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2022年予備試験論文本試験(選択科目)講評

令和4年司法試験予備試験論文本試験(選択科目)について

令和4年7月
辰已法律研究所 教材編集部

 
 令和4年7月9日(土)、司法試験予備試験(以下「予備試験」という。)論文本試験において初めての選択科目の出題がなされました。
 以下では、令和4年対策として辰已法律研究所(以下「辰已」という。)が受験生に提供した選択科目答練問題の作成方針を示した上で、今回出題された本試験問題の分析及び令和5年対策としての辰已の選択科目出題方針を示します。
 
1 令和4年対策として辰已が受験生に提供した選択科目答練問題の作成方針
 令和3年6月2日付け司法試験委員会決定の「司法試験予備試験の実施方針について」(以下「実施方針」という。)によると、予備試験論文選択科目の出題については、「各法分野における基本的な知識、理解及び基本的な法解釈・運用能力並びにそれらを適切に表現する能力を問うものとする。司法試験において、更に同様の法分野に関する能力判定がなされることを前提に、予備試験の選択科目においては、基本的な知識、理解等を問うものとする。」とあります。予備試験選択科目の出題範囲については、この「実施方針」しか手がかりがなく、辰已から法務省に、サンプル問題の公表などを要望しましたが、実現しませんでした。
 そこで、辰已としては、「実施方針」にある、「司法試験において、更に同様の法分野に関する能力判定がなされることを前提」から、出題範囲は司法試験選択科目と同様であること、また、「予備試験の選択科目においては、基本的な知識、理解等を問うものとする」ことから、基本的な問題を中心に出題することにいたしました。
 ただ、予備試験選択科目では、各科目1問のみ出題することになっているため(「実施方針」参照)、どのように出題するかを辰已内部で専任講師も含めて検討しました。その結果、各科目の特定の分野だけではなく、できるだけ複数の分野の出題ができるような問題作成をしていくことにいたしました。
 特に、司法試験選択科目で第1問目と第2問目で分野が明確に分かれている、倒産法(破産分野と民事再生分野)、知的財産法(特許分野と著作権分野)、労働法(個別労働関係分野と集団的労働関係分野)、国際私法(家族関係分野と財産関係分野)については、両分野を小問ごとで出題するなど工夫をして出題することにいたしました。
 
2 令和4年予備試験本試験の選択科目問題の分析
 令和4年7月9日に初めて実施された本試験問題の概要は問題講評速報の通りとなります。
 
 特に辰已としても注目しておりました、倒産法、知的財産法、労働法、国際私法については、以下のような出題となりました。
 ・倒産法 破産分野のみからの出題
 ・知的財産法 著作権分野のみからの出題
 ・労働法 個別労働関係分野のみからの出題
 ・国際私法 家族関係分野のみからの出題
 
 以上のように、上記4法については、辰已が予想したような複数の分野を問うような司法試験選択科目とは異なる特別な出題ではなく、司法試験選択科目の大問1問分と同様、特定の分野のみからの出題となりました。
今年の出題を見て、上記4法については、来年以降も今年と同じような分野からの出題になるのかどうかは分かりません。「実施方針」に「司法試験において、更に同様の法分野に関する能力判定がなされることを前提」とあるように、各科目の出題範囲は司法試験選択科目と同様と考えられるからです(選択科目の令和4年司法試験予備試験用法文登載法令と令和4年司法試験用法文登載法令も同一)。
 ですので、辰已としては、来年以降、倒産法での民事再生分野、知的財産法での特許分野、労働法での集団的労働関係分野、国際私法での財産関係分野の出題も当然あり得るものと考えており、受験生としても来たる司法試験受験のために、各科目の全分野を勉強していくことが大事だと考えております。
 
3 令和5年対策としての辰已の予備試験選択科目出題方針
 以上を前提に、令和5年対策としての辰已の予備試験選択科目出題方針は以下の通りです。
 まず、選択科目各科目の全範囲を対象とした答練問題を作成して受験生に提供して参ります。
 出題形式については、今年の予備試験本試験のように1問で特定の分野を問うような問題のほか、1問で複数の分野を問うような問題も作成して参ります。来年以降も特定の分野のみの出題になるのか、複数の分野を問うような問題になるのかは、今年の本試験問題だけからはまだ判断できないからです。
 
 いずれにしましても、司法試験合格を目標とされている予備試験受験生の皆様の勉強の一助になれるよう、辰已は選択科目の答練問題作成も鋭意進めて参ります。

倒産法  公開:2022年07月29日

1 はじめに
 本年度の倒産法は、破産法の重要項目である否認権からの出題でした。
 設問1では、不動産登記具備行為に対する対抗要件否認の可否が問われ、特に支払停止前の対抗要件具備行為に対する否認の可否については学説の対立の理解を問う出題がなされました。また、設問2では否認後の破産管財人と受益者との法律関係が問われました。
 
2 問題文
 
3 本問の分析
1 設問1について
 A社より甲土地を購入したB社が、購入時点では所有権移転登記をせず、その後、A社の危機時期に至って所有権移転登記手続を行った事案において、A社の破産管財人による対抗要件否認の可否が問われています。
小問(1)において、B社は、A社の代理人弁護士名義による支払を停止する旨の本件通知を受領した後に所有権移転登記手続を行っています。そこで、支払停止等があった後の対抗要件否認を定めた破産法第164条の要件を満たすか、検討することになります。
 まず、本件通知の送付が「支払の停止等」に該当するか検討した上で、破産法第164条の要件、すなわち、B社の所有権移転登記手続が「支払の停止後」「権利の移転があった日から15日を経過した後」であること、B社がA社の「支払の停止等」について悪意であること、を満たすか論じる必要があります。
 小問(2)は、B社の所有権移転登記手続が「支払の停止等」より前に行われており、破産法第164条の要件を満たさない事案です。このような事案において、詐害行為否認により対抗要件具備行為を否認できないか、という有名論点について、「反対の結論を採る立場にも言及しつつ」論じることが求められています。
旧法下での創設説、制限説の議論を参考にして、詐害行為否認による対抗要件具備行為の否認の可否について反対説に言及しつつ自分の採る立場を述べた上で、本問における否認権行使の可否を論じる必要があります。
 
2 設問2について
 破産法第164条による対抗要件否認がなされた場合の効果について問われています。
本問で、B社による所有権移転登記手続が否認された場合、B社は甲土地の所有権を破産管財人Gに対抗できなくなり、破産管財人GはB社に対し、甲土地の引き渡しを請求することができます。
 一方で、原因行為である売買契約が否認されていないことから、B社は、A社に支払済みの甲土地の代金5000万円の返還を請求できるか、について問題となりますが、この点について明文の定めがないため論理的に結論を導く必要があります。例えば、後述の廉価売却否認のケースを参考にしながら、対抗要件否認において原因行為も否認されたものと同視して破産法168条1項2号によりB社の代金返還請求権は財団債権となる、との考え方があります。
 甲土地の売買契約が廉価売却であるとして破産法第160条1項1号により否認された場合には、破産管財人GはB社に対し、甲土地の引き渡しを請求することができます。他方で、破産法第168条1項2号に基づき、反対給付である代金1000万円に関するB社の返還請求権は財団債権となります。
 
4 的中情報★★★
設問1(1) 対抗要件具備行為の否認(破産法164条)の要件検討
・2022予備試験論文公開模試★★★
 →模試設問1を解いていれば難なく破産法164条にたどりつけたと考えられる。破産法164条にさえたどりつければ条文から要件を抽出することは現場で容易に可能である。
 
設問1(2) 対抗要件具備行為の破産法160条1項1号による否認の可否
・2022予備試験論文公開模試 論点①「対抗要件具備行為を破産法160条1項1号によって否認することの可否」★★★
 →模試設問1を解いていれば、破産法164条について創設説、制限説等があること、予備試験の事案では各説によって160条1項1号の否認の可否が分かれることに気づけたと考えられる。この問題意識に気づければ、予備試験で求められている「反対の結論を採る立場」についても十分論じることができたと思われる。

租税法  公開:2022年07月29日

1 はじめに
 所得税法を中心として、法人税法を含む租税法の基本的な知識・理解を問う出題でした。問われている論点は、所得区分、年度帰属、売上原価の見積計上といった典型的かつ重要な論点であり、また、当てはめの対象となる事実関係も複雑でないことから、難易度は比較的易しめであると考えられます。
 
2 問題文
 
3 本問の分析
 以下では、条文を示すに当たり、所得税法を「所」、所得税法施行令を「所令」、法人税法を「法」とそれぞれ略記します。
 
〔設問1〕
 給与所得又は事業所得が候補となることから、両所得の区別が問題となった最判昭56・4・24(弁護士報酬事件、租税百選7版38事件)の判断枠組みを参考にしつつ、具体的な検討を行うことになります。契約報奨金が実質的にはAの事業に関するインセンティブ付けのための賞与と考えられることや、Bの支出する費用の大部分をAが補填していたことなどを踏まえると、Bが自己の計算・危険において自ら不動産事業を営んでいたと評価するのは難しく、Bの契約報奨金は給与所得に該当すると考えられます。
 
〔設問2〕
 Aは執筆活動を継続的な事業として営むものではないため、所令63条11号の「著述業」や同条12号の「継続的に行なう事業」に該当することはなく、Aの印税収入は事業所得に該当しません。そして、一時所得を含む雑所得以外の他の所得区分にも該当しないことから、雑所得に該当することとなります。
 
〔設問3〕
 所得の帰属年度については、所36条の解釈上、権利確定を基準として判断することになります。Aは、平成29年中に登記移転を行っており、この時点で売買代金請求権は確定したといえるので、平成29年分に所得の帰属が認められます。
所得区分については、甲土地が販売用の資産であることから、譲渡所得を構成することはなく(所33条2項1号)、事業所得となります(所27条、所令63条9号)。
 
〔設問4〕
 前提として、AのFX取引に係る所得区分が問題となります。事業所得と雑所得の区別が問題となった裁判例(名古屋地判昭60・4・26など)に照らし、Aが事業規模でFX取引を行っていたとは評価できないことから、事業所得には該当しません。そして、一時所得を含む雑所得以外の所得区分に該当しないことから、雑所得に該当することとなります。
そうすると、雑所得の計算上、平成26年分のFX取引に係る損失と、同年分の印税収入(雑所得)との通算(相殺)は認められますが(所35条2項)、それ以外のFX取引に係る損失については、損益通算や次年度以降への繰越しは認められません(所69条1項、70条1項)。
 
〔設問5〕
 水道工事代金は法22条3項1号の「原価」に該当します。原価については、対応する売上高と同じ事業年度(本件では令和3年12月期)に計上するのが原則ですが、同事業年度末時点では工事代金が確定していないことから、見積額をもって損金算入して差支えないかが問題となります。宅地開発業における売上原価の見積計上の可否が問題となった最判平16・10・29(租税百選7版56事件)を踏まえると、本件では、近い将来の費用支出が相当程度確実に見込まれ、かつ金額の適正な見積りが可能であったといえることから、見積額の損金算入が可能です。
 
4 的中情報★★★
 現在調査中です。判明次第,公開いたします。

経済法  公開:2022年07月29日

1 はじめに
 本問の出題方法、過去の司法試験の傾向からすると、本問は、単に暗記した「知識」を問うわけではなく、経済法の基本的な「理解」を問う問題であり良問と考えられます。主に当てはめにおいて、市場メカニズムの基本的な理解ができているかどうかにより差が出る問題といえるでしょう。
 
2 問題文
 
3 本問の分析
 
〔第1問〕
 本問は、水平型企業結合の事例を通じて経済法の基本的な理解を問う問題です。
 適用条文は〔設問〕で指定されており、当てはめがメインの問題となります。
 まず、独禁法16条1項1号の行為要件について端的に企業結合の認定をし、効果要件について「一定の取引分野」(市場)と「競争を実質的に制限することとなる」(競争制限効果)について、それぞれ意義を論じた上で、問題文に記載された具体的な事実を拾い、丁寧に当てはめを行う必要があります。
 「一定の取引分野」(市場)については、需要の代替性と供給の代替性に関する事実を拾い上げ、「世界における大型甲の製造販売分野」と「世界における小型甲の製造販売分野」に分けられることを論じていくことが求められるでしょう。
 「競争を実質的に制限することとなる」(競争制限効果)については、前提として、本件計画が水平型企業結合であることを指摘した上で、大型甲と小型甲のそれぞれについて、競争者の数・シェア・供給余力、市場の競争状況や需要者の状況等の事実を拾い上げ、単独行動と協調行動の2つの側面から論じていくことが求められるでしょう。大型甲については競争制限効果が認められ、小型甲については競争制限効果が認められないと論じることが考えられますが、その場合には、過去の司法試験の傾向に照らすと、前者の問題解消措置についても論じることが求められていると思われます(平成29年司法試験経済法第2問参照)。
 なお、本問ではY社の大型甲の製造販売事業について「経営状況」の問題について論じることも求められている可能性はありますが、過去の司法試験の傾向に照らすと、当てはめで問題意識を示せれば十分であり、その点で大きな差が付く可能性は低いと考えられます(平成29年司法試験経済法第2問参照)。
 
4 的中情報★★★
 選択科目特訓講義経済法では、出題趣旨・採点実感・再現答案の分析結果に基づき、情報量を厳選し、かつ、当該情報を答案に反映する方法や講師が厳選した司法試験の過去問(合計23問)の検討方法・講師作成参考答案による答案の書き方まで解説しています。本問についても、本講義を通じて学習・問題演習をすることで効率よく合格答案・上位答案を目指すことが十分できたと思われます。
 答練については現在調査中です。判明次第、公開いたします。

知的財産法  公開:2022年07月29日

1 はじめに
 本問は、東京地判平13.5.25(著作権判例百選[第6版]15事件)を題材とした、データベースにまつわる問題でした。ただし、〔設問4〕は、令和3年12月に文化審議会著作権分科会法制度小委員会著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチームの「独占的ライセンスの対抗制度及び独占的ライセンシーに対し差止請求権を付与する制度の導入に関する報告書」が出され、現在、改正法案の検討がなされている点に関するもので、予備試験の題材として適当であるか疑問もあります。受験生としては現行法に則って淡々と回答すればよく、立法動向への目配りまで求められているものでないと理解すればよいと思われます。
 
2 問題文
 
3 本問の分析
 〔設問1〕では、Xデータベースが著作物(著作権法(以下法令名省略)2条1項1号)といえるかについて、Xの主張を検討します。データベース(2条1項10号の3)が著作物といえるためには、「情報の選択」または「体系的な構成」に創作性があることを要します(12条の2第1項)。このうち、「情報の選択」については、対象となる住宅の選択は、A県内に実在する「全て」の2階建ての建売住宅であるから、創作性があるとすることは難しいが、データ項目の選択については「住みやすさ」という項目がある点などについて創作性を見出すことができるかもしれません。「体系的な構成」については、上記裁判例の判示にしたがえば、販売開始年月日の新しい順に表示されるだけでは創作性は認められないこととなるでしょう。なお、Xの主張のうち、「これまで存在していなかった」点はありふれたものでなく創作性を認める事情となり、「Xの従業員が多大な労苦を重ねて建売住宅の情報を収集して制作した」点は創作性の有無とは関連性がないことも指摘したいところです。
 
 〔設問2〕では、まず、Yデータベースの作成行為がXデータベースの複製権(21条)または翻案権(27条)の侵害となるかが問題となります。①既存の著作物に依拠し、②その本質的特徴を直接感得することができれば複製権侵害、それに③新たな創作性の付与があれば翻案権侵害となるところ、①と②は認められるでしょう。③については、データの内容のほか、項目や表示上の順序も同じであるから、認めることは難しいでしょう。そうすると、複製権の侵害となります。次に、作成したYデータベースを複製することはさらに複製権の侵害となり、それを販売することは譲渡権(26条の2第1項)の侵害となります。
 
 〔設問3〕では、上記裁判例は、費用・労力をかけて作成したデータベースについて、そのデータを複製してデータベースを作成し競合する地域で販売する行為は、「公正かつ自由な競争原理によって成り立つ取引社会において、著しく不公正な手段を用いて他人の法的保護に値する営業活動上の利益を侵害するものとして、不法行為を構成する場合がある」と述べているため、それに沿えばよいでしょう(著作権侵害が成立しない場合にも不法行為の成立を認めることに疑問を呈する立場もあるが、予備試験では学説の対立にまで目配りする必要性は高くないと思われます。)。
 
 〔設問4〕は、現在、立法論として議論されている独占的利用権者に差止請求権を認めるべきかに関連する問題です。予備試験の答案としては、現行法上の問題点が正確に理解されていればよいと思われます。Qの主張のうち、利用権者が差止請求権を有しない点は、112条が定める差止請求の主体に利用権者が含まれていないこと、利用権は債権にすぎず物権的権利とはいえないことなどから、妥当です。Xの有する差止請求権を代位行使(民法423条1項)していると見うるかについて検討するのもよいですが、特許法と異なり著作権法ではあまり論じられておらず、大展開することは得策ではありません。また、Qの主張のうち、利用権者が損害賠償請求権を有しないとする点は、利用権者が民法709条の「損害」が立証できる限りでこれを認めて良く、一律にこれを認めないのは妥当でないことになるでしょう。
 
4 的中情報★★★
 現在調査中です。判明次第、公開いたします。

労働法  公開:2022年07月29日

1 はじめに
 司法試験本試験における労働法の設問については、ここ数年、問われる論点そのものがややマイナーな論点であったり、大まかなくくりでいえばメジャーな論点ではあるものの、設問レベルでは、当該論点についての一定以上の深い理解や、応用力がなければ対応することが難しい出題がなされたりする傾向が強まっていました。その意味で、事例を読み解き、適切な事実の摘示とあてはめ・評価を行う能力よりも、法理論的な知識・理解が問われる傾向が強まっていました。
 これに対し、今回出題された予備試験の問題は、有期労働契約の雇止めという、きわめてメジャーな論点であり、理論的には、労働契約法19条及びこれに関連する判例法理を理解していれば足りる内容となっています。他方で、労働契約法19条の適用の有無、および同条が適用されるとした場合に、雇止めに合理的な理由および相当性が認められるかを判断するにあたって、事例における事実関係を適切に拾い(不必要なものは拾わずに)、摘示した事実を適切に評価し、あてはめを行ったうえで結論に導くという論理的な構成力が試される内容となっています。
 こうした出題は、かつての司法試験本試験にみられた傾向ですが、これが、予備試験ということを理由として生じたものであるのか、偶然であるのかは、今後の傾向を見定めるほかないものと思われます。
 なお、労働契約法18条及び19条をめぐっては、いわゆる無期転換ルールとの関係で、2018年ごろから、無期転換回避のための雇止めが問題となるようになり、ここ数年、この点に関連する判決がみられるようになっています。司法試験本試験においても、近年、比較的直近に注目される裁判例が示されているテーマや、学会で注目されているテーマがしばしば出題される傾向にあります。たとえば、2022年度の司法試験本試験では、2018年に改正が行われたばかりであり、2020年秋に複数の最高裁判決が示された、パート・有期法8条(旧労働契約法20条)をめぐる論点が出題されています。予備試験においても、今後とも、直近の法改正や議論となった(下級審判決を含む)裁判例、学界で議論となっている論点については、きちんとフォローをしておく必要があるかもしれません。
 
2 問題文
 
3 本問の分析
 1でも触れたように、本問が、有期労働契約の雇止めに関する問題であり、労働契約法19条の解釈適用をめぐる問題であることは明らかでしょう。したがって、この点について順を追って論じていけばよいということになります。
 まず最初に、設問では、どのような請求をすることが考えられるか問われていますので、地位確認請求をすることを示すのが必要であることは言うまでもありません。その際に、根拠条文として労働契約法19条を示すことが必要なことは言うまでもありませんが、その要件(を満たすこと)について正確に述べることが、まず求められていると考えられます。すなわち、労働契約法19条は、法形式上は、同条1号ないし2号の要件を満たしている場合に、労働者が契約更新の申し込みをすることによって、更新のみなしが生じるという構造になっているため、この点を的確に述べる必要があるでしょう(例えば、「Y社による雇止めは権利の濫用で無効」などと根拠を述べることは、条文の構造上、誤りということになります。)。この点を正確に述べることができたかどうかは、1つ、受験生の間で差が生じた点かもしれません。
 次に、労働契約法19条1号ないし2号の要件を満たすかどうかを検討する必要があります。この点、契約更新の形式からすると、1号を満たすと評価するのは難しいでしょう。次に、同条2号の要件を満たすか否かについてですが、この点については、結論が分かれる余地があると思います。というのも、本件において、例えば長期勤続をY社が望んでいた等、雇用継続の合理的な期待を明確に裏付ける事情までは示されていないためです。これについては、要件を満たす、満たさない、いずれの結論を採用することも可能と考えられます。重要なのは、事実を適切に拾い、評価することを通じて、要件を満たす(満たさない)という結論を論理的に説明できるか、という点になります。仮に、2号の要件を満たす結論に導くのであれば、Ⅹが当初から徐々に成績を伸ばしてきていること、勤務態度や能力評価など、継続的な勤務を前提とするようなやり取りが契約更新時になされていること、契約の不更新に関する説明が特になされていないことなどが挙げられるでしょうか。
 労働契約法19条2号の要件を満たすと評価するにせよしないにせよ、本問では、Ⅹによる請求内容を前提として、その当否を検討する形となっていることから、仮に労働契約法19条2号の要件を満たすとした場合に、雇止めの客観的合理的理由および社会通念上の相当性の有無についての検討も行うべきと考えられます。
 本問では、Ⅹの職務能力については問題ないと評価できる一方、周囲の従業員との関係を中心としたトラブル等が問題とされています。こうした事情がそもそも雇止めの理由となり得るかということになりますが、これについては、有期契約の労働者と言えど、周囲との協調性は一定程度求められると考えられるため、この点は問題ないでしょう。その意味で、雇止めがされる客観的な理由は、一応存在したと評価できそうです。問題となるのは、雇止めの相当性についてでしょう。これについても、やはりどちらの結論となる可能性も考えられそうです。雇止めを有効とするのであれば、周囲の同僚の動向等、職場内に与えた影響の大きさや、継続的に改善が見られなかった点を指摘することになるでしょう。他方、これらの問題については、Y社からⅩに対して具体的な問題の指摘、あるいは改善のための指導を行ってきてはいなかったと見受けられる点が問題となり得ます(Bらは、問題点は認識していながら、Xに対する指摘や指導は十分に行わず、周囲の従業員への対応をしているに過ぎなかった。)。この点を踏まえると、雇止めに至るまでにすべき対応をYが欠いていたことをもって、本件雇止めは社会的相当性を欠きXの請求が認められるとする結論とすることも十分にあり得るところかと思われます(Xの業績自体は良好であったことも、考慮要素として含めてもよいでしょう。もっとも、雇止めの主たる理由が勤務中の姿勢や周囲との関係にあったことを考慮すると、この点を雇止めを認めない主たる理由とするのは、あまり筋が良いとは言えないように思われます。)。
 なお、契約期間が5年を超過しての無期転換回避の意図があるかのような記述が事例中にみられますが、事例中の事実からすると、無期転換回避の意図は、まったくなかったとはいえないにしても、本件雇止めの理由としては、副次的な理由であるように見受けられますので、そこまで踏み込んで検討しなくても差し支えないのではないかと思います。
 いずれにしても、本問においては、結論の如何を問わず、事例における事実関係を適切に拾い、的確に評価・あてはめができているかどうか、そこから論理的に結論に導くことができているかどうかが、評価の大きな分かれ目になったものと思われます。
 
4 的中情報★★★
 現在調査中です。判明次第,公開いたします。

環境法  公開:2022年07月29日

1 はじめに
 設問1では、景観利益の理解及び損害賠償請求訴訟の救済手段が問われました。
 設問2では、眺望利益の理解及び民事差止請求訴訟の救済手段が問われました。
 
2 問題文
 
3 本問の分析
 
〔設問1〕
1 訴訟類型
 本問では私人たるA及びB社との間の契約関係を示す事情は見当たりません。また、本問では差止め及び原状回復は問われていません。そこで、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟においてAが主張すべき内容を検討することが考えられます。
 
2 Aの主張
⑴ 景観利益、景観権、環境権
 まず、景観が権利として保護されるのか、あるいは法律上保護される利益にとどまるのかが問題となります。判例上、景観権は認められていませんが、景観利益は認められています(最判平18.3.30、国立高層マンション景観侵害事件)。
 また、本問ではAが地権者である事情が記載されていることから、同判例第一審判決の言及した景観利益を踏まえて検討できるとなおよいと考えられます。
 本問では「R通り」に良好な景観が形成されており、少なくとも景観利益が認められることを前提として検討を進めることになると考えられます。
 さらに、環境権の法律構成が難しいことに一言触れることができればなおよいと考えられます。
⑵ 地権者Aが景観利益を有するとの主張
 Aが景観利益を有する者といえるかが問題となります。一般に、景観利益を有する者は、良好な景観に近接する地域内に居住し、その恵沢を日常的に享受している者とされています(同判例)。
 もっとも、本問ではAが地権者である事情は記載されているものの、Aが近接居住している事情は記載されていません。そこで、景観利益を有する者を限定的に解する判例の立場及びそれに批判的な立場を意識することができればなおよいと考えられます。
 たとえば、同判例の第一審判決を意識しつつ、R通りに面し、かつ、本件マンションの近隣に位置する土地の地権者であるAが景観利益を有する者といえるのかを検討することが考えられます。この場合、特定の地域内において、当該地域内の地権者らによる土地利用の自己規制の継続により、相当の期間、ある特定の人工的な景観が保持され、社会通念上もその特定の景観が良好なものと認められ、地権者らの所有する土地に付加価値を生み出した場合には、地権者らは、その土地所有権から派生するものとして、形成された良好な景観を自ら維持する義務を負うとともにその維持を相互に求める利益を有するに至ったと構成することが考えられます。
⑶ 景観利益に対する違法な侵害の主張
 景観利益に対する違法な侵害の有無については、①侵害される景観利益の性質と内容、②当該景観の所在地の地域環境、③侵害行為の態様・程度、④侵害の経過等を総合的に考察して判断すべきものとすることが考えられます(同判例)。同判例は、このうち③について、ある行為が景観利益に対する違法な侵害に当たるといえるためには、少なくとも、その侵害行為が刑罰法規や行政法規の規制に違反するものであったり、公序良俗違反や権利の濫用に該当するものであったりするなど、侵害行為の態様や程度の面において社会的に容認された行為としての相当性を欠くことが求められるとしています(同判例)。本件マンションは建築規制に関する行政法規には違反していない事情、また、P市では、本件マンションの建設当時、上記の景観を保護する法令上の独自の方策を講じていなかった事情をふまえて検討することとなります。
 もっとも、Aの立場としては違法性を主張すべく、同判例の第一審判決を踏まえた検討を行うことも考えられます。この場合、景観利益の特殊性と、本件建物による景観利益破壊の程度を総合考慮すると、Aらがこれまで形成し維持してきた景観利益に対して受忍限度を超える侵害が継続することになるとして慰謝料請求を主張することも考えられます。
⑷ 不法行為に基づく損害賠償請求との関係
 Aの上記主張は不法行為成立要件のうちどの要件と関係づけられるのかを明らかにし、その他の不法行為成立要件の検討を行うことが求められていると考えられます。
 
〔設問2〕
1 訴訟類型
 本問では、私人たるA及びB社との間の契約関係を示す事情は見当たりません。また、損害賠償請求は問われていません。さらに、B社が大規模な太陽光発電設備(以下「本件設備」という。)を設置して太陽光発電事業(以下「本件事業」という。)を営む計画を立てている段階での法的手段が問われています。そこで、本件事業の民事差止請求訴訟においてAが主張すべき内容を検討することが考えられます。
 
2 Aの主張
⑴ 景観利益、眺望利益、眺望権、環境権
 まず、本問では、AがT町の風光明媚な地域に所有する居宅からS湾の美しい眺望を一望できる事情、及び、Aはこのような景観及び眺望の享受を主な目的として居宅を構えた事情が記載されています。そのため、景観利益だけでなく、私人が特定の場所で良好な眺望を享受しうる利益、すなわち眺望利益が問題となります。眺望利益の性質及びその要保護性などに言及することができればなおよいと考えられます。また、眺望権・環境権の法律構成が難しいことに一言触れることができればなおよいと考えられます。
⑵ 眺望利益に対する違法な侵害の主張
 眺望利益に対する侵害行為が違法の評価を受けるかについては、①侵害される眺望利益の性質と内容、②当該眺望と特定の場所の地域環境、③侵害行為の態様・程度、④侵害の経過等を総合的に考察して判断することが考えられます(相関関係説)。
 ここで、眺望利益については、当該利益を有する者が眺望を構成する自然物・人工物等に対する直接の管理権・所有権を有しておらず、特定の場所と対象物との間に眺望を遮る障害物が存在しないという他者の土地利用状況に依存して享受しうる利益にとどまることなどの特徴に照らすと、眺望侵害が違法となるのは、侵害行為の態様・程度の面で社会的相当性を欠く場合に限られる(社会的相当性基準)とすることが考えられます。
 この場合、社会的相当性の欠如を基礎づける事実として、事前の説明などの点を検討できるとなおよいと考えられます(横浜地小田原支決平21.4.6、真鶴別荘決定)。たとえば、B社は、Aの居宅に近接する土地において本件事業を営む計画を立てており、太陽光発電設備の設置に係るT町の条例に従い、地域住民に対して本件事業に関する説明会を実施したほか、関係法令を遵守している事情が記載されています。こうしたB社の説明会実施などの事情は、Aの主張においては消極的事情と位置づけられると考えられます。また、本件事業が、相当数の世帯を賄えるだけの電力を地域に供給し、非常時に携帯電話等を充電できる設備も地域住民に供用する計画である事情も、Aの主張においては消極的事情と位置づけられると考えられます。Aとしては、本件設備が完成すれば、地域の景観の相当部分に本件設備が広がるとともに、Aの居宅からのS湾の眺望のかなりの部分を遮ることにもなる事情などを積極的事情と位置づけ、主張することが考えられます。
⑶ 本件事業の民事差止請求との関係
 Aの上記主張は民事差止請求の要件のうちどの要件と関係づけられるのかを明らかにすることが求められていると考えられます。
 
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国際関係法〔公法系〕  公開:2022年07月29日

1 はじめに
 設問が5問と多く、多岐にわたって国際法の基本論点を解答する出題となっています。その分、過去の司法試験本試験と比べ、広く浅い解答が求められますが、難易度は標準的と考えられます。設問4(条約の終了・運用停止)と設問5(自衛権)については、本年度の司法試験本試験とも一定程度重複した出題となっています。問題文前半部は、植民地独立の話になっていますが、竹島問題も念頭におかれているものと思われます。
 
2 問題文
 
3 本問の分析
 
〔第1問〕
1 設問1について
 領域の帰属に関する出題です。まず、植民地時代の境界線を独立後も国境線として尊重する「ウティ・ポシデティス原則」(現状承認原則)の観点から、B国はα地域が自国領であると主張できます。また、B国はA国の一連の行動に対して定期的に抗議しているため、「黙認」(プレアビヘア寺院事件参照)や「時効」に基づくA国による領域取得も認められないと主張しえます。
 
2 設問2について
 国際司法裁判所(ICJ)の管轄権に関する出題です。やや難問です。裁判を阻止するために、訴訟の対象となる国境画定問題が、B国が選択条項受諾宣言に付した国内管轄事項に関する留保に該当すると主張することが求められます。当該留保は、「自己判断留保」と呼ばれるもので、国内管轄権内の紛争であると自国(B国)が判断すれば、裁判は行えないとするものです。同留保により管轄権を否定したノルウェー公債事件に依拠して解答するのがよいでしょう。その場合でも、本問の国境画定問題が国内管轄事項であるとの主張が求められますが、1930年代のC国における革命に関する問題であるため、国内管轄事項にあたると主張するのがよいように思われます。
 
3 設問3について
 留保に関する出題です。まず、条約法条約第19条(c)に基づき、P条約第2条への留保は「両立性の原則」に違反する(条約の趣旨・目的に反する)ため認められず、したがってC国とD国との間でも同条は適用されると主張すべきでしょう。他方で、仮に両立性原則違反が認められない場合には、C国が12か月以内に異議申立てを行ったことにより、C国とD国の間では、P条約は留保の限度において適用されないことになります(条約法条約第21条3項)。この場合は、P条約第2条は適用されないことになるため、C国にとって望ましい結果とはいえません。なお、C国はP条約について批准しているため、P条約の発効自体には反対していないものと考えられます。
 
4 設問4について
 条約の運用停止に関する出題です。A国は、条約法条約第60条2項(b)に基づき、B国によるP条約第3条の「重大な違反」を理由として、同条約の運用停止を主張しえます。また、対抗措置を主張することも可能かもしれません。ただし、P条約違反には問われ、違法性阻却事由により責任追及されないとの解答になるかと思われます。
 
5 設問5について
 自衛権及び行為の帰属に関する出題です。A国は、B国による軍事行動は、国連憲章第51条に基づく自衛権により正当化されず、同第2条4項の武力行使禁止原則に違反すると主張することになります。自衛権の基本3要件(①武力攻撃の発生、②必要性、③均衡性)のうち、本問では①「武力攻撃の発生」が問題となります。まず、α地域はA国領域であるため、同地域での行動はB国に対する武力攻撃には該当しないと主張しえます。次に、政治団体Sへの武器等の供与だけでは、武力攻撃には該当しません。さらに、A国はSに対して「実効的支配」を及ぼしていないため(ニカラグア事件等参照)、Sが武力攻撃を行ったとしても、その攻撃はA国には帰属しないと主張できます。こうした観点から、A国による武力攻撃は発生していないと考えられます。先制的自衛権や在外自国民保護の観点からも、一歩進んだ議論が可能と思われます。
 
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国際関係法〔私法系〕  公開:2022年07月29日

1 はじめに
 今回の予備試験問題「国際関係法(私法系)」は、国際家族法だけに焦点を当てたものでした。さらに、全ての問いが準拠法に関するものであり、国際民事手続法と国際取引法に関する問題はなかったと言えます。
 基本的な事項を問う問題でしたが、論述すべき事項が多く、論述力で点差が開く出題であったと感じました。

 

2 問題文
 
3 本問の分析
 
〔設問1〕
1 ABの離婚が認められるか否かがいずれの法によるかについて問う問題ですから、法の適用に関する通則法(以下「同法」という。)27条に当てはめて、結論を導けばよいことになります。
2 その際、まず、甲国人であるABの本国法が同一であるかが問題となりますが、甲国がP州、Q州等から成る地域的不統一法国(州ごとに民法の内容が異なる)ですから、同法38条3項本文により、ABそれぞれの本国法を決定しなければなりません。同規定の「その国の規則」がないことを説明した上で、「当事者に最も密接な関係がある地域の法」をABそれぞれについて検討することになります。
3 ABは、2011年から日本で生活していることから、一見、ABそれぞれの最密接関係地法は日本法と考えることができるようにも思えます。しかし、同法38条3項は、本国の中のどの地域の法が本国法であるかを決定するための規定であると考えると、ABそれぞれの本国法は、甲国内の州の法の中から「当事者に最も密接な関係がある地域の法」を選ばなければならないとの解釈が、同法38条3項本文の解釈になります。つまり、この考え方によれば、Aの本国法はP州法、Bの本国法はQ州法となります。
4 そうすると、ABの本国法は同一ではないため、同法27条によれば、ABの離婚が認められるか否かは、ABの同一常居所地法である日本法によることになります。
 
〔設問2〕〔小問1〕
1 ABの離婚の際にCの親権者をAと定めることができるかについて問う本問の解答では、それがどの法によるかを、まず検討しなければなりません。
2 法性決定においては、離婚の準拠法について定める同法27条ではなく、親子間の法律関係の準拠法について定める同法32条によることを論じることが必要になります。
 そして、同法32条に当てはめてどの法によるかを決定する際、「子の本国法が父又は母の本国法…と同一である」かが問題となるので、Cの本国法やABの本国法を決定しなければなりません。〔設問1〕で述べた同法38条3項本文の解釈によれば、Cの本国法はQ州法、Aの本国法はP州法、Bの本国法はQ州法になります。なお、同法41条ただし書により、本問では反致は成立しません。
3 以上によれば、Cの親権者をAと定めることができるかは、Q州法によることになります。そして、Q州法②によれば、離婚をするときは、未成年の子の親権は父のみが行うことになります。
4 Q州法②の適用においては、先決問題として、同法4条1項が指定するQ州法①によって、Cが「未成年の子」となることを論じる必要があります。
5 その上で、BがACに日常的に暴力を振るう等の事実から、Q州法②によりCの親権はBのみが行うとする結果は、同法42条の公序条項に該当することを論じればよいでしょう。
6 さらに、本問では、同法42条によってQ州法の適用が排除された後の処理についても論じることが求められているように思われます。
 
〔設問2〕〔小問2〕
 慰謝料は、①離婚そのものを原因とする慰謝料と、②離婚に至るまでの個々の行為を原因とする慰謝料に分けて議論されていることに言及する必要があります。本問について言えば、離婚せざるをえなくなったことについての精神的苦痛に対する慰謝料は①、暴行についての精神的苦痛に対する慰謝料は②に当たります。
 そして、①は、同法27条(離婚の準拠法)によるが、②については、(a)①と区別して、同法17条(不法行為の準拠法)等によると考える見解と、(b)①と同じく、同法27条(離婚の準拠法)によると考える見解があることを指摘しなければなりません。
 その上で、本問の慰謝料の準拠法について、私見を論じればよいでしょう。
 
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