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条文理解が第一、暗記はその次

瀬川 駿さん
受験歴: 2回
一橋大学法学部
一橋大学法科大学院 【既修】2019年入学・2021年修了
【受講歴】スタンダード論文答練(第1・2クール)、全国公開模試 他
選択科目

1 倒産法を選択した理由

 私が倒産法を選択したのは、もともと私は民事訴訟法が好きで、民事訴訟法の先生はもれなく倒産法も担当していることを知ったため、民事訴訟法と倒産法は相互関連性が強いと思ったという理由によります。また、私は司法試験受験生となる前から学部の時に選択科目関連の授業はとっていたのですが、倒産法のみ唯一やったことがなかった科目でもあったので、司法試験受験を機に新たな科目に挑戦しようと思ったことも理由の一つです。また、民法改正のうち詐害行為取消権や相殺に関する箇所が破産法の規定と近接するものになっているという話を聞き、興味がわいたということも挙げられます。

2 倒産法を選択したメリット・デメリット

(1) メリットは、民事系科目と強くリンクしているので、民事系の知識を流用ないし応用することができる以上、覚えることはそこまで多くないという点があります。また、債権者代位や詐害行為取消回りの民法改正は倒産法の規定に沿ってなされているため、倒産法の学習をすることによって改正民法の理解が深まる、という利点もあります。

(2) デメリットは、①分量が多いこと、②司法試験に適した演習書があまりないこと、です。倒産法は破産法と民事再生法で構成されているため、単純に分量が多いです。また、基本書も分厚いものが多く、初学者には若干ハードルが高いと思います。演習書は、『倒産法演習ノート』が有名なものとして挙げられますが、中身はかなり難しく、司法試験との関係ではオーバースペック感があるため、超上位合格を目指す人向けの演習書になっていると思います。過去問を検討するとわかるのですが、過去問で問われていることとこの演習書で問われていることには大きな隔たりがあるように思います。そして、他に司法試験対策に適した演習書を私は知りません。

3 法科大学院での学習

 法科大学院では、倒産法の授業をとっていました。しかし、二つあるうちの一つは、カリキュラム上取れなかったので、片方のみ取り、残りは独学で補いました。自主ゼミ等は組んでおらず、専ら個人で授業のレジュメを読んだり司法試験の過去問を検討したりしていました。また、すでに修習に行っている友人に倒産法の勉強方法について質問し、その回答をもとに勉強する内容を決めたりしていました。

4 受験対策

(1) 本
 『倒産処理法入門』で倒産法の基本的な部分を一通り確認した後は、辰已の『1冊だけで倒産法』をメインに使っていました。趣旨規範の部分と、過去問及び再答案が載っているので、本当に1冊だけですべて足りるように作られているのでお勧めです。最終的にはその趣旨規範の部分をカスタマイズして自分専用のものにしました。また、過去問を検討する際に、不明な箇所を『倒産法概説』で調べたり、条文の趣旨を深く確認したいときにコンメンタールを読んでいました。さらに、司法試験で出題された判例については、百選の該当箇所を読み、事案の詳細とどの条文のどの文言が問題になっているのか、事案解決のためのあてはめ方等を中心に理解していました。『倒産法演習ノート』も使いましたが、結局消化不良のまま試験に臨むことになってしまいました。

(2) 過去問
 過去問については、他の科目よりも入念に行いました。というのも、倒産法は司法試験に特化した演習書があまりないと思われ、司法試験の過去問自体が重要な教材になると考えたためです。各年、第1問、第2問それぞれ30分程度で答案構成をし、解説講義を聞き、出題趣旨・採点実感を読み込み、再現答案を読んで相場観を知る、ということを平成18年の過去問から令和3年まで2周以上はしました。

(3) 講座
 辰已では、選択科目集中答練をとっていました。令和3年度の試験で倒産法の点数がかなり低かったため答案を書く練習をする必要があったこと、司法試験型の問題を多く解きたかったことを理由に、受講しました。令和4年の1月から各週答案を計8回書いたので、非常によいトレーニングになるとともに、知らない論点を趣旨規範本に書き込むことで知識の抜け漏れ等がないようにすることができました。私は、本を読むだけの勉強よりも、実際に時間を計って問題に取り組み、あれこれ考えながら答案を書いた方が結局は定着率が高いことがわかっていたので、司法試験型の答練は他の人よりも比較的多めに受けていました。また、スタ論や全国模試でも答案を書いたので、約11回のフル起案を経験したため、単純な筆力が向上し、試験当日は合計8枚描くことができました。

5 反省及びアドバイス

 私は、令和3年司法試験では倒産法の条文選択を間違えてしまったため、あてはめの部分ではいくばくかの点数がついているかもしれませんが、点数を大幅に落としてしまったと思います。なぜ条文選択を間違えたかというと、倒産法を勉強するうえで一番重要な条文理解を蔑ろにしていたことや、事例に対する処理方法についての経験が浅すぎたことが原因でした。そこで、不合格後は、多少遠回りかもしれないとは思いつつも、判例六法の条文素読と、各条文の掲載判例を見ることで、各条文の趣旨と、その条文の具体的な適用場面を一から理解することにしました。その結果、令和4年司法試験では条文選択を間違えることはなく、条文の摘示とその解釈・あてはめをしっかりと行うことができました。
 このように、倒産法は暗記ももちろん重要なのですが、それを支える根本的な部分の理解を避けて通ることはできないと思います。そこで、来年以降司法試験に臨まれる方に対しては、まずは破産法ないし民事再生法の条文の趣旨や意義に関する理解を深めることを先にやった方が良い、というアドバイスをしたいと思います。また、過去問を検討すると判明することなのですが、過去問で問われていることはそこまで高いレベルのものではないので、条文選択をミスらず、かつ充実したあてはめを行えば、倒産法に関しては大丈夫だと思います。

辰已法律研究所 受講歴

【2022年対策】
・スタンダード論文答練(第1・2クール)
・選択科目集中答練
・スタンダード短答オープン(第1・2クール)
・司法試験 総択
・全国公開模試

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