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令和2年度司法書士試験筆記試験
基準点の発表を受けて

 11月4日、法務省ホームページにおいて、令和2年度(2020年度)司法書士試験筆記試験択一式の基準点等が公表されました。

 公表された基準点は次の通りです。
 午前の部:満点105点中75点
 午後の部択一式:満点105点中72点
 午前または午後択一の点数のいずれかが基準点に達しない場合にはそれだけで不合格となります。

 基準点以外に公表された資料は次の通りです。
 受験者数:11,494名(昨年比84.0%)
 本年も、午前の部・午後の部択一式ともに、平均点の発表はありませんでした。
 辰已法律研究所の計算によると、午前の部の平均点は59.91点、午後の部択一式の平均点は50.70点でした。

 また、択一式の正解も公表されました。本年も複数解や正解なしの問題はありませんでした。

 さらに、「令和2年度司法書士試験筆記試験(多肢択一式問題)得点順位別員数表」も公表されています。

 これらについては、法務省ホームページをご覧ください。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00099.html

【資料&分析】
 次の表は、今年も含めた過去7年の午前・午後択一式基準点に関する資料です(辰已法律研究所作成)。

択一式基準点に関する資料(過去7年)

 H26H27H28H29H30H31R2
午前択一基準点78点90点75点75点78点75点75点
満点105点105点105点105点105点105点105点
基準点/満点(%)74.3%85.7%71.4%71.4%74.3%71.4%71.4%
基準点に達した人数2,525名3,303名3,114名3,069名2,897名3,030名3,643名
午後択一基準点72点72点72点72点72点66点72点
満点105点105点105点105点105点105点105点
基準点/満点(%)68.6%68.6%68.6%68.6%68.6%62.9%68.6%
基準点に達した人数4,759名3,339名3,960名3,139名3,461名2,817名2,234名

 

 令和2年度は、午前の部の基準点が75点(25問)、午後の部択一式の基準点が72点(24問)となりました。午前の部は昨年と同じ、午後の部は昨年より6点(2問)上がっています。

 上記のように、午前の部の基準点は75点(25問)で昨年と同じ基準点でした。辰已法律研究所が行った WEB択一再現に基づく科目別平均正答率によると、午前の部では、憲法がやや難化、その他の科目(民法・刑法・商法)がやや易化という結果が出ています。どの科目についても過去数年と比較をして特に目立った難易度を示した科目はありません。出題形式としては、組合せ問題が35問(昨年31問)、単純正誤問題が0問(昨年4問)、個数問題が0問(昨年0問)、会話形式の問題が4問(昨年2問)で、全てが組合せ問題となりましたが、これは基準点には影響しなかったようです。
 一方、午後の部択一式の基準点は72点(24問)で、特に低い基準点だった昨年よりは上がり、昨年を除く過去数年の午後の部の平均的な基準点となりました。WEB択一再現に基づく科目別平均正答率によると、いわゆるマイナー科目の中では、民事訴訟法と司法書士法が易化、主要科目では、昨年は正答率が低かった不動産登記法が易化(例年並み)、商業登記法は近年で最も低い正答率を示しました(難化)。全科目の中で特に目立つのは商業登記法の正答率の低さですが(正答率20%台の問題が3問ありました)、正答率が著しく低い問題は合否結果への影響力が下がるので、受験生としては、来年以降に向けて過度に意識をする必要はないと考えてよいでしょう。午後の部の出題形式をみると、組合せ問題が33問(昨年35問)、単純正誤問題が2問(昨年0問)、個数問題が0問(昨年0個)、会話形式の問題が3問(昨年2問)で、午前の部で減らした単純正誤問題を午後の部で増やし、バランスをとったような形となっています。

 午前・午後を通じて前年度からの大きな傾向変化はみられませんでした。むしろ今年は、コロナ禍やそれに伴う試験延期により、受験生の学習環境が劇的に変化した年でした。延期の発表から新たな日程の発表までの約2か月、およびそれから試験日までの約3か月の期間に十分な勉強ができたか否かは、試験の結果に大きく影響したと思われます。あらためてスケジューリングの大切さを認識した人も多いのではないでしょうか。今後は、短期間でできる勉強、じっくり時間をかけてやる作業など、時間を意識した学習内容の分類も重要となります。

 次に、基準点到達人数をみると、午前の部は昨年より613名増え、対受験者でみた基準点到達者の割合は31.7%と近年では突出して高い値となりました。午後の部択一式は昨年より人数で583名減り、到達人数としては過去10年の中では最も少ない人数となっています。到達率では1.2ポイント程度の減で、こちらは過去10年の中でみると特に低い数値とはいえません。要するに、午後の部は受験者数の減少にあわせて基準点到達者を減らしているにもかかわらず、午前の部については基準点到達人数を維持した結果、到達率が非常に高くなっているということになります。
 択一式基準点は午前の部・午後の部択一式双方での高得点者の「重なり」の調整結果です(下の表の中でDの数値のみ安定している点に注目)。よって、重要なのは記述式の採点をされたのが何人か、受験者数減に伴ってこの人数に変動があるのかということであり、これについては12月24日の法務省の発表を待って当欄に数値等の追加をいたします(上記「重なり」が判明しない段階での、偏差値等に基づく推測的なコメントは当研究所では差し控えます)。

択一式基準点到達人数に関する資料(過去7年)

 H26H27H28H29H30H31R2
筆記試験受験者数A20,130名17,920名16,725名15,440名14,387名13,683名11,494名
択一基準点
到達人数
午前の部B2,525名3,303名3,114名3,069名2,897名3,030名3,643名
午後の部
択一式
C4,759名3,339名3,960名3,139名3,461名2,817名2,234名
午前・
午後択一
とも
D2,033名2,251名2,280名2,179名2,135名2,006名1,952名
午前・午後ぞれぞれの択一基準点到達者が記述式を採点された割合午前
到達者
D/B80.5%68.2%73.2%71.0%73.7%66.2%53.6%
午後択一
到達者
D/C42.7%67.4%57.6%69.4%61.7%71.2%87.4%

 

 最後に、「令和2年度司法書士試験筆記試験(多肢択一式問題)得点順位別員数表」をもとに、辰已法律研究所が作成した得点分布グラフを見てみましょう。
 上記のように、午前の部は昨年と同じ基準点でしたが、グラフの形は大きく変わりました。昨年と比較をすると、高得点域の人数が増え、中間域の人数の減りが特に目立ちます。高得点者の増加がそのまま基準点到達者の増加につながったかたちとなっています。
 午後の部択一式でも高得点域で人数が増えています。昨年は大きな山を形作っていた 30 点付近の人数が減り、全体として例年よりなだらかな山となっています。
 コロナ禍により受け控えをする人が増えた中で、実力者は受け控えをしなかったことが、午前・午後ともに、このような得点分布となった理由といえるかもしれません。
 来年の試験がどのような状況で行われるかは現時点では分かりませんが、今年の試験結果に、来年以降の出題傾向を大きく変えるような要素は見受けられません。

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