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令和6年度司法書士試験筆記試験
基準点の発表を受けて

公開 : 2024年8月13日

 8月13日、法務省ホームページにおいて、令和6年度(2024年度)司法書士試験筆記試験択一式の基準点等が公表されました。

 公表された基準点は次の通りです。
 午前の部:満点105点中78点
 午後の部択一式:満点105点中72点
 午前または午後択一の点数のいずれかが基準点に達しない場合にはそれだけで不合格となります。

 基準点以外に公表された資料は次の通りです。
 受験者数:13,960名(昨年比104.4%)
 本年も、午前の部・午後の部択一式ともに、平均点の発表はありませんでした。
※辰已法律研究所の計算によると、午前の部の平均点は62.74点、午後の部択一式の平均点は47.68点でした。

 また、択一式の正解も公表されました。本年も複数解や正解なしの問題はありませんでした。

 さらに、「令和6年度司法書士試験筆記試験(多肢択一式問題)得点順位別員数累計表」も公表されています。

 これらについては、法務省ホームページをご覧ください。
 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00637.html

【資料&分析】
 次の表は、今年も含めた過去7年の午前・午後択一式基準点に関する資料です(辰已法律研究所作成)。

択一式基準点に関する資料(過去7年)

司法書士筆記試験基準点発表

 令和6年度は、午前の部の基準点が78点(26問)、午後の部択一式の基準点が72点(24問)となりました。午前の部は昨年と同じで、午後の部は昨年より3点(1問)下がりました。

 上記のように、午前の部の基準点は78点(26問)で昨年と同じでした。辰已法律研究所が行ったWEB択一再現に基づく科目別平均正答率によると、午前の部では、昨年と比較をして憲法が若干の難化、民法と刑法は若干の易化、商法は例年より易化した昨年と比べてもさらに易化し、過去10年の中で最も高い平均正答率となりました。午前の部全体としてみると、問題は昨年より若干易化しましたが、基準点を上げるほどではなかったことになります。出題形式としては、組合せ問題が35問(昨年33問)、単純正誤問題が0問(昨年2問)、個数問題が0問(昨年0問)、会話形式の問題が1問(昨年3問)で、35問全てが組合せ問題というのは令和2年以来のことです。
 一方、午後の部択一式の基準点は72点(24問)で、昨年より3点(1問)下がりました。WEB択一再現に基づく科目別平均正答率によると、いわゆるマイナー科目の中では、民事保全法のみが昨年より正答率を上げ、その他の科目(民事訴訟法・民事執行法・司法書士法・供託法)は昨年より正答率が下がりました。これが基準点を下げた要因だと思われます。主要科目のうち不動産登記法はほぼ昨年並みで、過去数年と比較をしてもほぼ同程度でした。商業登記法はわずかに易化しましたがほぼ昨年並みで、過去数年の中では易しい方に属します。午後の部の出題形式をみると、組合せ問題が35問(昨年35問)、単純正誤問題が0問(昨年0問)、個数問題が0問(昨年0個)、会話形式の問題が2問(昨年2問)で、昨年・一昨年と変わらず、非常に安定しています。

 午前・午後を通じて出題傾向の顕著な変化はみられず、基準点も午後択一式が3点(1問)下がったのみでした。午前・午後択一式のどちらにおいても、若干ながら細かな条文知識を問う問題が出題され、それらについては解答に窮した受験者もいたと思われますが、過去問知識で解ける問題も多く、結果として基準点が大きく変動することはありませんでした。今後の試験対策としては、従来同様、基礎的な事項をしっかり押さえ、正答率の高い問題を確実に得点していく勉強が最も有効だと思われます。

 次に、基準点到達人数をみると、午前の部は昨年より246名増え、対受験者でみた基準点到達者の割合は昨年より0.4ポイント上がりましたが(31.8%)、昨年とほぼ同じといってよい数値です。午後の部択一式は到達者数が9名の増加。受験者数の増加があったため、到達率は0.8ポイントのマイナスとなりました(20.0%)。到達者数・到達率ともに、午前も午後択一式も昨年ときっちり揃えてきた印象です。今年度から記述式の配点が倍増するのに伴い、択一式の出題や基準点の設定にも変化があるかもしれないとの見方もありましたが、この結果をみる限り、択一式について特に変化はなかったといえます。

 択一式基準点は午前の部・午後の部択一式双方での高得点者の「重なり」の調整結果です(下の表の中でDの数値のみ安定している点に注目)。よって、重要なのは記述式の採点をされたのが何人か、受験者数の変動に伴ってこの人数に変動があるのかということであり、これについては10月3日の法務省の発表を待って当欄に数値等の追加をいたします(上記「重なり」が判明しない段階での、偏差値等に基づく推測的なコメントは当研究所では差し控えます)。

択一式基準点到達人数に関する資料(過去7年)

司法書士筆記試験基準点発表

 最後に、「令和6年度司法書士試験筆記試験(多肢択一式問題)得点順位別員数累計表」をもとに、辰已法律研究所が作成した得点分布グラフを見てみましょう。
 上記のように、午前の部の基準点は昨年と同じでした。得点別にみると、72点から基準点を挟んで90点までの得点域での人数増加、48点から36点までの得点域での人数増加が目立ちます。例年の午前の部のグラフは中心付近が高い1つの山となることが多いのですが、今年は高得点域と低得点域にそれぞれ頂点があるような形となっており、来年以降、午後の部択一式のグラフのようになっていくのかが注目されます。
 午後の部択一式のグラフの形は、例年、高得点域と低得点域にそれぞれ山があり、低得点域の山のほうが高いというのが標準的です。今年はその山が全体として低得点方向に動いており、その結果として基準点が下がったと思われますが、特に目立つのは、30点以下の得点域の人数が大幅に増えていることです。これは、午後の部択一式の対策が不十分な受験者が非常に多くなっていることを示します。
 今年は午前の部の基準点が昨年と同じで、午後の部択一式は昨年より3点(1問)下がるという結果でしたが、以上に述べたように、低得点域での人数増加が目立つ以外に特筆すべきことはありません。昨年も述べたように、基準点より大きく下がった得点域の人数は合否を争う受験者には影響がありません。
 今年の結果を受けて、来年の本試験問題が大きく難化や易化、あるいは出題傾向が大きく変わるということは考えられません。

※画像をクリックすると、大きく表示されます。

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