令和7年度司法書士試験筆記試験
基準点の発表を受けて
更新 : 2025年12月3日
8月12日、法務省ホームページにおいて、令和7年度(2025年度)司法書士試験筆記試験択一式の基準点等が公表されました。
公表された基準点は次の通りです。
午前の部:満点105点中78点
午後の部択一式:満点105点中72点
午前または午後択一の点数のいずれかが基準点に達しない場合にはそれだけで不合格となります。
基準点以外に公表された資料は次の通りです。
受験者数:14,418名(昨年比103.3%)
本年も、午前の部・午後の部択一式ともに、平均点の発表はありませんでした。
※辰已法律研究所の計算によると、午前の部の平均点は63.29点、午後の部択一式の平均点は51.19点でした。
また、択一式の正解も公表されました。本年は正解なしの問題が午後の部に1問ありました。
辰已法律研究所では当該問題について、法務省に意見書を提出しました。詳細は辰已法律研究所ホームページをご覧ください。
https://service.tatsumi.co.jp/special/46172/
さらに、「令和7年度司法書士試験筆記試験(多肢択一式問題)得点順位別員数累計表」も公表されています。
これらについては、法務省ホームページをご覧ください。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00716.html
令和7年度は、午前の部の基準点が78点(26問)、午後の部択一式の基準点が72点(24問)となりました。午前の部・午後の部択一式ともに昨年と同じ基準点です。
上記のように、午前の部の基準点は78点(26問)で昨年と同じでした。辰已法律研究所が行ったWEB択一再現に基づく科目別平均正答率によると、午前の部では、憲法・民法・刑法の平均正答率は例年と大差なく、商法は過去10年の中で最も平均正答率が高かった昨年に次ぐ高い平均正答率となりました。午前の部全体としてみると、問題の難易度はほぼ昨年並みで、基準点を変動させることはありませんでした。出題形式としては、組合せ問題が35問(昨年35問)、単純正誤問題が0問(昨年0問)、個数問題が0問(昨年0問)、会話形式の問題が1問(昨年1問)で、出題形式の内訳は昨年と全く同じです。
一方、午後の部択一式の基準点は72点(24問)で、こちらも昨年と同じでした。WEB択一再現に基づく科目別平均正答率によると、いわゆるマイナー科目の中では、民事執行法のみが例年より大きく正答率を下げましたが、その他の科目(民事訴訟法・民事保全法・司法書士法・供託法)は例年並みの正答率でした。主要科目のうち不動産登記法は例年より易化し、過去10年で最も高い平均正答率でした。商業登記法は過去3年より平均正答率を下げましたが、疑義のある問題を含んでいたため、過去の年度との単純な比較は難しいところです。午後の部の出題形式をみると、組合せ問題が35問(昨年35問)、単純正誤問題が0問(昨年0問)、個数問題が0問(昨年0個)、会話形式の問題が4問(昨年2問)で、会話形式が2問増えたこと以外は昨年・一昨年と変わらず、安定しています。
午前・午後を通じて出題傾向の顕著な変化はみられず、基準点も昨年と同じでした。午前・午後択一式のどちらにおいても条文・判例・先例の基本知識を問う出題が中心で、過去問既出の論点が多くを占めた点は例年通りです。民法や商業登記法では過去問知識だけは解けない問題も散見されましたが、結果として基準点が変動することはありませんでした。今後の試験対策としては、従来同様、基礎的な事項をしっかり押さえ、正答率の高い問題を確実に得点していく勉強が最も有効だと思われます。
次に、基準点到達人数をみると、午前の部は昨年より295名増え、対受験者でみた基準点到達者の割合は昨年より1ポイント上がりました(32.9%)。午後の部択一式は到達者数が335名の増加、到達率は1.7ポイントのプラスでした(21.7%)。到達者数・到達率ともに、午前も午後択一式も昨年より上がっています。記述式の配点が倍増されてから2回目の試験でしたが、今年は記述式の採点人数に変化がみられるのか、10月2日の発表が興味深いところです。
択一式基準点は午前の部・午後の部択一式双方での高得点者の「重なり」の調整結果です(下の表の中でDの数値のみ安定している点に注目)。よって、重要なのは記述式の採点をされたのが何人か、受験者数の変動に伴ってこの人数に変動があるのかということであり、これについては10月2日の法務省の発表を待って当欄に数値等の追加をいたします(上記「重なり」が判明しない段階での、偏差値等に基づく推測的なコメントは当研究所では差し控えます)。
最後に、「令和7年度司法書士試験筆記試験(多肢択一式問題)得点順位別員数累計表」をもとに、辰已法律研究所が作成した得点分布グラフを見てみましょう。
上記のように、午前の部の基準点は昨年と同じでした。得点別にみると、75点から基準点を挟んで87点までの得点域での人数増加が目立ちます。例年の午前の部のグラフは中心付近が高い1つの山となることが多いのですが、今年は上記得点域だけ突出して人数の多いグラフとなっており、来年以降も高得点者の増加傾向が続くのかが注目されます。
午後の部択一式の基準点も昨年と同じでした。午後の部択一式のグラフの形は、例年、高得点域と低得点域にそれぞれ山があり、低得点域の山のほうが高いというのが標準的です。今年は33点から基準点を挟んで81点までの得点域の人数が昨年より大幅に増えており、その代わりに30点以下の得点域の人数が減っていて、昨年とは違い、従来の午後の部択一式グラフの典型的な形に戻っています。従来の安定した得点分布が再び続いていくのかが来年の注目点となります。
今年は午前の部・午後の部択一式ともに基準点が昨年と同じという結果であり、以上に述べたように、午前の部の高得点域での人数増加があった点以外は従来の得点分布からの大きな変化はみられませんでした。
今年の結果を受けて、来年の本試験問題が大きく難化や易化、あるいは出題傾向が大きく変わるということは考えられません。









