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令和4年度司法書士試験筆記試験
基準点の発表を受けて

 8月15日、法務省ホームページにおいて、令和4年度(2022年度)司法書士試験筆記試験択一式の基準点等が公表されました。

 公表された基準点は次の通りです。
 午前の部:満点105点中81点
 午後の部択一式:満点105点中75点
 午前または午後択一の点数のいずれかが基準点に達しない場合にはそれだけで不合格となります。

 基準点以外に公表された資料は次の通りです。
 受験者数:12,727名(昨年比106.7%)
 本年も、午前の部・午後の部択一式ともに、平均点の発表はありませんでした。
※辰已法律研究所の計算によると、午前の部の平均点は63.57点、午後の部択一式の平均点は50.95点でした。

 また、択一式の正解も公表されました。本年も複数解や正解なしの問題はありませんでした。

 さらに、「令和4年度司法書士試験筆記試験(多肢択一式問題)得点順位別員数累計表」も公表されています。

 これらについては、法務省ホームページをご覧ください。
 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00469.html

【資料&分析】
 次の表は、今年も含めた過去7年の午前・午後択一式基準点に関する資料です(辰已法律研究所作成)。

択一式基準点に関する資料(過去7年)

 令和4年度は、午前の部の基準点が81点(27問)、午後の部択一式の基準点が75点(25問)となりました。午前の部は昨年と同じ、午後の部は昨年より9点(3問)上がっています。

 上記のように、午前の部の基準点は81点(27問)で昨年と同じでした。辰已法律研究所が行ったWEB択一再現に基づく科目別平均正答率によると、午前の部では、憲法・刑法が若干の難化、民法はほぼ昨年並み、商法は昨年より若干の易化という結果が出ています。全体としてみると、問題の難易度はほぼ昨年並みといってよいでしょう。出題形式としては、組合せ問題が34問(昨年34問)、単純正誤問題が1問(昨年1問)、個数問題が0問(昨年0問)、会話形式の問題が1問(昨年2問)ということで、前年度からの大きな変化はみられませんでした。
 一方、午後の部択一式の基準点は75点(25問)で、特に低い基準点だった昨年より大きく上がり、平成26年(2014年)以降で最も高い基準点となりました。WEB択一再現に基づく科目別平均正答率によると、いわゆるマイナー科目の中では、民事訴訟法・民事執行法・司法書士法の正答率が下がり、民事保全法と供託法の正答率が上がりました。主要科目では、不動産登記法・商業登記法ともに昨年より正答率が上がっており、これら主要科目の易化が基準点アップの要因といってよいでしょう。午後の部の出題形式をみると、組合せ問題が35問(昨年34問)、単純正誤問題が0問(昨年1問)、個数問題が0問(昨年0個)、会話形式の問題が2問(昨年1問)で、午前の部同様、こちらも大きな変化とはいえません。

 午前・午後を通じて出題傾向の顕著な変化はみられませんでしたが、午後の部択一式の基準点は大きく上がりました。今年の午後の部択一式の特徴としては、基本的な知識を問う問題や過去問既出の論点を問う問題が例年よりやや多く見受けられ、このような問題を着実に正解した受験者が高得点を獲得し、基準点を引き上げたものと思われます。今後の試験対策としては、従来同様、基礎的な事項をしっかり押さえ、正答率の高い問題を確実に得点していく勉強が最も有効だと思われます。

 次に、基準点到達人数をみると、午前の部は昨年より133名増え(到達人数は一昨年とほぼ同数)、対受験者でみた基準点到達者の割合は昨年より0.8ポイント下がりましたが、それでも昨年・一昨年に続き3年連続で非常に高い到達者数・到達率となっています。午後の部択一式は、基準点自体は昨年より大きく上がりましたが、到達者数で361名、到達率でも1.5ポイントほど昨年より上がっています(基準点に達し易かったということ)。到達率については昨年と同様、午前の部で下がり、午後の部択一式で上がるという結果になり、令和2年に大きく差がついた午前と午後択一の基準点到達率をふたたび接近させようとしています。
 択一式基準点は午前の部・午後の部択一式双方での高得点者の「重なり」の調整結果です(下の表の中でDの数値のみ安定している点に注目)。よって、重要なのは記述式の採点をされたのが何人か、受験者数の変動に伴ってこの人数に変動があるのかということであり、これについては10月11日の法務省の発表を待って当欄に数値等の追加をいたします(上記「重なり」が判明しない段階での、偏差値等に基づく推測的なコメントは当研究所では差し控えます)。

択一式基準点到達人数に関する資料(過去7年)

 最後に、「令和4年度司法書士試験筆記試験(多肢択一式問題)得点順位別員数累計表」をもとに、辰已法律研究所が作成した得点分布グラフを見てみましょう。
 上記のように、午前の部の基準点は昨年と同じでした。得点別にみると、93点以上の人数は全体として減っているものの、75点から90点までの得点域、48点以下の得点域では大きく人数を増やしています。全体としては、午前の部の標準的なグラフの形と大きく異なるものではありませんが、同じ基準点であった昨年のグラフとは微妙に異なっています。
 午後の部択一式のグラフの形は、例年、高得点域と低得点域にそれぞれ山があり、低得点域の山のほうが高いというのが標準的です。今年のグラフをみると、山が2つあるというのは例年同様ですが、高得点域の山が満点方向に寄っており、しかもその山が高く、低得点域の山の高さとあまり差がない形となっています。問題の易化によって72点以上の人数が大きく増え、例年とは少し異なるグラフとなりました。
 昨年も述べましたが、問題の難易度は常に安定しているわけではなく、午前も午後も、2問~3問くらいの基準点の変動は覚悟しておく必要があります。しかし、得点分布のグラフがまったく違う形になるようなことは考えられません。問題の難易度にかかわらず、他の受験者のことは気にせず、自分自身の得点を伸ばす勉強を心掛ければ、確実に合格に近づくことができます。
 今年の試験結果に、来年以降の出題傾向を大きく変えるような要素は見受けられません。

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