笑顔で謙虚にひたむきに
1 司法試験受験を決意した経緯
私は父親が弁護士をしており、法律家という職業が幼いころから身近にありました。
大学1年生の頃に父が病気で他界してから、それまで漠然と憧れ、目指してみようと考えていた「司法試験合格」が明確な目標に変化しました。
2 合格までの道のり
法学部卒業生でありながら、未修入学しか勝ち取ることができませんでした。
確かに、3年という月日は長いですが、司法試験に挑戦するにあたって基礎をおざなりにせずに勉強をスタートできたのは今でもよかったと思っています。
その後、法科大学院に3年間通い、卒業後司法試験を受験しますが、一度目は落ちてしまいます。
自分には才能がないのだと非常に落ち込みましたが、家族の支えもあり、勉強に打ち込む環境を整えてもらった結果、2回目の受験で合格を勝ち取ることができました。
3 法科大学院時代の勉強
未修生として入学したことで、法律を一から学ぶことになります。
私が最も幸運だったのは、慶應義塾大学法科大学院が実施していた未修1年生向けの「学習支援ゼミ」というプログラムが存在していたことでした。
比較的近い時期に司法試験に合格した実務家の先生が教壇に立ち、答案の添削、質問に答える双方向型授業をしてくださいました。
常に知識が問われる緊張感に身を置き、勉強の方向性を間違えないよう随時修正してもらえる環境にいることができました。
法律の勉強で最も全員が迷うのが「勉強の一番初め」、何をどう始めたらいいのかという点だと思います。その部分を新司法試験に合格し、近年の傾向を熟知している先生にご指導いただける機会をいただいたことは私の人生にとって大きなプラスとなりました。
みなさんの中にも法科大学院に入学したけれど、膨大な資料を前にして一体何から始めたらいいのか、抽象的な話ばかりでいつまでもイメージがつかめず迷っている方が多いことと思います。
そんな時はまず、司法試験に合格した人や成績が優秀な人に頼り、その知恵を得ることが一番の近道だと思います。
私が入学したときには、担任の教授が開口一番「しゃべる友人は選べ、優秀な人を選んで接しろ」といわれました。シビアな話で最初この先生は何を言っているんだろうと困惑したことをよく覚えています。
しかし、法科大学院は学生の馴れ合いの場ではありません。司法試験という日本最難関の試験合格を目標に日々努力を継続する場です。
時にモラトリアムの延長と考え、日々を怠惰に過ごす人がいることも確かです。その教授の言葉選びの良し悪しは置いておいて、意識の低い人と馴れ合いながら日々を送るのと、勉強の方法を模索して司法試験合格をもぎとろうとしている人と切磋琢磨するのとでは、勉強効率は雲泥の差だと思います。
挑戦する司法試験という試験の難易度・合格率の現実を自覚して1日も無駄にしない意識を強く持つべきだと思います。
4 日々の生活習慣・スケジュール
【法科大学院時代】
6:00 起床
6:30 大学へ出発
7:30 大学に到着 朝食
9:00~ 授業or自習室での勉強
20:00 大学から出発
21:00 帰宅・夕食
22:30 就寝
【浪人時代】
6:30 起床
8:00 朝食
9:00 ~12:00 勉強
12:00 昼食
13:00~17:00 勉強
17:00~ 夕食・入浴
19:00~22:00 勉強
22:30 就寝
私は俗にいうショートスリーパーではなく、ロングスリーパーの典型だったので、1日必ず7時間半以上跳ねるようにしていました。自分自身のパフォーマンスを保つためには睡眠時間の確保がマストでした。
2時間継続して勉強をした後は、15分以上の休憩を確保していました。長期戦である以上必要以上に身体を酷使せず、最低限必要な食事・入浴・睡眠を先に予定に組み込んで空いた時間を勉強に充てていました。
佳境に入ればモチベーションの有無なんて関係なく勉強に打ち込むことになると思いますが、前向きに継続していけるようにできる限り勉強科目が偏りすぎないように計画を立てていました。
5 一回目受験不合格から二回目の受験まで
一回目不合格となって、成績表が届くと、論文の点数が全く足りていないことがわかりました。そこで、もう一度基礎から叩き込みなおすことにしました。
つい不安になって、手を広げたくなる時期がありました。新しく出た魅力的な基本書や問題集、予備校の論証集、全てをさらわなければ到底自分なんかは司法試験に合格できないのではないか、そんな不安に押し潰されそうになっていました。
しかし、私は絶対に今以上に手を広げすぎないということを一番意識しながら再度勉強を始めました。既に各科目一冊ずつは問題集があったため、それを完璧にすることを最優先にしようと考えました。結果的に手を広げすぎなかったことで司法試験の過去問に割く時間もできたため、正解だったと思っています。
まず、勉強を再開するにあたって、参考答案のついた問題集を使って、自分が論点の拾い忘れをしていないかを片っ端から確認し、何度も何度も反復しました。同じ問題集ならば何周もしてしまうと解答を覚えて意味がないのではないかと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、人間の脳とは雑なもので、期間が開けばすぐに何もなかったかのように忘れてしまいます。
このように問われたらこういう論点が浮上するというような、一定のパターン化したボキャブラリーを準備しておくのも膨大な範囲を有する司法試験という試験対策としては重要だと考えます。
問題集の反復を各科目していたら、あっという間に年が明けていました。問題集の解答を見ることなく一から自分の力で答案を作れるようになった段階で、司法試験過去問反復に移行しました。
最近の問題から再度同じ論点が出題される可能性は低いですが、問題の傾向を知るという意味では年が近い過去問が最も参考になります。
6 二回目の司法試験直前期
4月にはTKC主催の模試、5月には辰已法律研究所主催の全国公開模試を受験しました。
二回目受験に至るまで、特に予備校の講座を利用していなかった自分にとって、模試が周りの実力と自分の立ち位置とを比較する最良の資料でした。
辰已法律研究所は受験後のサポートが手厚いことが特徴だと思います。刑事訴訟法でねらい目の論点等、模試の内容とは関係のない本試験を視野に入れたサポートも多かったのは最後の調整期非常に助かりました。
もっとも、私は福岡会場で受験したところ、人数が非常に少なく、本番同様の環境とは言い難かったのが少々残念ではありました。しかし、本番同様のスケジュール・時間管理で全科目をこなすのが重要だと考えていたため、その点あまり深刻なものではありませんでした。
模試は、予備校がその年に出題される可能性の高い論点をできる限り抽出して問題化しています。私は一回目受験の時には辰已法律研究所の模試は受験しませんでしたが、実際に受けてみてシミュレーションの機会は多い方がいいと感じました。特に予備校を積極的に利用する予定がない人には力試し以上の成果があると思います。
模試後はこれまで通り、手を広げたくなる気持ちを抑えながら、これまでこなした演習を淡々と反復していました。最後に自分を助けるのは確実に定着しきった知識でした。
7 これから受験する人へ
司法試験は過酷な試験です。受験するための資格を得るために何年も費やす資格試験はそう多くありません。受験するまでの期間が長いと途中で心が折れる瞬間が誰でも訪れます。私は何度も何度もその経験があります。
しかし、私は合格までを振り返って無駄だったと感じる期間はありません。法学部卒業であるのにもかかわらず、未修コースで三年間学びましたが、結局最後の最後まで、未修一年生で使っていたレジュメを片手に勉強をしていました。
今どんな勉強方法を採用して勉強していても、必ず頭の片隅には「これで果たして間に合うのか?」「これをしていれば受かるのか?」という思考がよぎると思います。
それは私も同じでした。しかし、その一つ一つの作業全てが最終的に繋がって、合格に結び付いたと確信を持って言えます。どうか自分を信じて走りぬいてください。それで仮に届かず、再チャレンジとなったとしても、知識の定着をこなしていれば必ず受かるべき時に受かります。
司法試験合格という目標に向けて走る皆さんを心の底から応援しています。