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平成28年度司法書士試験筆記試験
基準点の発表を受けて

 8月8日、法務省ホームページにおいて、平成28年度司法書士試験筆記試験択一式の基準点等が公表されました。

 公表された基準点は次の通りです。
 午前の部:満点105点中75点
 午後の部択一式:満点105点中72点
 午前または午後択一の点数のいずれかが基準点に達しない場合にはそれだけで不合格となります。

 基準点以外に公表された資料は次の通りです。
 受験者数:16,725名(昨年比93.33%)
 午前の部平均点:55.27点
 午後の部択一式平均点:52.57点

 また、択一式の正解も公表されました。本年は正解なしの問題はなかったものの、午後の部第21問が複数解となっています。

【資料&分析】
 次の表は、今年も含めた過去6年の午前・午後択一式基準点に関する資料です(辰已法律研究所作成)。

択一式基準点に関する資料(過去7年)

 H23H24H25H26H27H28
午前択一基準点78点84点84点78点90点75点
満点105点105点105点105点105点105点
基準点/満点(%)74.3%80.0%80.0%74.3%85.7%71.4%
基準点に達した人数3,706名2,992名3,077名2,525名3,303名3,114名
午後択一基準点72点78点81点72点72点72点
満点105点105点105点105点105点105点
基準点/満点(%)68.6%74.3%77.1%68.6%68.6%68.6%
基準点に達した人数4,028名4,101名3,966名4,759名3,339名3,960名

 

 平成28年度は、午前の部の基準点が75点(25問)、午後の部択一式の基準点が72点(24問)となりました。これは、昨年と比較をすると、午前の部が昨年より15点(5問)下がり、午後の部は昨年と同じという結果です。

 午前の部は昨年の基準点90点(30問)という結果を受けて本年の出題が注目されましたが、予想通り、難度が上がりました。ただし、個数問題を増やすというような単純な方法によるのではなく(個数問題は昨年と同じく2問)、過去問で問われていないような論点を積極的に出題したり(憲法の主権概念や刑法の間接正犯、会社法の改正論点など)、最も多い出題形式である組合せ問題でも昨年とは異なり容易に正解が導けないような組合せにしたりするなど、本年は問題に工夫がみられました。それによって全科目で平均正答率が昨年を下回ることとなり、結果として、基準点が昨年より大きく下がっています。科目別では、特に会社法の難度が高かったようです。
 一方、午後の部択一式の基準点は上記のように昨年と同じ72点(24問)となりました。辰已法律研究所が行ったWEB択一再現の結果によると、科目別では、いわゆる午後マイナー科目全体の正答率が昨年より下がり(難化)、登記法科目全体の正答率が昨年より上がる(易化)という結果が出ています。ただし、登記法については、上位者と下位者の正答率の差が大きく、単純に全体としての正答率が上がったというより、特に上位者の正答率が上がったとみる方が正しいようです。午後の部でも、第18問で「会社法人等番号」を1問出題したり、第21問で「メモ」を掲載した新たな形式の出題をしたりするなど、出題内容に工夫がみられました。午前・午後を通じていえることですが、今後の試験対策としては過去問で出題実績のある論点ばかりではなく、過去問未出の論点や、さらに新たな出題形式の問題にも十分対処できるような準備をする必要があります。

 次に、基準点到達人数をみると、午前の部は基準点が昨年より大きく下がったにもかかわらず基準点到達人数は昨年より減少し、午後の部は昨年と同じ基準点で基準点到達人数は昨年より増加という結果でした。昨年以前5年の基準点到達人数を平均してみると概ね本年の基準点到達人数に近い数字となることから、問題の難易度はともかく、基準点の設定作業としては例年の数値(人数)に従ったものといえます。

 最後に、「平成28年度司法書士試験得点別員数表」をもとに、辰已法律研究所が作成した得点分布グラフを見てみましょう。
 昨年の午前の部は基準点付近に最も多くの受験者が集まっており、そこから50点前後まで各得点の人数にあまり変化がない形となっていましたが、本年の午前の部は平均点をやや上回る得点の人数が最も多く、正規分布に近い均整のとれた得点分布となっています。
 午後の部択一式のグラフでは、基準点を超える75点以上の人数が明らかに増えています。午後の部に関して上に述べたように、上位者の正答率が上がったことによるのではないかと思われます。また、昨年と比較をすると、30点以下の得点の人数が大きく減っており、人数の多い得点域が2つあるという午後の部択一式の分布の特徴は本年も維持していますが、午前の部同様、こちらも比較的均整のとれた得点分布になっているといえるでしょう。
 午前の部の基準点は例年よりやや低いものの、以上に述べたように、得点分布としては比較的バランスの良い結果だったといえるので、出題者としては来年以降も本年のような結果を目指すものと考えてよいでしょう。

 

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