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予備試験、司法試験への
CBT方式導入に伴う対応について

辰已法律研究所

 政府は、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(2023年6月9日)の中で、司法試験及び司法試験予備試験のデジタル化を打ち出しました。具体的には、①出願手続きのデジタル化:2025年度から出願手続等のオンライン化及び受験手数料のキャッシュレス化の開始を目指し、②試験問題・受験生の解答のデジタル化:2026年に実施する試験からCBT方式を導入する方針です。 CBT方式導入の趣旨は、「受験者の利便性の向上」「試験関係者の負担軽減等」を図ることとされています。制度の詳細はまだ公表されていませんが、現時点での情報を元に、何がどう変わるのか、どのような受験準備をする必要があるのか等をみていきましょう。

※法務省、司法試験員会からの正式な発表はまだありません。 本稿は、2024年2月時点の予測であることをご了承ください。

CBTとは

 CBTとは、Computer Based Testingの頭文字であり、試験場でコンピューターを使って行う試験の方式を指します。定められた会場に用意された端末を利用しての受験であり、会場外からのリモート受験(自宅からのWebでのアクセスなど)は想定されていません。つまり受験生は、CBTでも指定された会場に足を運ぶ必要があります。

PCの種類

 試験会場が、今まで通り大学等を借りて設営・運営されることを前提にすると、PC端末はデスクトップ型ではなく、ノートパソコンになるでしょう。

●Check POINT
 デスクトップ型とノート型パソコンのキーボードでは、キーのサイズ、タッチ感、その他の操作感が微妙に違いますので、PC用のフルサイズキーボードではなく、ノートパソコンのキーボードに慣れておく必要があるでしょう。

 一度に大量のノートパソコンが必要になるため、全て同一モデルのノートパソコンが準備できるかは不明です。しかし、MacかWindowsかという点では、圧倒的に調達しやすいWindowsが想定されます。2026年という実施時期を考えるとOSは当然Windows11になるでしょう。画面の大きさは、論文試験で解答を入力すること、さらに問題文も画面上に表示される可能性を考えると、16インチ以上になることが予想されます。

●Check POINT
MacユーザーはWindowsにも慣れておかないとマズイ。
これからノートパソコンを購入する人は、でかくて重くとも16インチの物を購入しよう。

導入されるのは論文式試験&短答式試験?

 論文式試験については、司法試験・予備試験両者にCBTが導入されることになります。
 問題は、短答式試験です。特に予備試験では短答受験者が17,000人近くいるので、これだけの数の同一基準のノートパソコンを準備するのは実際上不可能でしょう。そこで、予備試験の短答式試験だけは、PBT(Paper Based Testing)つまり、「紙」ベースの試験のままとなる可能性が大です。
 CBT導入の趣旨に、「試験関係者の負担軽減等」とあり、CBT化は、主として①書く行為の負担(受験者)、②手書き難読文字を読む負担(採点者)の軽減を狙っており、本来なら無理に短答式試験に導入する必要はないのではないかと辰已法律研究所は考えますが、司法試験では受験者数が4,000名程度なので機器の調達可能性を考えると、政府方針をできるだけ貫徹する趣旨から(?)司法試験では短答式試験にもCBTが導入される可能性が大です。

 つまり 司法試験=短答・論文ともCBT
     予備試験=短答はPBT・論文はCBT

となることが想定されます。

◆辰已法律研究所から法務省への提案 
(1)問題文だけは、短答・論文とも印刷物で配布してはどうか?
 政府のデジタル化への大号令に従うならCBT化はやむを得ない流れなのかもしれません。確かにメリットも多くあるでしょう。しかし、デメリットも数多くあります。それは受験生が、CBT方式で問題を解いていくときに予想される圧倒的な不便さです。
 先ず短答式試験ですが、一般に、受験性は、問題文に〇×△?などのマークや、アンダーラインなどをガンガン書き込みながら問題を解き進めていきます。論文も全く同様です。マーカーペンの使用も多くの人が行っています。受験生がこれらのチェック作業を紙で行うのと同様にPC画面上行うことは、いかに優れたアプリケーションを入れても操作性は著しく落ちるでしょう。はっきりいって司法試験の内容と関係のない余計な労力と能力を受験生に要求することになります。これらは、ぜひ多くのヒアリングを行い、プレテストでの検証をお願いしたいと思います。デジタル化のメリットだけでなく、受験する側の実際上の不便さもぜひ考慮して頂きたいと思います。
 そこで、提案です。論文試験も短答試験も、司法試験・予備試験・短答・論文ともに、少なくとも問題文だけは紙ベースで配布したらどうでしょうか。
 そのうえで、従来通り、短答・論文ともペーパーの問題文の持ち帰りを許して頂きたいのです。
 これがなければ、短答試験では受験生は自己採点をすることが事実上不可能になるでしょう。そんなことはしなくていい、という考えの人もいるかもしれませんが、あまり一般的ではないと思います。

(2)論文試験での答案構成用紙をペーパーで配って欲しい。
 答案構成用紙もPC上となると、受験生は、問題文・答案構成・思考メモなどいくつもの画面を、画面の切り替えか分割画面で行わざるを得ないことになります。PC作業に慣れているビジネスマンでも2画面3画面を駆使して仕事をできる人はそう多くありませんし、司法試験を通過して実務家になったときに必須の能力とも思えません。
 受験生への過度の負担が、従来通りA3のたった1枚の答案構成用紙を配付するだけで劇的に軽減するでしょう。ぜひご考慮頂きたいと思います。

論文試験配布物は、デジタル化でどうなる?

1 問題冊子   ⇒PC画面で読む。ラインマーカー機能等のアプリあり?
2 答案用紙   ⇒PC画面に入力する。日本語変換辞書や機能は未定。
3 答案構成用紙 ⇒無くなる?PCのメモ帳使用?
4 試験用六法  ⇒PC画面で読む。紙の「司法試験用六法」は無くなる?

 

◆プレテスト実施
対象や規模はまだわかりませんが、令和6年度中にプレテストが実施される予定です。

実際の論文入力はどうなるでしょう

 PCを使用する場合、不正行為防止が問題となるため、外部とのネット接続、通信はできなくなるのは確実です。日本語IME(FEP)が何になるのか、辞書機能がどうなるのか(法律用語の変換容易性)、試験中に単語登録できるのか、コピー&ペースト等の機能が使えるのか等は現時点では不明です。
 これらの機能は、答案の作成しやすさを大きく左右します。

●Check POINT
 現段階での事前の心構えとしては、PCに一般的に附属する種々の便利な機能は使えなくなる可能性があると思っていた方がよさそうです。
 普段使っているPCの多種の便利な機能が使えない場合、それを補うのは入力スピードになります。ブラインドタッチができればベストですが、それに近い文字入力の正確性とスピードを普段から意識しておきましょう。
 現在は、問題文へのラインマーカーの使用等が認められています。PC上で問題を読む場合、同じようにラインマーカーの機能が使用できるとしても、自由度は各段に下がります。また、答案構成用紙が配付されるかどうかも未定です。手元に紙が何もなく、画面上でメモできるだけだとすると、相関図をどうやって書くのか等、相当な不便が生じる可能性があります。

●Check POINT
 事前の答練などで実際の不便を体験しておくことが重要。最悪、問題文への記入や答案構成用紙を利用しないで答案を作成する練習が必要になる可能性もあります。

新たな制限はなんだろう

 今までは、文字の大きさ、文字数、空白の使い方は千差万別であり、論文の答案用紙に収まってさえいればOKでした。ひどく小さい字や汚い字で試験委員が採点上とても苦労されています。
 CBTになれば、フォントや文字の大きさは一定のものとなるでしょうし、当然最大文字数の制限も導入されると考えていいでしょう。
 それで何が起こるか?
 字のきれい汚いはいっさいなくなりますから、当然これまで以上に内容勝負になります。今まで以上に、短文で分かりやすく、主語述語の連携がきっちりとれている文章をめざすべきでしょう。

●Check POINT
 字数制限が導入されると想定して、普段から、短文で一読了解型のわかりやすい文章を作成する練習をしよう。

試験会場はうるさくなる?

 制限ではありませんが、試験環境の変化にも対応が必要です。紙にペンを走らせるのではなく、キーボードを叩くことになりますから、試験会場内に打鍵音が響くことでしょう。これは結構イラつくかもしれません。無駄に大きな音で打鍵する人も絶対います。今までも他人のペンの音が気になる人がいたと思いますが、キーボードの音はそれ以上でしょう。これには答練などで慣れるしかありません。打鍵音が響く中でも自分の答案のみに集中できるようにトレーニングしなければなりません。現在の試験では、耳栓の使用はできませんが、この扱いが変更されるかについては不明です。

●Check POINT
 他人のキーボードの音が気になる人は要注意。答練などを通して慣れよう。

答案が活字になると採点に革命が起きる!

 最後に、重要な視点を提起しておきたいと思います。
 答案はすべてテキストデータとなります。
 さて、採点側の立場になって考えてみましょう。
 受験生のテキストデータの答案を、PC上の操作で比較・検討するということは採点者に許されるのか?
 今までのアナログ答案と異なり、今度は何でも簡単に比較できるようになります。
 文字数も一発でわかる。採点基準に関係する法律用語の使用も、引用すべき条文も、それが適切に使用されているか一発で検索できるようになるでしょう。
 小問毎の記述割合(答案バランス)の比較も容易になる。
 まさか、ChatGPTなどに詳しい試験委員が自由に受験生の答案をAIで処理することは許されないでしょうが、プロンプトの作り方によっては何でも可能になります。試験委員には相当詳細な採点基準が配付されますが、それに対応する各受験生のテキストデータを比較対象することなどそれほど難しいことではないでしょう。

 辰已法律研究所の答案練習会では、これらの点についても種々の想定を行う予定ですが、いずれにしても、論文試験が、新しい世界に入っていくことは間違いありません。
 もっとも数年間は劇的な採点システムの改革を行うことは想定しにくいので、受験生としては、当面、採点される場面での過剰な想像をする必要はないでしょう。
 しかし、受験生自身は、自分の答案がテキストデータになることを徹底的に利用しない手はありません。
 これらの点について、様々な工夫をしていくのは予備校の使命ですので、辰已法律研究所としてはAIの手を借りながら、受験生が答案練習会でトレーニングし、自己分析し、各自なりに確実に進化できる方法を工夫して提供していきます。

●Check POINT
 デジタルな答案は比較しやすいため、シビアな内容勝負となる。
 重要なキーワードや必要条文が答案上にあるかどうか、検索すればすぐにわかる。普段の学習から、「論点落とし」「条文落とし」「キーワード落とし」をしないようにしなければならない。

 以上が、2024年2月20日段階での、司法試験・予備試験のCBT導入に関する辰已法律研究所の分析ですが、今後、様々な情報が入り次第、本稿の内容を改訂していきます。

 最後に、大切なことを一言。

 司法試験にCBTが導入されるのは、最短で2026年です。この変化は、受験生に負担をかける面が多々あります。従って、予備試験受験生の方は、たとえどんなに大変でも2024年の予備合格→2025年司法試験合格を目指し、司法試験受験生の方は、2024年・2025年の2回の司法試験のうちに確実に決着をつけることを期していただきますよう、辰已法律研究所一同心から祈念しております。

 頑張れ受験生!

 

あなたの熱意・辰已の誠意
2024年2月22日
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