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平成29年度司法書士試験筆記試験
基準点の発表を受けて

 8月7日、法務省ホームページにおいて、平成29年度司法書士試験筆記試験択一式の基準点等が公表されました。

 公表された基準点は次の通りです。
 午前の部:満点105点中75点
 午後の部択一式:満点105点中72点
 午前または午後択一の点数のいずれかが基準点に達しない場合にはそれだけで不合格となります。

 基準点以外に公表された資料は次の通りです。
 受験者数:15,440名(昨年比92.3%)
 午前の部平均点:54.39点
 午後の部択一式平均点:47.41点

 また、択一式の正解も公表されました。本年は複数解や正解なしの問題はありませんでした。

【資料&分析】
 次の表は、今年も含めた過去7年の午前・午後択一式基準点に関する資料です(辰已法律研究所作成)。

択一式基準点に関する資料(過去7年)

 H23H24H25H26H27H28H29
午前択一基準点78点84点84点78点90点75点75点
満点105点105点105点105点105点105点105点
基準点/満点(%)74.3%80.0%80.0%74.3%85.7%71.4%71.4%
基準点に
達した人数
3,706名2,992名3,077名2,525名3,303名3,114名3,069名
午後択一基準点72点78点81点72点72点72点72点
満点105点105点105点105点105点105点105点
基準点/満点(%)68.6%74.3%77.1%68.6%68.6%68.6%68.6%
基準点に
達した人数
4,028名4,101名3,966名4,759名3,339名3,960名3,139名

 

 平成29年度は、午前の部の基準点が75点(25問)、午後の部択一式の基準点が72点(24問)となりました。これは、午前の部も、午後の部択一式も、昨年と同じ基準点という結果です。

 上記のように、午前の部の基準点は75点(25問)で昨年と同じでした。辰已法律研究所が行ったWEB択一再現に基づく科目別平均正答率によると、憲法の正答率がここ数年の中では目立って低いものの、それ以外の科目は例年並みという結果が出ています(商法は昨年より正答率が大きく上がりましたが、昨年が特に低かったことによるもので、本年の数値は例年並み)。出題内容としては、憲法で職業選択の自由が初めて一問として問われたこと、憲法の他の2問についてもやや細かな知識を問うものであったこと、商法の問題では基本的な条文や論点を問うものが多かったことなどの特徴が挙げられます。また、出題形式での変化として、個数問題の減少(昨年2問→本年1問)、対話形式問題の減少(昨年5問→本年2問)がみられました。
 一方、午後の部択一式の基準点は72点(24問)、こちらも昨年と同じ基準点でした。WEB択一再現に基づく科目別平均正答率によると、午後の部択一式全科目の中で、ここ数年の中で特に目立つほど高い数値を示した科目も低い数値を示した科目もみられません。出題数の多い科目では、不動産登記法が昨年よりやや難化、商業登記法がやや易化という結果でした。出題内容としては、不動産登記法で登記記録問題が出題されなかったこと、同じく不動産登記法について文章の長い記述が多かったことなどが特徴的でした。また、出題形式での変化として、午後の部でも、個数問題の減少(昨年1問→本年0問)、対話形式問題の減少(昨年1問→本年0問)がみられました。
 午前・午後を通じて前年度からの大きな傾向変化はみられませんでした。今後の試験対策としては、本年度のような出題レベル・出題形式への対応力を万全とした上で、問題の難化にも備えておくというのが無難な姿勢だと言えるでしょう。

 次に、基準点到達人数をみると、午前の部は人数こそ昨年よりやや減ったものの、対受験者でみた基準点到達者の割合としては近年で最高となっています。午後の部択一式は人数比で昨年より20%以上減り、基準点到達者数が公表されるようになって以来最低の人数とはなりましたが、こちらも対受験者でみた基準点到達者の割合としては近年の中で相対的に低いというわけではありません。
 択一式基準点は午前の部・午後の部択一式双方での高得点者の「重なり」の調整結果です(下の表の中でDの数値のみ安定している点に注目)。よって、重要なのは記述式の採点をされたのが何人か、受験者数減に伴ってこの人数に変動があるのかということであり、これについては9月27日の法務省の発表を待って当欄に数値およびコメントの追加をいたします(上記「重なり」が判明しない段階での、偏差値等に基づく推測的なコメントは当研究所では差し控えます)。(9月27日更新済み)

択一式基準点到達人数に関する資料(過去7年)

 H23H24H25H26H27H28H29
筆記試験受験者数A25,696名24,048名22,494名20,130名17,920名16,725名15,440名
択一基準点
到達人数
午前の部B3,706名2,992名3,077名2,525名3,303名3,114名3,069名
午後の部
択一式
C4,028名4,101名3,966名4,759名3,339名3,960名3,139名
午前・
午後択一
とも
D2,320名2,169名2,177名2,033名2,251名2,280名2,179名
午前・午後ぞれぞれの択一基準点到達者が記述式を採点された割合午前
到達者
D/B62.6%72.5%70.8%80.5%68.2%73.2%71.0%
午後択一
到達者
D/C57.6%52.9%54.9%42.7%67.4%57.6%69.4%

 

 最後に、「平成29年度司法書士試験得点別員数表」をもとに、辰已法律研究所が作成した得点分布グラフを見てみましょう。
午前の部は、昨年と比べると、平均点から基準点よりやや上までの得点域に属する人数の減りが目立ちます。また、87点以上の高得点域では逆に人数が増加しています。全体としては正規分布に近い得点分布となりました。
 午後の部択一式では、中間層の人数が大きく減り、低得点域では大幅に人数が増えています。この形は一昨年以前の午後の部択一式のグラフの形に近く、基準点こそ昨年と同一でしたが、出題内容の微妙な変化が得点分布に影響を与えたということも考えられます。
 択一式基準点が2年連続で同じ点数であったこと、午前の部と午後の部択一式の基準点に大きな開きがなかったこと、基準点到達人数も午前の部と午後の部択一式で近い人数となったことなどから、本年も試験結果としては比較的妥当なものであったといえます。この結果からは来年以降の出題傾向に大きな変化が起こるだろうとは考えられません。

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