下位不合格からのリベンジ合格
1 司法試験の受験を決意した経緯
高校2年生の時に、修学旅行で東京地検や東京地裁に行き、実際の裁判を傍聴したり、検察官の方々のお話を伺ったりした経験から、法曹に興味を抱くようになり、法学部への進学を決めました。その後、大学・法科大学院に進学しました。
2 合格までの道のり
1度目の司法試験(在学中受験)では、散々な結果でした。短答式試験では、合格者平均点を超える点数取ることができましたが、論文式試験では、下位約15%に入ってしまう程の出来でした(在学中受験での合格を目指してはいたものの、どこかで諦めていたことやアウトプット不足がこのような結果を招いたと思います。)。
2度目の司法試験(修了1年目)では、短答式試験では、1度目の受験よりも点数は下がったものの(合格者平均点程度)、論文式試験では、素点で128点以上点数を伸ばし合格することができました(刑訴以外はすべてランクアップ)。
3 1年目受験対策
(1)原因について
私が在学中受験において、失敗してしまった主な原因は、アウトプット不足と在学中受験で合格するという想いが足りなかったことが挙げられます。
ここでは、前者のアウトプット不足について言及します。後者については、後述の5 メンタルの重要性で言及します。
在学中受験時点において、私は直近6年分の司法試験の過去問のみしか起案していませんでした。そして、それ以外の問題集については参考に目にすることはあっても起案はもちろん、答案構成等もしませんでした。在学中受験においては時間がないため、司法試験の過去問についてはこれで十分だったのかもしれませんが、振り返ってみるとインプット重視でアウトプットが圧倒的に足りなかったと思います。これが、知識が偏ってしまったことや知識や理解を上手く答案に反映することができなかったことに繋がり、最終的には司法試験下位不合格という悲惨な結果に繋がってしまったと思います。
(2)徹底的な敗因分析
司法試験の合格発表後、ロースクール全体がお祭りムードの中、司法試験の成績が送られてきました。そこで、想定以上に成績が悪かったため、来年(8か月後)合格するためには、ただ、がむしゃらに学修するのではなく、次の試験まで実質的な時間がないことや来年在学中受験を目指す全国のロースクール生は継続して学修し続けていることから、効率的に学修する必要があると考え、徹底的な敗因分析をすることにしました。
敗因分析の内容としては、出題趣旨・採点実感、成績表を用いて、自分自身の不合格の原因がどこにあるのかを分析しました(在学中受験時、再現答案を作成していないため、恐れ多いのですが、再現答案も用いて敗因分析することが大切だと思います。)。特に、ロースクールの期末試験や模試等において、自分自身の手応えと実際の評価が悪い意味でずれていることが多い方は、第三者にも協力してもらって敗因分析をするのが良いと思います。
具体的には、弱点が、短答か論文か、知識不足(論点落とし)か知識はあるが起案に反映することができていないのか(法的三段論法が守れているのか、規範定立やあてはめのどこができていないのか)等、成績通知書や自分自身の当時の手応え・感覚と照らし合わせて改善すべき点を明確にしました。
3 2年目受験対策
(1)学修方針
まず、不合格後の学修方針としては、先生のアドバンス等も参考に、周りが書けることを書けるようにすることを意識しました。
そして、合格戦略としては、苦手科目をなくすこと(得意科目を伸ばすよりも、苦手科目をつぶす方が効率的だと思います。)やA 答案を目指すのではなく、最低限沈まない答案を目指すこと(自ずとA答案は取ることができます。)を軸にしました。
さらに、司法試験後、従来通りの法律の学修からは離れてしまったため、少しでもそれを取り戻す必要があると考え、授業も活用しました。主に、法律科目を履修し、基礎知識の確認及びアウトプットする機会を設けました。
基礎知識の確認については、基礎だからと侮らずに確認しました。私自身、新しい発見が多々あり、改めて自身の知識不足を痛感しました。また、司法試験の評価は相対評価であるため、周りが書けることをかければ合格できるものです。言い換えれば、周りが書けることを書けないと落ちてしまいます。だからこそ、基礎知識が重要になってくると言い聞かせながら学修しました。
アウトプットについては、司法試験の過去問の起案や出題趣旨・採点実感を用いて復習をしました。起案時は、本番と同じ意識(参照物は司法試験用六法のみ、時間も厳格に。途中答案は何が何でも避ける)で臨みました。かなり精神的にも肉体的にも大変でしたが、ここでの起案が筆力はもちろん、本番に活きたと思います。復習時は、適宜、基本書や百選、自分のまとめノート(一元化教材)、類題を参照しながら、知識の確認や起案の改善(主に、あてはめ)を図りました。
(2)辰已講座の利用
ア スタ論(第2クール)
未知の問題に対して、初見で時間内に書き切る力を養うことができた点が良かったです。また、採点表も丁寧で細かいため、自分の答案の良い点・悪い点が分かりやすく、復習がしやすかったです。一方、採点については、採点者の裁量によるところも大きいと思いますので、素点については、気にする必要はないと思います。
イ 全国模試
本番と同じスケジュールで解くことができ良かったです。母数が少ないため、自身の立ち位置が分かりにくいかもしれませんが、私自身、模試と本番の成績は同じくらいでした。そのため、是非受けることをお勧めします(司法試験本番の商法は、全国模試に救われました!)!
4 自己の体験を踏まえ、これから受験する人へのアドバイス
(1)全受験生へのアドバイス
私が2度の司法試験受験を経て、根本的に重要だと感じたことは、試験当日に自分自身のピーク(学修面・メンタル面双方)を持っていくことです。
在学中受験を目指す在学生はもちろんですが、特に複数回受験生の方は、司法試験までにいかにメンタルを保つか(メンタルを安定させるか)が重要だと思います。後がないと自分を追い込んでしまったり、同期が先に受かってしまったり、家族からのプレッシャーを感じたりと、様々な要因でメンタルが不安定になりがちです。実際に私自身も合格発表後や本番1か月前などの時期に眠ることのできない日々を過ごしました。メンタルを保つ方法については、本当に人それぞれだとは思うのですが、私なりにメンタルを保つのに役立った方法を記します。ご参考になれば幸いです。
ア 試験までについて
・完璧主義からの脱却
→司法試験で満点を取ることは不可能です。そのため、論文式試験はあくまで60~70点までしか取ることができないと割り切って、模試や答練を受け本番でもそのような心構えでいました。
・良くも悪くもポジティブ・ネガティブになり過ぎないこと
→ポジティブ過ぎると学修が疎かになりがちになってしまい、ネガティブ過ぎると、学修に身が入らなくなってしまうと思います。そのため、一喜一憂することなく、日々学修し続けることが大切だと思います。
・短答を安定させること(120点以上)
→近年の傾向からすれば、短答式試験において、合格者平均点程度を取ることができれば、論文式試験において、上位半分に入ることができれば合格することができます。
イ 試験当日について
・最後まで諦めないこと
→今までの学修が結果を左右することはそうですが、何だかんだ最後はメンタル面(合格するという執念)が関わってくると思います。中日含めて5日間の試験を受けきらないと始まりません。
・知らない問題が出ても焦らずに割り切ること
→知らない問題は周りの受験生も知りません。そのため、焦らずに法的三段論法を守ることや誘導に乗ること、問いに答えることを意識することが重要だと思います。
・答え合わせをしないこと
→答え合わせをしたところで、自分自身が書いた答案の点数が上がることは決してありません。切り替えて次の科目への準備をする方がよっぽど合格可能性が高まります(受験会場では、答え合わせをする受験生が少なくないため、休み時間の過ごし方は気をつけてください)。
(2)LS在学生へのアドバイス(在学中にやっておくべきこと)
ロースクールの授業とのバランスを意識しつつ、インプット重視にならないようにするのが良いと思います。過去問の起案や問題集の答案構成など、アウトプットする機会を設けることが大切だと思います。
(3)来年初めて受験する方へのアドバイス(試験当日までの過ごし方)
試験まで時間がないため、割り切ってしっかりと学修計画を立てて試験に臨むことが大切だと思います。司法試験は、試験本番も長時間にわたるため、中日の過ごし方なども含めて、少なくとも1回は、模試などを利用して本番をイメージすることが大切だと思います。
(4)来年のリベンジ合格を目指している方へのアドバイス
おそらく司法試験受験後から合格発表まで勉強を続けている方は少ないと思います。そのため、知識や起案能力(主に筆力)を取り戻すことも踏まえると、継続的に学修している予備受験生や在学中受験生よりも残された時間は圧倒的に少ないと思います。まずは、そのことを意識して強い気持ちを持って試験本番までモチベーションを維持しながら継続的に学修することが大切だと思います。
(5)最後に
これまでの話は、あくまで私自身の体験談に基づくものですので、参考になるか否かは、人それぞれだと思います。そのため、ここまで目を通していただいた皆さんには、情報の取捨選択をしてほしいと思います。私の下位不合格からのリベンジ合格は、私なりに試行錯誤した学修方法が自分に合っていて、結果に結びついたというものだと思います。これが絶対的であったり唯一の方法であったりはしないので鵜吞みにせずに自分に合うか良く吟味してください。不合格となった直後は勉強に身が入らないという方も多いと思います。在学中受験制度との関係では、時間が残されていないため今すぐにでも学修をするのがベストだとは思います。しかし、個人的には、今の時期からアクセル全開で再スタートした結果、直前期に燃え尽きてしまうくらいであれば、今は今後の学修に向けてゆっくりと戦力を練り、ピークを本番に持っていくことも良いと思います。
最後にはなりますが、皆さんが、学修方法や日々の過ごし方など、試行錯誤する際の一例としていただければと思います。私の体験談が少しでも、皆さんの参考になれば幸いです。この合格体験記を見られた方が来年合格することを心から祈っております。また、支えてくれる方や応援してくれる方、一緒に切磋琢磨してくれる方への感謝の気持ちを忘れずに自分の心と体を大切にしつつ無理をしない範囲でやり切ってください。
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辰已は羅針盤です
一橋大学法科大学院【既修】2023年入学 2025年卒業予定
2023年予備試験合格
【受講歴】スタンダード論文答練福田クラス 全国公開模試 他
