予備試験・司法試験受験を通して
1 司法試験の受験を決意した経緯
もともと法律に興味があり、将来は法律に携わる仕事に就きたいと思っていました。そのうち、自身の判断のもと判決を下す裁判官になりたいと思うようになりました。
2 予備試験合格までの学習状況(法律学習)
(1) 短答対策
大学受験の経験から、マーク式の問題は苦手としていたので、特に時間をかけて勉強しました。辰已の過去問集、短答過去問パーフェクトを用いて、全科目を4周ほど解きました。その際、定義など論文にも通じるところは蛍光ペンで線を引くなどしていました。
(2) 論文対策
辰已の予備スタンダード論文答練を受けました。論文対策期間が4ヶ月ほどしかなかったので、とにかくたくさん答案を書いて練習することを意識しました。辰已の趣旨規範ハンドブックに気づいたことは書き足していきました。
(3) 口述対策
論文試験の結果発表があるまで口述対策に取り掛からなかったので、時間にとても追われることになりました。要件事実をとにかくきちんと理解するようにしました。口述試験は筆記試験ではないので、日々の学習においても実際に口にだして他人に説明するように心がけました。口述模試を3回受け、より実践的な練習を重ねました。
3 予備試験合格後の学習状況(法律学習)
(1) 全体
予備試験最終合格後はやや気が抜けてしまい、司法試験の勉強に本腰を入れるのに時間がかかってしまいました。その後は、1日10時間~12時間ほど勉強していました。特に、過去問の分析を重視しました。
(2) 短答対策
予備試験対策として、短答をやり込んでいたので、司法試験対策としてはあまり時間を割きませんでした。予備試験対策として作成したまとめノートを見直していました。
(3) 論文対策
(ア)選択科目について
大学の授業で履修していたこともあり、労働法を選択しました。労働法は範囲が広く、一度授業を受けていたとはいえ、試験で論文を書くことができるレベルにあげるまではさらに勉強が必要でした。過去問を全て2回解き直しつつ、趣旨規範ハンドブックに肉付けしていきました。労働法は特に判例が重要なので百選をよく読んでいました。
(イ)その他の科目について
過去問が最大の教材ということは先輩から聞いていたので、とにかく過去問を大切にしました。特に憲法が苦手で、時間内に納得のいく答案を書くことが難しかったため答案作成を何度も行いました。憲法に限らず、問題量が増え、答案用紙も予備試験の倍になり、慣れるまで時間がかかりました。さらに、行政法や民事訴訟法は予備試験とのギャップを大きく感じました。
また、答案を書く感覚を忘れないため、試験前まで2日に1回は答案を書くようにしていました。
4 受験対策
(1) 辰已講座の利用方法とその成果
辰已の講座は基礎講座(辰已専任講師・弁護士 原孝至先生ご担当)と予備スタ短、予備スタ論、辰巳全国模試を受講しました。
基礎講座では法律の基本的な部分について、網羅的に短時間で理解することができました。その後、スタ短を受けることで現在の自分の短答の実力を把握することができました。スタ論は答案練習として利用しましたが、基本的な理解ができているか確認しつつ、応用問題に対応する力も養うことができたと思います。全国模試については、たくさんの受験生が受けるため、自分の正確な立ち位置を知ることができました。実際に回りに大勢の受験生がいるという緊張感の中、試験と同様のスケジュールで模試を受けることは当日の予行練習として重要であったと思います。
(2) その他私が行った対策
予備試験も司法試験も共に時間がない中での受験となったため、いかに効率よく勉強ができるかを重視しました。もちろん論文は暗記だけでは合格できませんが、大まかにどの規定が何条あたりに書かれているかを覚え、趣旨や規範など最低限のことを理解した上で、すぐに引き出せるようになるレベルにまでしなければ、試験時間内に答案を仕上げることができません。そのため、自分が間違えやすいところはどうしてそのような趣旨・規範になるのか根拠から説明できるように復習した上で、まとめノートに記載し、繰り返しノートを見直すことで、効率よく理解を深めました。
また、スケジュール管理も非常に重要になります。試験直前はある程度の詰め込みは必要になりますが、直前に急に補強したい分野が出てきたり、精神的に不安定になり、予定通りに勉強が進まないということが起こり得ます。そのため、試験前は特に余裕を持ってスケジュールを組んでいました。
さらに、今回の司法試験はコロナにより延期され、実施日も未定という中途半端な状態が続きました。5月にゴールを定めて対策をしてきたので、いきなり未定という状況になったことは精神的に負担が大きかったです。しかし、一度完全に勉強しない期間を作り十分にリフレッシュすることで、再度新たな気持ちで勉強に取り組むことができるようにしました。
(3) 私が使用した辰已書籍
短答過去問パーフェクト、ぶんせき本、えんしゅう本(刑法、行政法)を使用しました。
短答対策としてはパーフェクトを何周かすることで十分だと思います。ぶんせき本は過去問演習として利用しました。ぶんせき本には、実際の受験生の解答が複数掲載されており、どの要素を書けば点数につながっているのかが明確にされていたので非常に有意義でした。また、刑法のえんしゅう本は旧司の問題が多く含まれており、非常に勉強になりました。えんしゅう本はまず問題をみて、その後答案構成だけ行い、解答を見るというように利用しました。
5 これから受験する人へのアドバイス
(1) 学部在学生・予備試験受験生へのアドバイス
在学中に、将来司法試験で選択する可能性のある選択科目の授業を一度受けておくことを強くお勧めします。いざ、予備試験が終わったあと、全く勉強したことのない科目を1から勉強しなければならないというのは予想以上のプレッシャーがあります。
また、予備試験は通常、5月の短答試験から始まり、10月の口述試験まで続く長丁場の試験です。また合格率も非常に低く、難易度の高い試験です。さらに、年月を重ねたからといって必ずしも合格できる試験でもありません。一方で、予備試験に受かってしまえば、司法試験の合格がかなり現実的になります。私個人の経験でいえば、司法試験も大変でしたが、予備試験・司法試験を通じて、一番辛かった試験は予備試験の口述試験でした。司法試験に合格するための布石として、予備試験合格を目指していただければと思います。
(2) 予備試験合格の司法試験受験生へのアドバイス
予備試験に合格されたということは、基本7科目について基礎的な理解はあるということだと思います。もっとも、司法試験は予備試験と異なり、問題量も解答量も試験時間も増加します。さらに、予備試験は長くとも2日で終わりますが、司法試験は中休みを挟んで5日も続き、体力的にもきつい試験になります。そのため、司法試験を単なる予備試験の延長と考えるべきでないと思います。問題量になれるため、とにかく過去問を解くことを推奨します。また、答案作成の感覚を忘れないため、2日に1回は答案を実際に書きましょう。試験直前になると、暗記に時間を費やしたくなりますが、仮に試験前1週間全く答案を書かなければ感覚が鈍ってしまうので、やはり2日に1回は試験直前でも答案を書くべきだと思います。
さらに、予備試験合格後は気が緩んでしまいがちですが、前述したように司法試験対策としてすべきことはたくさんあり、さらに司法試験は予備試験と異なり過去問の数も多いので、少し休んだら早めに対策に取り掛かる方が良いと思います。
学部在学中予備合格者の司法試験合格率は約98%と言われており、それが逆にプレッシャーに感じてしまうかもしれませんが、過去問の分析をきちんと行えば合格することができる試験だと感じました。皆様の成功を心からお祈り申し上げます。
辰已法律研究所 受講歴
・基礎講座
・予備スタンダード短答オープン
・予備スタンダード論文答練
・辰已全国公開模試