受験の基本は過去問対策。勉強の基本は苦手の克服。試験対策の観点をもって学習に取り組むことが重要です。
1 司法試験の受験を決意した経緯
小学生の頃から法律に興味がありました。ただ、小学校時代から不登校だった私は、中学校にも一度も通うことなく、偏差値30台の高校への進学を余儀なくされました。そんな状況にあっても、司法試験に挑戦したいという気持ちは持ち続けておりました。
大学進学に際しては、当初は同志社大学の法学部に行く予定でしたが、入学手続を失敗してしまい、グローバル・コミュニケーション学部という国際系の学部で英語を学ぶことになりました。しかし、予定とは異なる学部に進学したことで、改めて「自分は法律が勉強したかったのだ」と自覚させられました。そこで、途中から大学と学部を変えて、司法試験に向けて歩を進めることを決意しました。
2 法科大学院受験前の学習状況(初めての辰已講座)
学生の内は色んな人と会って経験を積みたいと考えていたことから、あえて法律系の学習サークルには入らず、勉強仲間も作りませんでした。その結果、卒業間際になっても法律の学習は十分に進んでおらず、各法科大学院の過去問と孤独に闘うことになりました。
各予備校が出版する書籍を読んでも内容が頭に入らなかったことから、基本書を読み進めることで法科大学院の受験対策を進めていました。当時の私は、あまり予備校を信用していませんでした。そんな中、辰已には基本書を執筆された学者の先生方を講師とする講義があることを知り、これなら自分にも合いそうだと思って、受講することにしました。学者の先生方による講義が開設されている点は、他の予備校にはない辰已講座の魅力だと思います。
3 法科大学院入学後の学習状況
(1) 一度目の不合格に対する反省点
無事に法科大学院へ進学できたことで油断してしまった私は、前期に不可の成績をとってしまい、留年の危機に瀕することになりました。それからは専ら留年を回避するための学習を行うようになりました。結果的に、修了時には上位3分1に入る成績を収めました。しかし、一度目の司法試験受験は不合格という結果に終わりました。
自分より席次が一つでも上の既修者は全員合格していたことや、自分より成績が低かった同級生も合格していたことを知り、どこで差が生じてしまったのか真剣に悩みました。悩み抜いた末、「受験に対する意識の差」が勝敗を分けたのだろうと結論付けました。
元々法律に対する関心が高かったこともあり、留年を回避するにあたっても、学問的探求心を満たすための勉強ばかりしてしまいました。同級生から「実務家ではなく学者を目指せ」と揶揄されることも多々ありました。法科大学院の授業を中心に据えた学習を行ったこと自体は後悔していないのですが、もっと受験的観点を取り入れた上で学習を行うべきであったと反省しています。法律が好きな人ほど、受験を忘れて深みにはまってしまう危険性は高いと思います。
(2) LS在学生へのアドバイス
LS在学生の方々には、授業を通じた学習を行うにあたっても、常に受験との関係を意識して取り組んでほしいです。自らが受験生であることを忘れないでいただきたいです。
また、法科大学院では受験指導が禁じられていることとの関係上、授業を通じた学習のみでは過去問対策が疎かになってしまいます。以下に記載する辰已講座・辰已書籍等の利用を通じて過去問対策を万全にすることで、是非とも一発合格を掴み取ってほしいです。
4 一年目の受験対策
(1) 短答過去問パーフェクト
短答対策には、辰已書籍である『短答過去問パーフェクト』を用いました。同書籍は、一つ一つの選択肢に対する解説が詳細に書かれており、解説内容の正確性にも定評があります。周囲の受験生も大多数がパーフェクトを用いた短答対策を行っていました。
私の場合は、正誤の理由まで厳密に学習する方針で短答対策を行っていたため、パーフェクトとの相性は良かったと思います。時たま解説の正確性に疑問を感じ、他の書籍を参照することもありましたが、全体としての解説の正確性はパーフェクトに分があるように感じました。また、解説の末尾には解説内容を記した基本書の該当ページが掲載されているため、基本書を参照する際にも便利でした。複数の基本書を掲載しているため、基本書を中心に学習されている方でも利用しやすいと思います。
ただ、詳細であるがゆえに全体として解説文が長いです。2周以上の過去問演習を予定されている方は、解説文の中で核心となる一文のみにマーカーを引くなどして演習の効率化を図った方が良いと思います。また、解説文が長いことからページ数も相当なものになるため、持ち運びには不向きです。持ち運びの利便性という点からは、後述する肢別アプリが最強の選択肢であると思います。
(2) スタンダード論文答練
辰已は答練に力を入れている予備校として定評があります。私の周りには「入門講座では他の予備校を利用していたが、答練は辰已で受講することにした」という人が少なからずいました。私自身も、辰已の答練は問題の質が高いという評判を聞いて、受講を決意しました。実際、私が受講した2019年第2クールの問題は全体として質の高い問題が多かったと思います。
また、辰已の答練では詳細な採点表が用意されています。事実摘示と事実評価に対する配点割合が高いため、問題文の事実を活用することの重要性を認識する契機となります。たとえ採点内容に納得がいかなかったとしても、採点表と答案を照らし合わせれば、どの部分を書き落としてしまったのかは一目瞭然です。
ヤマ当てとしても有効だと思います。私が受講した年では刑事系2科目の論点が的中しました。私の場合、民事系の成績が悪くて合格を逃してしまいましたが、刑事系の成績は合格水準に達しておりました。本試験で出題された際に周囲の受験生に後れをとらないようにする意味でも受講価値はあると思います。
ただ、問題の質と解説の質に差があるように感じることがありました。解説の正確性に疑問が生じることもありました。しかし、今から思えば、合否には直接影響しない細かな部分ばかりに気を取られてしまっていました。そういった部分を調べることに時間を費やすべきではなかったと反省しています。
(3) 全国公開模試
辰已模試は、合否判定の精度が高いように感じました。私は他の団体が主催する模試も受けたのですが、そちらでは合格判定を得ておりました。他方、辰已模試の方ではギリギリ不合格という判定になってしまいました。結果的に、本試験もギリギリ不合格という結果に終わりました。
私以外にも、周囲からは優秀者と評価されつつも、辰已模試では不合格判定となった人々がいました。そういった人々は、本試験でもギリギリの不合格となっていました。私の周囲に限った話かもしれませんが、少なくとも体感として、辰已模試の判定精度は高いです。
5 二年目の受験対策
(1) 肢別アプリ
二年目は短答に時間をかけたくなかったので、スキマ時間に辰已の肢別アプリを使って学習していました。教材を広げる必要がなく、暗い場所でも学習できるため、環境に左右されず学習に取り組める利点があると思います。私の場合、体調が悪くて机に向かうことができない日でもベッドで肢別アプリを使って学習していました。
Apple storeで購入すれば、iPhoneとiPad双方で起動できる点も便利でした。ただ、データが同期できないのは不便でした。
アプリを用いた学習は好みが分かれると思います。肢別アプリは、アプリ自体は無料でダウンロード可能ですし、サンプル問題も無料で解くことができます。試しに使ってみて自分に合いそうなら使ってみると良いと思います。
(2) ぶんせき本、10人本、論文全過去問集
二年目は再現答案を参考とした学習に力を入れました。出題趣旨や採点実感を読めば、どういった内容を論じるべきであったか(What)という部分は分かります。しかし、答案上でどのような記述を行えばよいか(How)という部分については、やはり実際に受験生が書いた記述を参考にして学ぶことになります。
再現答案の記述は、出題者・採点者の目線からすれば、必ずしも十分なものではないことが多々あります。しかし、限られた試験時間内では、常に十分な解答ができるとは限りません。妥協した記述をせざるを得ない場面は必然的に生じます。そういった現場での落としどころを掴むという意味でも再現答案を参考にすることは大切です。
辰已は他に類を見ないほど再現答案の収集・販売に力を入れていますので、是非書籍を参考にされると良いと思います。
(3) 趣旨・規範ハンドブック
司法試験では、周囲が対応できる問題で対応できないことが致命傷となります。典型論点や重要判例のある問題で満足に書けないと、合格は一気に遠のきます。私も一年目の受験では典型問題を処理できなかったことが不合格の大きな原因となりました。
二年目の学習では、周囲の受験生に後れを取らないように、辰已の趣旨・規範ハンドブックに掲載されている論点は全て確認しました。改正民法に対応した版も、模試で配られた割引券を使って購入しました。
(4) 1冊だけで租税法
辰已の1冊だけで租税法は租税法選択者には必携の書物だと思います。趣旨・規範ハンドブックと論文全過去問集が一体となったような内容です。判例がある分野では事件名まで記載されているので、近時の出題要求にも対応可能です。
6 本試験延期をどのように乗り切ったか
正直なところ、「乗り切った」という感覚はありません。「結果的に何とかなった」といった感覚です。本試験延期後は2ヶ月ほど全く勉強しない期間が生じてしまいました。
ただ、7月の辰已模試を受けたことは、気を取り直すきっかけになったかと思います。令和二年は、本試験延期に伴い、3月に加えて7月にも模試が開催されていました。私は、3月の模試では合格判定を得ていたのですが、7月の模試では合格の見込みがない判定となってしまいました(短答が不受験だったので合否判定は出なかったのですが、たとえ短答で満点を取っても合格できないほどに論文の実力が落ちていました)。
「辰已模試で不合格判定が出て、本試験でも不合格となった」という1年目の出来事を思い出し、最後の1ヶ月は真剣に勉強しようと思いました。模試を受けずに、あのまま勉強しない習慣が続いていれば、決して合格することはできなかったと思います。
7 リベンジ合格を目指している方へのアドバイス
不合格となった人は、ある程度まで自分の弱点が見えている状態だと思います。そのため、「弱点の克服」という点にだけ特化して勉強に取り組むべきだと思います。
中でも、論文の苦手科目を克服することが極めて重要だと思います。論文の点数は偏差値的に出されます。そもそも100点を取ることはできない(80点くらいが限度)ですし、50点を70点まで伸ばすよりも、30点を50点に引き上げる方がはるかに簡単です。得意を伸ばすのではなく、苦手を克服することで、すごく合格しやすくなります。
令和二年に関していえば、短答で足切りを免れていれば、論文が各科目50点でも合格に必要な点数を満たす計算になっています。そうすると、論文で不合格となってしまった人は必ず何かしらの科目で50点を下回る点数を取ってしまったことになります。そこさえ克服してしまえば合格は目前です。私も1年目には科目ごとで点数にバラつきが生じてしまいましたが、2年目では8科目で均一な点数を出すことで合格できました。
今年の再受験生は司法試験史上で最も時間的に切迫した状況にあると思います。しかし、焦って余計な勉強をしてしまっては元も子もありません。着実に弱点を克服することで合格を勝ち取ってほしいと思います。この過酷な年を乗り越えたことは生涯自慢することのできる思い出になることでしょう。皆様の合格を心より祈願しております。
辰已法律研究所 受講歴
【2020年対策】
・2020年司法試験 全国公開模試
・2020年司法試験 New辰巳全国公開模試
【2019年対策】
・スタンダード論文答練 第2クール
・2019年司法試験 全国公開模試
・3時間でわかる! 租税法の傾向と対策
・2014年租税法 1位の答案はこう書いた
【2017年対策】
・2016年司法試験 本試験論文憲法解説(木村草太先生)
・2016年司法試験 本試験論文行政法解説(田村辰久先生)
・2016年司法試験 本試験論文刑法解説(前田雅英先生)
・民事訴訟法 多数当事者訴訟の学び方の基本(藤田広美先生)
・司法試験特別講義 刑法 因果関係論の書き方(大塚裕史先生)