特に役立ったと思える勉強方法は、三点あります。第一に、「もしこういう事情だったら〜」との思考を働かせることです。これは、論点に対して自分の意見を常に持つ意識に繋がったと考えられます。司法試験で出題される問題は、大まかに①基本判例の理解・射程を問われているもの、②今まで考えたことのない論点を問われているものに分けることができると思っています。前者は学者が論文で言及していたりしますが、その全てを押さえることはおよそ不可能と言っていいでしょう。後者に至っても、考えたことのない論点をなくすことは不可能です。そのため、双方の対策として最も効率の良い方法が、自分の意見を持つことと感じています。「もしこういう事情だったら〜」と検討することを意識づけることによって、知識では賄えない部分を、自分の意見により補うことができ、結果として深みのある答案を作成することができたと思っています。第二に、自分の答案を他人に評価してもらうことです。私は、模試を受けた後、過去問の大半を前年に司法試験に合格した友人に添削してもらっていました。これは、自分の答案の癖(事実の摘示の量、評価の曖昧さ等)を知ることができる点で非常に大切であったと思います。特に模試では憲法はE判定でしたが、司法試験ではA判定になった要因は、この点に限ると思います。
5 スケジュールの管理方法
私は、スケジュールの管理はこだわるべきだと思います。特に、総勉強時間とどの範囲を重点的に取り組むかということにこだわりました。総勉強時間については、「量より質」などといいますが、司法試験においてはある程度の勉強量と勉強体力を身につける必要があると思っています。そして質にこだわることを理由に勉強量を減らす選択をすると、どこかで堕落してしまう自分の姿が想像できました。そのため、堕落する道をなくし、真っ向から向き合えるようにするために、時間があれば勉強するという、ある程度勉強量に比重を置いた生活をするように心がけていました。次にどの範囲を重点的に勉強するかについてですが、例えば、短答は試験直前に過去問を1・2周すると決めていたり、一度マスターした範囲は再度復習しないという決まりを作っていました。試験直前まで短答対策をしないことや、再復習しないことは怖いかもしれませんが、短答は直前で対策すればある程度はできるようになるし、再度復習するよりも対策できていない範囲を勉強する方が期待値はより上がると思います。このように、「何をいつどのくらい」勉強するかをあらかじめ決めて、それをもとに勉強していました。
6 私が使用した本
私が特に重宝していた参考書は、「基本刑法」と「一冊でわかる国際私法」です。私は、参考書は多く持たない方が良いと思っているのですが、選ぶ方法として、その本が読んでいて面白いかどうかを気にしていました。「基本刑法」は、論点ごとに例題と解説が簡潔にまとめられており、非常に学習になりましたし、面白かったです。そのため、辞書のように使用するのではなく、小説のような読み物として使用しており、その科目を楽しむことに繋がりました。次に「一冊でわかる国際私法」ですが、国際私法を対策する時間が十分に取れなかった私にとって、最高の一冊でした。趣旨・規範が載っていることに加えて、優秀者の再現答案が載っており、これが対策する際の指針になりました。国際私法に関しては、ブログで再現答案を載せている人がほぼおらず、参考にすべきものが少なかったため、そのような悩みを解決することができました。
7 法科大学院生へのアドバイス
在学中に司法試験があることから、学校の勉強を蔑ろにしてしまい、予備校での学習に重心を置いている方も少なくないと思います。ただ、私は授業の内容をしっかり理解しておいて本当によかったと司法試験を受けてから改めて感じました。学校で触れた内容の周辺論点が出題されたり、「レジュメのあそこに書いてあったな」と試験中に思うこともありました。もし、授業の予習・復習を怠っていると、他の学生はできているのに自分だけできなかったという事態に陥るかもしれません。そのような後悔をしないためにも、授業中の内容の理解は怠らないようにしてほしいです。
次に、自分は誰のために在学中の合格を目指しているかを考えてほしいです。正直なところ、私だけのためだったらいつか合格すればいいやという甘い考えをしていたと思います。しかし、さまざまな面で支えていただいてる両親や友人のために一刻も早く、合格という結果で恩返ししたいという思いがあると、辛い時期も乗り越えてやろうという気持ちになれると思います。
勉強方法について色々話しましたが、合格できるかどうかが決まるのは試験中です。ですので、試験中は目の前の問題に一心不乱に取り掛かってください。試験中の心持ち次第で、平気で数百位程度は変わってくると思います。今までの勉強に後悔がある人もない人も、最後は全力でやり切りましょう。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。