司法試験を突破するのに問われてくる力
1 司法試験の受験を決意した経緯
私はもともと理系の学部出身で、学部では法律をまったく勉強したことがありませんでした。法科大学院に入るまでは、理学系の大学院で数学の研究(勉強)をしていました。私の数学の研究は、完全に自己の中で完結する論理の集合体系で、なかなか社会に還元するのが難しいものでした。また、自身の中でもこの先、数学の勉強をしていて、プロの研究者になって数学一本で生きていけるかどうかの不安も正直ありました。いろいろと模索しているうちに、自分で仕事を取ってきて、自分の裁量で進められる仕事をしたいなと思えるようになりました。そこで、資格を取るための勉強を始めようとなったわけですが、どうせ勉強をするなら誰もが知るような資格の勉強を始めたいという安易な考えのもと、司法試験を目指すことになりました。そして、純粋未修として法科大学院の未修コースに入学をしました。
2 受験対策
(1)辰已講座の利用方法とその成果
私は司法試験を2度受験しているのですが、2023年度と2024年度の辰已さんの全国公開模試を受験しました。全国公開模試は、司法試験本番のスケジュールに合わせた受験ができるので、本番前に大変良い経験ができました。特に自分の場合は、日頃から朝方の勉強習慣が身についていたわけではなかったので、模試に合わせて生活リズムを整えたりするのにとても役立ちました。司法試験は試験期間中に金曜日の休みが1日ありますが、合計で延べ5日間もの勝負になるので、休みの日を含めて同じ過ごし方を経験できる模試は、大変有意義なものでした。
模試の結果としては、2023年度に受験したものは自分の実力不足もあり、思うような成果を残すことができませんでした(仕事の関係で行政法を受験できなかったことを覚えています)。一方、2024年度の方については、全科目を会場で受験することができ、自分の実力が昨年よりも実ってきていることも実感できました。また、2024年度に受験した模試の商法では、設問1のスクイーズアウトの問題が、令和6年度の商法の設問2とドンピシャで的中しており、試験本番では恐いぐらいの既視感を覚え、びっくりしました。そのおかげで、株主平等原則の論点についても触れることができ、模試を受けていたことで、本番では5点以上の点数が上がったと思います。
(2)私がやって成功した方法
私が過去問や模試などの事例問題を解いていて、解けなかったものや知らなかった知識については、復習のためにWordでまとめて一元化していました(選択科目を含めて8科目分を作成していました)。自分用に一元化する過程においては、自分の頭の中での編集作業を要するため、条文の使い方や論点について考えたりする良い機会となりました。また、事例の中で条文や知識がどのように使われているかが分かるように、問題文も含めた一元化を行っていました。そして、作成した一元化教材をくり返し復習することで、記憶の定着を図っていきました。司法試験当日もこの一元化教材を持参して、休み時間中に見ながら勉強をしていました。
(3)私が使用した本
ア えんしゅう本
私は、辰已さんの「えんしゅう本」を7科目購入して事例問題の勉強に取り組みました。えんしゅう本では、条文の使い方や知識を、事例の中で実際にどのように活かすかを学習できたので、本当に良い勉強になりました。えんしゅう本は旧司法試験の過去問や司法予備試験の過去問までも収録されていて、幅広いレベルに対応できる教材になっていました。また、各科目で押さえるべき内容や分野も網羅されているため、えんしゅう本に載っている事例で、問題の解き方を何度も復習をしました。この「えんしゅう本」については、全科目を一通り学習した後に、アウトプットの仕方を学べる大変良い教材であったと思います。
イ 趣旨規範ハンドブック
また、辰已さんの趣旨規範ハンドブックについても、民事系、公法系、刑事系の3冊を利用していました。趣旨規範ハンドブックでは、いろいろな論点が判例や裁判例ベースに記載されているため、ある程度、学習の目途が立った人が利用するのにおすすめの教材であると感じました。私の場合は、論点を調べるための辞書代わりとして、長期的に使用していました。司法試験の本番の会場でも趣旨規範ハンドブックを一元化教材として持参している受験生の方も複数おられました。趣旨規範ハンドブックとえんしゅう本で、インプットとアウトプットの両輪を形成していくのもおすすめと感じました。
ウ 選択科目
選択科目は、「論文対策1冊だけで労働法」を使用しておりました。他の科目は趣旨規範ハンドブックを使っており、労働法についても一元化教材が欲しかったので、新たな版が発売されたときにはすぐに予約して購入しました。労働法は試験範囲が他の選択科目に比べて広いと言われていますが、それに対応した網羅的な教材になっています。また、司法試験の過去問とともに、最上位の点数の再現答案も載っているため、過去問演習のときに論述例として参考になる点も大変有益でした。選択科目についてはこの教材を使用すれば、インプットとアウトプットの両方をすることができると思います。そして、労働法については過去問とは別に、アウトプット用の教材として「事例演習労働法」を使用していました。えんしゅう本は7科目のみなので、選択科目はこの問題集を使用していました。事例演習労働法は、直近の過去問に登場していない論点についても、事例問題を通して幅広く書き方を学べるため、大変有益な教材でした。
3 受験生へのアドバイス
ア LS在学生へのアドバイス
LS在学生については、法科大学院の授業を受けつつ、並行して司法試験の過去問演習を進めていく必要があります。司法試験は令和5年から在学中受験も可能になり、法科大学院に進学してから1年と3か月で受験できるようになりました。在学中の受験生が勝負できる試験として、知識の量が求められているというよりは、論理的な問題解決能力が以前よりも問われるようになった気がします。この点、在学中受験の方は、すべての過去問を解く時間は到底ないようにも思われます。そこで、重要な考え方を学べる年度の過去問や、傾向を知るための直近5年分の過去問などに絞って、目的意識をもった過去問演習をメリハリ付けてやっていくのが必要かつ効果的かと思います。今の司法試験は、在学中受験の方の合格率が高いため、周囲の在学生と自主ゼミを組むなどして、相乗効果のもと、勢いのある合格が可能であると思います。
イ 来年初めて受験する方へのアドバイス
司法試験は意外と長丁場の試験ですので、本番のスケジュール感を事前に経験できる模試を受けておくのがおすすめです。辰已さんの全国公開模試では、本番で試験会場となる場所での受験ができるので、駅からのアクセスなどを事前に身をもって確認することができます。また、試験直前期については、試験当日に今まで培ってきたことを発揮できるようにするため、気持ちを落ち着けたり、十分な睡眠を確保する習慣が大事だと思います。ですので、直前期には落ち着いた勉強ができるように、逆算して勉強スケジュールを組んでいくことをおすすめいたします。
ウ 来年リベンジ合格を目指している方へのアドバイス
司法試験は在学中受験の方の合格率が高く、リベンジ合格を目指す方にとっては、少々険しいものになるかと思います。私自身も2回目の受験の合格であるため、リベンジ合格を運よく果たすことができた場合に当たります。リベンジをする上で特に意識していたのは、(不合格の)結果が出たら、落ち込むよりもまずは行動に移すことです。合格できなかった現状を受け入れるのは大変つらいですが、来年に勝負することになる在学中受験の方たちは、いつも通りのペースで勉強を続けています。ですので、「来年は自分が絶対に合格する」という強い気持ちをもって、いち早く勉強を再開してほしいです。再現答案を書いていた人にとっては、他人に見てもらって敗因分析をしながら、今後の勉強方針を立てることができるので、試験を受け終わったら可能な限りで再現答案を書くことをおすすめいたします。知識量的には在学中の受験生よりも多いと思いますので、各科目ごとの思考プロセスを大事にして、過去問演習を軸とした、試験本番での再現性のある勉強をしていく必要があると思います。
エ 社会人受験生へのアドバイス
社会人受験生は、他の受験生に比べて可処分時間が圧倒的に少ないと思います。私自身は法科大学院に通いながらではありますが、同時並行で仕事を継続していましたので、時間の捻出に少し工夫が必要でした。私の場合は、毎日、この時間帯は勉強に充てようというルーティンを組んで勉強を継続していました。一日あたり3~4時間ぐらいしか勉強時間を割くことができない場合であっても、継続した勉強は確実に力がつきますので、焦る必要はないと思います。また、過去問演習の際には、時間的にフル起案ができないこともあると思いますが、答案構成をしっかりしながら復習していければ大丈夫です。
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辰已は羅針盤です
一橋大学法科大学院【既修】2023年入学 2025年卒業予定
2023年予備試験合格
【受講歴】スタンダード論文答練福田クラス 全国公開模試 他
