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2019年度司法書士試験筆記試験
基準点の発表を受けて

 8月13日、法務省ホームページにおいて、平成31年度(2019年度)司法書士試験筆記試験択一式の基準点等が公表されました。

 公表された基準点は次の通りです。
 午前の部:満点105点中75点
 午後の部択一式:満点105点中66点
 午前または午後択一の点数のいずれかが基準点に達しない場合にはそれだけで不合格となります。

 基準点以外に公表された資料は次の通りです。
 受験者数:13,683名(昨年比95.1%)
 本年は、午前の部・午後の部択一式とも、平均点の発表はありませんでした。
 ※辰已法律研究所の計算によると、午前の部の平均点は55.68点、午後の部択一式の平均点は45.88点でした。

 また、択一式の正解も公表されました。本年も複数解や正解なしの問題はありませんでした。

 さらに、「平成31年度司法書士試験筆記試験(多肢択一式問題)得点別員数表」も公表されています。

 これらについては、法務省ホームページをご覧ください。
 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00387.html

【資料&分析】
 次の表は、今年も含めた過去7年の午前・午後択一式基準点に関する資料です(辰已法律研究所作成)。

択一式基準点に関する資料(過去7年)

 H25H26H27H28H29H30H31
午前択一基準点84点78点90点75点75点78点75点
満点105点105点105点105点105点105点105点
基準点/満点(%)80.0%74.3%85.7%71.4%71.4%74.3%71.4%
基準点に達した人数3,077名2,525名3,303名3,114名3,069名2,897名3,030名
午後択一基準点81点72点72点72点72点72点66点
満点105点105点105点105点105点105点105点
基準点/満点(%)77.1%68.6%68.6%68.6%68.6%68.6%62.9%
基準点に達した人数3,966名4,759名3,339名3,960名3,139名3,461名2,817名

 

 平成31年度は、午前の部の基準点が75点(25問)、午後の部択一式の基準点が66点(22問)となりました。午前の部は昨年よりも3点(1問)下がり、午後の部択一式は昨年よりも6点(2問)下がりました。

 上記のように、午前の部の基準点は75点(25問)で昨年より3点(1問)下がりました。辰已法律研究所が行ったWEB択一再現に基づく科目別平均正答率によると、午前の部において、近年の中で特に目立った数値を示した科目はありません。どの科目も標準的な難易度だったといえます。昨年との比較では、民法の正答率が若干下がった以外は、昨年とほとんど同じレベルを示しています。出題形式をみても、対話形式を除く組合せ問題が29問(昨年30問)、単純正誤問題が4問(昨年3問)、個数問題が0問(昨年0問)、対話形式の問題が2問(昨年2問)ということで、前年度からの大きな変化はみられませんでした。
 一方、午後の部択一式の基準点は66点(22問)、こちらは近年に例のない低さであり、昨年と比較しても6点(2問)下がっています。WEB択一再現に基づく科目別平均正答率によると、司法書士法と不動産登記法の正答率が、近年の中でも特に低い数値を示しました。特に不動産登記法では、正答率が25%未満の問題が複数あり(最も正答率が低い問題では20%を大きく下回る)、これらが基準点を下げる要因になっていると思われます。午後の部の出題形式をみると、対話形式を除く組合せ問題が33問(昨年35問)、単純正誤問題が0問(昨年0問)、個数問題が0問(昨年0個)、対話形式の問題が2問(昨年0問)で、こちらは大きな変化とはいえません。

 午前・午後を通じて前年度からの大きな傾向変化はみられませんでした。午後の部択一式の基準点は大きく下がりましたが、各問題の正答率をみる限り、問題自体の難度が全体として上がったとは思われません。午後の部択一式については、正誤判断の容易な肢のみからは正解が導けない問題が例年より多かったとの見方があり(特に不動産登記法について)、一部の問題の正答率の低さは、そのような見方を裏付けるものとも考えられます。今年の結果が示すように、極端に正答率の低い問題が複数あると基準点は下がり、結果として、それらの問題の合否への影響は小さなものとなります。今後の試験対策としては、そのような問題に惑わされず、基礎的な事項をしっかり押さえ、正答率の高い問題を確実に得点していく勉強が最も無難だと思われます。

 次に、基準点到達人数をみると、午前の部は昨年より133名増え、対受験者でみた基準点到達者の割合としては近年で最高となっています。午後の部択一式は昨年より人数で644名、到達率では3.5ポイント程度減っていますが、一昨年と比べると到達率は若干高く、近年において特に低い数値とはいえません。
 択一式基準点は午前の部・午後の部択一式双方での高得点者の「重なり」の調整結果です(下の表の中でDの数値のみ安定している点に注目)。よって、重要なのは記述式の採点をされたのが何人か、受験者数減に伴ってこの人数に変動があるのかということであり、これについては10月3日の法務省の発表を待って当欄に数値等の追加をいたします(上記「重なり」が判明しない段階での、偏差値等に基づく推測的なコメントは当研究所では差し控えます)。

択一式基準点到達人数に関する資料(過去7年)

 H25H26H27H28H29H30H31
筆記試験受験者数A22,494名20,130名17,920名16,725名15,440名14,387名13,683名
択一基準点
到達人数
午前の部B3,077名2,525名3,303名3,114名3,069名2,897名3,030名
午後の部
択一式
C3,966名4,759名3,339名3,960名3,139名3,461名2,817名
午前・
午後択一
とも
D2,177名2,033名2,251名2,280名2,179名2,135名2,006名
午前・午後ぞれぞれの択一基準点到達者が記述式を採点された割合午前
到達者
D/B70.8%80.5%68.2%73.2%71.0%73.7%66.2%
午後択一
到達者
D/C54.9%42.7%67.4%57.6%69.4%61.7%71.2%

 

 最後に、「平成31年度司法書士試験筆記試験(多肢択一式問題)得点別員数表」をもとに、辰已法律研究所が作成した得点分布グラフを見てみましょう。
 午前の部は、上記のように、昨年より基準点が3点下がりましたが、グラフの形としては極端な変化はありません。昨年と比較をすると、平均より上の各点数において、人数が比較的均等に減った形になっているのが分かります。
 午後の部択一式では、69点以上の高得点域の人数が大きく減り、逆に45点以下の領域では人数が増えています。山が2つあって下の山が特に大きいこの形は、近年の午後の部択一式得点分布グラフではよく見られる形です。
 今年は午前の部の基準点が3点(1問)、午後の部択一式が6点(2問)下がるという結果でしたが、以上に述べたように、得点分布としては特筆すべきことはありません。今年の結果を受けて、来年の本試験問題が大きく難化や易化、あるいは出題傾向が大きく変わるということは考えられません。

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